内部被ばくをどう評価するのか(2)2011/10/10 15:07

●体内にどれだけの放射性物質があるかは計測できない。
さて、体内に入ってしまった放射性物質の量や、そこから出ている放射線量を計ることはできるのでしょうか?

ホールボディカウンターという機器があります。これは、身体全体から出ているガンマ線を計測して、体内にある放射性物質の量を計測するものです。ですから、崩壊する時にベータ線とガンマ線の両方を出す核種、つまり、セシウム137とヨウ素131には、ある程度有効です。
体外に出てくるガンマ線の波長と線量から、元素の種類(核種)と、それが体内にどれだけ存在するかが分かり、内部被ばく量を推定することができます。ただし、ある核種が、臓器ごとにどれだけ蓄積されているか、といった細かい計測はできません。

また、ベータ線しか出さないストロンチウムや、アルファ線しか出さないプルトニウム239が出す放射線は、ホールボディカウンターでは検出できません。
それどころか、ガンマ線を出さない核種による内部被ばくは、どんな機器を用いても、身体の外から計ることはできないのです。それは、アルファ線とベータ線が、体内では、ごくわずかしか進むことができず、外に出てこないからです。

ストロンチウムやプルトニウムに関しては、誤差の大きい尿検査しか、方法がないとされています。

●水に溶けるか溶けないかで、まったく挙動が違う。
その核種が、水に溶けるか溶けないかも重要です。
水に溶けるということは、とりもなおさず、血液に溶けるという意味です。
ここまでで扱ってきた、ヨウ素131、セシウム134・137、ストロンチウム90は、血液に溶けて全身を周り、言ってみれば、集積すべき場所に集積します。その臓器内では、ほぼ均等な濃度で存在すると考えられます。

一方、プルトニウム239のように水に溶けない核種はどうでしょうか?エアロゾルとかホット・パーティクルとか言われていますが、小さな粒子(といっても、原子数は数億から数十億)として、肺に取り込まれ、肺組織のどこかにしっかりと居座ってしまいます。そして、半径数ミクロンの範囲に、延々、アルファ線を浴びせ続けるのです。
飲食で入ってきた場合は?「プルトニウムは飲んでも大丈夫!」というトンデモ発言をした東大教授がいますが、彼は、微粒子一個が腸壁のどこかに引っかかっただけで、大変な危険性があることを理解していません。

●生物学的半減期に騙されない。
最後に、「生物学的半減期」の話をしましょう。
通常、半減期と言ったら、物理学的半減期のことで、放射性物質(核種)が崩壊(放射性物質を放出して別の元素に変化)して、原子数が元の半分になるまでの時間です。
一方で、生物学的半減期は、人体内の代謝によって、その核種の半分量が排泄されるまでの時間です。これには、物理学的半減期は算入していませんので、ヨウ素131では、物理学的半減期が8日なのに、生物学的半減期が138日、なんていう変な話になってしまうのです。そこで、実質的に体内で、その核種が半分になるまでの時間を「体内での有効半減期」として、下に示します。

まず、この表から読み取れるのは、「ヨウ素131は、たった7日で半分に減るのに、子供の甲状腺に大きな傷跡を残す」ということです。
一方、「セシウム137は半減期が30年なんて言うけど、身体の中では70日で半分に減るから、あまり心配は要らない」なんていう、とんでも無い発言も見受けますが、騙されてはいけません。
同じ地域で、同じような食生活を続けたら、毎日、ほぼ同じ量のセシウム137を摂取し続けることになります。いくら排泄が進んでも、新しく入ってきますから、やがて体内でのセシウム137の濃度は平衡に達し、そのまま長きに渡って内部被ばくが続きます。
ですから、日常的に飲食するものに対しては特に、そこに含まれる放射性物質の量を徹底して低く管理する必要があります。真っ先に浮かぶのは、米であり、牛乳であり、水です。現在の暫定基準値は、高すぎるし、大雑把すぎます。

以上、内部被ばくについて、2回にわたって、今までとは違う視点からまとめてみました。
「分かっていないことが多い」ことに愕然とされた方もいるかと思います。しかし、これが現状なのです。
これまで、人類が遭遇した大規模な内部被ばくの例は、広島・長崎とチェルノブイリしかありません。広島・長崎のデータは、核心部分をいまだにアメリカが隠しています。チェルノブイリは26年を経て、今、やっと研究が本格化した段階です。

しかしながら、内部被ばくが、甲状腺ガンと白血病だけに留まらず、肺ガンや子宮ガンなど、あらゆるガンの引き金になることは、すでに隠しようのない事実になっています。チェルノブイリでは、最近、内部被ばくが原因とされる心臓疾患が増えています。肥田舜太郞さんが指摘する原爆ブラブラ病(無気力症+多臓器不全)もあります。

とにかく、内部被ばくに対して、最大限の警戒を続ける必要があります。
それと並行して、まず、内部被ばくと外部被ばくを、正確に分けて、それぞれ正確に評価すること。生物学的にも、医学的にも難しい問題はありますが、ある臓器に対して、どういった危険性が、どのくらいあるのかということを、細かく明らかにしていかないと、うやむやのままに、責任の所在が宙に浮きかねません。それ以前に、多くの人たちの命と健康を守ることができません。

コメント

_ うなぎ ― 2011/10/11 15:37

とても恐れるのは、原発事故による被ばくが原因で健康を害したのにもかかわらず、何も補償が得られなくなる事です。因果関係を証明する事は出来ないのでしょうか。政府はいかに補償金を少なくするかに知恵を絞っていて、国民に広く被ばくをさせて、基準以内という言い訳を使って、補償金をなるべく払わないようにしているように見えて仕方がありません。
この先多くの人、特に弱い人が病気などになり苦しむと思います、そしてそのこと自体、闇に葬られる気がして、涙が出そうです。
あと、体から排出された放射性物質は、まだ放射性物質のままなのですか?

_ 私設原子力情報室 ― 2011/10/11 21:29

>うなぎさん
コメントありがとうございます。
一つには、補償以前に住民の健康を守ることです。(健康に対する)補償を話題にせざる得ないこと自体が、本来、苦渋の決断です。被ばくはお金では購えません。
…ときれい事を言っても仕方がないので、当面は補償であり、移住権の保証だと思います。それでも、移住権>補償だと思います。補償は、徹底して手を尽くしても、やむなく被ばくしてしまった人に対して行われるべきものでしょう。今は、手を尽くしていません。
(健康に対する補償とは別に、避難や移住に伴う物理的被害・精神的被害に対する補償は必要です)

体から排出された放射性物質は、放射性物質のままです。下水に流れ、処理施設で堆積します。一部は海に流れます。半分に減るまで、セシウム137で30年。プルトニウム239では2万4千年です。環境の中で次第に薄まっていきますが、原子数自体は半減期に従ってしか減りません。
放射能は、化学的な毒性と違いますので、どうやっても中和したり、分解しりすることはできないのです。

例えば、100人に一人ガン死を引き起こす濃度の放射性物質が、10倍の面積に広がった場合は、1000人に一人のガン死を引き起こします。拡散したことは人類にとって、損でも得でもありません。死ななくていい人が人工的な放射線で死ぬことこそが問題なのです。

ちなみに、地球誕生から46億年。放射性物質が徐々に減ってきたからこそ、生命が登場し、人類が登場できました。
核兵器と原発の登場は、地球の歴史上、初めて放射性物質を増やす行為だったのです。

_ 米子 ― 2011/10/13 13:08

大変解りやすいレポートをありがとうございます。
今後も期待しております。

_ ゆきぼー ― 2011/10/13 14:48

お世話になります。
おかげで少しずつですが
理解できるようになっています。
お尋ねします。
素人の考えることですのでよろしくお願いします。

よく○○㏃/㎏とか表現されますが
1㎏が例えば10kgになれば
単純に10倍の㏃になるのでしょうか。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/10/13 21:43

>ゆきぼーさん
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りで、10㏃/㎏が10㎏あれば、総量で100㏃となります。
㏃は放射能の総量で、㏃/㎏(と㏃/l)は濃度とか密度と考えてください。濃度に重さとか体積を掛ければ、総量になります。

_ ゆきぼー ― 2011/10/14 10:31

ありがとうございます。
回答をいただき、もやもやが取れました。
報道される/キロとか、/㎡とかには
汚染範囲のことも考えながら計算してみます。

明日15日大阪で「さよなら原発未来のエネルギーを
アクションプログラム」の講座がありますので、
そこで内部被ばくについて紹介させていただきます。
この講座は、IWJ OSAKA 1CH 配信と保存されますので機会があれば見てください。
講師は、服部良一衆議員です
また、よろしくお願いします。

_ うなぎ ― 2011/10/14 14:55

昨日ラジオで「髪の毛に放射線の履歴が残るので、とっておくといい」と聞きました。ネットでちょっと検索してみても、そういう意見がありました。本当でしょうか?

_ 私設原子力情報室 ― 2011/10/14 17:32

>うなぎさん
髪の毛の件、十分にありうる話です。
毛根細胞から髪の毛になってからは、細胞分裂しませんので、髪の毛になったその日の放射性物質が、そのまま固定されているはずです。
半減期に従って減りますのが、例えば、ヨウ素131であれば、崩壊先のキセノン131の濃度から、内部被ばくの履歴が分かると!セシウム137は、ほとんど減っていませんから、そのまま残っているでしょう。
3.11以降、髪の毛を切っていない女性の髪を調べれば、実体がつかみ切れていない内部被ばくの状況が、ある程度明確になるかも。
もしかすると、凄いアイデアかもしれません。
この話、Twitterで広めます。

_ ksirouto ― 2011/10/15 14:16

絵図を使った説明で素人の私ですが、おぼろげながら内部被ばくの輪郭は掴めたような気が致します。ありがとうございます。そこで恐縮ですが、2~3点、出来ればご教示お願い出来ればと思います。

①内部被ばくと外部被ばくとは、その組み立てというか、構造が違うことはわかりましたが、政府のような管理機関が巷間言われていますように、外部内部含めて1mSv以上という表現で管理すればやり易いとは思いますが、先生(敢えて知見をお持ちの方にはこのように申し上げています)の言われる異質のものを合算してはいけないとなると、政府などはどのような表現をすれば、より合理性のある言い方になるでしょうか?

②一般に実効線量という概念があります。これと先生の言われる考え方との関係がよく理解出来ないのです。なお、一般に言われる考え方はURLに入れておきました。

③次に、預託線量という概念があります。これは②の実効線量を前提としたものようで、一般に言われている概念は同じくURLに入れています。
この預託線量の概念と先生の言われる考え方との関係をどのように理解したら宜しいのか頭が混線しています。

以上、長文になり申し訳ありませんが、全くの素人ということで宜しくご教示頂かると助かります。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/10/15 17:39

>ksiroutoさん
コメントありがとうございます。
しかしながら、「先生」はご勘弁を(笑)。単なる管理人です。

で、さっそくお訊ねの件です。

①まず、当サイトが主張する「外部被ばくと内部被ばくを切り分けて評価すべき」というのは、日本政府どころか、ICRP、国連まで含めての「外部被ばくと内部被ばくを一緒くたに評価」に対する反対表明です。
大胆と言えば大胆です(我ながら)。一方で、良心的な研究者たちは、皆、「外部被ばくと内部被ばくを切り分けて評価すべき」とは、もちろん分かっているのですが、具体的に分かりやすい評価法がないのが事実です(特に内部被ばくに関して)。

私の提案としては、

外部被ばくは、今まで通りのシーベルト評価。
「1ミリシーベルト/年=全身60億個の細胞すべてが一年間に一度、放射線の貫通を受ける」という単位なので、外部被ばくだけに限れば分かりやすいです。
ただ、今までのやり方を根底からひっくり返すと混乱するので、「外部被ばく+内部被ばく(全身が均等に被ばくしたと換算して)」をシーベルトで評価してもよいと思います。但し、内部被ばくに関しては、「全身が均等に被ばくしたと換算して」の明記が必要です。
そして、内部被ばくをどう評価するか…
これは、臓器ごとに、例えば「甲状腺に、○○ベクレル/kgの蓄積がある」「甲状腺の内部被ばくは、○○ミリシーベルト/年に相当する」などとしないと意味がありません。

②実効線量は、いろいろな使い方をされますが、人間の身体が実際に受ける放射線量のことです。
一般には、外部被ばくに対して使用されます。それも二つの使い方があります。
まず、「空間線量×実効線量係数=実効線量」。これは、全身が平均的にどのくらい被ばくしているかを表します。通常は実効線量係数=1.0とされているようですが、0.7という説もあります。
もう一つは、「臓器ごとの実効線量」で、臓器ごとに決められている「組織荷重係数=放射線による変異の起こしやすさ」を算入したものです。これは外部被ばくに対しては有効です。しかし、内部被ばくには無効です(放射性物質の臓器ごとの集積率が算入されないから)。

③預託線量は、簡単に言えば、内部被ばくの総計です。半減期と排泄による線量の減衰を算入してあります。ただ全身換算です。もし、体組織(内臓)ごとに、預託線量が出せれば、それはそれで有効だと考えられます。

取り急ぎ、こんな感じですが、いかがでしょうか?

_ ooyamakouiti ― 2011/10/15 23:41

ツイッターでこんなの見つけてきました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf
大量放出された半減期14,4年のプルトニウム241ではなくアメリシウム241になっていますが・・・。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/10/16 01:08

アメリシウム241は、<プルトニウム241→(ベータ崩壊)→アメリシウム241→(以下、一般に知られているネプツニウム系列の崩壊)→タリウム205>というネプツニウム系列の最初から二番目にある元素です。プルトニウム241は、原子炉内でプルトニウム239が2個の中性子を吸収してできます。
従って、プルトニウム241があれば、微量ではあれ、必ずアメリシウム241が同居しています。

原子炉運転中にも、<プルトニウム239+2個の中性子→プルトニウム241→(ベータ崩壊)→アメリシウム241>という反応は起きていますので、大気中への放射性物質の放出量の中には、アメリシウム241も含まれているはずですが、保安院6/6の資料では無視されていますね。

_ ksirouto ― 2011/10/16 12:02

早々とご回答頂き恐縮しています。ありがとうございます。
ご確認方々、下記の点、よろしくお願い致します。

①の場合:
◆この考え方は概ね理解しました。今後、こうした概念で使うよう注意したいものです。

②の場合:
◆実効線量は、簡単に言えば、サーベイメータなどで測定された線量と考えて宜しいでしょうか?

空間線量率など測定し、○○シーベルトというのは、実効線量としての数値として理解すればよいのでしょうか?
いわゆるマスコミなどで○○シーベルトで高い線量を示しているなどという類は殆ど実効線量のことでしょうか?

③の場合:
◆先生(やはり、使わせて下さい)が言われるように、内部被ばく線量が放射線の種類(α、β線など)などによっては測定出来ないようですが、ここで使う預託線量の場合、計算上で試算された結果であって(そもそも50年間の累計線量という概念自体仮想?)それ以上のものではないという理解で宜しいでしょうか? 
逆に言えば、内部被ばく線量も試算なら分かるという解釈で宜しいのでしょうか?

以上、恐縮ですがよろしくお願い致します。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/10/16 14:57

②について:
実測値=実効線量ではありません。
実効線量は、多くの場合は、実測値から自然放射線を除いた値に屋内での低減係数などを掛けて、「上乗せ分の実効線量」として発表されています。
外部被ばく線量計算機(改訂版)
http://nucleus.asablo.jp/blog/2011/10/14/6154701
をご参照&ご利用ください。

③について:
内部被ばく線量に関しては、ガンマ線を出す核種についてはホールボディカウンターで、ある程度、計測できます。但し、臓器ごとの集積率などは、正確には分かりません。
アルファ線やベータ線しか出さない核種については、今のことろ、尿で調べるしかないようです(他に、血液と髪の毛で可能と思われる)。この方法は、誤差が大きい上に、臓器ごとの集積率は、まったく分かりません。
預託線量については、「全身均等被ばく換算で50年間」という設定ならば、一応、試算が可能という解釈でよいと思います。但し、繰り返しになりますが、内臓ごとの集積率は、一切、算入されていません。

_ ksirouto ― 2011/10/16 17:07

いつも早々とご回答頂きありがとうございました。

_ yamaoya ― 2011/11/21 17:40

いつも、分かりやすい解説をありがとうございます。この記事の中に、「誤差の大きい尿検査」という箇所がありますが、具体的に、どの程度の誤差でしょうか。ホールボディカウンターと比べての精度はどうなのでしょうか。
市民有志で、子どもたちの尿検査をしたところなので、気になりました。
また、心配されるストロンチウムを、尿検査から測定するには、どうしたらよいのでしょうか。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/11/22 18:15

>yamaoyaさん
尿検査の誤差については、実際に体内にある放射性物質(たとえばセシウム137)の量と尿内のセシウム137は、基本的に比例はするはずですが、年齢、性別、個人差、体調、栄養状態などによって変わってきます。おそらく、どの程度の誤差幅があるのかは明確になってないのでは… 小出先生も「尿からの分析では誤差が大きい」と明言していました。
ホールボディカウンターとの比較は、よく分かりません。ホールボディカウンターも、結構、誤差があるようです。
いずれにしても、内部被ばくは、本当に難敵なのです。
尿中のストロンチウムに関しては、土中や食物の中にあるものと同じ調べ方ができると思います。最低、数週間かかると言われている方法です。

_ yamaoya ― 2011/11/22 19:49

返信ありがとうございます。
内部被ばくは本当に難敵なのですね。

ところで、尿検査結果数値に対する評価で、放射線医療総合研究所のモンダルというソフトがあります。
実際、私達の検査で尿1リットル当たり2.5ベクレル
検出された7歳の子が、このソフトで計算されて預託実効線量(70歳まで)0.0063ミリシーベルトという評価になりました。これは、極端に低くないですか。

 内部被ばくをシーベルト換算すること自体が問題あるにせよ、私が手計算で換算すると、次のようになるのですが、この計算方法に何か問題があるでしょうか。。

尿中濃度ベクレル数(ℓ)×日尿量×Cs時定数144(半減期100日÷約0.7)=体内存在量

Cs1ベクレル(1カウント毎秒)被曝エネルギー8.827e-14j毎秒×3600秒=0.318nj毎時

(1ベクレル=1カウント/秒 のセシウム137による被曝エネルギーは、
 1count/s×0.551MeV/count×1.602e-13 J/MeV=8.827e-14 J/s)


体内存在量×0.318÷体重×0.001(μsv換算)×0.001(msv換算)×24×365=年間被ばく量

これで、同じ子の数値を計算してみると、
セシウム体内半減期100日、日尿量1リットル、子どもの体重20キロという仮定で、
年間0.05ミリシーベルトになります。

モンダルの生涯0.0063ミリシーベルトと大きく異なります。

生涯100ミリという政府の基準に照らし合わせると、
(100÷0.0063=15873)
この子の場合、1万5千ベクレル以上検出されない限り、「問題なし」となってしまいますが、これは、あまりに偏った評価ではないでしょうか。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/11/22 21:44

>yamaoyaさん
コメントありがとうございます。
http://nucleus.asablo.jp/blog/2011/10/17/6159844
に書いた通り、内部被ばくに関しては、一度にある程度の量の放射性物質を摂取することも問題なのですが、少量であっても継続的に摂取する方が、もっと大きな問題になります。
また、一度に大量の摂取をしても、その後の摂取がゼロであると仮定してしまったら、70歳まででは、ほとんど数字にならないでしょう。
一回摂取と継続摂取を明確に分けて考える必要があります。そして、原発事故では、基本的に継続摂取になります。
モンダルについては、詳しくないので、数日中に調べてみたいと思います。

_ yamaoya ― 2011/11/23 07:16

返信ありがとうございます。

私の住む岩手県では、来月100人規模の子どもの尿検査を予定していますが、県の検査依頼先が、放医研なのです。

検査結果→モンダル評価→公表→「微量・問題なし」報道という筋書きが出来あがっている感があります。
尿検査が各地で増え始めたことは、歓迎すべきことですが、この評価にモンダルが介入してくると、極端な過小評価が広まる恐れがあると心配しています。

是非、このブログで、尿検査評価についてそのあり方をとり上げていただけると嬉しいです。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/11/23 07:49

>yamaoyaさん
参考までに、体内にある放射性物質の減量率(=尿や便による排泄率)は、

【前日からの減量率=0.5の(1/半減期)乗】

という式で計算できます。
ここで言う半減期とは、「体内実効半減期」のことで、セシウム137の場合は99日または100日(成人の場合)とされています(ICRP)。

仮に、毎日、同量のセシウム137を継続摂取した場合は、600日から800日くらいで、排泄量と摂取量が平衡に達し、10ベクレル/日を摂取した場合は、体内に約1400ベクレルが存在し続けることになります。5ベクレル/日でも約700ベクレルに達します。

一回摂取の場合は、
【残留率=0.5の(経過日数/半減期)乗】
経過日数時点での残留率が計算でき、セシウム137では、ほぼ800日でゼロになります。

尿検査の評価ですが、一回の測定では、「一回摂取」なのか「継続摂取」なのかが判断できません。継続的に測定を続ける必要があります。

以下が、基本的な判断の基準になると思います。

●濃度が上がっていく=飲食や呼吸による放射性物質の摂取量が増えて続けている危険な状態。ただちに、クリーンな環境に避難または疎開の必要あり。

●濃度が変わらない=飲食や呼吸による放射性物質の摂取量が変わっていない状態。数値によっては、クリーンな環境に避難または疎開を検討する必要有り。

●濃度の下がり方が「一回摂取」の場合よりも遅い=減ってはいるが、放射性物質の摂取が続いている状態。注意深く観察の要有り。

●濃度の下がり方が「一回摂取」の場合に一致=現在は放射性物質の摂取がない状態。そのまま下がり続けるかどうか、注意深く観察の要有り。

残念ながら、4番目の場合でも、すでに受けた内部被ばくを帳消しにする方法はありませんし、この先、濃度が下がっていく過程でも、内部被ばくは受けます。
ただ、繰り返しになりますが、少量であっても継続摂取の方が、内部被ばく量はずっと大きくなります。これこそが、「低線量内部被ばくの恐怖」なのです。

_ yamaoya ― 2011/11/23 20:54

丁寧な返信ありがとうございます。
検査結果数値が、上昇中なのか、
下降中なのか、平衡しているのか見極めるためにも、
私達も、尿の継続検査を望んでいるのですが、
生涯100ミリという基準と、モンダル評価では、
「微量。健康に影響なし。再検査不要。」
と結論付けられる上に、これを大きく報道されると、
いったい何のための検査か、と嘆いています。

今後ともよろしくお願い致します。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/11/23 22:24

>yamaoyaさん
あらたに、尿検査とホールボディカウンターに関する記事を一本書きました。
http://nucleus.asablo.jp/blog/2011/11/23/6212273
yamaoyaさんには、ちょっと初歩的と感じられるかも知れませんが、あえて入門編にしました。
尿検査から体内残留量を計算するexcelもアップしてありますので、よかったらご活用ください。

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