2号機の温度上昇と再臨界 ― 2012/02/13 22:28
2号機圧力容器内の温度が上昇し、大きな問題となっています。
いったい何が起きているのか… 不安に苛まれます。
しかし、一歩引いて冷静に見つめ直してみると、この問題、下手をすると東電に騙されてしまいかねません。炉内温度の上昇を、ちょっと違う視点から見つめ直してみましょう。
2号機圧力容器の内径は5.57メートルもあり、東電の発表を信じるなら、現在の水位は2メートル前後です。
まず、この半径=5.57メートル、高さ=2メートルという流水で満たされた円筒形の空間。温度計は、たったの6個しかありません。そしてそこには、毎時10トン以上という、もの凄い量の水が注がれ続けています。
にわか造りの給水システムが凍結し、給水が止まって問題になっているくらいですから、水の温度は、凍てつく摂氏零度にきわめて近い温度のはずです。
ここで、ひとつ思いだして欲しいのは、東電が正常だと言っている他の5個の温度計です。みな30℃以上を示しています。注ぎ込まれた大量の氷温水のすべてが、アッと言う間に、ぬるま湯になってしまう… 通常の感覚では、信じられないことです。
不謹慎と言われるかも知れませんが、分かりやすい喩えをしましょう。
想定するのは20席ほどの焼肉屋の客席。テーブルが5卓。どの卓上にも炭火の七輪が乗っています。満席になって、5台の七輪が燃えさかれば、外は氷点下でも暖房なんて要りません。一方、壁のあっちこっちに吊り下げられた温度計を見てみましょう。まぁ、25℃~28℃くらいでしょう。焼肉を突っつく私たちは、少しばかり火に近いですから、体感温度は30℃くらいでしょうか。
しかし、実は、目の前で赤熱する木炭は、800℃~1000℃という温度です。
ここまで書けばお分かり方も多いと思いますが、毎時10トンの氷温水がアッと言う間に、30℃以上になるには、壊れた原子炉内に、もの凄く高い温度のものがあることを示しています。核燃料の崩壊熱のことを考えれば、当たり前のことなのですが…
2号機で、今現在、高温を示している温度計が壊れているのかどうかは分かりませんが、1号機から3号機のいずれの炉心でも、いまだに数百度の温度を保っている部分が、間違いなくあります。でなければ、大量の氷温水が、一瞬のうちに、ぬるま湯になってしまうなんてことはありませんから。
30数℃を示している温度計は、たまたま赤熱部分から遠いだけです。
もう一点、明確にしておきたいのは、崩壊熱と臨界によって発する熱の違いです。原発反対派の中にも誤解があって、温度上昇=再臨界と騒ぎ立てる人たちもいますが、次のことを明確に理解しておく必要があります。
●臨界にならなくても、使用済み核燃料(使用中核燃料)は、崩壊熱によって温度が上がり、水で冷却しなければ、ほどなく再溶融する。
●臨界状態になるための条件は、ウラン235またはプルトニウム239の濃度、塊の大きさ、形状によって決まり、温度は直接的には無関係。
●「崩壊熱で温度上昇」→「再溶融」→「形状が変わり再臨界」というストーリーはあり得る。
●「再臨界」→「温度上昇」→「再溶融」というストーリーもあり得る。
東電は、「半減期の短い気体放射性物質が検出されていない」→「再臨界は起きていない」→「温度計が故障している」という理屈で押し切ろうとしています。しかし、彼らは、今の原子炉内の温度と再臨界が無関係である事を知っているのです。
マスメディアも含めて、「再臨界してないから大丈夫」という論理に騙されかけているので、これは要注意。現状を見る限り、事の本質は、崩壊熱にあり、6本の温度計のウチの1本の近くに、溶融して固まった核燃料が集まっている可能性が高いです(再臨界の可能性を100%否定はできませんが)。
では、「たまたま集まっているだけだから大丈夫!」なのか… いえいえ、そんなことはありません。
福島第1の原子炉のいずれもは、まだまだ数百度という赤熱する塊を抱え込んでおり、それを冷やしきるためには、とてつもない時間と労力がいるということです。そして、その塊からは、熱エネルギーと放射線が放出され、水中に放射性物質が溶け出し続けています。
半径=5.57メートル、高さ=2メートルの中に、たった6本の温度計を挿して、「30℃だから大丈夫!」と言っていることの方に大きな問題がるのです。
にわか造りの冷却システムが、余震やあらたな地震、凍結などによって破壊された時、また大きな悲劇の幕が開きます。国は住民の帰還を検討しはじめていますが、とんでもない話でしょう。
まず、東電と国は、一部とはいえ、水温が80℃を越えたその原因を明確にすべきです。
それに加えて、毎時10トン以上の氷温水が、なぜ、アッと言う間に30℃以上になってしまうのか… その理由をすべての人に分かりやすく説明する必要があります。
そして、対策があるなら、どんなに費用がかかろうと、それを実行すべきでしょう。そうしなれければ、ちょっとした偶然や間違いで、福島が、いや東日本が、本当の意味で失われてしまう可能性があります。
いったい何が起きているのか… 不安に苛まれます。
しかし、一歩引いて冷静に見つめ直してみると、この問題、下手をすると東電に騙されてしまいかねません。炉内温度の上昇を、ちょっと違う視点から見つめ直してみましょう。
2号機圧力容器の内径は5.57メートルもあり、東電の発表を信じるなら、現在の水位は2メートル前後です。
まず、この半径=5.57メートル、高さ=2メートルという流水で満たされた円筒形の空間。温度計は、たったの6個しかありません。そしてそこには、毎時10トン以上という、もの凄い量の水が注がれ続けています。
にわか造りの給水システムが凍結し、給水が止まって問題になっているくらいですから、水の温度は、凍てつく摂氏零度にきわめて近い温度のはずです。
ここで、ひとつ思いだして欲しいのは、東電が正常だと言っている他の5個の温度計です。みな30℃以上を示しています。注ぎ込まれた大量の氷温水のすべてが、アッと言う間に、ぬるま湯になってしまう… 通常の感覚では、信じられないことです。
不謹慎と言われるかも知れませんが、分かりやすい喩えをしましょう。
想定するのは20席ほどの焼肉屋の客席。テーブルが5卓。どの卓上にも炭火の七輪が乗っています。満席になって、5台の七輪が燃えさかれば、外は氷点下でも暖房なんて要りません。一方、壁のあっちこっちに吊り下げられた温度計を見てみましょう。まぁ、25℃~28℃くらいでしょう。焼肉を突っつく私たちは、少しばかり火に近いですから、体感温度は30℃くらいでしょうか。
しかし、実は、目の前で赤熱する木炭は、800℃~1000℃という温度です。
ここまで書けばお分かり方も多いと思いますが、毎時10トンの氷温水がアッと言う間に、30℃以上になるには、壊れた原子炉内に、もの凄く高い温度のものがあることを示しています。核燃料の崩壊熱のことを考えれば、当たり前のことなのですが…
2号機で、今現在、高温を示している温度計が壊れているのかどうかは分かりませんが、1号機から3号機のいずれの炉心でも、いまだに数百度の温度を保っている部分が、間違いなくあります。でなければ、大量の氷温水が、一瞬のうちに、ぬるま湯になってしまうなんてことはありませんから。
30数℃を示している温度計は、たまたま赤熱部分から遠いだけです。
もう一点、明確にしておきたいのは、崩壊熱と臨界によって発する熱の違いです。原発反対派の中にも誤解があって、温度上昇=再臨界と騒ぎ立てる人たちもいますが、次のことを明確に理解しておく必要があります。
●臨界にならなくても、使用済み核燃料(使用中核燃料)は、崩壊熱によって温度が上がり、水で冷却しなければ、ほどなく再溶融する。
●臨界状態になるための条件は、ウラン235またはプルトニウム239の濃度、塊の大きさ、形状によって決まり、温度は直接的には無関係。
●「崩壊熱で温度上昇」→「再溶融」→「形状が変わり再臨界」というストーリーはあり得る。
●「再臨界」→「温度上昇」→「再溶融」というストーリーもあり得る。
東電は、「半減期の短い気体放射性物質が検出されていない」→「再臨界は起きていない」→「温度計が故障している」という理屈で押し切ろうとしています。しかし、彼らは、今の原子炉内の温度と再臨界が無関係である事を知っているのです。
マスメディアも含めて、「再臨界してないから大丈夫」という論理に騙されかけているので、これは要注意。現状を見る限り、事の本質は、崩壊熱にあり、6本の温度計のウチの1本の近くに、溶融して固まった核燃料が集まっている可能性が高いです(再臨界の可能性を100%否定はできませんが)。
では、「たまたま集まっているだけだから大丈夫!」なのか… いえいえ、そんなことはありません。
福島第1の原子炉のいずれもは、まだまだ数百度という赤熱する塊を抱え込んでおり、それを冷やしきるためには、とてつもない時間と労力がいるということです。そして、その塊からは、熱エネルギーと放射線が放出され、水中に放射性物質が溶け出し続けています。
半径=5.57メートル、高さ=2メートルの中に、たった6本の温度計を挿して、「30℃だから大丈夫!」と言っていることの方に大きな問題がるのです。
にわか造りの冷却システムが、余震やあらたな地震、凍結などによって破壊された時、また大きな悲劇の幕が開きます。国は住民の帰還を検討しはじめていますが、とんでもない話でしょう。
まず、東電と国は、一部とはいえ、水温が80℃を越えたその原因を明確にすべきです。
それに加えて、毎時10トン以上の氷温水が、なぜ、アッと言う間に30℃以上になってしまうのか… その理由をすべての人に分かりやすく説明する必要があります。
そして、対策があるなら、どんなに費用がかかろうと、それを実行すべきでしょう。そうしなれければ、ちょっとした偶然や間違いで、福島が、いや東日本が、本当の意味で失われてしまう可能性があります。
アーニー・ガンダーセン博士のメッセージ ― 2012/01/22 17:05
簡単に内容をまとめると、
●福島第1の現場で何が起きているのか?
今後、十分に起こりうる大きな余震(または、あらたな地震)によって、緊急措置で張り巡らされている配管類と4号炉の使用済み核燃料プールが破壊されることを危惧しています。
●日本に暮らす人々の被ばく問題
日本政府が定めている20ミリシーベルト/年という基準に対して、警鐘を鳴らしています。「東京電力の経営の危機よりも、住民の健康の危機を選んだ」と厳しい一言があります。
●福島第1由来の放射性廃棄物をどうするのか?
日本政府が推し進める、放射性焼却灰の東京湾への埋め立てを非難すると同時に、それをバックアップするIAEAを鋭く批判しています。
20分ほどのビデオメッセージです。まずは、ご覧ください。
下水処理施設で放射性セシウムが出続けている ― 2012/01/21 17:43
前の記事で、ヨウ素131の検出状況を確認するために、東京都下水道局のデータを確認しました。
「2012/1/2~5」のデータを見て、ちょっと愕然としました。
セシウム134とセシウム137の値が、ありかわらず高いのです(汚泥焼却灰のデータ)。過去データをざっと見ましたが、昨年5月に発表が始まって以来、汚泥焼却灰の放射性セシウムは、変動はありますが、基本的に高いレベルが続いています。
放射性セシウムは、土との親和性が高いので、一旦地面に落ちると、そう簡単に土からは離れないと言われていますが、それでもこの値。アスファルトやコンクリートが多い、東京ならではの現象なのでしょうか…
環境中にある放射性物質が、少しでも下水処理施設に集まって、安全な場所に保管されるなら、それはそれで悪いことはありません。
しかし、下水処理場で汚泥としてつかまえられている放射性物質は、全体の何パーセント?残る大半は、河川へと流れ込み、やがて海へ。そして、一部は蒸発して雨としてふたたび降り注ぎ、一部は魚介類に取り込まれて食卓へと上ります。
川底に残った分は、浚渫されて埋め立てに使われ、ほとんどが行方知れずになるでしょう。また、予想もしなかったところから、放射性物質が出てきます。
こんな恐怖を抱えながら暮らすのは、絶対に、今回限りにしなければいけません。そして、この恐怖を横目に見ながら、原子力発電所の稼働を認め続けるとしたら、それは「愚」としか言いようのないものです。これは、日本政府に対する言葉であるとともに、私たち自身に向けた言葉でもあります。
「2012/1/2~5」のデータを見て、ちょっと愕然としました。
セシウム134とセシウム137の値が、ありかわらず高いのです(汚泥焼却灰のデータ)。過去データをざっと見ましたが、昨年5月に発表が始まって以来、汚泥焼却灰の放射性セシウムは、変動はありますが、基本的に高いレベルが続いています。
放射性セシウムは、土との親和性が高いので、一旦地面に落ちると、そう簡単に土からは離れないと言われていますが、それでもこの値。アスファルトやコンクリートが多い、東京ならではの現象なのでしょうか…
環境中にある放射性物質が、少しでも下水処理施設に集まって、安全な場所に保管されるなら、それはそれで悪いことはありません。
しかし、下水処理場で汚泥としてつかまえられている放射性物質は、全体の何パーセント?残る大半は、河川へと流れ込み、やがて海へ。そして、一部は蒸発して雨としてふたたび降り注ぎ、一部は魚介類に取り込まれて食卓へと上ります。
川底に残った分は、浚渫されて埋め立てに使われ、ほとんどが行方知れずになるでしょう。また、予想もしなかったところから、放射性物質が出てきます。
こんな恐怖を抱えながら暮らすのは、絶対に、今回限りにしなければいけません。そして、この恐怖を横目に見ながら、原子力発電所の稼働を認め続けるとしたら、それは「愚」としか言いようのないものです。これは、日本政府に対する言葉であるとともに、私たち自身に向けた言葉でもあります。
ヨウ素131検出について ― 2012/01/21 17:30
昨日から東京では雪がちらついてます。この雪から、ヨウ素131が検出されたとして、一部で、ちょっと騒ぎになっています。
ご存じ通り、ヨウ素131の半減期は8日ですから、福島第1で再臨界が起きていない限り、事故発生から300日以上経った時点で検出されるのは変だからです。
もちろん、放射性物質の漏出は依然として続いていますが、あらたなヨウ素131の生成は起きていないはずですから。溶融した炉心ですら、ほとんどヨウ素131はなくなっているでしょう。「再臨界は起きていない」という、東電と国の発表が真実だという前提ですが。
さて、雪からのヨウ素131ですが、発信元は、このブログです。発信者も「皆様はどのように思われますか??」としていますので、若干の疑問は抱かれているようです。
この問題を考えるに当たって、そもそも、どうやって核種を特定しているのかから考えていきましょう。
簡単に言えば、放出されるガンマ線が持つエネルギーの大きさを計測します。核種によって、出てくるガンマ線の波長が違うということは、ご存じの方が多いと思います。ガンマ線のような電磁波では、波長とエネルギーは反比例しますので、ガンマ線のエネルギーも核種によって異なるのです。
以下に、主な核種が出すガンマ線のエネルギーと波長を示します。参考にしたのは、日本原子力研究開発機構が公表しているデータです。
ご存じ通り、ヨウ素131の半減期は8日ですから、福島第1で再臨界が起きていない限り、事故発生から300日以上経った時点で検出されるのは変だからです。
もちろん、放射性物質の漏出は依然として続いていますが、あらたなヨウ素131の生成は起きていないはずですから。溶融した炉心ですら、ほとんどヨウ素131はなくなっているでしょう。「再臨界は起きていない」という、東電と国の発表が真実だという前提ですが。
さて、雪からのヨウ素131ですが、発信元は、このブログです。発信者も「皆様はどのように思われますか??」としていますので、若干の疑問は抱かれているようです。
この問題を考えるに当たって、そもそも、どうやって核種を特定しているのかから考えていきましょう。
簡単に言えば、放出されるガンマ線が持つエネルギーの大きさを計測します。核種によって、出てくるガンマ線の波長が違うということは、ご存じの方が多いと思います。ガンマ線のような電磁波では、波長とエネルギーは反比例しますので、ガンマ線のエネルギーも核種によって異なるのです。
以下に、主な核種が出すガンマ線のエネルギーと波長を示します。参考にしたのは、日本原子力研究開発機構が公表しているデータです。
まず、黄色でマークしたところに注目して欲しいのですが、ヨウ素131と鉛214が、似た波長のガンマ線を出すことが分かります。
ヨウ素131が3.40ピコメートルで、鉛214が3.52ピコメートルです。これを見分けるのは、厳密な測定が可能なゲルマニウム半導体検出器でなければ難しいとされています。
断定はできませんが、今回の雪からのヨウ素131は、鉛214を誤認識した可能性があります(紫でマークしあるセシウム134の2.05ピコメールとビスマス214の20.4ピコメールも、誤認されやすい例です)。
じゃ、鉛214はあってよいのか?ということになるのですが、これは岩盤や土の中に自然に存在するウラン238を出発点とするウラン系列の放射性物質です。
ウラン238は15種類以上の放射性物質を経由して、最後は鉛206で安定します。この崩壊系列をウラン系列(別名ラジウム系列)と呼びます。
ウラン系列の中で、特に注目しなくてはいけないのがラドン222(半減期3.8日)。系列中で、唯一、常温で気体として存在します。それまで岩盤の中にあったものが、ラドン222になって、はじめて大気中に出てくるわけです。
ラドン222の次がポロニウム218(半減期3.1分)、その次が鉛214(半減期26.8分)になります。ポロニウム218も鉛214も、固体で存在します(大気中では、チリなどに付いている状態だと思われます)。
ウラン鉱山の近くなどでは、ラドン222を中心とするウラン系列の放射性物質による被ばくが、大きな被ばく被害をもたらしている例(鳥取岡山県境の人形峠やアメリカのアリゾナ州)がありますが、一般には、自然放射線として受け入れざるを得ないものです。
さて、ヨウ素131と鉛214は、ゲルマニウム半導体検出器でないと見分けられないのでしょうか?
実は、そうでもありません。ポロニウム218も鉛214も、半減期がとても短い放射性元素です。ということは、試料の中に、あらたにラドン222が入らないようにすれば、鉛214ならば、30分以上待てば、量がかなり減ります。ただ、気体であるラドン222の侵入を止めるのですから、完全に大気から遮断された環境で、測定をする必要がありますが。
逆に、ヨウ素131ならば、大気から遮断しても、数時間では減ってきません。
さて、今回のヨウ素131問題で思い出したことがあります。2011年の夏から秋にかけて、各地の下水処理施設で、ヨウ素131が検出されて、ニュースになったことがありました。結局、原因は特定されてないままです。今はどうなっているのか、見てみました。
●東京都下水道局『下水処理における放射能等測定結果』
【2011/12/1~6】
【2011/12/15~20】
【2012/1/2~5】
年が明けてからは、「脱水汚泥」のデータが発表されていないせいか、ヨウ素131の検出はありませんが、12月までは、それなりの数値が出ていました。「半減期8日」「再臨界無し」から考えると、どうしても納得がいかないデータです。
行政の発表ですから、ちゃっとゲルマニウム半導体検出器(または同等の機器)で計測しているはずです。原因を究明するとともに、今後も監視を続ける必要があります。
また、「脱水汚泥」の発表を止めた理由が分かりません。「もう安全!」と言えるほど、数値が下がったわけではありません。直ちに、「脱水汚泥」のデータの公開を再開すべきです。
リフレッシュ・ローテーションの効果 ― 2012/01/19 16:57
今回は、当サイトの読者の一人、「世田谷の鈴木さん」から寄せられた試算とコメントを紹介してます。
内容は、『「リフレッシュ・ローテーション分校」による、Cs体内残存量の低減効果』というものです。
リフレッシュ・ローテーション分校というのは、食事や呼吸による放射性物質の取り込みがあり、内部被ばくの危険が大きい地域の子供たちを、一時的にクリーンな環境に疎開あるいは避難させる取り組みです。
当ブログでも、何度か指摘している通り、内部被ばくに関しては、一度にある程度を量を体内に取り込んでしまう一回摂取と、少ない量であっても毎日体内に取り込む継続摂取では、後者の方が危険です。これは、「世田谷の鈴木さん」の試算にも、はっきりと現れています。
では、以下に、鈴木さんの試算とコメントを紹介します。黒字部分が私設原子力情報室による記載で、青字・赤字部分が鈴木さんのコメントとなります。
●「リフレッシュ・ローテーション分校」による、Cs体内残存量の低減効果
食物を通してのセシウム体内残存量の増大が懸念されています。故郷での生活と両立しつつ、子どもたちの体内残存量を下げる一つの方法として、他府県での生活を組み合わせる「リフレッシュ・ローテーション分校」が提案されています。その効果を計算してみました。
1. 食物からの定常的な摂取による体内残存量の推移
図1にICRP Publication111(日本語版ダウンロード)にある放射性セシウム(Cs)137の全身放射能の推移グラフを示す。
(1)例えば、一度に1000Bqを摂取した場合は、生物学的半減期100日後に、体内残存量は500 Bqとなる。
(2)一方、毎日一定量を摂取した場合、体内からの排出には生物学的半減期を要するため、その出入り差により、体内残存量は或る平衡値に達する。成人は排出が遅いので、600日後には日摂取量の約140倍となる(図1参照)。
内容は、『「リフレッシュ・ローテーション分校」による、Cs体内残存量の低減効果』というものです。
リフレッシュ・ローテーション分校というのは、食事や呼吸による放射性物質の取り込みがあり、内部被ばくの危険が大きい地域の子供たちを、一時的にクリーンな環境に疎開あるいは避難させる取り組みです。
当ブログでも、何度か指摘している通り、内部被ばくに関しては、一度にある程度を量を体内に取り込んでしまう一回摂取と、少ない量であっても毎日体内に取り込む継続摂取では、後者の方が危険です。これは、「世田谷の鈴木さん」の試算にも、はっきりと現れています。
では、以下に、鈴木さんの試算とコメントを紹介します。黒字部分が私設原子力情報室による記載で、青字・赤字部分が鈴木さんのコメントとなります。
●「リフレッシュ・ローテーション分校」による、Cs体内残存量の低減効果
食物を通してのセシウム体内残存量の増大が懸念されています。故郷での生活と両立しつつ、子どもたちの体内残存量を下げる一つの方法として、他府県での生活を組み合わせる「リフレッシュ・ローテーション分校」が提案されています。その効果を計算してみました。
1. 食物からの定常的な摂取による体内残存量の推移
図1にICRP Publication111(日本語版ダウンロード)にある放射性セシウム(Cs)137の全身放射能の推移グラフを示す。
(1)例えば、一度に1000Bqを摂取した場合は、生物学的半減期100日後に、体内残存量は500 Bqとなる。
(2)一方、毎日一定量を摂取した場合、体内からの排出には生物学的半減期を要するため、その出入り差により、体内残存量は或る平衡値に達する。成人は排出が遅いので、600日後には日摂取量の約140倍となる(図1参照)。
2. 子どもは生物学的半減期が短いので、全身放射能が早く変化する
ICRPの図は、体内残存量が多くなる中高年の生物学的半減期100日を用いているが、図2に、代謝の早い子どもの生物学的半減期(消費者庁「食品と放射能Q&A」)の場合のグラフを示す。
グラフから、長期間後の体内残存量の平衡値は、代謝の早い9歳児は日摂取量の55倍、1歳児は13倍となることが分かる。元となる日摂取量が異なる場合も、この倍率で考えればよい。
計算方法:9歳児の1日当りの減衰率k=(1/2)の1/38乗=0.982。
任意日の値=前日値*k+日摂取量。これをExcel上で繰り返す。
検証 http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/hokenjo/kouenkai/inoue-shiryou.pdf
試算によると、9歳児では、1日10ベクレルの放射性セシウムを摂取し続けると、550ベクレルで平衡に達し、そのままの状態が続くことになります。
気になるのは、この550ベクレルが高い数値なのかどうか、という点です。
よく、放射性セシウムと比較されるカリウム40(自然界に存在する)の体内存在量を見ると、体重60kgの大人で4000ベクレルとされています。9歳児の平均体重は、約30kgなので、体内にあるカリウム40は2000ベクレル。それに、550ベクレルが上乗せされるのです。安全とは誰も言い切れないでしょう。
人間の体内にあるカリウム40の濃度は、人類が地球に登場して以来、300万年間、ほとんど変化しなかったはずです。それが突然、1.275倍になるのですから。
折しも、朝日新聞から、「家庭で1日の食事に含まれる放射性セシウムの量」の調査結果が発表されました。全国53家族というサンプル数は、十分に多いとは言えませんが、参考にはなります。
福島では、17ベクレルを越える例が一つ。5ベクレル以上で見ると、26人のうち8人が該当しています。鈴木さんが試算に用いた1日10ベクレルという数字が、決して高いものではないことが分かります(この調査が、飲料水も含めているのかが不明なのですが、もし、入っていないとしたら、1日の摂取量は、もっと増えるでしょう。また、呼吸による摂取は、まったく算入していません)。
記事中で、京都大医学研究科の小泉昭夫教授は「福島のセシウム量でも十分低く、健康影響を心配するほどのレベルではなかった」と語っていますが、この人は、継続摂取(低線量内部被ばく)の怖さをまったく理解していないのか、知っているのに、誤魔化しているだけです。
【参考:ちょっと難しいので、以下の黒字部分は読み飛ばして貰ってもOKです】
なお、鈴木さんの試算の中で、生物学的半減期(または体内有効半減期)の数値が、ICRPのものと、日本の消費者庁のものが出てきますので、整理しておきます。
任意日の値=前日値*k+日摂取量。これをExcel上で繰り返す。
検証 http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/hokenjo/kouenkai/inoue-shiryou.pdf
試算によると、9歳児では、1日10ベクレルの放射性セシウムを摂取し続けると、550ベクレルで平衡に達し、そのままの状態が続くことになります。
気になるのは、この550ベクレルが高い数値なのかどうか、という点です。
よく、放射性セシウムと比較されるカリウム40(自然界に存在する)の体内存在量を見ると、体重60kgの大人で4000ベクレルとされています。9歳児の平均体重は、約30kgなので、体内にあるカリウム40は2000ベクレル。それに、550ベクレルが上乗せされるのです。安全とは誰も言い切れないでしょう。
人間の体内にあるカリウム40の濃度は、人類が地球に登場して以来、300万年間、ほとんど変化しなかったはずです。それが突然、1.275倍になるのですから。
折しも、朝日新聞から、「家庭で1日の食事に含まれる放射性セシウムの量」の調査結果が発表されました。全国53家族というサンプル数は、十分に多いとは言えませんが、参考にはなります。
福島では、17ベクレルを越える例が一つ。5ベクレル以上で見ると、26人のうち8人が該当しています。鈴木さんが試算に用いた1日10ベクレルという数字が、決して高いものではないことが分かります(この調査が、飲料水も含めているのかが不明なのですが、もし、入っていないとしたら、1日の摂取量は、もっと増えるでしょう。また、呼吸による摂取は、まったく算入していません)。
記事中で、京都大医学研究科の小泉昭夫教授は「福島のセシウム量でも十分低く、健康影響を心配するほどのレベルではなかった」と語っていますが、この人は、継続摂取(低線量内部被ばく)の怖さをまったく理解していないのか、知っているのに、誤魔化しているだけです。
【参考:ちょっと難しいので、以下の黒字部分は読み飛ばして貰ってもOKです】
なお、鈴木さんの試算の中で、生物学的半減期(または体内有効半減期)の数値が、ICRPのものと、日本の消費者庁のものが出てきますので、整理しておきます。
理解しておきたいのは、生物学的半減期には物理的半減期(一般に言われる「半減期」)が算入されていないという点です。生物学的半減期は、たとえば、セシウムであれば、放射性であろうとなかろうと、セシウム134であろうと137であろうと同じです。
要するに、人間が、セシウムという物質をどれだけの時間、身体の中にとどめるかによって決まってきます。
ですから、「放射性元素が体内で半分になるまでの時間=体内実効半減期」を知るためには、生物学的半減期と物理的半減期の両方を考慮しなければなりません。
ただ、生物学的半減期が物理的半減期に対して、十分に短い場合は、体内実効半減期は、ほぼ生物学的半減期と一致します。表で、セシウム137の生物学的半減期と体内実効半減期が一致しているのは、そういう理由によります。
セシウム134の場合も、半減期が2年ありますので、生物学的半減期≒体内実効半減期と考えて大丈夫です。
3. リフレッシュ・ローテーションによる低減効果のグラフ
図3に、毎日のCs摂取量が「10Bq」と「1Bq」の生活を周期的に行った場合の体内残存量の推移を示す。
周期は1ヶ月でも2ヶ月でも低減効果に大差はないが、リフレッシュ滞在日の割合を大きくする方が望ましい。
要するに、人間が、セシウムという物質をどれだけの時間、身体の中にとどめるかによって決まってきます。
ですから、「放射性元素が体内で半分になるまでの時間=体内実効半減期」を知るためには、生物学的半減期と物理的半減期の両方を考慮しなければなりません。
ただ、生物学的半減期が物理的半減期に対して、十分に短い場合は、体内実効半減期は、ほぼ生物学的半減期と一致します。表で、セシウム137の生物学的半減期と体内実効半減期が一致しているのは、そういう理由によります。
セシウム134の場合も、半減期が2年ありますので、生物学的半減期≒体内実効半減期と考えて大丈夫です。
3. リフレッシュ・ローテーションによる低減効果のグラフ
図3に、毎日のCs摂取量が「10Bq」と「1Bq」の生活を周期的に行った場合の体内残存量の推移を示す。
周期は1ヶ月でも2ヶ月でも低減効果に大差はないが、リフレッシュ滞在日の割合を大きくする方が望ましい。
この試算は、放射性セシウムの摂取量が1日10ベクレルの環境と1日1ベクレルの環境との間を月単位で行ったり来たりする想定です。
リフレッシュ・ローテーションの効果は明白で、体内残留量が大きく減ることが分かります。また、一つ画期的なことは、「周期は1ヶ月でも2ヶ月でも低減効果に大差がない」という点で、「どうせ一か月しか行けないのだから、効果はたかが知れている」とあきらめてはいけないということです。
鈴木さんの試算は、放射性物質を継続摂取することの怖さと、リフレッシュ・ローテーションが果たす一定の効果を裏付けていると思います。
安全な食品が入手しにくい地域や、呼吸による放射性物質の摂取が考えられる地域では、子供たちの「リフレッシュ・ローテーション分校」や「クリーンな環境への疎開」を行政に強く求めていく必要があります。
鈴木さんから、今回の試算に使用したExcelファイルが提供されていますので。以下にアップロードしておきます。必要な方は、クリックしてダウンロードしてください(Zipに圧縮してあります)
ダウンロード・ファイル(鈴木さんの試算)
なお、鈴木さんと意見交換したい方は、この記事のコメント欄を自由にご利用ください。
福島で放射性降下物(Fallout)が急上昇 ― 2012/01/05 17:59
福島県が調査・公表している『定時降下物環境放射能測定値』に、1月2日から3日にかけて、非常に高い数値が記録されています。セシウム137が252MBq/km2(メガベクレル/平方キロメートル)、セシウム134が180MBq/km2。
文科省が発表している『定時降下物のモニタリング』に、各自治体が過去に計測した値が残っています。福島市の11月から12月を見ると、セシウム137・セシウム134ともに、不検出~20MBq/km2の間で推移しています。今回の値は、桁が一つ違います。
また、福島県双葉郡で昨年6月・7月に計測されたデータと比べてみると、今回の1月2日から3日のデータが、この頃の平均値に匹敵する数値である事が分かります。
文科省が発表している『定時降下物のモニタリング』に、各自治体が過去に計測した値が残っています。福島市の11月から12月を見ると、セシウム137・セシウム134ともに、不検出~20MBq/km2の間で推移しています。今回の値は、桁が一つ違います。
また、福島県双葉郡で昨年6月・7月に計測されたデータと比べてみると、今回の1月2日から3日のデータが、この頃の平均値に匹敵する数値である事が分かります。
【元データ】
●福島県双葉郡で計測された3月から6月の放射性降下物のデータ(1ヶ月分合計)
●福島県双葉郡で計測された7月の放射性降下物のデータ(1ヶ月分合計)
もし、福島第1からの放射性物質の漏出量が増えたことが原因なら、あっちこっちで空間線量が上がるはずなので、おそらく、水素爆発やベントで飛び散って、いまだに上空に漂っている放射性セシウムが、なんらかの原因で、一気に降下してきたものと思われます。ちなみに、1月2日から3日にかけて、福島では降雪はなく、晴れの天気でした。
まず、この放射性降下物の急増の原因を徹底的に究明する必要があります。研究者からの意見を聞きたいところです。
また、「大気中の放射性セシウムは、すでに、ほとんどが地面に落ちているので、マスクなどは必要ない」と言われていることにも、疑問を投げかける必要が出てきます。呼吸による放射性セシウムの摂取に対して、警戒を解くことができないということです。
一方で、文科省は、12月27日まで、毎日、行っていた放射性降下物データの公表を1ヶ月おきに切り替えたようです(福島県は県として連日発表を継続)。まだまだ、放射性降下物の監視を弱めていい状態ではありません。文科省は、ただちに連日公表に戻すべきだと思います。
しかし、突然の放射性降下物(Fallout)の急上昇。原発事故が引き越すものは、誰も予測できないし、誰も制御できないということの証です。
●福島県双葉郡で計測された3月から6月の放射性降下物のデータ(1ヶ月分合計)
●福島県双葉郡で計測された7月の放射性降下物のデータ(1ヶ月分合計)
もし、福島第1からの放射性物質の漏出量が増えたことが原因なら、あっちこっちで空間線量が上がるはずなので、おそらく、水素爆発やベントで飛び散って、いまだに上空に漂っている放射性セシウムが、なんらかの原因で、一気に降下してきたものと思われます。ちなみに、1月2日から3日にかけて、福島では降雪はなく、晴れの天気でした。
まず、この放射性降下物の急増の原因を徹底的に究明する必要があります。研究者からの意見を聞きたいところです。
また、「大気中の放射性セシウムは、すでに、ほとんどが地面に落ちているので、マスクなどは必要ない」と言われていることにも、疑問を投げかける必要が出てきます。呼吸による放射性セシウムの摂取に対して、警戒を解くことができないということです。
一方で、文科省は、12月27日まで、毎日、行っていた放射性降下物データの公表を1ヶ月おきに切り替えたようです(福島県は県として連日発表を継続)。まだまだ、放射性降下物の監視を弱めていい状態ではありません。文科省は、ただちに連日公表に戻すべきだと思います。
しかし、突然の放射性降下物(Fallout)の急上昇。原発事故が引き越すものは、誰も予測できないし、誰も制御できないということの証です。
元旦のスクープ ― 2012/01/03 23:20
2012年元旦。朝毎両紙の原発問題を巡るスクープが印象的でした。
まず、朝日新聞。
『原子力業界が安全委24人に寄付 計8500万円』朝日新聞
原子力安全委員会の委員(班目委員長を含む)24人が、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていたというものです。
日本の原子力基本法に定められている大原則は、『民主・自主・公開』。この話は、当ブログ『民主・自主・公開という大原則』に書いた通りです。「民主的に運営されるはずだった原子力委員会や原子力安全委員会には、原発に懐疑的だったり、反対の立場を取る科学者は、一人も入っていません」と指摘しました。
ところが、事実はそれどころではなかったのです。原子力安全委員会メンバーは、おそらく研究費の寄付という名目で、原発関連企業から賄賂とも呼んでよい金を受け取っていたのです。早晩、金を受け取っていたメンバーの名前と金額の明細などが出てくると思いますが、この問題を『民主・自主・公開』の立場から厳しく断罪するとともに、法律に照らして犯罪性がないのかも検証する必要があるでしょう。
原子力を推進する側に、「民意をくむ」などという発想はありません。企業の利権と、金の力でそこに絡め取られていく最悪の学者たち。醜いばかりの姿が明らかになっています。
毎日新聞にいきましょう。
『使用済み核燃料:直接処分コスト隠蔽 エネ庁課長04年指示 現経産審議官、再処理策を維持』
これは、六ヶ所村で進められようとしている使用済み核燃料の再処理に関わるコストの話。実は、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す再処理をあきらめ、使用済み核燃料をそのまま処分する直接処分にすれば、コスト的には1/4から1/3で済むことが、2004年の段階で明らかになっていたというのです。その情報を握りつぶしたのは、当時の経済産業省・安井正也原子力政策課長で、この人物、現在は経産審議官だというのですから、開いた口が塞がりません。
こういった官僚たちの頭の中にも、「民意」なんて微塵もありません。保身と出世。当然と言えば、当然なのです。みずからが推進している核燃料サイクルプランを否定するようなデータが、身内から出てしまったらたいへんなのです。出世がなくなりますから。ですから、推進側と監視側が同じ組織内にあっては、絶対に駄目なのです。そして、『民主・自主・公開』の三原則を守るためにも、すべての人に対して、原子力関連の情報が、完全な透明性をもって公開されるべきなのです。
『解説:使用済み核燃料・直接処分コスト試算隠蔽 原子力ムラの異常論理』毎日新聞
毎日新聞は、スクープの後追い解説で、情報隠蔽の背景を「原子力ムラの異常論理」に結論づけていますが、これは日本の官僚社会一般にある傾向で、原子力では、特に顕著に出ているということです。
経産省内の隠語では、電力業界に絡め取られた官僚を「感電した」、ガス業界に絡め取られた官僚を「ガス中毒になった」と言うそうです。かつてのような、現金による露骨な買収は影を潜めているようですが、酒やゴルフの接待、そして、巧妙なのは、子どもの就職に絡む便宜提供など。嫌になりますが、そんな世界が本当にあるのです。
天秤の片方に乗っているのは、私たちの健康と安全。もう一方に乗っているのは、官僚たちの出世と保身。しかし、天秤を操作するのは官僚たちです。いざとなったら、私たちの健康も安全も、どんどん軽く扱われます。
半原発運動は、その構造にもくさびを打ち込んでいかないと、いけないのかも知れません。より所は、『民主・自主・公開』でしょう。
まず、朝日新聞。
『原子力業界が安全委24人に寄付 計8500万円』朝日新聞
原子力安全委員会の委員(班目委員長を含む)24人が、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていたというものです。
日本の原子力基本法に定められている大原則は、『民主・自主・公開』。この話は、当ブログ『民主・自主・公開という大原則』に書いた通りです。「民主的に運営されるはずだった原子力委員会や原子力安全委員会には、原発に懐疑的だったり、反対の立場を取る科学者は、一人も入っていません」と指摘しました。
ところが、事実はそれどころではなかったのです。原子力安全委員会メンバーは、おそらく研究費の寄付という名目で、原発関連企業から賄賂とも呼んでよい金を受け取っていたのです。早晩、金を受け取っていたメンバーの名前と金額の明細などが出てくると思いますが、この問題を『民主・自主・公開』の立場から厳しく断罪するとともに、法律に照らして犯罪性がないのかも検証する必要があるでしょう。
原子力を推進する側に、「民意をくむ」などという発想はありません。企業の利権と、金の力でそこに絡め取られていく最悪の学者たち。醜いばかりの姿が明らかになっています。
毎日新聞にいきましょう。
『使用済み核燃料:直接処分コスト隠蔽 エネ庁課長04年指示 現経産審議官、再処理策を維持』
これは、六ヶ所村で進められようとしている使用済み核燃料の再処理に関わるコストの話。実は、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す再処理をあきらめ、使用済み核燃料をそのまま処分する直接処分にすれば、コスト的には1/4から1/3で済むことが、2004年の段階で明らかになっていたというのです。その情報を握りつぶしたのは、当時の経済産業省・安井正也原子力政策課長で、この人物、現在は経産審議官だというのですから、開いた口が塞がりません。
こういった官僚たちの頭の中にも、「民意」なんて微塵もありません。保身と出世。当然と言えば、当然なのです。みずからが推進している核燃料サイクルプランを否定するようなデータが、身内から出てしまったらたいへんなのです。出世がなくなりますから。ですから、推進側と監視側が同じ組織内にあっては、絶対に駄目なのです。そして、『民主・自主・公開』の三原則を守るためにも、すべての人に対して、原子力関連の情報が、完全な透明性をもって公開されるべきなのです。
『解説:使用済み核燃料・直接処分コスト試算隠蔽 原子力ムラの異常論理』毎日新聞
毎日新聞は、スクープの後追い解説で、情報隠蔽の背景を「原子力ムラの異常論理」に結論づけていますが、これは日本の官僚社会一般にある傾向で、原子力では、特に顕著に出ているということです。
経産省内の隠語では、電力業界に絡め取られた官僚を「感電した」、ガス業界に絡め取られた官僚を「ガス中毒になった」と言うそうです。かつてのような、現金による露骨な買収は影を潜めているようですが、酒やゴルフの接待、そして、巧妙なのは、子どもの就職に絡む便宜提供など。嫌になりますが、そんな世界が本当にあるのです。
天秤の片方に乗っているのは、私たちの健康と安全。もう一方に乗っているのは、官僚たちの出世と保身。しかし、天秤を操作するのは官僚たちです。いざとなったら、私たちの健康も安全も、どんどん軽く扱われます。
半原発運動は、その構造にもくさびを打ち込んでいかないと、いけないのかも知れません。より所は、『民主・自主・公開』でしょう。
子どもたちの内部被ばくを考える ― 2012/01/03 22:18
埼玉県三郷市の『放射能から子ども達を守ろう-みさと』が、子供たちの尿から検出されたセシウム137とセシウム134の値を公開しています。検査を受けた18名中5名から放射性セシウム検出です。
『放射能から子ども達を守ろう-みさと』の尿検査結果
首都圏にも、確実に内部被ばくの恐怖が迫っている証です。ただ、無闇に恐怖感を煽るだけでは、本当の怖さを理解することはできないし、内部被ばくから身を守る方法も見つからないでしょう。
今回は、三郷市の5例の数値を解釈するところから、内部被ばくの問題を考えます。
まず、公開されたのは尿中濃度です。他のデータと比較するためには、これを体内残留濃度(体内濃度)に換算する必要があります。
計算式は、以下の通りです。上は体内総残留量で、下が今回用いる体内残留濃度になります。
『放射能から子ども達を守ろう-みさと』の尿検査結果
首都圏にも、確実に内部被ばくの恐怖が迫っている証です。ただ、無闇に恐怖感を煽るだけでは、本当の怖さを理解することはできないし、内部被ばくから身を守る方法も見つからないでしょう。
今回は、三郷市の5例の数値を解釈するところから、内部被ばくの問題を考えます。
まず、公開されたのは尿中濃度です。他のデータと比較するためには、これを体内残留濃度(体内濃度)に換算する必要があります。
計算式は、以下の通りです。上は体内総残留量で、下が今回用いる体内残留濃度になります。
体内総残留量を知るためには体重の情報が必要ですが、体内残留濃度は体重が分からなくても計算できます。
ただ、核種ごとの「体内有効半減期」が必要になります。これは、核種によって、どのくらいの時間で体内から半分量が出ていくかを示す値で、主な核種では以下のようになっています。
大人では、セシウム137の体内有効半減期は100日とされています(ICRP)。セシウム134については、体内有効半減期が明らかになっていませんが、化学的な性質が同じなので、人体内での振る舞いもセシウム137と同様と考えられますので、同じ値で計算していきます(体内実効半減期が比較的短いので物理的半減期の違いは、ほとんど影響しないでしょう)。
子どもは代謝が速いため、体内有効半減期が短いとされていますが、セシウム137について、「何歳で○日」というデータがあるわけでなく、研究機関によって30日~50日とバラツキのある状態です。今回は、44日説を採用して計算します。
三郷市の5例について放射性セシウムの合計と体内残留濃度を計算してました。
*尿検査の結果から体内残留濃度と体内総残留量を計算する尿検査評価計算機【ダウンロード】
今回の結果は、体内残留濃度=0.29~1.60Bq/kgで、たとえば、南相馬市でホールボディカウンターを使って検出された「10Bq/kg未満=199人・10~20Bq/kg=65人・20~30Bq/kg=3人・30~35Bq/kg=1人」(2011年10月28日発表)などと比べると、確かに低い数値ではありますが、「安全である」と言い切れる根拠は、どこにもありません。
●体内残留濃度は継続的に測ってこそ意味がある。
内部被ばくに関しては、ある量を一度に摂取した場合と、継続して摂取し続けるのでは、後者の方が危険だということは、当ブログ『低線量内部被ばく/「毎日少しずつ」の恐怖』で明らかにした通りです。
一方、1回の尿検査の結果では、「一回摂取」なのか「継続摂取」なのかは、判断のしようがありません。
三郷については、首都圏の中では空間線量の高いホットスポットと言われている地域なので、継続摂取の可能性が高いのですが、たとえば、事故直後の3月下旬に大量の一回摂取があって、それが減ってきて、今の値である可能性も否定できません。一回摂取と継続摂取が、相乗的に影響している可能性もあります。
是非とも、継続的に検査を続けて、濃度が上がっていくのか、変わらないのか、下がっていくのかを注意深く見守る必要があります。1ヶ月に一回の検査を続ければ、いろいろなことが明らかになってくると思います。
検査費用は、東電と国が補償すべきです。当然にも。
●日常生活における放射能対策は、ある程度、有効である。
『放射能から子ども達を守ろう-みさと』の資料でも触れられていますが、日常生活における放射能対策は、ある程度、有効なようです。食べ物や飲み物、衣服などに気を配って、少しでも体内への放射性物質の取り込みを減らそうと努力した家庭では、検出例が少なくなっています。
今のところ、体内への取り込みが、呼吸によるものが主なのか、飲食によるものなが主なのかは、明らかになっていません。しかし、放射性物質を正しく恐れる暮らし方が求められるようです。これは、本当は悲しいことなのですが、今となっては、やむを得ません。
再度、東電と国への怒りがこみ上げてきます。
今回の結果は、体内残留濃度=0.29~1.60Bq/kgで、たとえば、南相馬市でホールボディカウンターを使って検出された「10Bq/kg未満=199人・10~20Bq/kg=65人・20~30Bq/kg=3人・30~35Bq/kg=1人」(2011年10月28日発表)などと比べると、確かに低い数値ではありますが、「安全である」と言い切れる根拠は、どこにもありません。
●体内残留濃度は継続的に測ってこそ意味がある。
内部被ばくに関しては、ある量を一度に摂取した場合と、継続して摂取し続けるのでは、後者の方が危険だということは、当ブログ『低線量内部被ばく/「毎日少しずつ」の恐怖』で明らかにした通りです。
一方、1回の尿検査の結果では、「一回摂取」なのか「継続摂取」なのかは、判断のしようがありません。
三郷については、首都圏の中では空間線量の高いホットスポットと言われている地域なので、継続摂取の可能性が高いのですが、たとえば、事故直後の3月下旬に大量の一回摂取があって、それが減ってきて、今の値である可能性も否定できません。一回摂取と継続摂取が、相乗的に影響している可能性もあります。
是非とも、継続的に検査を続けて、濃度が上がっていくのか、変わらないのか、下がっていくのかを注意深く見守る必要があります。1ヶ月に一回の検査を続ければ、いろいろなことが明らかになってくると思います。
検査費用は、東電と国が補償すべきです。当然にも。
●日常生活における放射能対策は、ある程度、有効である。
『放射能から子ども達を守ろう-みさと』の資料でも触れられていますが、日常生活における放射能対策は、ある程度、有効なようです。食べ物や飲み物、衣服などに気を配って、少しでも体内への放射性物質の取り込みを減らそうと努力した家庭では、検出例が少なくなっています。
今のところ、体内への取り込みが、呼吸によるものが主なのか、飲食によるものなが主なのかは、明らかになっていません。しかし、放射性物質を正しく恐れる暮らし方が求められるようです。これは、本当は悲しいことなのですが、今となっては、やむを得ません。
再度、東電と国への怒りがこみ上げてきます。
「最悪シナリオ」をどう読むか ― 2011/12/24 20:46
毎日新聞のスクープです。
『福島第1原発:「最悪シナリオ」原子力委員長が3月に作成』
3.11から2週間後の3月25日、近藤駿介内閣府原子力委員長が「最悪シナリオ」を作成し、菅直人前首相に提出していました。この「最悪シナリオ」は、3月25日時点では過去形ではなく、十分に可能性のある想定でした。
その内容を簡単にまとめると…
●1~3号炉のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇。
●余震が続いて冷却作業が長期間停止。
●4号炉核燃料プールの核燃料が全て溶融。
という条件が重なれば、
■原発から半径170km圏内で、土壌中の放射性セシウムが1平方メートルあたり148万ベクレル以上というチェルノブイリ事故の強制移住基準に達する。
■東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同250kmの範囲が、避難が必要な程度に汚染される。
…というものです。
170km圏内には、福島・宮城の全域と山形・栃木・茨城のほとんどが含まれます。250km圏には、東京・埼玉・群馬・新潟のほとんどが入り、北は岩手・秋田の半分にまで及びます。東北と関東のほとんどが強制移住または避難が必要な地域に… これは、まさに戦慄の内容です。
しかし、考えてみれば当たり前で、チェルノブイリで事故を起こしたのは4号炉1基。その出力は100万キロワットでした。
福島第1は、炉心溶融した1~3号炉だけで計203万キロワット。さらに、定期点検で止まっていた4号炉の燃料プールには、原子炉2基分にあたる1535本の燃料棒があります。概算すると、福島ではチェルノブイリの4倍量の核燃料が制御不能に陥ったことになります。
チェルノブイリ以上の事故になる可能性は十分にあったし、「最悪シナリオ」の存在は、それを原子力委員会と政府が認識していた証でしょう。
福島第1事故の現状はひどいものです。
政府も東電も人の命を何とも思っていません。移住はさせない、除染は効果が???内部被ばくはまとも評価せず… しかしながら、事故そのものの規模は、「最悪シナリオ」にまでは及んでいないのも事実です。
日本人の英知が、原発事故を「最悪シナリオ」にならないように抑え込んだ?
いいえ、そんな甘い話ではありません。いくつかの偶然が重なって、「最悪シナリオ」通りには進まなかっただけなのです。
その偶然とは、「余震があまりひどくなかった」「溶融した燃料が固まったのが最悪の場所ではなかった」といったもの。語弊を恐れずに言うなら、「幸いにも」なのです。
もちろん、ベントや、注水による冷却、4号炉の燃料プールの耐震補強工事が間に合ったことなども影響していますが、全体としては、「運良く最悪シナリオが回避されている」だけなのです。
炉心溶融の進行具合が、少しでも変わっていたら、さらなる水素爆発は容易に起きました。その水素爆発が、4号炉の燃料プールを破壊し、1535本の燃料棒が溶融することは、十分に考えられたのです。
原発事故の前では、人間の科学技術や英知は、ほとんど役に立ちません。偶然の結果、少しでも悪くならないように願うしかないのです。
「幸いにも」なんて言うと、福島の皆さんには怒られてしまいそうですが、いくつかの良い方の偶然が重なって、現状なのです。それでさえ、何万人もの人たちが、故郷を捨てざる得なくなっています。内部被ばくにおびえながら暮らし続ける人は、いったい何十万人、いや何百万人・何千万人になるのでしょうか。
今現在、日本国内では7基の原子炉が稼働しています。
原発推進の中枢の一つである原子力委員会が提出した「最悪シナリオ」を読んでも、まだ、原発を動かし続けるのでしょうか… 普通の神経をしていたら、誰だって「そんな度胸はない」と言うはずです。
そして、この記事を書いている2011年12月24日現在、「最悪シナリオ」は過去形になっているのでしょうか…
答えは「いいえ」です。1~3号炉で溶けた核燃料は、どこでどういう形で冷えているのか、いや、本当に冷えているのかさえ不明です。
百歩譲って、冷えているとしても、何かの拍子で核燃料の塊が集まった時には再臨界が起き、あらたに大量の放射性物質が生成・放出されます。再臨界から再溶融もある得るし、それは水素爆発や水蒸気爆発につながります。一方、4号炉の燃料プールの補強は成功したと言われていますが、どの程度の衝撃や地震に耐えるのか、明確にはなっていません。
スクープされた「最悪シナリオ」。それは、いまだに現在形で語られるべきものです。
『福島第1原発:「最悪シナリオ」原子力委員長が3月に作成』
3.11から2週間後の3月25日、近藤駿介内閣府原子力委員長が「最悪シナリオ」を作成し、菅直人前首相に提出していました。この「最悪シナリオ」は、3月25日時点では過去形ではなく、十分に可能性のある想定でした。
その内容を簡単にまとめると…
●1~3号炉のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇。
●余震が続いて冷却作業が長期間停止。
●4号炉核燃料プールの核燃料が全て溶融。
という条件が重なれば、
■原発から半径170km圏内で、土壌中の放射性セシウムが1平方メートルあたり148万ベクレル以上というチェルノブイリ事故の強制移住基準に達する。
■東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同250kmの範囲が、避難が必要な程度に汚染される。
…というものです。
170km圏内には、福島・宮城の全域と山形・栃木・茨城のほとんどが含まれます。250km圏には、東京・埼玉・群馬・新潟のほとんどが入り、北は岩手・秋田の半分にまで及びます。東北と関東のほとんどが強制移住または避難が必要な地域に… これは、まさに戦慄の内容です。
しかし、考えてみれば当たり前で、チェルノブイリで事故を起こしたのは4号炉1基。その出力は100万キロワットでした。
福島第1は、炉心溶融した1~3号炉だけで計203万キロワット。さらに、定期点検で止まっていた4号炉の燃料プールには、原子炉2基分にあたる1535本の燃料棒があります。概算すると、福島ではチェルノブイリの4倍量の核燃料が制御不能に陥ったことになります。
チェルノブイリ以上の事故になる可能性は十分にあったし、「最悪シナリオ」の存在は、それを原子力委員会と政府が認識していた証でしょう。
福島第1事故の現状はひどいものです。
政府も東電も人の命を何とも思っていません。移住はさせない、除染は効果が???内部被ばくはまとも評価せず… しかしながら、事故そのものの規模は、「最悪シナリオ」にまでは及んでいないのも事実です。
日本人の英知が、原発事故を「最悪シナリオ」にならないように抑え込んだ?
いいえ、そんな甘い話ではありません。いくつかの偶然が重なって、「最悪シナリオ」通りには進まなかっただけなのです。
その偶然とは、「余震があまりひどくなかった」「溶融した燃料が固まったのが最悪の場所ではなかった」といったもの。語弊を恐れずに言うなら、「幸いにも」なのです。
もちろん、ベントや、注水による冷却、4号炉の燃料プールの耐震補強工事が間に合ったことなども影響していますが、全体としては、「運良く最悪シナリオが回避されている」だけなのです。
炉心溶融の進行具合が、少しでも変わっていたら、さらなる水素爆発は容易に起きました。その水素爆発が、4号炉の燃料プールを破壊し、1535本の燃料棒が溶融することは、十分に考えられたのです。
原発事故の前では、人間の科学技術や英知は、ほとんど役に立ちません。偶然の結果、少しでも悪くならないように願うしかないのです。
「幸いにも」なんて言うと、福島の皆さんには怒られてしまいそうですが、いくつかの良い方の偶然が重なって、現状なのです。それでさえ、何万人もの人たちが、故郷を捨てざる得なくなっています。内部被ばくにおびえながら暮らし続ける人は、いったい何十万人、いや何百万人・何千万人になるのでしょうか。
今現在、日本国内では7基の原子炉が稼働しています。
原発推進の中枢の一つである原子力委員会が提出した「最悪シナリオ」を読んでも、まだ、原発を動かし続けるのでしょうか… 普通の神経をしていたら、誰だって「そんな度胸はない」と言うはずです。
そして、この記事を書いている2011年12月24日現在、「最悪シナリオ」は過去形になっているのでしょうか…
答えは「いいえ」です。1~3号炉で溶けた核燃料は、どこでどういう形で冷えているのか、いや、本当に冷えているのかさえ不明です。
百歩譲って、冷えているとしても、何かの拍子で核燃料の塊が集まった時には再臨界が起き、あらたに大量の放射性物質が生成・放出されます。再臨界から再溶融もある得るし、それは水素爆発や水蒸気爆発につながります。一方、4号炉の燃料プールの補強は成功したと言われていますが、どの程度の衝撃や地震に耐えるのか、明確にはなっていません。
スクープされた「最悪シナリオ」。それは、いまだに現在形で語られるべきものです。
「NNSA(アメリカ国家核安全保障局)による大気中のダスト分析データ」を読む(改訂版) ― 2011/12/05 00:27
先に公開した<「NNSA(National Nuclear Security Administration:アメリカ国家核安全保障局)による大気中のダスト分析のデータ」を読む(ストロンチウムを甘く見てはいけない)>に関して、一部の検出地点におけるストロンチウムの数値に間違いがありました。混乱を招いたことをお詫び申し上げます。
改訂版を書き上げましたので、ここに公開いたします。
福島第1から漏出した放射性物質の種類は、数百種類とも1000種類以上とも言われています。主な31核種に関しては、原子力・安全保安院から試算値が発表されています。
『放射性物質放出量データ』【原子力・安全保安院】
3.11から9か月が経とうとしています。
内部被ばくが大きな問題としてクローズアップされる中、事故直後に、原発至近に暮らす人々はもとより、私たち東北・関東に暮らす人間は、いったいどの程度の放射性物質を呼吸によって体内に取り込んだ可能性があるのか… あるいは、あの時期、どれだけの放射性物質が空気中に漂っていて、それが地面に落ち植物などに吸収され、内部被ばくに、どうつながっていくのか… 福島第1から出た放射性物質の核種別の量は、上記の通り、一応、明らかにされているのですが、その行き先は、放射性セシウム以外は、まともに追跡されていないのが現状です。
それを知るためには、事故直後に大気中にあった放射性物質の濃度が鍵になります。対応が後手後手に回ったため、日本政府は、それを調べていないのか、あるいは隠しているのかは分かりませんが、いまだに詳細なデータは発表されていません。
一方、アメリカの政府機関が、福島県内や茨城県、東京都内などで、詳細なサンプリング調査を実施し、データを公開していたことが判明しました。
NNSA(National Nuclear Security Administration:アメリカ国家核安全保障局)による大気中のダストを分析したデータです。
7000件ものサンプリングデータがあり、アメリカ政府および米軍が、福島第1から飛来する放射性物質に対して、きわめて神経質になっていたことが伺えます。
【NNSAによる大気中ダスト分析:元データ】
上記のページから7000件分のCSVファイルが、一気にダウンロードできます。
ヨウ素・セシウム・ストロンチウム・テルル・ネプツニウムなどが検出されています。
GPSのデータが付いているので、計測場所も正確に分かります。東京港区のアメリカ大使館や各地の米軍基地をはじめ、担当者の自宅と思われる場所や、高速道路のサービスエリアやドライブインレストランの駐車場と思える場所もあります。
米軍が、これだけ自由に日本国内を動き回っていたのか、と気味悪く感じる部分もありますが、データが全面公開されているので、今回はそのことに噛みつくのはやめましょう。
以下は、特に目立つデータを抽出した一覧です。
「NNSA(アメリカ国家核安全保障局)による大気中のダスト分析データ」より
では、項目や核種に分けて、解説を試みます。
●検出結果の単位について
NNSAのデータは、基本的に、マイクロキュリー/ミリリットルという単位で記されているので、これを<1マイクロキュリー/ミリリットル=3.7×(10の10乗)ベクレル/立方メートル>という換算式で、ベクレル/立方メートルに換算しました。
元データのごく一部(7000件の内の12件)だけが、単位が違っていて、単なるマイクロキュリーになっていました(これが誤報の元でした)。これもサンプルの体積で割った上で換算し、ベクレル/立方メートルにしてあります。
●当面の基準値
検出された数値が高いのか、低いのかを見極めるためには、どうしても基準値が必要になります。
法令により定められているのは、「排気中濃度限度」です。
『排気中濃度限度』【原子力防災基礎用語集】
ゴチャゴチャと書いてありますが、要は、その環境下で3か月暮らした場合の被ばく量を一年に換算した時に、外部被ばく・内部被ばくを合わせた実効被ばく線量が年間1ミリシーベルトに達するかどうかで決められている限界値です。
過去の放射能漏れ事故などにおいても、基準値として採用されてきています。
【柏崎刈羽原子力発電所の資料】
注:上記資料では、「排気中濃度限界」を「告知濃度」と記しています。
では、NNSAのデータを読み進めましょう。
●ヨウ素131
まず、甲状腺がんを引き起こすヨウ素131。濃度限界は、5ベクレル/立方メートルです。
データを見ると、福島県内では、2250ベクレル/立方メートルという極めて高い数値が記録されています。なんと濃度限界の450倍。
茨城県にまで、かなり高い値が及んでいます。
元データを丹念に見ていくと、千葉市稲毛海岸で32ベクレル/立方メートル、米軍立川基地で16ベクレル/立方メートル、東京港区のアメリカ大使館でも7.3ベクレル/立方メートルという値が出ています。相当広い範囲で、5ベクレル/立方メートルという濃度限界を超えたのです。
福島では、子供たちの甲状腺検査が始まっています。異常が出ないことを祈るばかりです。
一方で、配布できたヨウ素剤を、なぜ生かすことができなかったのか… その責任は追及されなければなりません。
●セシウム137
いずれの検出値も、濃度限界の30ベクレル/立方メートルには及びません。比較的速やかに地面に落ちたと考えるべきなのかも知れません。
ただ、半減期が30年と長いので、今後の除染作業等で、セシウム137が、ふたたび大気中に舞い上がることのないよう、十分に配慮する必要があります。
また、セシウム137による土壌汚染は深刻で、その対策が急がれていることは言うまでもありません。
●ストロンチウム90
ストロンチウムに関しては、計算し直したところ、いずれも濃度限界以下の値ではありました。
本当に遠くまでは飛んできていないのか、それとも、速やかに地面に落ちてしまったのか… 現在、何カ所かで、土壌中のストロンチウム90の値について、議論になっています。まずは、その結果を待つしかないのかと思っています。
しかし、いずれにしても、ストロンチウムは一旦体内に入ってしまうと大変に危険です。
大気中から地面に落ち、水に溶けて、植物に吸収される。それを人間が食べるという食物連鎖がひとつ。牧草に吸収されて、それを乳牛が食べ、牛乳に濃縮され、それを人間が飲むという連鎖もあります。
体内にあるストロンチウムを検出するのは至難の業です。ベータ線しか出さないので、ホールボディーカウンターには反応が出ません。体内実効半減期は18年と長いため、尿にもごくわずかしか出てこないので、尿検査でも、なかなか見つからないでしょう。
改訂版を書き上げましたので、ここに公開いたします。
福島第1から漏出した放射性物質の種類は、数百種類とも1000種類以上とも言われています。主な31核種に関しては、原子力・安全保安院から試算値が発表されています。
『放射性物質放出量データ』【原子力・安全保安院】
3.11から9か月が経とうとしています。
内部被ばくが大きな問題としてクローズアップされる中、事故直後に、原発至近に暮らす人々はもとより、私たち東北・関東に暮らす人間は、いったいどの程度の放射性物質を呼吸によって体内に取り込んだ可能性があるのか… あるいは、あの時期、どれだけの放射性物質が空気中に漂っていて、それが地面に落ち植物などに吸収され、内部被ばくに、どうつながっていくのか… 福島第1から出た放射性物質の核種別の量は、上記の通り、一応、明らかにされているのですが、その行き先は、放射性セシウム以外は、まともに追跡されていないのが現状です。
それを知るためには、事故直後に大気中にあった放射性物質の濃度が鍵になります。対応が後手後手に回ったため、日本政府は、それを調べていないのか、あるいは隠しているのかは分かりませんが、いまだに詳細なデータは発表されていません。
一方、アメリカの政府機関が、福島県内や茨城県、東京都内などで、詳細なサンプリング調査を実施し、データを公開していたことが判明しました。
NNSA(National Nuclear Security Administration:アメリカ国家核安全保障局)による大気中のダストを分析したデータです。
7000件ものサンプリングデータがあり、アメリカ政府および米軍が、福島第1から飛来する放射性物質に対して、きわめて神経質になっていたことが伺えます。
【NNSAによる大気中ダスト分析:元データ】
上記のページから7000件分のCSVファイルが、一気にダウンロードできます。
ヨウ素・セシウム・ストロンチウム・テルル・ネプツニウムなどが検出されています。
GPSのデータが付いているので、計測場所も正確に分かります。東京港区のアメリカ大使館や各地の米軍基地をはじめ、担当者の自宅と思われる場所や、高速道路のサービスエリアやドライブインレストランの駐車場と思える場所もあります。
米軍が、これだけ自由に日本国内を動き回っていたのか、と気味悪く感じる部分もありますが、データが全面公開されているので、今回はそのことに噛みつくのはやめましょう。
以下は、特に目立つデータを抽出した一覧です。
「NNSA(アメリカ国家核安全保障局)による大気中のダスト分析データ」より
では、項目や核種に分けて、解説を試みます。
●検出結果の単位について
NNSAのデータは、基本的に、マイクロキュリー/ミリリットルという単位で記されているので、これを<1マイクロキュリー/ミリリットル=3.7×(10の10乗)ベクレル/立方メートル>という換算式で、ベクレル/立方メートルに換算しました。
元データのごく一部(7000件の内の12件)だけが、単位が違っていて、単なるマイクロキュリーになっていました(これが誤報の元でした)。これもサンプルの体積で割った上で換算し、ベクレル/立方メートルにしてあります。
●当面の基準値
検出された数値が高いのか、低いのかを見極めるためには、どうしても基準値が必要になります。
法令により定められているのは、「排気中濃度限度」です。
『排気中濃度限度』【原子力防災基礎用語集】
ゴチャゴチャと書いてありますが、要は、その環境下で3か月暮らした場合の被ばく量を一年に換算した時に、外部被ばく・内部被ばくを合わせた実効被ばく線量が年間1ミリシーベルトに達するかどうかで決められている限界値です。
過去の放射能漏れ事故などにおいても、基準値として採用されてきています。
【柏崎刈羽原子力発電所の資料】
注:上記資料では、「排気中濃度限界」を「告知濃度」と記しています。
では、NNSAのデータを読み進めましょう。
●ヨウ素131
まず、甲状腺がんを引き起こすヨウ素131。濃度限界は、5ベクレル/立方メートルです。
データを見ると、福島県内では、2250ベクレル/立方メートルという極めて高い数値が記録されています。なんと濃度限界の450倍。
茨城県にまで、かなり高い値が及んでいます。
元データを丹念に見ていくと、千葉市稲毛海岸で32ベクレル/立方メートル、米軍立川基地で16ベクレル/立方メートル、東京港区のアメリカ大使館でも7.3ベクレル/立方メートルという値が出ています。相当広い範囲で、5ベクレル/立方メートルという濃度限界を超えたのです。
福島では、子供たちの甲状腺検査が始まっています。異常が出ないことを祈るばかりです。
一方で、配布できたヨウ素剤を、なぜ生かすことができなかったのか… その責任は追及されなければなりません。
●セシウム137
いずれの検出値も、濃度限界の30ベクレル/立方メートルには及びません。比較的速やかに地面に落ちたと考えるべきなのかも知れません。
ただ、半減期が30年と長いので、今後の除染作業等で、セシウム137が、ふたたび大気中に舞い上がることのないよう、十分に配慮する必要があります。
また、セシウム137による土壌汚染は深刻で、その対策が急がれていることは言うまでもありません。
●ストロンチウム90
ストロンチウムに関しては、計算し直したところ、いずれも濃度限界以下の値ではありました。
本当に遠くまでは飛んできていないのか、それとも、速やかに地面に落ちてしまったのか… 現在、何カ所かで、土壌中のストロンチウム90の値について、議論になっています。まずは、その結果を待つしかないのかと思っています。
しかし、いずれにしても、ストロンチウムは一旦体内に入ってしまうと大変に危険です。
大気中から地面に落ち、水に溶けて、植物に吸収される。それを人間が食べるという食物連鎖がひとつ。牧草に吸収されて、それを乳牛が食べ、牛乳に濃縮され、それを人間が飲むという連鎖もあります。
体内にあるストロンチウムを検出するのは至難の業です。ベータ線しか出さないので、ホールボディーカウンターには反応が出ません。体内実効半減期は18年と長いため、尿にもごくわずかしか出てこないので、尿検査でも、なかなか見つからないでしょう。
結局、白血病で死んだ後に、骨を調べてみて、やっとストロンチウム90が原因だったと分かる。そういう恐ろしい物質なのです。
●テルル
テルル129m(半減期:33.6日)は、ベータ崩壊して半減期1600万年の放射性ヨウ素129に変わる放射性物質です。
体内に取り込んだ場合、テルル129mそのものによるベータ線内部被ばくと、娘核種のヨウ素129によるベータ線内部被ばくの両方を心配する必要があります。
テルル132(半減期:3日)も同様で、娘核種はヨウ素132(半減期:2.3時間)。いずれも警戒の要有りです。
データを見ると、テルル239mで最大237.54Bq/立方メートル、テルル132で831.76Bq/立方メートルという値が出ています。いずれも、濃度限界は20Bq/立方メートルですから、10倍から40倍という、大変に高い危険な数値と言えるでしょう。
2種類のテルルとも、自然界には存在しない放射性元素です。環境中に、その存在が認められれば、核燃料が損傷したという証です。1号炉の核燃料の85%以上が溶け落ちたことが明らかになった今となっては、呆れるしかないのですが、日本政府は、事故直後にテルル132を検出しながら、6月3日までその事実を隠してきたという事実が有ります。
本ブログ「テルル132と情報の隠蔽」参照
NNSAのデータでは、3月21日には、テルルの漏出が確認されています。そのデータは、日本政府にも伝えられたはずです。本当に隠すことを第一義にしているとしか思えません。
●プルトニウム239などの超ウラン元素
NNSAの7000件のデータの中で、超ウラン元素が特定されているのは、ネプツニウム239(半減期:2.4日)だけです。
5月8日に福島県岩瀬郡鏡石町岡ノ内で、553.10Bq/立方メートルが検出されています。
ネプツニウム239は、下のような崩壊過程の中で、生まれ、そして消える放射性物質です。
ネプツニウム239の半減期は2.4日、プルトニウム239の半減期は2万4千年。ということは、ネプツニウム239からプルトニウム239に変わることによって、単位時間あたりの崩壊数(ベクレル数)は1/365万に減ります。
そのまま拡散することなく崩壊したとすると、変わった先のプルトニウム239の濃度は、0.00015Bq/立方メートルになります。プルトニウム239の濃度限界=0.008Bq/立方メートルは下回ります(この計算では、すでに存在していたプルトニウム239は算入されませんが)。
ただ、心配なのは、アルファ線総計値を見ると、福島県内では4Bq/立方メートル以上、都内でも1Bq/立方メートル以上が検出されています。アルファ線を出すのは、おもに、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムなど、ウランよりも重い元素=超ウラン元素です。
データは、間違いなく福島第1由来の様々な超ウラン元素が、遠くまで飛散したことを意味しています。今となっては、空中を飛んでいることはないと思われますので、土壌のサンプリングなどで、その行方を徹底的に追いかけ、核種を特定し、対策を取る必要があります。
●おわりに
残念ながら、NNSAのデータは、5月9日の分までしか公表されていません。
測定をやめたとは考えにくいので、何らかの理由があって、公表を止めているのでしょう。まずは、全データの公開をアメリカ政府に求めるべきだと考えます。
そして、日本政府や自治体も、もっともっと丹念にモニタリングを行うべきです。
ストロンチウムも、まだまだ調べられていません。プルトニウムをはじめとする超ウラン元素に関しても、まったくお座なりな調査しか行われていないと感じるのは、私だけではないでしょう。
福島第1から出たものは、必ずどこかにたどり着いています。その行き先を確かめ、ひとつひとつ対策を取っていかないと、多くの人の健康が、いや、命までもが危うくなります。
追記:
今回、NNSAのデータを扱ってみて、CSVファイルの中に、GPSデータまで組み込まれているのには、正直感心しました。日本はPDFが基本なので、
データを二次使用しようとしても、大変に手間がかかります。政府も東電も、二次使用を前提としたデータの公開の仕方に切り変えるべきです。
データは納税者のものであり、電力消費者のものであり、今回の事故で被害を受けたすべての人のものであり、この列島で、いやこの星で暮らすすべての人のものです。
データは納税者のものであり、電力消費者のものであり、今回の事故で被害を受けたすべての人のものであり、この列島で、いやこの星で暮らすすべての人のものです。












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