除染考(2):除染にゼネコンは必要なのか?2013/01/31 15:32

まずは下の表をご覧ください。
国や地方自治体から、除染事業のために巨額の資金が大手ゼネコンに流れ込んでいるのが分かります。

ゼネコン。正しくは General Contractor ですから、直訳すれば総合建設業といったところでしょう。

もちろん、元請けはゼネコンでも、実際に現場で働いている人たちは、地元や日本各地で集められた労働者。その多くは日雇い契約か短期間の契約です。そして、ゼネコンとの間には、何社もの下請け業者が入っていて、労働者に本来渡らなくてはいけない賃金が、途中で抜かれるという事態も起きています。
電話1本で仕事を右から左へ流しているだけの仲介業者も多く、暴力団のフロント企業が入り込んでいるとも言われています。なにしろ、元請けのゼネコンですら、複雑な下請け構造の全体を掌握できていない状態なのです。
J-CASTニュース:手抜き除染の「実態」 元請けゼネコンも把握できない?

素直に考えれば、福島地元の建設会社や土建会社に、国や自治体が直接発注すれば、下請け構造による問題はかなり解決されるような気がします。

では、なぜこの総合建設業、ゼネコンが除染に必要なのか?
国や自治体の説明は、
1. ゼネコンは最新の除染技術を持っている。
2. 巨大な除染事業を多くの事業者に振り分ける能力が自治体にはない。
といったところです。

まず、1.です。最新技術で飛躍的に除染が進んだ、なんていう話はどこからも聞いたことがありません。それどころか、放射性物質を含む水をそのまま河川に垂れ流したり、汚染された枯れ枝を放置したりと、とても信じられないような事態が起きているのです。
「手抜き除染」と言いますが、これは立派な違法行為。放射性物質を環境中に廃棄したり、許可なく移動させることは法で禁じられているのです。
もし、最新技術を売りにして、ゼネコンが入札に勝ったのなら、その証を見せてもらいたいものです。それ以前に、入札の内容を全面的に公開すべきでしょう。企画内容から見積に至るまで、万人の監視が必要です。

国とゼネコン、地方自治体とゼネコンという利権構造にくさびを打ち込まなければ、除染は、原発で儲けた連中が、また儲けるだけのものになってしまいます。おまけに、実際の効果はほとんどないと。こんなことは許されません!

環境省のホームページに、田村市の除染作業をリポートした写真がありました。

この作業のどこにゼネコンが必要で、最新技術はどこに生かされているのか?誰でも疑問に思うでしょう。

脱原発の選挙へ2012/11/17 13:22

12月16日の衆院選挙が決まりました。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、消費税増税など様々な問題を抱える今ですが、最大の争点は、言うまでもなく原発問題です。
本気で脱原発に向かえるのか?
福島の被災者を救えるのか?
私たちが、これからの原子力政策を決める場。それが今回の衆院選なのです。
具体的には、投票で意思表示をするわけですが、なにしろミニ新党乱立状態。どの政党がどんな主張をしているのか、正確に掌握している人は少ないのではないでしょうか。そこで、今現在の各党の主張をまとめてみました。選挙公約として公表されているものあれば、代表者の発言を要約したものもあります。また、選挙戦が進むと、言うことを変える政党も出てくると思います。そこまで含めて注視していきましょう。

●ただちに、全原発を廃炉へ
一覧表を見ると、明確に原発推進を打ち出しているのは、自民党と国民新党、太陽の党です。他に、公明党は自民党とともに原発推進を担ってきた勢力であり、再稼働も容認の立場。日本維新の会も再稼働容認。これらの政党は問題外です。

民主党は「原発をゼロにする方向感」という、なんとも分かりにくい曖昧さ。一方で、再処理を推進し、大間原発の建設再開、原発輸出推進など、矛盾だらけです。これを脱原発の立場と見ることは出来ないでしょう。民主党が本気で脱原発に取り組んできていれば、3.11から1年8か月もたった今、こんな状態にはなっていなかったはずです。

「日本の主要政党の中で唯一、脱原子力の立場を明確にしている政党」と威張る社民党。そのホームページを見ると、「実際に電力エネルギーの3分の1程度を原子力が担っている現実は無視できませんし、直ちにすべての原子力発電を廃止することは現実的ではありません」という言い訳が目を引きます。この夏、稼働していた原発は大飯だけ。無理矢理火力を止めて「電力が足りないふり」をしようとした関西電力でしたが、結局、原発なしでも電力は足りていました。社民党はいったい何を考えているのかと疑いたくなります。直ちに全原発の廃炉は可能です。

共産党は今は「即時原発ゼロ」ですが、3.11以前は「原子力の平和利用賛成」の立場でした。反省しろ!とか、総括しろ!とか古くさいことを言うつもりはありませんが、なぜ、「原子力の平和利用賛成」から「即時原発ゼロ」へと主張を変えたのかを明確にすべきでしょう。なぜなら、そこに私たちが原発推進派に騙され続けてきた理由が隠されているからです。

他にも、脱原発を主張する政党はありますが、どこも、どうやって全原発の廃炉を実現するのか、ロードマップ的なものを提示できていません。
ここでは、原発反対派が一致して合意すべき『ただちに脱原発』ロードマップのアイデアを公開したいと思います。

この図だけではありませんが、当ブログの静止画は、基本的にリンクフリー、コピーフリーです。気に入ったものがあったら、どんどんご活用ください(出典だけ明記をお願いします)。

さて、図を見て頂ければ、おおむねの流れはお分かりいただけると思いますが、何点か補足説明をしておきます。

まず、原子炉からの核燃料の取り出しを急ぐのは、そのままでは大きな危険があるからです。「取りあえず止まっていれば大丈夫なのでは」と思われる方がいるかも知れませんが、そうではありません。
原子炉が停止していれば、確かに、スリーマイル島やチェルノブイリのような運転ミスが引き金になるような事故は起きません。しかし、なんからのトラブルで冷却水が抜けたり、循環しなくなった時、福島第1と同じようなメルトダウン事故は起きるのです。それは、使用済み核燃料が激しく発熱しているからです。なんらかのトラブルとは、大地震とか津波、飛行機の墜落、隕石の衝突など、いろいろ考えられます。
ですから、原子炉内にある使用済み核燃料をできるだけ早く、少しでも安全な冷却プールに移す必要があります。さらに発熱量が少なくなったら、共有プールに移すべきです。

新燃料の核燃料会社への返却売却は、夢物語ではありません。本ブログで既報の通り、世界有数の核燃料供給企業『カメコ』が、買い取りの姿勢を示しています。

●福島の被災者を救う道
各政党の原発政策を読んで驚くのは、どこも、福島の被災者たちをどう救うのか、具体的な提案をしていないことです。
いまだに高い放射線量下にありながら、移住する権利を認められていない人たちがたくさんいます。全域が警戒区域に指定されている双葉町の住民は埼玉県の旧騎西高校に集団避難。いまも200人ほどが廃校で集団生活を送っています。それを忘れてはいけません。
移住する権利、新しい生活をはじめる権利はないがしろにされたままなのです。
すべての政党・候補者は、福島の被災者をどう救うのか、その方針を明らかにすべきです。

●私たち自身が、政党や政治家を引っぱる気持ちで!
一つ勘違いしたくないのは、私たちは、自分の意見に合う政党や政治家を選ぶだけではないということです。
たとえば、大規模なデモや集会が、政治を動かす力を持っていることは、この間、明らかになっています。そこまで行動できないという人たちは、とにかく、原発のことを家族や友人と語り合うことです。それが束になれば、政治を動かせます。
私たち自身が、政党や政治家を引っぱる気持ちで、今回の衆院選に臨みましょう。
必ず『脱原発の選挙』にしなくてはなりません。

2万年前の日本列島 10万年後の日本列島2012/11/07 20:13


上の地図は2万年前の日本列島の姿。細い線は現在の海岸線です。日本列島が大きく動いていることが分かります。
2万年前と言えば縄文時代以前。しかし、この列島には、すでに人が暮らしていました。それを「遠い昔」と呼ぶのか「たった2万年前」と呼ぶのかは、主に文学的な問題でした。核廃棄物が抱える巨大な闇が明らかにされるまでは…

この地図をじっくりと眺めて、今までの当ブログの主張を一部修正する必要があると気がつきました。新たな結論は、「日本には放射性廃棄物の最終処分場を作る場所はない」ということです。
再処理をしようがしまいが、原発が動いている限り、高濃度の放射性廃棄物が生まれ続けます。これまで「原発賛成派であろうが、反対派であろうが、最終処分場の問題を避けて通ることはできない」と主張してきましたが、実は最終処分場の設置・建設自体が不可能なのです。少なくとも、日本列島では。

再処理工場から出てくる高線量放射性廃棄物は、ガラス固化体という形です。原発から出た使用済み核燃料から、プルトニウム239とウラン235を可能な限り取り除いて、ガラスで固めたものです。濃縮してますから、セシウム137やストロンチウム90といった核分裂生成物や、アメリシウムやネプツニウムといった超ウラン元素の濃度は、元の使用済み核燃料よりも、ずっと高くなっています。核分裂生成物も超ウラン元素も、危険極まりない放射性物質であることは言うまでもありません。このガラス固化体は、当然、強い熱と放射線を発します。出来てから数年は、近づいただけで死に至るという恐ろしい代物です。

一方、再処理をしない直接処分ではどうでしょうか?
この場合、高線量放射性廃棄物とは使用済み核燃料そのもの。これは、数年間水の中で冷やし続けないと、みずからが発する崩壊熱で溶け出してしまい、臨界に達する恐れがあるという、これまた恐ろしい代物。臨界になれば、大量の熱と放射線が発せられ、一大事となります。

ガラス固化体にしても、使用済み核燃料にしても、環境に悪影響を及ぼさないレベルにまで放射線量が下がるのに、十万年以上かかると言われています。
その時まで、今の人類が生きながらえるのだろうか?放射性廃棄物の危険性を語り継ぐことができるのだろうか?
世界に先駆けて最終処分場を建設し、その本格稼働を前にしているフィンランドから問題提起したのが、映画『100000万年後の安全でした。

話を地図に戻しましょう。
2万年前と比べただけで日本列島は大きく動いています。ゆっくりとした小さな陸の動きは、やがて大きな歪みを生み、陸地を大きく動かします。大きく陸地が動く時、必ず大地震が発生します。
上の地図を見ただけで、たった2万年の間に日本列島が、どれほどの大地震に見舞われてきたのか、大地がどれほど動いたのか、想像がつきます。また、大地が動けば、そこにひび割れが入ります。粘土を強くねじった時と同じです。それが活断層。活断層は、新たな地震で陸地が動く起点になります。日本中いたるところに活断層があるというのも、この1枚の地図から十分に想像できることなのです。
2万年は、一人の人生にとっては、とても長い年月ですが、放射性廃棄物にとっても、陸地の移動にとっても、きわめて短い時間に過ぎません。2万年では放射線は十分には減らないし、2万年あれば陸地は大きく動いてしまうのです。日本列島に限って言えば、2万年の間、安定して動かない場所を特定することは不可能です。

さて、最終処分場は、別の言い方で地層処分とも言います。数十万年先まで動く可能性のない硬い地層の中に核廃棄物を埋めようとするからです。しかし、そんな場所は、この日本列島にはない。それが結論です。

原子力発電。私たちは、なんという浅はかな選択をしてしまったのでしょうか。
今出来ることは、まず、これ以上、1ベクレルたりとも放射性廃棄物を増やさないこと。そのためには、大飯原発の稼働を直ちに止め、大間原発の建設を中止すること。そして、すべての原子炉から核燃料を取り出し、廃炉決定すること。他に道はありません。

すでにある放射性廃棄物への対処は、日本学術会議が提唱している「何かかあったら取り出して他に移せる暫定保管」と「廃棄物の総量管理」しかないでしょう。苦渋の選択ですが、それが原子力発電の大きなツケなのです。

日本学術会議と言えば、良くも悪しくも日本のアカデミズムの頂点。その学術会議が、報告書の中で「地震や火山活動が活発な日本では、処分場の安定性が数万年以上、維持されるかどうかは科学的に予測不可能」と明言しています。
重く受け止める必要があると同時に、冒頭の地図を見て頂ければ、それは誰もがたどり着く結論でもあります。

参考:『高レベル放射性廃棄物の処分について』日本学術会議

福島は今、どうなっているのか…2012/11/07 13:18

今回は、空間線量(=外部被ばく)の視点から、今の福島を冷静に見直してみたいと思います。

下の2枚の表をご覧ください。11月7日の午前9時前後に文部科学省の「放射線モニタリング情報」から得たデータです。


3.11以前の空間線量は全国平均で約0.04マイクロシーベルト/時でした。もちろん福島も例外ではありません。

今現在、居住制限のかかっている地域では、3.11以前の数十倍という空間線量になっているのが一目瞭然です。なんの制限もかかっていない地域でも、5倍から10数倍という場所があります。これを胸部X線撮影での被ばく量(1回約0.1ミリシーベルト)と比較すると、20回分以上という場所が続々出てきます。「年に20回以上も胸のレントゲンを撮る」と言われたら、誰だって尻込みするでしょう。

国が定めている居住制限の線引きは20ミリシーベルト/年です。これは毎時に直すと3.8マイクロシーベルト/時になります。葛尾村で0.689、飯舘村で0.793と1.124。「3.8マイクロシーベルト/時(=20ミリシーベルト/年)に比べると、かなり低いのではないか」と思う方がいるかもしれません。しかし、これらの数値は、すべて居住空間に近い場所で計測されたものです。周りには、山林や放置された農地がたくさんあり、20ミリシーベルト/年を大きく越えています。ちなみに、20ミリシーベルト/年は胸部X線撮影200回分に相当します。

いつの間にか決められてしまった20ミリシーベルト/年。この数値は、ICRP(国際放射線防護委員会)の「緊急時の基準」をより所としています。安全だという裏付けはまったくありません。ICRPが公衆の被ばく線量限界として勧告しているのは、外部被ばく、内部被ばくを合わせて1ミリシーベルト/年です(それすら安全の裏付けはなく、放射線はどんなに微量であっても人体に害のあるものです)。

ここで、20ミリシーベルト/年で線引きされた居住制限等の内容を簡単に整理しておきましょう。
●避難指示解除準備区域
避難指示区域のうち、放射線の年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実と確認された地域。宿泊禁止。製造業などの事業再開許可。
<経産省からの通達>
●居住制限区域
避難指示区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、引き続き避難を継続することが求められる地域。製造業などの事業再開許可可能。
<経産省からの通達>
●帰還困難区域
5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれがあり、年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域。
●警戒区域
立ち入り禁止区域

驚くべきことは、「居住制限区域」や「避難指示解除準備区域」において、すでに業務の再開などが認められていることです。
移住権を認めないどころか、危険な場所へ帰ることを奨励している!こんな国がどこにあるでしょうか!

参考のために、チェルノブイリと福島の居住制限等に関する基準の違いを下に示します。チェルノブイリの高濃度汚染地域は、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの3国に広がっていますが、3国ともほぼ同じ基準で被災住民に対応しています。

図をご覧いただければ、もう何も語る必要はありません。
原発事故被災地の人たちは、今、とても危険な状況に放置されています。
国や自治体は、「1ミリシーベルト/年を越えるエリアでは、無条件で移住権を認める」といった施策を積極的に実行すべきです。その時、「10ヘクタールの水田を持っていた人には10ヘクタールの水田を」「100頭の牛を飼っていた人には100頭の牛と牛舎を」という、「生産力として等価」という考え方が必要です。「金銭的に等価」では、営々として作り上げてきた地方の文化は、間違いなく崩壊します。
例えば、「長年耕してきた10ヘクタールと新たな10ヘクタールでは、まったく違う!」という声が出るでしょう。被災地の人たちにとって、移住が苦渋の決断であることは、もちろん理解しています。しかし、ギリギリの選択としては、「ふるさとよりも命」あるいは「ふるさとよりも安心、安全」を取るべきです。共同体が一体となって移住できる道を国や東電に求め、みずからも探ることが第一ですが、個別に移転していく道も閉ざす必要はありません。

多くの自治体首長や市町村会議員が、「帰還」「除染」を声高に言うのは、自分の議席や票田がなくなるのを恐れているからに過ぎない、と冷たく見切る必要もあります。

除染は容易ではありません。高圧放水を使うと壊れてしまう家屋がたくさんあります。山林の除染の見通しは立たず、そこから流れ出る水は、苦労して除染したはずの水田へも向かいます。
仮に住宅と道路と商業施設の除染がある程度できたとして、子供たちに「放射性物質があるから山には入ってはいけない」「川の魚は獲るな」「キノコは採るな」と何十年にも渡って言い続けることができるのでしょうか…

原発再稼働と総括原価方式の闇2012/08/26 11:21

この夏、関西電力管内も含めて、原発なしで電力は十分に足りていました。
関西以外のエリアでは、すべての原発が止まっています。しかし、計画停電も、強制的な節電もなく夏が乗り切れています。一般家庭や企業における、ちょっとした節電意識の高まりだけで原発は要らなくなったのです。いや、そもそも、要らなかったと言うべきでしょう。

最大の問題は、原発依存率がもっとも高い関西でした。関電と国は「大飯を再稼働しないと過酷な計画停電を実行するしかない」「産業への影響が多大」といった脅しをかけて、大飯原発3号機・4号機の再稼働を強行しました。高まる再稼働反対の声に耳を貸さずに。

迎えたこの夏は、全国的な猛暑。関西もその例外ではありません。しかし、「原発再稼働しとったから、エアコン止まらんで助かったわ~」とはならず。関西の夏もまた、原発なしで十分に乗り切れたことが明らかになったのです。

電力不足予測過大だった【京都民報】

振り返ってみると、京都大学の小出先生をはじめとする良心的な研究者たちは、3.11の直後から「原発がなくても電力は足りる」と主張してきました。

小出先生の意見(PDF)

しかし、原発推進派は「小出さんは反対派だから都合の良いデータだけで計算している。もし、大停電が起きたらどうするのか!」などと叫んで、正しい意見を押しつぶしてきました。

それにしても、なぜ、電力会社は原発にこだわり続けるのか… ひと言でいえば、儲かるからなのです。
電気事業法によって定められた総括原価方式によって、日本の電力会社は、絶対に損をしない仕組みになっています。
簡単に言えば、資産に対して一定の比率で電力会社の報酬が決められ、「原価+電力会社の報酬=電力料金収入」となっているのです。この電力料金収入から、電気料金を算出するのです。これでは、企業努力や自由競争による料金の値下げなど絶対にあり得ません。

上の図を見て頂ければ、高額な資産を持てば持つほど電力会社の報酬が増えるのがお分かりだと思います。だから、「高額な資産=原子力発電所」を持ちたがるのです。
信じられないことに、危険極まりない使用済み核燃料まで資産として計上されています。資産額が電力料金に跳ね返るのは、言うまでも有りません。

「原発ゼロ=全原発の廃炉」が決定されれば、原発も使用済み核燃料も資産価値がゼロになります。その分、電力会社の報酬は減ります。一方で、廃炉費用を原価に組み込むことが出来なければ、電気料金を下げざるを得なくなるのです。総括原価方式がある限り、電力会社が原発ゼロに首を縦に振るワケがないのです。

では、どうすればよいのか…
「ただちに全原発の廃炉」を求めると同時に、「総括原価方式の廃止」「地域独占の廃止」「発送電の分離」の3つを実現することです。
そんなことをすれば、電力会社が潰れてしまう?大丈夫です。私たちが支払ってきた電気料金で作り上げた送電網という巨大な資産があるのですから。

『崩れ始めた世界の原子力ムラ』と日本2012/08/03 13:58

原発の開発・建設で長年に渡って先頭を走ってきたゼネラル・エレクトリック社(GE)のCEO、ジェフ・イメルト氏が『世界の原子力ムラ』を震撼される衝撃の発言です。

米GE「原発の正当化、難しい」CEO発言、英紙報道【朝日新聞】

米GEのCEO、原発「正当化難しい」英紙に語る 【日本経済新聞】

発言の概要は、
●原子力発電が他のエネルギーと比較して相対的にコスト高になっている。
●原子力発電を経済的に正当化するのが非常に難しくなっている。
●天然ガスが非常に安くなり、いずれかの時点で経済原則が効いてくる。
●世界の多くの国が(天然)ガスと、風力か太陽光の組み合わせに向かっている。
です。

背景には、天然ガスの産出量増加や、自然エネルギー分野で進む技術革新と並んで、福島第1の事故で補償や廃炉にかかる費用が膨大になることがあります。また、3.11以降、各国で原発に対する審査や規制が厳しくなっており、これもコストを引き上げると見ているのです。世界の原子力ムラの中心人物が、原子力発電のコストが実は安くないことを明言したのです。

一方、日本では、東京電力への1兆円の公的資金投入をめぐって、枝野経産相が注目の発言です。

東電に1兆円公的資金投入 経産相「国有化は相当長期」【朝日新聞】

国有化の期間が「相当長期にわたる」と述べたのは、福島第1の廃炉や賠償の費用が巨額となり、その概算の見積りすら不可能なことが理由です。

原子力なのか自然エネルギーなのかを巡って、コスト論争が盛んに行われていますが、実は、事故処理や補償まで含めたら、原子力発電のコストは実質的には青天井。幾らになるかまったく分からない状態なのです。

そんな中で行われた東電への1兆円公的資金投入。赤ちゃんから高齢者まで含めた頭割りで一人1万円。4人家族で4万円。どれほど大きな金額かお分かりいただけるでしょう。これは私たちが背負ったあらたな原子力発電のコストです。それも、今までに原発で発電した分に対するコストだということを忘れてはいけません。この1兆円は、東電が倒産しないように支えるためだけの資金であって、何も生みません。

話をGEに戻しましょう。
福島第1の1号機から5号機はGEのMark1と呼ばれるタイプの原子炉です。このうちの3基がメルトダウン事故を起こしました。
今の段階では訴訟はなっていませんが、Mark1には元々欠陥があると指摘されており、今後、GEの責任が公の場で追求される可能性も高まっています。

GE Mark1 設計に特有の脆弱さ【本ブログ】

さて、GEは日立と組んで原発の推進を進めてきました。
提携開始は2007年。比較的最近のことです。見方によっては、GEはリスクの一部を日立に肩代わりさせようとしているとも読めます。

ここで世界の世界の原子炉メーカーを見てみましょう。ロシアのロスアトムを含めて4グループしかありません。

このうち、ウェスティングハウスは2006年に東芝の子会社になっています。
ウェスティングハウスがアメリカの企業からイギリスのBNFL(英国核燃料会社)に売却されたのは1998年。それが東芝に転売されたのです。

現時点で世界最大の原子力産業と言われるフランスのアレバ社は、三菱重工と提携・協力関係にあり、各国で原子炉の売り込みをしています。六ヶ所村再処理施設にも大きく関わっています。2社の提携は2008年以降に強化されています。

こうして見ると、ここ数年の間に世界の原子力産業の最先端に日本企業が躍り出た感があります。しかしそれは、同時に原子力事故に対する巨大なリスクを背負い込んだとも言えるのです。

GEについては、原子力関連の売り上げは全社の1%しかありません。仮に世界中の原子炉が、今すぐ廃炉になっても蚊に刺された程度なのです。原子力部門をすべて日立に売却してしまっても同じことです。
前述の通りウェスティングハウスは、すでに東芝の子会社です。アメリカ系2社に代わって、世界の原子力産業の中心を担おうとしているのが東芝と日立。
逆に言えば、アメリカやイギリスの企業は、過酷事故の際に責任を追及されるリスクの高い原子炉の建設や保守・管理から体よく逃げ出そうとしているのです。この見方は、当方自身、「うがった見方」とことわった上で、これまで何度か書いてみましたが、本記事冒頭のGEのジェフ・イメルトCEOの発言を読むと、あながち「うがった見方」ではなく、ほぼ当たっているのではないかという確信を得ています。

原発推進の旗を振ってきたアメリカとイギリスが逃げ出す。このままでは、取り残されるのは日本です。アメリカのオバマ政権は、原発の新規建設に手を付けていますが、その原子炉のメーカーはウェスティグハウス(=東芝)なのです。

ヒロシマ、ナガサキで悲惨な被害を被り、福島第1で3つの原子炉のメルトダウンという、人類史上かつてない過酷事故を引き起こした日本。今すぐにでも、世界から原発と核兵器をなくすための最先頭に立たなくてはいけません。
『世界の原子力ムラ』が崩れ始めている時に、私たちがもたついている理由はどこにもありません。

東電に値上げを言う権利はあるのか?2012/07/21 09:56

結局、東電の値上げ申請が認められることになりそうです。
経営の悪化の原因は言うまでもなく福島第1の事故。消費者庁が少しだけ頑張った形跡はありますが、いずれにしても過酷事故のツケを電力使用者に押しつけてくることには、誰も納得がいかないでしょう。

『東電値上げ8.47% 消費者目線、置き去り』【毎日新聞】

「東電の資金がショートしてしまって、労働者に給料が払えないとか、下請けに支払いができないといった事態に陥ると、大停電が起きてたいへんなことになる」というのが威し文句なのですが、電気料金の値上げと公的資金(要するに税金)の注入の前に、やるべきことがたくさん残されています。
「経理全面公開」「未使用ウラン燃料売却」「全資産売却」「全関連企業の整理・売却」「経営陣・管理職徹底合理化」「発送電分離」です。
羅列しただけでは、空スローガンと批判されそうなので、簡単にその中身を解説します。

●経理全面公開
過去にさかのぼって、東電の全帳簿を誰もが閲覧・監査できるようにします。
経理上、本当に無駄がないかが調べられるし、グレーのカーテンの向う側にある原発を巡る金の流れが明らかになるでしょう。
現行法では、企業に経理全面公開を求めることはできないと思いますが、実質国営化されている現状なら、政府が判断を下せば良い問題です。
私たちは、良心的な公認会計士を雇って、東電の会計のすべてを詳しく監査することができます。また、メディアも自由に調べることができます。

そもそも、競争相手のいない企業ですから、経理全面公開による経営上の不利益はないはずです。

●未使用ウラン燃料売却
東電は、未使用のウラン燃料を大量に抱え込んでいます(残念ながら数値データ無し)。これらについては、カナダに本拠地を置く世界有数の核燃料供給企業『カメコ』が、買い取りの姿勢を示しています。使うアテのないウラン燃料を直ちに返品すべきです。数千億円分はあると見られています。

参照記事:世界の原子力利権と日本①『ウラン採掘総元締めの予想外』

●全資産売却
東電病院の売却問題がクローズアップされていますが、他にも売れる資産は山ほどあります。すべて売り、賠償に充てるべきです。

まず不動産ですが、時価100億円超とされる日比谷の本店。他にも、社宅や寮、保養所といった福利厚生施設などが数百あります(すでに一部は整理に入っている模様)。発電に利用していない土地は約1000万坪。これを10万円/坪で計算すると10兆円になります。
動産では有価証券。上場企業の分だけで約3000億円。非上場が700億円。
東電は、桁外れの資産を隠し持ったままなのです。

送電網も全資産に含まれるのですが、これに関しては、最後の「発送電分離」で取り上げます。

●全関連企業の整理・売却
東電は169社の子会社と89社の関連会社を抱えています。その多くが、旧通産省・経産省・文科省・東京都・東電OBの天下り先です。
これらを整理し、売れる会社は売ってしまえば、損害賠償の足しになります。

●経営陣・管理職徹底合理化
言わずもがななので、ここで多くは語りません。

●発送電分離
送電設備=2兆923億円、変電設備=8288億円、配電設備=2兆1540億円。東電が持つ送電関連の固定資産です。合計で5兆円にもなります。これらを複数の民間事業者に売却すべきです。
残る東電が発電部門と賠償補償を担うか、発電部門も売却して東電は賠償補償機関としてだけ残すという二つの方法があります。

いずれにしても、東電の資産は、ほぼすべてが私たちが支払った電気料金を元手にしているものです。その資産を売ることによって、電気料金の値上げと税金の投入を抑えんがら、被害者への補償の原資が得られるなら、実行しない手はないのです。東電の資産は、もともと私たちのお金。このことを忘れないようにしましょう。

そして、発送電まるごと地域で独占という、およそ自由競争とかけ離れた経営の上にあぐらをかいてきたのが日本の電力会社です。これを機に、すべての電力会社について発送電の分離を実行すべきです。

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ちょっと例えは悪いかも知れませんが、大型バスが多数の歩行者を巻き込んだ重大事故を起こしたとします。当然、被害者に対して賠償をしなくてはならないのですが、バス会社は資産を隠して「お金がない」と言い張ります。そして、賠償責任は乗客に転化すると。理屈は、「お客さんたち、バスに乗ってたんでしょ」。
こんな馬鹿げた話はないのです。バス会社はすべての資産を売り払ってでも賠償すべきでしょう。
東電に、値上げを言う権利はありません!

決戦は金曜日2012/07/07 15:45

毎週金曜日に行われている首相官邸前の反原発集会。大飯原発の再稼働問題がキッカケとなって、大きな盛り上がりを見せています。永田町・霞ヶ関付近を万を超えるデモ隊が埋め尽くしたのは、1960年の安保闘争以来です。

6月22日 4万5千人(警視庁調べで1万1千人)
6月29日 15万~18万人(警視庁調べで1万7千人)
7月6日 15万人(警視庁調べで2万1千人)

大飯原発再稼働が強行され、あいにくの雨模様。昨7月6日は、どのくらいの人が集まるのかと、やや心配をしていましたが、杞憂に過ぎませんでした。警視庁発表では、これまでで最大の人数に。
みんな怒っています!そして、みんな元気です!

同行記風にこの日の抗議行動をリポートします。
友人とともに丸ノ内線の国会議事堂前駅に到着したのが18時半頃。改札を出たところで、いきなり機動隊による規制。地上に出ることさえ許されない!駅構内は原発反対の人々であふれかえっていました。ここで10分から15分ほど足止めされ、4番出口(①)からようやく外に出ると、今度は、官邸とはまったく逆方向へ押しやられてしまいます。

さらに、衆院第二別館の横から六本木通りへと坂を下ろされ、内閣府下の交差点(②)へ。ここで抗議行動かと思いきや、機動隊と抗議行動の主催者が、今度は、財務省上交差点(③)方面へ向かえと… 野田内閣に、日本政府に抗議しに来たのに、首相官邸から遠ざけられるばかり。一緒に歩いていた数千人の中に、ある種の焦燥感が漂ったのは事実です。

ようやく抗議の人波の最後尾と思われる財務省上交差点に到着したのが、19時10分頃。ところが、そこには多数の機動隊がいて、最後尾への合流を阻止。道路の横断を阻んだ上に、「後ろへ戻れ」と。
どこに戻れというのか!私たちは首相官邸に向かうのだ!
まったく理不尽な規制に対して、怒りの声が大きく湧き上がりました。そして、10分ほどのにらみ合い。機動隊の指揮系統に「渡らせるか、渡らせないか」で混乱が発生。そこをついて、大人数が雪崩を打って六本木通りを横断。「再稼働反対!」「原発いらない!」コールが雨の夜空にこだまします。
次の瞬間、ついに野田政権、日本政府への怒りが爆発しました。数千人が一気に機動隊の規制を打ち破り、車道へとなだれ込んだのです。数秒のうちに衆院第二別館側の片側3車線が人々で埋まり、次の10数秒で国会議事堂側の車線まで埋め尽くしました。機動隊は手も足も出せません。
ちょっと古い言葉ですが、『解放区』状態。この時の写真は、各メディアが伝えている通りです。

昨夜、機動隊の指揮官は上層部から大目玉を喰ったことでしょう。なにしろ、衆院南門から総理官邸前まで、200メートル以上の6車線を完全に「不法占拠」されてしまったのですから。おそらく来週は、新手の規制を敷いてくるでしょう。しかし、数万の人々が集まった時、機動隊が何かを出来るわけではありません。私たちは、金曜日の夜、官邸前に集まり、抗議の声を上げ続けます。大飯原発が再停止し、すべての原発の廃炉が決定するまで。

そう言えば、DREAMS COME TRUEのヒット曲に「決戦は金曜日」という歌があったなぁ… 突然思い出して、歌詞を検索してみたら、あまりにも、この間の官邸前抗議行動を暗喩しているので、ビックリ。これは天才的だ!詞をまるごとコピペすると著作権法違反になるので、リンクだけ貼っておきます。

『決戦は金曜日』

「強大な力」「ふくれた地下鉄」「戦闘の準備」「退がらない」等々。吉田美和の詞には、今の私たちのためのキーワードが散りばめられています。

そう、決戦は金曜日!怒りを持続し、さらに高め、野田政権・日本政府への抗議の声を上げ続けましょう。

大飯原発再稼働は歴史に残る大愚行2012/07/03 09:58

多くの方から「遅すぎる!」とお叱りを受けそうですが、今回は、大飯原発の危険性を主にその立地から考えていきたいと思います。

最初に、当サイトが作成した『日本国内の原子力施設』 で、大飯原発の場所を確認してください。原発銀座と呼ばれる若狭湾の一番奥まったギザギザの地形が目立つあたり、大島半島の先端部にあります。
クローズアップすると下の地図になります。

若狭湾は三陸海岸と並ぶ日本を代表するリアス式海岸。数多くの入り組んだ狭い湾があるのが特徴です。リアス式海岸はひとたび津波に襲われると、波が急激に高くなって大きな被害に見舞われます。東日本大震災で岩手県沿岸を襲った大津波には、このメカニズムが大きく働いていました。

若狭湾を襲った巨大津波として、もっとも知られているのは1586年の天正大地震によるもの。当時、日本で布教活動をしていた宣教師のルイス・フロイスは『日本史』の中で、「ちょうど船が両側に揺れるように震動し、四日四晩休みなく継続した。その後40日間一日とて震動を伴わぬ日とてはなく、身の毛もよだつような恐ろしい轟音が地底から発していた。若狭の国には、海に沿ってやはり長浜と称する別の大きい町があった。揺れ動いた後、海が荒れ立ち、高い山にも似た大波が遠くから恐るべきうなりを発しながら猛烈な勢いで押し寄せてその町に襲いかかり、ほとんど痕跡を留めないまでに破壊してしまった」と記しています(フロイスが「長浜と称する別の大きな町」としているのは、琵琶湖東岸の秀吉お膝元の町・長浜と区別するため)。

また、詳細は明らかになっていませんが、江戸時代には、現在の美浜町の一部で一つの村が津波によって跡形もなく消えたという記録もあります。
<美浜の村誌「大津波で村全滅」 原発立地の若狭湾内>(福井新聞)

1662年(寛文2年)に発生した寛文地震では、津波の記録こそありませんが、三方五湖(現在の美浜町から若狭町にかけて位置する5つの湖)附近で、大規模な隆起や沈降が起き、多くな被害がもたらされたことが記録されています。
<寛文地震に関する資料>
三方五湖と大飯原発は、20㎞ほどしか離れていません。

さて、大飯原発に近づいて行くとこにしましょう。
大島半島の先端に向かうには、たった1本の道、県道241号線しかありません。

もし、原発が事故を起こした時に、地震による崖崩れや津波被害で、この道が寸断されたら… 原発至近の大島集落から避難するルートは、海路以外なくなってしまいます。また、事故を最悪の状態にしないための電源車や放水車を原発に運び入れることも、まったく不可能になってしまいます。

もう少し進むと、県道241号線から原発へ入るためには、2本のトンネルしかないことが分かります。トンネルの入り口が地震によって崩れやすいのは言うまでもありません。

福島第1の事故によって、原発の外部電源喪失が容易に起きることは誰の目にも明らかになりました。
福島と違って、仮に非常用ディーゼル発電機が作動したとしても、その燃料が持つのは数日。しかも、大地震、大津波に見舞われれば、そこら中にトラブルが起きます。ディーゼル発電機だけで過酷事故が回避されると考える方に無理があります。陸路の補給なしに、どうやって収拾するのでしょうか。

陸路でのアクセスが自由に行える福島第1でさえ、今の状況なのです。大飯で何かがあったら、手も足も出ません。チェルノブイリを超える人類史上最悪の事故への道をひた走るのみなのです。

大飯原発を襲う津波には2つのルートが考えられます。北東からの津波Aと北西からの津波Bです。

津波Aは温排水の排出口を逆流するように、原子炉へ向けて駆け上がります。津波Bの側は、海岸から原子炉へつながる細い谷があり、押し寄せた津波が一気に高くなって、原発に押し寄せる可能性があります。

GoogleEarthの画像で見ると、大飯原発が津波に対して、ほぼまる裸の状態である事が手に取るように分かります。




津波を中心に話を進めてきましたが、この間の調査で、大飯原発の直下、あるいは至近に活断層がある事が明らかになったことも見逃せません。地震によって、活断層が大きく動くようなことがあれば、原子炉はひとたまりもありません。傾くだけならよい方で、最悪、倒れる可能性もあります。

原子力発電自体が持つ危険性に目をつぶった上に、地震・津波への対応が極めて難しい大飯原発の再稼働強行。これはもはや、歴史に残る大愚行です。
みずからの責任で大飯原発を再稼働させると言った野田総理。しかし、何かあったらどうやって責任を取るのでしょうか?原発事故の責任を取るとは、総理を辞任するとか、政界から去るとか、そういうレベルの話ではないのは誰にでも分かる話です。

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これまで、当ブログでは、地震・津波と原発事故の関連をあまり強く訴えてきませんでした。それは、「地震・津波の危険がなければ原発はOK」となってしまうことを危惧してきたからです。
スリーマイルアイランドもチェルノブイリも、自然災害とはまったく無関係に起きたことを忘れてはいけません。

しかし、少しばかり視点を変えて考えることにしました。
地震列島・火山列島の日本で、原子力発電を推進することは、愚の上塗りに他ならないのです。ただでさえ、危険極なりないものを、利権に溺れた連中が、嘘に嘘を上塗りしながら進めてきたのが日本の原子力。そのことに、多くの人たちが気がついた今、またもや大愚行を強行したのが野田政権なのです。地震も津波も火山も知らんぷり。人々の暮らしや命を守ろうという意識は、微塵も見られません。

霞ヶ関・永田町を数万人が埋め尽くしたのは、1960年の安保闘争以来。私たちは、みずからの力を過小評価する必要はありません。
浜岡原発が止まったように、動いている原発を止めることはできるのです。
大飯原発の再停止を実現し、すべての原発を廃炉に向かわせましょう。

世界の原子力利権と日本③『世界の原子炉を支える日本企業』2012/06/15 10:26

「再転換」の次は「燃料成型加工」です。
二酸化ウランの粉末を焼き固めてセラミックス化し、燃料被覆管に詰め込みます。これが核燃料棒で、束ねると核燃料集合体になります。
国内で使う核燃料の「燃料成型加工」は、日本の原子燃料メーカーが担っています。下の図はその一覧です。

それぞれ、東芝、日立、三菱重工という原子炉メーカーと深いつながりがあります。また、アレバとウェスティングハウスという世界的な原子力産業との関係も見落とせません。

次に世界の原子炉メーカーを見てみましょう。

ロシアのアトムエネルゴブロムを除く3社に日本企業が深く関わっています。ウェスティングハウスに至っては、東芝そのものと言ってもよいでしょう。世界の原子炉マーケットは、日本企業が牛耳っているのです。
ちなみにアメリカは、スリーマイル島の事故以来続けてきた新設凍結の禁を破って、新たな原子炉2基の建設を決めました。この原子炉はウェスティングハウス製(=東芝製)です。

ところで、事故を起こした福島第1の原子炉メーカーは、
1号炉=GE
2号炉=GE(+東芝)
3号炉=東芝
4号炉=日立
です。
道義的に考えれば、過酷事故に深く関わった東芝と日立は、事故収拾と廃炉プロセス以外の原子力事業から、直ちに撤退すべきです。
しかし、実情はまったく異なります。
原子炉の建設はもとより、ウラン採掘から始まる原子力利権構造の中で守銭奴と化す。かれらが大好きなはずの「日本人の潔さ」はどこに行ってしまったのでしょうか…

もう一つ、原子炉マーケットの状況を裏読みしてみましょう。
ウェスティングハウスがアメリカの企業からイギリスのBNFL(英国核燃料会社)に売却されたのは1998年。さらに、2006年には東芝に売却されます。
一方、GE日立ニュークリア・エナジーの発足は2007年6月。
どうも、アメリカもイギリスも、事故が起きれば大きな責任を追及される原子炉の開発・建設から、体よく逃げ出そうとしているのではないでしょうか。実際、アメリカの世界的IT企業の一つは、内規で、どんなに利益が見込めても原子力関係のシステムには絶対に手を出さないと決めています。もし、コンピューターシステムが原因で事故が起きたら、その責任を負いきれない(要するに、会社が潰れる)と考えているからです。

数行前に「道義的には…」と書きましたが、本音を言えば、日本企業が自主的に世界の原子力利権から手を引くことは不可能だろうと思っています。
まず、日本政府が完全脱原発路線を明確にすること。企業がついて来ざるを得ない状況を作らないといけないのでしょう。そして、政府に重い腰を上げさせるには、私たち一人ひとりが声を上げ続けるしかないのです。






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