原発稼働ゼロの日を迎えて2012/05/05 17:19

きょう、2012年5月5日深夜、42年ぶりに日本列島で稼働する原発がゼロになります。
原発の安全性がまったく約束されず、使用済み核燃料の行き場も決まらない中、他の選択肢はありません。また、福島第1の事故に関して、詳細な解析・検討も進まないどころか、いつ始められるのかさえ分からない状況です。

一方で、「電気が足りない!電気が足りない!」と騒ぎ立てる関西電力が、いまだにオール電化の営業を積極的に続けていることが明らかになりました。厚顔無恥とはこのことでしょう。
より多くの電力を消費するオール電化は、真っ先に放棄すべきです。その上で、どうしても足りないなら、今からでも、応急処置としてガスタービン発電機を外国から調達する手だてだってあるはずです。そもそも、東京電力以外の電力会社が、節電のプログラムに真面目に取り組んだ形跡すら認めることができません(東電を誉めているわけではありませんが)。

原発ゼロの日、5月5日はゴールではありません。私たちは、『完全脱原発』に向けてのスタートラインに立ったに過ぎません。
ここでは、あらためて問題意識を明確にし、気を引き締める意味で、「止まっている原発は安全なのか?」という設問について考えていきます。

●止まっている原発は安全なのか?
結論から言いましょう。制御棒が完全に差し込まれ臨界状態にない(=連鎖的核分裂反応が起きていない)原子炉は、運転中よりは少しだけ安全です。操作ミスが最終的な引き金となったスリーマイルアイランドやチェルノブイリのような事故は起きません。

一方、外部電源喪失によって、冷却水の循環が止まり、メルトダウンに至った福島第1型の事故はどうでしょうか?
同じように起きます。炉心に核燃料が有る限り。

使用中あるいは使用済みの核燃料の中には、連鎖的核分裂反応で生まれた放射性物質(核分裂生成物と超ウラン元素)があります。核分裂生成物の代表格はセシウム137やヨウ素131、超ウラン元素とはプルトニウム239などのことです。
これらの放射性物質は、放射線を出して崩壊する際に熱(崩壊熱)を出します。この発熱は、臨界状態にあろうとなかろうと関係ありません。

「私たちの身の回りにも飛んできている福島第1由来の放射性物質は発熱していないのか?」という質問がありそうなので、先に答えておきますが、実は放射線を出す際にわずかながら発熱しています。ただ、空気や人体を加熱するほどではありません。逆に、崩壊熱を肌で感じるほど放射線を浴びてしまったら、即死です。

話を本論に戻しましょう。
臨界を脱したばかりの核燃料で、冷却水の循環が止まったら、崩壊熱で数時間から数日の間に、圧力容器に溜まっている水はすべて蒸発。ほどなく、核燃料は溶岩のようにドロドロに溶け出してしまいます。
溶けた核燃料の温度は2800℃。圧力容器を形成する鋼鉄の融点は1600℃。簡単に底を突き破り、格納容器へと落ちていきます(メルトスルー)。格納容器でも底部の鋼鉄とコンクリートを溶かして、やっと止まっているのが、福島第1の1号機~3号機の現状なのはご存じの通りです。

そうなのです。原子炉が停止状態にあっても、炉心に核燃料が有る限り、福島第1型の事故が起きる可能性は、少しも減らないのです。

●どうすればよいのか?

まず、炉心にある核燃料を核燃料貯蔵プールに移動させることです。これは、普段の定期点検の際にも行われている作業です。安全とは言いませんが、特別なオペレーションではありません。こうして、炉心(圧力容器)を空にしておけば、シビアアクシデントが起きる可能性を一つ排除したことにはなります。
しかし、福島第1では、炉心が空だった4号機でも水素爆発が起き、建屋が傾いています。世界中の研究者が「4号機の核燃料貯蔵プールが崩壊したら、東京にも人が住めなくなる可能性がある」と警鐘を打ち鳴らしています。核燃料貯蔵プールもまた危うい施設なのです。
特に、福島第1のような沸騰水型原子炉(BWR)では、構造上、貯蔵プールを高い位置に作らざるを得ないので、危険性がより大きくなっています。高い分、様々な理由で水が抜ける可能性があるからです。
また、使用済み核燃料は、臨界を脱してから3年間は循環する水で冷却しないと、メルトダウンしてしまいますので、核燃料貯蔵プールでもまた、冷却水の循環が必要となります。

各原子炉に付属している核燃料貯蔵プールは、当然、容量が決まっています。せいぜい、数年分の使用済み核燃料しか貯蔵することができません。では、その先はどこへ行くのでしょうか?
各原発には共用プールという施設があって、ここに使用済み核燃料を集めます。地上高に作られているので、核燃料貯蔵プールよりは少しは安全といったところでしょうか。国内各原発の共用プールは、ほぼ満杯という情報もありますが、増設してでも、今、炉心と核燃料貯蔵プールにある分は、納めてもらわなければ困ります。

原子炉が止まっただけでは安全ではない。
このことは肝に銘じる必要があります。速やかに、すべての核燃料を核燃料貯蔵プールに。そして共用プールに移す必要があります。

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附記:
共用プールの先はどうするのか?悲しいかな、まったく見通しが立っていません。原発推進派は「再処理施設へ!」と声高に言いますが、六ヶ所村の施設は、本格稼働が見えない現在ですら、使用済み核燃料で満杯状態です。

*再処理施設に関しては、以下の記事をご参照ください。
再処理施設って何?
破綻した核燃料サイクル

今、現に存在している大量の使用済み核燃料をどうするのか… 再処理施設は危険極まりないものだし、結局、放射性廃棄物の量が減るわけではありません。最終処分場の問題は、脱原発派と言えども、避けて通ることはできません。

コメント

_ 金宮ソーダwithレモン ― 2012/05/06 18:19

『原発ゼロの日 さようなら原発5・5集会』でも、本当のスタートはこれからという意識の共有が図られました。
今回のご指摘、まさに「トイレなきマンション」と称される所以ですね。トイレは最終処理場(?)としての肥だめを作っても、せいぜいメタンガスがブクブクと湧くくらいですが、原発から排出される高レベルの放射性廃棄物が生物にとって無害になるまでに10万年を要する、となれば事態は益々深刻!! 
仰る通り、避けて通れない問題ですね。

_ 伊藤 篤 ― 2012/05/13 13:59

「さらば原発と言おう」(私作詞の”反原発の替歌”の紹介について
*私は、原発再稼動に反対する53歳男性です。元歌は、森田健作(現千葉県知事で元タレント)の歌で1971年ヒットの「さらば涙と言おう」(彼自身主演の青春学園ドラマ「俺は男だ」の主題歌)です。
1.さよならは誰に言う さよならは原発に
  明日が来るのを待たず さらば原発と言おう
  安全神話のウソ ついてはいけない!
  利権・特権階級 みんなでつぶそう!
  ごまかしやゴリ押しに いくたびか出会うだろう
  だけど有害施設 さらば原発と言おう
2.人類の勲章は 自然との調和だと
  知った今日であるなら さらば原発と言おう
  チエルノブイリ・フクシマを 忘れちゃいけない!
  命存亡の危機を 認識し直そう!
  地球のため明日のため 幸せに生きるため
  資源浪費をやめよう さらば原発と言おう
*この歌を、森田健作自身がもう一度歌ってくれるなら(不正選挙で手にした千葉県知事を即刻辞めて”脱原発主張者になって頂き歌ってくれるなら)、”男らしい好人物”というかつての評価を取り戻せるでしょう。が、それができぬなら、やはり”さらば健作と言おう”になってしまいます。この歌を、原発再稼動や消費税増税やTPP参加など国民弱者に不利な政策ばかりを主張している”限りなくアホーに近い「住化バカ」”である日本経団連の米倉会長(住友化学の会長)にぶつけてやりたく、”さらば弘昌ジジイと言おう!”と叫びたいです。
*この歌を、脱原発集会にてご活用頂ければうれしいです。
 愛知県の自称ECO主義者で反格差社会主張者より

_ 伊藤 篤 ― 2012/05/13 14:10

「安心に会いたい」(私作詞の”大震災・原発事故後の不安な世情の替歌”)の紹介について
*反原発の我替歌の2曲目です。元歌は、グループサウンズ ザ・ジャガースの歌で1967年ヒットの「君に会いたい」です。
1.バカさゆえ あきれる バカさゆえ うらめしい
  危機感 乏しき 指導者に 腹が立つ!
  政治家の 発言 信用は できない
  大震災 大津波 原発の トラブルで
  放射能の 汚染にも”安全だ”と とぼけてる
2.エリートの 官僚 財界も 学者も
  被災者 弱者を 救って くれないよ
  投資家や 大企業 日本から 逃げ出す
  セーフテイも 収入も 健康さえ 無くすのか?
  帰れ僕の この胸に 「安心」よ Want you see again
*”若さゆえ 苦しみ 若さゆえ 悩み”で始まり”My baby Want you Want you see again”で終わる元歌は、かつてのグループサウンズ全盛期に一斉風靡した名曲です。この曲が、上記替歌にて再びよみがえってほしいです。
*この歌も、先に紹介した我替歌「さらば原発と言おう」と同様に、脱原発集会にてご活用頂ければうれしいです。
 愛知県の自称ECO主義者で反格差社会主張者より

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