失われた福島の米 ― 2012/04/04 17:25
3.11福島第1原発の事故は、私たちの暮らしにどれだけの被害を及ぼしているのか… 今回は、「福島県の稲作」という視点から見てみます。
『セシウム:100ベクレル超の福島県産米を全量廃棄へ』毎日新聞
農水省が、4月1日からの「食品に含まれる放射性セシウム新基準」にあわせて、100ベクレル/キログラムを超える2011年度産米の全量買い上げ、廃棄処分を発表したのは、3月29日のことです。該当する福島産米は3万7千トン(90億円相当)とされていますが、この報道で決定的に欠けているのは、その3万7千トンが、本来あるべき福島県全体の稲作に対して、どのくらいの比率を占めているのかです。農業関係者であれば、それが約61万7千俵に相当し、普通の田んぼ、すなわち一反(=10アール)の田んぼで6万1千700枚分という、もの凄い量だということがが直感的に分かるのでしょうが、都市生活者にとっては、なかなか実感できないものです。
そこでまず、2010年度と2011年度の福島県の稲作実績を数字で見ることで、3.11の傷跡を確認したいと思います。
『セシウム:100ベクレル超の福島県産米を全量廃棄へ』毎日新聞
農水省が、4月1日からの「食品に含まれる放射性セシウム新基準」にあわせて、100ベクレル/キログラムを超える2011年度産米の全量買い上げ、廃棄処分を発表したのは、3月29日のことです。該当する福島産米は3万7千トン(90億円相当)とされていますが、この報道で決定的に欠けているのは、その3万7千トンが、本来あるべき福島県全体の稲作に対して、どのくらいの比率を占めているのかです。農業関係者であれば、それが約61万7千俵に相当し、普通の田んぼ、すなわち一反(=10アール)の田んぼで6万1千700枚分という、もの凄い量だということがが直感的に分かるのでしょうが、都市生活者にとっては、なかなか実感できないものです。
そこでまず、2010年度と2011年度の福島県の稲作実績を数字で見ることで、3.11の傷跡を確認したいと思います。
100ベクレル/キログラムの基準超えで廃棄される米は、2011年度産米の10.5%を占めています。この数字を知っただけでも、常識をある人なら誰でも『原発はいらない!』という結論に達するはずです。
加えて、作付けすらできなかった田んぼがあったのは、皆さんご存じの通りです。土壌汚染・立ち入り禁止措置による国が定めた作付け禁止(約10,000ヘクタール)と自治体などによる作付け自粛(約600ヘクタール)。両方合わせて、収穫量に換算すると5万8千200トンに相当します。廃棄処分と合わせると9万5千200トン。これが、3.11原発事故で失われた福島の米。原発事故がなければ得られたであろう収穫量の約23パーセントにもなります(津波による冠水・塩害で作付けができなかった分を除いて計算。原発事故にも津波にも関係なく作付けをしなかった田があり得ますが、ごく一部と思われるので、計算上は無視しています)。
そして、原発事故の影響が一年で終わるはずもありません。2012年度、国によって作付けが禁止される区域は、約7,300ヘクタール。自治体による自粛も合わせ、福島県内で作付けが見送られる水田の面積は約1万500ヘクタールに及びます。作付けできない田んぼの面積は、2011年度とほぼ同じです。
100ベクレル/キログラムの基準を超える米は、2011年度産より多少減るかも知れませんが、それなりに出てくるでしょう。
福島の稲作は、原発事故によって大きな傷を負ってしまいました。この傷が癒えるのに、いったい何十年の時が必要なのか… 大きな憤りを覚えずにはいられません。
この事実は、福島の皆さんはもとより、福島産米の大消費地である東京の住民、そして、他の原発の数10キロ圏内(大阪も京都も福岡も入ります)に暮らす人たちに、わが身の問題として考えて欲しいと思います。原発事故は、私たちの祖先が、この列島に営々として築き上げてきた営みを根底から破壊してしまうのです。いとも簡単に。
今、野田政権は、福井県の大飯原発3・4号機の再稼働を画策しているようですが、以ての外です。
すべての原発をただちに廃炉行程へ!それこそが、私たちが歩むべき道です。
低線量内部被ばく/「毎日少しずつ」の恐怖 ― 2011/10/17 22:44
一日に1000ベクレルのセシウム137を摂取するのと、毎日毎日10ベクレルずつを長い間摂取し続けるのでは、どちらが怖いのでしょうか?
1000ベクレルと聞くと、一瞬、大きな数字に驚きますが、実は、後者の方がずっと怖いのです。下のグラフはICRPが発表している、摂取量・摂取状況の違いによる「セシウム137の体内残留量」です。
1000ベクレルと聞くと、一瞬、大きな数字に驚きますが、実は、後者の方がずっと怖いのです。下のグラフはICRPが発表している、摂取量・摂取状況の違いによる「セシウム137の体内残留量」です。
放射線による被害を少なめに計算する傾向があると言われるICRPですら、この結論に達しています。もちろん、尿や便での排泄量を計算した上の数字です。
毎日、たった10ベクレルを継続的に摂取しただけで、1年半ほど経つと、体内にあるセシウム137の量は1400ベクレルにもなってしまうのです。
その先は、摂取量と排泄量が釣り合った状態が続きますので、ずっと1400ベクレルからの内部被ばくを受けます。こういった、毎日少しずつ受ける内部被ばくを『低線量内部被ばく』と言います。
一日、たった10ベクレルでも、1400ベクレルに…
さて、まずは、この1400ベクレルが高いか低いかという判断です。よくセシウム137と比較されるのは、自然に存在するカリウム40。化学的な性質が似ているので、体内での振る舞いも同様だと考えられているからです。
このカリウム40は、体重60kgの男性で4000ベクレルが体内にあります。ここにもし、セシウム137の1400ベクレルが加わると1.35倍。人類が地球上に登場して300万年と言われますが、体内にあるカリウム40の量は、ほぼ4000ベクレルで変わったことがなかったはずです。それが、急に1.35倍に増えるのと同じ。何も起きないと断言する方が変です。
次は、この試算に用いられている10ベクレル/日という数字についてです。
もちろん、食べ物に含まれているセシウム137をすべて人体が吸収するわけではありません。それも考え合わせましょう。しかし、仮に1/3だけを吸収したとしても、一日30ベクレルを飲食で摂取しただけで、残留量は1400ベクレルに達してしまうのです。今現在の暫定基準値は、米も肉も魚も野菜も500ベクレル/kgです。人間は、毎日1.5kg~3kgを飲食しています。500ベクレル/kgは、誰がどう考えても危険な数字です。
もう一つ、上のグラフには表れない恐怖もあります。
下は、チェルノブイリ事故で大きな被害を受けているベラルーシでの調査結果。セシウム137の臓器ごとの蓄積量を大人と子供に分けて示しています。
かつて、セシウム137は、全身に平均的に蓄積されると言われていましたが、実はそうではなかったのです。
特に子供では、甲状腺、骨格筋、小腸、心筋に偏ります。甲状腺ガンを引き起こすのは、ヨウ素131だと言われてきましたが、セシウム137も関係している可能性が高いのです。
また、最近ベラルーシでは、ガン以外の病気として、心臓疾患が増えています。2005年の段階で1991年の2倍ほどになっています。この原因としても、セシウム137による内部被ばくが疑われています。
臓器によって異なる放射性物質の濃度。一部では、全身平均の2倍とか3倍になるはずです。その結果、心臓が痛めつけられた可能性が高いのです。
それでも、セシウム137は偏りが少ない方です。例えばストロンチウム90の場合は、ほとんどすべてが骨に集まってしまいますから、そこでの濃度は、全身換算の5倍になると推測できます(人間の全体重の内20%が骨)。
たまたま、今朝(10月17日朝)のNHK総合『あさイチ』で、福島の2家族を含む全国7家族の、一週間分の食事に含まれているセシウム137の量を計測していました(方法は、毎食一人前ずつ多く作ってもらい、それを検査に回す陰膳法)。結果的には、5家族で、一週間の間に一回ずつ5~9ベクレル/kgが検出されました。一週間に一回でしたら、それ程、恐れる数字ではないかも知れませんが、これが、もし毎日続いたら、かなりの量のセシウム137が、体内に蓄積することになります。
また、この調査自体は、サンプル数が少なすぎて、どうにも説得力を欠きます。そして、5~9ベクレル/kgという数字が、もし、毎日摂取したら、低い数字ではないのだということも、認識しておく必要があります。
とにかく、今言えることは、500ベクレル/kgという暫定基準値をすぐさま撤回して、もっときめ細かく、そして厳しい基準値を定めることです。
まずそれをしないと、『低線量内部被ばく』によって、健康を損ね、命を失う人が必ず出てしまいます。
「渓流の女王」を襲う恐怖 ― 2011/06/07 09:19
福島県内の一部で、天然のヤマメから放射性セシウム(セシウム137とセシウム134と思われる)が検出され、出荷停止指示が出されました。
その美しい姿から山女とも山女魚とも書かれ、「渓流の女王」として釣り人たちの人気を集める魚です。
「天然のヤマメなんて、食べたことも見たこともないから関係ない」と思われる方もいるかも知れませんが、事はそれほど単純ではありません。
ヤマメは肉食の淡水魚で、水生昆虫や落下してきた昆虫を餌としています。その住処は、緑に包まれた清流。昆虫の命を育む豊かな森ときれいな水がなければ生きていけません。
ヤマメは、どこから放射性セシウムを取り込んだのでしょうか?水と餌からしかあり得ません。…と言うことは、清流の源であり、昆虫の住処である森が、すでに核分裂生成物(放射性物質)によって、かなり汚染されていることです。
放射性セシウムとの関係を確かめるために、ヤマメの体が、どんな成分で成り立っているのか、『食品成分データベース』で調べてみました。
カリウムがとても豊富な魚です。カリウムは、ほとんどすべての生きものにとって必須の栄養素。もちろん人間にとっても重要なミネラルの一つです。私たちの先祖は、縄文の昔からつい最近まで、ヤマメを重要なカリウム源として食べてきたはずです。
一方、原子の周期表で見ると、セシウムとカリウムは同じ一番左の列(アルカリ金属)に属し、その化学的性質は似ています。生体は、セシウムをカリウムと勘違いして、体内に溜め込んでしまうのです。そのセシウムが放射性であるかどうかもお構いなしです。
カリウムを濃縮するという生きるための機能を逆手に取るかのように、放射性セシウムがヤマメの体内に蓄積されていくのです。
しかし、話はここで終わりではありません。やがて、ヤマメは野鳥に捕まり、その栄養源となります。野鳥も体内で放射性セシウムの濃度を高めます。同時に、糞の形でそこら中にばらまくことになります(同じ川に棲むアユやアマゴも汚染されていると考えるのが自然ですから、鳥はヤマメ以外からも放射性セシウムを摂取します)。
群れをなす鳥であれば、その住処の森は、放射性セシウムのホットスポットになるでしょう。その森から流れ出た水が、また清流に注ぎ込み… これは恐怖の食物連鎖。一度、核分裂生成物に汚された生態系が元に戻るためには、少なくとも100年単位の時間が必要になります。
その鳥が渡り鳥だったらどうでしょう。海外のある場所に福島第1から漏出した放射性セシウムのホットスポットが出現する可能性もあるのです。
ヤマメにとって、最近の日本人ほど迷惑な存在はいません。乱開発によって住処となる清流を奪い取り、最後は核分裂生成物です。私は、今こそ、「ヤマメの住めない場所には人間も住めない」という考え方を持つ必要があると思います。その時に、私たちにとってもっとも迷惑な存在は、原子力発電所に違いありません。
その美しい姿から山女とも山女魚とも書かれ、「渓流の女王」として釣り人たちの人気を集める魚です。
「天然のヤマメなんて、食べたことも見たこともないから関係ない」と思われる方もいるかも知れませんが、事はそれほど単純ではありません。
ヤマメは肉食の淡水魚で、水生昆虫や落下してきた昆虫を餌としています。その住処は、緑に包まれた清流。昆虫の命を育む豊かな森ときれいな水がなければ生きていけません。
ヤマメは、どこから放射性セシウムを取り込んだのでしょうか?水と餌からしかあり得ません。…と言うことは、清流の源であり、昆虫の住処である森が、すでに核分裂生成物(放射性物質)によって、かなり汚染されていることです。
放射性セシウムとの関係を確かめるために、ヤマメの体が、どんな成分で成り立っているのか、『食品成分データベース』で調べてみました。
カリウムがとても豊富な魚です。カリウムは、ほとんどすべての生きものにとって必須の栄養素。もちろん人間にとっても重要なミネラルの一つです。私たちの先祖は、縄文の昔からつい最近まで、ヤマメを重要なカリウム源として食べてきたはずです。
一方、原子の周期表で見ると、セシウムとカリウムは同じ一番左の列(アルカリ金属)に属し、その化学的性質は似ています。生体は、セシウムをカリウムと勘違いして、体内に溜め込んでしまうのです。そのセシウムが放射性であるかどうかもお構いなしです。
カリウムを濃縮するという生きるための機能を逆手に取るかのように、放射性セシウムがヤマメの体内に蓄積されていくのです。
しかし、話はここで終わりではありません。やがて、ヤマメは野鳥に捕まり、その栄養源となります。野鳥も体内で放射性セシウムの濃度を高めます。同時に、糞の形でそこら中にばらまくことになります(同じ川に棲むアユやアマゴも汚染されていると考えるのが自然ですから、鳥はヤマメ以外からも放射性セシウムを摂取します)。
群れをなす鳥であれば、その住処の森は、放射性セシウムのホットスポットになるでしょう。その森から流れ出た水が、また清流に注ぎ込み… これは恐怖の食物連鎖。一度、核分裂生成物に汚された生態系が元に戻るためには、少なくとも100年単位の時間が必要になります。
その鳥が渡り鳥だったらどうでしょう。海外のある場所に福島第1から漏出した放射性セシウムのホットスポットが出現する可能性もあるのです。
ヤマメにとって、最近の日本人ほど迷惑な存在はいません。乱開発によって住処となる清流を奪い取り、最後は核分裂生成物です。私は、今こそ、「ヤマメの住めない場所には人間も住めない」という考え方を持つ必要があると思います。その時に、私たちにとってもっとも迷惑な存在は、原子力発電所に違いありません。
お茶とセシウム ― 2011/05/18 13:05
ここのところ、神奈川県や静岡県の新茶からセシウム137が検出されて、大きな騒ぎになっています。
福島第1から遠く離れているのに、なぜ?
多くのメディアは、地形や天気等によって、核分裂生成物がある程度の濃度のまま、遠くまで運ばれることがあると報じています。それ自体は正しいのですが、もう一つ重要な視点が必要です。
茶という植物は、たいへん効率よくセシウム137を生体内に取り込み、濃縮する能力を持っているのです。えっ?と思われる方も多いと思いますので、その仕組みを説明しましょう。
文科省の食品成分データベースで、「せんちゃ」を検索してみましょう。「表示成分選択」のところで、「無機質」「全て」にチェックを入れます。結果を表示すると、煎茶にはカリウムが豊富に含まれていることが分かります。
茶は地中や大気中からカリウムを取り込む力が、とても強いのです。そして、カリウムは人間にとっての必須ミネラルの一つ。特にアジアの人々は、遠い昔から、茶が健康に良いことを経験的に知っていました。それはカリウムが豊富だからとも言えるのです。
さて、そのカリウムとセシウム137がどう関係するのか?
実は、セシウムは化学的性質がカリウムとよく似ていて、茶の木であろうと人間であろうと、生体はカリウムとセシウムを見分けることができません。言い方を変えれば、生命を維持するために、カリウムと勘違いしてセシウムをせっせと溜め込んでしまうのです。もちろん、セシウムが放射性であろうとなかろうと関係ありません。だから、環境の中で放射性のセシウム137の濃度が少しでも高まることは、たいへん危険なのです。人間の体内に取り込まれたセシウム137は、筋肉などに蓄積し、深刻な体内被曝を引き起こす可能性があります。
この事実を見ていくと、地球上の生きものはすべて、放射性物質に対してまったく防御する力を持っていないことが分かります。一方で、太古の昔から、地上での放射線量は少しずつ減ってきていたはずです。なぜなら、どの放射性物質も放射線を放出することで、少しずつ安定した原子に変わっていくからです。例えば、ウラン235の半減期は7億年ですから、現在、地球にあるウラン235の量は7億年前と比べると半分になっています。放射性物質が減ってきたからこそ、人類が地球に登場できたのかも知れません。
ところが、その人類は、減っていくはずの放射性物質を逆に増やしてしまったのです。広島・長崎、度重なる原水爆実験、そして、原発などの原子力施設での深刻な事故。ストロンチウム90やセシウム137は本来、地球上に存在しなかった放射性物質だということも忘れてはいけません。
放射性物質は、やがて減っていくという自然の摂理を破ってしまった人類。今、原点に戻って、もう放射性物質を増やしてはいけないのだと確認し合う必要があります。
福島第1から遠く離れているのに、なぜ?
多くのメディアは、地形や天気等によって、核分裂生成物がある程度の濃度のまま、遠くまで運ばれることがあると報じています。それ自体は正しいのですが、もう一つ重要な視点が必要です。
茶という植物は、たいへん効率よくセシウム137を生体内に取り込み、濃縮する能力を持っているのです。えっ?と思われる方も多いと思いますので、その仕組みを説明しましょう。
文科省の食品成分データベースで、「せんちゃ」を検索してみましょう。「表示成分選択」のところで、「無機質」「全て」にチェックを入れます。結果を表示すると、煎茶にはカリウムが豊富に含まれていることが分かります。
茶は地中や大気中からカリウムを取り込む力が、とても強いのです。そして、カリウムは人間にとっての必須ミネラルの一つ。特にアジアの人々は、遠い昔から、茶が健康に良いことを経験的に知っていました。それはカリウムが豊富だからとも言えるのです。
さて、そのカリウムとセシウム137がどう関係するのか?
実は、セシウムは化学的性質がカリウムとよく似ていて、茶の木であろうと人間であろうと、生体はカリウムとセシウムを見分けることができません。言い方を変えれば、生命を維持するために、カリウムと勘違いしてセシウムをせっせと溜め込んでしまうのです。もちろん、セシウムが放射性であろうとなかろうと関係ありません。だから、環境の中で放射性のセシウム137の濃度が少しでも高まることは、たいへん危険なのです。人間の体内に取り込まれたセシウム137は、筋肉などに蓄積し、深刻な体内被曝を引き起こす可能性があります。
この事実を見ていくと、地球上の生きものはすべて、放射性物質に対してまったく防御する力を持っていないことが分かります。一方で、太古の昔から、地上での放射線量は少しずつ減ってきていたはずです。なぜなら、どの放射性物質も放射線を放出することで、少しずつ安定した原子に変わっていくからです。例えば、ウラン235の半減期は7億年ですから、現在、地球にあるウラン235の量は7億年前と比べると半分になっています。放射性物質が減ってきたからこそ、人類が地球に登場できたのかも知れません。
ところが、その人類は、減っていくはずの放射性物質を逆に増やしてしまったのです。広島・長崎、度重なる原水爆実験、そして、原発などの原子力施設での深刻な事故。ストロンチウム90やセシウム137は本来、地球上に存在しなかった放射性物質だということも忘れてはいけません。
放射性物質は、やがて減っていくという自然の摂理を破ってしまった人類。今、原点に戻って、もう放射性物質を増やしてはいけないのだと確認し合う必要があります。
竹の子とイノシシ ― 2011/05/01 22:16
福島県産のタケノコとコゴミから国の基準を越える放射性セシウムが検出されました。
植物は、みずからの命を維持するために、主に地中からカリウムを吸収します。農業や園芸の世界で三大栄養素と言えば、窒素、リン酸、カリ。カリとはカリウムのことです。セシウムは化学的な性質がカリウムと似ているため、タケノコは、福島第1原発から漏出した放射性セシウムをせっせと体内にため込んだのです。
しかし、タケノコが生えている土壌を調べてみても、とんでもない濃度の放射性セシウムは検出されないでしょう。タケノコが見事に放射性セシウムを濃縮しているのです。これは、ちょっと考え直してみれば当たり前のことで、タケノコは、みずからの命を守るために、地中のカリウムを何十倍、何百倍に濃縮する能力を持っているのです。カリウムかと見間違った放射性セシウムをどんどんため込みます。
チェルノブイリから25年。ドイツですら、いまだに放射性物質の濃度が高すぎて、食用にできないイノシシが獲れます。イノシシの大好物がキノコで、そのキノコが地中に残るあの時の放射性物質を濃縮しているからです。
私たち地球上に生きる命は、体の中で放射性物質を見つけ出し、それを選択的に排泄したり、排除したりする能力を持っていません。従って、食物連鎖に輪に放射性物質が入り込んだ時、これに対抗するのは大変に難しいことになります。
25年前に旧ソ連で原発事故があり、放射性物質がヨーロッパにも降り注ぎました。その放射性物質はキノコに取り込まれ濃縮されます。そのキノコを食べたイノシシは、さらに放射性物質を濃縮します。それを知らずに人間が食べたら… 恐怖の「風が吹けば桶屋が儲かる」。これはギャグではありません。
植物は、みずからの命を維持するために、主に地中からカリウムを吸収します。農業や園芸の世界で三大栄養素と言えば、窒素、リン酸、カリ。カリとはカリウムのことです。セシウムは化学的な性質がカリウムと似ているため、タケノコは、福島第1原発から漏出した放射性セシウムをせっせと体内にため込んだのです。
しかし、タケノコが生えている土壌を調べてみても、とんでもない濃度の放射性セシウムは検出されないでしょう。タケノコが見事に放射性セシウムを濃縮しているのです。これは、ちょっと考え直してみれば当たり前のことで、タケノコは、みずからの命を守るために、地中のカリウムを何十倍、何百倍に濃縮する能力を持っているのです。カリウムかと見間違った放射性セシウムをどんどんため込みます。
チェルノブイリから25年。ドイツですら、いまだに放射性物質の濃度が高すぎて、食用にできないイノシシが獲れます。イノシシの大好物がキノコで、そのキノコが地中に残るあの時の放射性物質を濃縮しているからです。
私たち地球上に生きる命は、体の中で放射性物質を見つけ出し、それを選択的に排泄したり、排除したりする能力を持っていません。従って、食物連鎖に輪に放射性物質が入り込んだ時、これに対抗するのは大変に難しいことになります。
25年前に旧ソ連で原発事故があり、放射性物質がヨーロッパにも降り注ぎました。その放射性物質はキノコに取り込まれ濃縮されます。そのキノコを食べたイノシシは、さらに放射性物質を濃縮します。それを知らずに人間が食べたら… 恐怖の「風が吹けば桶屋が儲かる」。これはギャグではありません。
水道水の放射性物質基準値はデタラメ ― 2011/04/19 20:40
本ブログでは、できるだけ感情的な言葉による表現を避けてきました。それで物事が本質的に解決することは有り得ないと考えているからです。
しかしこれだけは、「デタラメ!」と断じざるを得ません。
ニュースでさんざん報じられてきた飲料水(水道水)におけるヨウ素131の安全基準は、「大人は300Bq/L、乳児は100Bq/L」です。「食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値」と「原子力安全委員会が定めた飲食物摂取制限に関する指標値」に従ったもの。一部のメディアは「IAEAが定める世界基準より10倍厳しい値!」とまで報じました。
しかし、世界保健機関(WHO)のホームページ(表部分の翻訳を下に表示)を見たら、卒倒しそうになりました。IAEAが定める3000Bq/Lというのは深刻な原子力緊急時のものであって、こんな水道水が出たら即刻避難というレベルです。
WHOが定める基準は、大人では日本の基準の1/30にあたる10Bq/Lだったのです。WHOが作った一覧表の翻訳を載せておきます。
しかしこれだけは、「デタラメ!」と断じざるを得ません。
ニュースでさんざん報じられてきた飲料水(水道水)におけるヨウ素131の安全基準は、「大人は300Bq/L、乳児は100Bq/L」です。「食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値」と「原子力安全委員会が定めた飲食物摂取制限に関する指標値」に従ったもの。一部のメディアは「IAEAが定める世界基準より10倍厳しい値!」とまで報じました。
しかし、世界保健機関(WHO)のホームページ(表部分の翻訳を下に表示)を見たら、卒倒しそうになりました。IAEAが定める3000Bq/Lというのは深刻な原子力緊急時のものであって、こんな水道水が出たら即刻避難というレベルです。
WHOが定める基準は、大人では日本の基準の1/30にあたる10Bq/Lだったのです。WHOが作った一覧表の翻訳を載せておきます。
「原子力安全委員会が定めた飲食物摂取制限に関する指標値」は3月17日に、「食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値」は3月24日に慌てて定められたものです。それまで、日本では、WHOが定める10Bq/Lが基準値あるいは指標値として合意されていたのに…(WHOの基準にしても、外部被曝と内部被曝をゴッチャにして扱っているという問題はあるのですが)
さて、例えば東京都健康安全研究センターが調べている
「都内の水道水中の放射能調査結果」を見てみましょう。3/22~3/27にかけて、WHOの基準値を大きく越えているではありませんか!
東京でさえ、この有り様です。より福島第1原発に近い地域ではどうなっていたのか?すでに私たちの身体は人体実験の一検体としてしか数えられなくなってしまったのでしょうか…
今、デタラメが横行しています。
さて、例えば東京都健康安全研究センターが調べている
「都内の水道水中の放射能調査結果」を見てみましょう。3/22~3/27にかけて、WHOの基準値を大きく越えているではありませんか!
東京でさえ、この有り様です。より福島第1原発に近い地域ではどうなっていたのか?すでに私たちの身体は人体実験の一検体としてしか数えられなくなってしまったのでしょうか…
今、デタラメが横行しています。
魚と放射性物質:追記 ― 2011/04/06 08:25
やはり、コウナゴからセシウム137が検出されました。
海の生物たちは、海に広がったはずの放射性物質を、悲しいかな、せっせと集めて体内に取り込み、濃縮までしてしまうのです。
食物連鎖に従って、コウナゴを食べる中型魚、大型魚に汚染が広がる可能性は大です。一方、プランクトンにも汚染が広がっていると思われますから、今後、他の魚介類からもセシウム137が検出されるでしょう。何も悪いことをしていない漁業関係者に誰がどう謝るのでしょうか。
さて、魚に限らず、生物はセシウム137をカリウムと同じように扱います。原子の周期律表で見ると、どちらも一番左の列(アルカリ金属)です。これは、セシウムとカリウムの性質が似ていることを示しています。言ってみれば、人間を含めて、生物は皆、セシウム137をカリウムと勘違いして体内に取り込んでしまうのです。
一方、カリウムは生物にとって不可欠な栄養素の一つです。農業関係、あるいは園芸を少しでもやったことがある人は、すぐに分かると思いますが、植物の三大栄養素は、窒素・リン酸・カリ(カリウム)。動物の体内でも、細胞の基本的な活動を支えています。
このカリウムの代わりに、放射線を長い期間にわたって発し続けるセシウム137が入り込んでしまったら… 恐ろしいことなのです。
栄養素を体内で濃縮するという生命体の基本とも言える活動が、危険な放射性物質を体内にため込む働きをしてしまう。このパラドックスは、地球上に、余分な放射性物質を絶対に作ってはいけないことを示しています。
食物連鎖に従って、コウナゴを食べる中型魚、大型魚に汚染が広がる可能性は大です。一方、プランクトンにも汚染が広がっていると思われますから、今後、他の魚介類からもセシウム137が検出されるでしょう。何も悪いことをしていない漁業関係者に誰がどう謝るのでしょうか。
さて、魚に限らず、生物はセシウム137をカリウムと同じように扱います。原子の周期律表で見ると、どちらも一番左の列(アルカリ金属)です。これは、セシウムとカリウムの性質が似ていることを示しています。言ってみれば、人間を含めて、生物は皆、セシウム137をカリウムと勘違いして体内に取り込んでしまうのです。
一方、カリウムは生物にとって不可欠な栄養素の一つです。農業関係、あるいは園芸を少しでもやったことがある人は、すぐに分かると思いますが、植物の三大栄養素は、窒素・リン酸・カリ(カリウム)。動物の体内でも、細胞の基本的な活動を支えています。
このカリウムの代わりに、放射線を長い期間にわたって発し続けるセシウム137が入り込んでしまったら… 恐ろしいことなのです。
栄養素を体内で濃縮するという生命体の基本とも言える活動が、危険な放射性物質を体内にため込む働きをしてしまう。このパラドックスは、地球上に、余分な放射性物質を絶対に作ってはいけないことを示しています。
魚と放射性物質 ― 2011/04/05 14:03
今ごろになって、「水産庁、検査強化 「魚の体内で濃縮せぬ」の見解再検討」だそうです。恐るべき不見識!
水産庁には、食物連鎖と生体濃縮に関する知識を持つ役人が一人もいなかった?そんなわけないでしょう。皆、運良く魚から高濃度の核分裂生成物(放射性物質)が検出されないことを願っていただけなのでしょう。自分が面倒な立場に追い込まれたくないだけの理由で。彼らは、漁民のことも、消費者のことも、まったく考えていないと断言したくなります。
さて事実関係ですが、茨城県沖で穫れたイカナゴ(コウナゴ)から高濃度のヨウ素131が検出されました。これは、私が思っていた以上に速いペースで、生体濃縮が進んでいるということです。半減期8日のヨウ素131でさえ、この調子です。セシウム137やストロンチウム90はどうなっているのでしょうか?
魚の体内に蓄積される放射性物質が、私たちに影響を及ぼすとしたら、間違いなく、それを食べたことによる内部被曝です。何度か書いているとおり、セシウム137は血流に乗って全身を巡り、肝臓や腸に癌などの障害を起こす可能性があります。ストロンチウム90は骨にたまり、造血細胞にベータ線を放射し、白血病を引き起こします。セシウム137とストロンチウム90は微量であっても恐ろしい放射性物質です。
ヨウ素131が検出されたイカナゴ(コウナゴ)は、常識的には、セシウム137やストロンチウム90も蓄積していたはずです。微量であっても、こういったデータは公開すべきです。もし、ゼロであったらあったで、不幸中の幸いとして、明確にすべきでしょう。情報の公開が、まだまだ滞っています。
水産庁には、食物連鎖と生体濃縮に関する知識を持つ役人が一人もいなかった?そんなわけないでしょう。皆、運良く魚から高濃度の核分裂生成物(放射性物質)が検出されないことを願っていただけなのでしょう。自分が面倒な立場に追い込まれたくないだけの理由で。彼らは、漁民のことも、消費者のことも、まったく考えていないと断言したくなります。
さて事実関係ですが、茨城県沖で穫れたイカナゴ(コウナゴ)から高濃度のヨウ素131が検出されました。これは、私が思っていた以上に速いペースで、生体濃縮が進んでいるということです。半減期8日のヨウ素131でさえ、この調子です。セシウム137やストロンチウム90はどうなっているのでしょうか?
魚の体内に蓄積される放射性物質が、私たちに影響を及ぼすとしたら、間違いなく、それを食べたことによる内部被曝です。何度か書いているとおり、セシウム137は血流に乗って全身を巡り、肝臓や腸に癌などの障害を起こす可能性があります。ストロンチウム90は骨にたまり、造血細胞にベータ線を放射し、白血病を引き起こします。セシウム137とストロンチウム90は微量であっても恐ろしい放射性物質です。
ヨウ素131が検出されたイカナゴ(コウナゴ)は、常識的には、セシウム137やストロンチウム90も蓄積していたはずです。微量であっても、こういったデータは公開すべきです。もし、ゼロであったらあったで、不幸中の幸いとして、明確にすべきでしょう。情報の公開が、まだまだ滞っています。
気がかりな農業・畜産業・漁業/福島浜通 ― 2011/03/29 06:12
福島第1原発の20㎞圏内に、「避難したら乳牛が死んでしまうから」と残り続けている畜産農家があるそうです。涙が出てきます。「オレたちは、何も悪いことをしていないのに」。あまりにも当然の言葉です。
畑に収穫寸前のキャベツを残してきた農家や、津波でやられた漁港に破損した漁船を残してきた漁師。彼らの無念はどれほどなのか、計り知ることすらできません。
今朝は、24日にキャベツ農家の男性が自殺をしていたという悲しいニュースが入ってきました。「東電と政府から補償金をもらえるのに、なぜ?」と思われる方がいるかも知れませんが、わが子同然に育ててきた作物や牛を失うことは、お金であがなえるものではないのです。しかし、死ぬのだけはやめてください。何も生みませんから。
今後、福島第1原発の周辺には立ち入り禁止区域が設けられ、一部の農家・酪農家・漁師は立ち退きになるのでしょう。補償も俎上に上がってきます。その時に、東電と国に求めたいのは、絶対に金銭だけの補償にしないということです。代替農地、代替牧場、代替漁港という物理的な補償を考えるべきです。勝手な言い分かも知れませんが、住民の皆さんも、絶対に農業や漁業を棄てないでください。仮に新しい農地を得たとしても、耕し慣れた畑と違って苦労の連続になることは分かっているつもりです。それでも、頑張って欲しい。そうしなければ、福島浜通の農業・漁業は消えてしまいます。
今もまだ、原発からの核分裂生成物(放射性物質)の漏出が止まりません。つい先ほどは、本サイトで再三危惧していたプルトニウムが原発附近の土壌から検出されたというテレビのニュースもありました(数日前には検出されていたようです)。よい方向に向かっているというニュースは、まだ一本も入ってきません。
畑に収穫寸前のキャベツを残してきた農家や、津波でやられた漁港に破損した漁船を残してきた漁師。彼らの無念はどれほどなのか、計り知ることすらできません。
今朝は、24日にキャベツ農家の男性が自殺をしていたという悲しいニュースが入ってきました。「東電と政府から補償金をもらえるのに、なぜ?」と思われる方がいるかも知れませんが、わが子同然に育ててきた作物や牛を失うことは、お金であがなえるものではないのです。しかし、死ぬのだけはやめてください。何も生みませんから。
今後、福島第1原発の周辺には立ち入り禁止区域が設けられ、一部の農家・酪農家・漁師は立ち退きになるのでしょう。補償も俎上に上がってきます。その時に、東電と国に求めたいのは、絶対に金銭だけの補償にしないということです。代替農地、代替牧場、代替漁港という物理的な補償を考えるべきです。勝手な言い分かも知れませんが、住民の皆さんも、絶対に農業や漁業を棄てないでください。仮に新しい農地を得たとしても、耕し慣れた畑と違って苦労の連続になることは分かっているつもりです。それでも、頑張って欲しい。そうしなければ、福島浜通の農業・漁業は消えてしまいます。
今もまだ、原発からの核分裂生成物(放射性物質)の漏出が止まりません。つい先ほどは、本サイトで再三危惧していたプルトニウムが原発附近の土壌から検出されたというテレビのニュースもありました(数日前には検出されていたようです)。よい方向に向かっているというニュースは、まだ一本も入ってきません。
食物連鎖と核分裂生成物 ― 2011/03/26 22:40
福島第1原発の排水から、基準値の千倍を超す濃度のヨウ素131、同じく79倍のセシウム137が検出されました。それを受けて、原子力安全委員会の班目春樹委員長は「放射性物質は海では希釈、拡散される」として、「人が魚を食べてもまず心配はない」との見方を示したそうです。東大や京大の教授を歴任し、今、原子力安全委員会委員長におさまっているこの人は、ホントに科学者なの?と疑いたくなります。
核分裂生成物(放射性物質)は、確かに海に流れ込めば希釈されます。しかし、それは植物プランクトンに吸収され濃縮されます。その植物プランクトンを食べた動物プランクトンの体内でさらに濃縮。食物連鎖に従って、貝類や小魚へ。そしてマグロやカツオなどの大きな魚へ。どんどん濃縮が進んで、最後は私たち人間の体に入ってきます。
環境ホルモンが問題視された時に、アメリカの国鳥であるハクトウワシが、農場や町で撒かれた殺虫剤・DDT(環境ホルモンの一つ)のせいで絶滅の危機に瀕していました。ハクトウワシは、農場の作物を突っついたわけではありません。雨で流れ出たごく少量のDDTを含む水が流れ込む先の湖に、たくさんのプランクトンがいて、そのプランクトンを食べた小魚を餌にして育った大きな魚をハクトウワシが獲っていたのです。ハクトウワシの体内では、DDTが深刻な濃度になっていました。この話は食物連鎖による毒物の濃縮の典型例とされています。「風が吹くと桶屋が儲かる」みたいな話ですが、食物連鎖とはそういうもので、生き物とはそういうものなのです。DDTの使用が禁止されると、ハクトウワシはその生息数を盛り返しました。
不要に危機感を煽るような発言は慎むべきだと思いますが、福島第1原発の事故による海洋汚染は、間違いなく進むだろうと考えられます。市場で最初に問題になるのは、おそらく海草と貝類でしょう。半減期の短いヨウ素131は深刻ではありませんが、生体がカリウムと間違って取り込んでしまうセシウム137と、カルシウムと容易に入れ代わるストロンチウム90が心配です(ともに半減期は約30年)。核分裂生成物が食物連鎖の輪に取り込まれるまでには、おそらく数ヶ月から数年あれば十分でしょう。
さらに、数日前に書いていますが、危険きわまりないストロンチウム90に関しては、東電からも国からも、まったくデータが公表されていません。いったいどうなっているのでしょうか。
福島と茨城県北部は、農業においても漁業においても、国内有数の生産地であり、先進的な取り組みをしてきた生産者も多い地域です。取り返しのつかない事態になってしまいそうで、考えれば考えるほど悲しくなります。
核分裂生成物(放射性物質)は、確かに海に流れ込めば希釈されます。しかし、それは植物プランクトンに吸収され濃縮されます。その植物プランクトンを食べた動物プランクトンの体内でさらに濃縮。食物連鎖に従って、貝類や小魚へ。そしてマグロやカツオなどの大きな魚へ。どんどん濃縮が進んで、最後は私たち人間の体に入ってきます。
環境ホルモンが問題視された時に、アメリカの国鳥であるハクトウワシが、農場や町で撒かれた殺虫剤・DDT(環境ホルモンの一つ)のせいで絶滅の危機に瀕していました。ハクトウワシは、農場の作物を突っついたわけではありません。雨で流れ出たごく少量のDDTを含む水が流れ込む先の湖に、たくさんのプランクトンがいて、そのプランクトンを食べた小魚を餌にして育った大きな魚をハクトウワシが獲っていたのです。ハクトウワシの体内では、DDTが深刻な濃度になっていました。この話は食物連鎖による毒物の濃縮の典型例とされています。「風が吹くと桶屋が儲かる」みたいな話ですが、食物連鎖とはそういうもので、生き物とはそういうものなのです。DDTの使用が禁止されると、ハクトウワシはその生息数を盛り返しました。
不要に危機感を煽るような発言は慎むべきだと思いますが、福島第1原発の事故による海洋汚染は、間違いなく進むだろうと考えられます。市場で最初に問題になるのは、おそらく海草と貝類でしょう。半減期の短いヨウ素131は深刻ではありませんが、生体がカリウムと間違って取り込んでしまうセシウム137と、カルシウムと容易に入れ代わるストロンチウム90が心配です(ともに半減期は約30年)。核分裂生成物が食物連鎖の輪に取り込まれるまでには、おそらく数ヶ月から数年あれば十分でしょう。
さらに、数日前に書いていますが、危険きわまりないストロンチウム90に関しては、東電からも国からも、まったくデータが公表されていません。いったいどうなっているのでしょうか。
福島と茨城県北部は、農業においても漁業においても、国内有数の生産地であり、先進的な取り組みをしてきた生産者も多い地域です。取り返しのつかない事態になってしまいそうで、考えれば考えるほど悲しくなります。
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