大飯原発再稼働は歴史に残る大愚行2012/07/03 09:58

多くの方から「遅すぎる!」とお叱りを受けそうですが、今回は、大飯原発の危険性を主にその立地から考えていきたいと思います。

最初に、当サイトが作成した『日本国内の原子力施設』 で、大飯原発の場所を確認してください。原発銀座と呼ばれる若狭湾の一番奥まったギザギザの地形が目立つあたり、大島半島の先端部にあります。
クローズアップすると下の地図になります。

若狭湾は三陸海岸と並ぶ日本を代表するリアス式海岸。数多くの入り組んだ狭い湾があるのが特徴です。リアス式海岸はひとたび津波に襲われると、波が急激に高くなって大きな被害に見舞われます。東日本大震災で岩手県沿岸を襲った大津波には、このメカニズムが大きく働いていました。

若狭湾を襲った巨大津波として、もっとも知られているのは1586年の天正大地震によるもの。当時、日本で布教活動をしていた宣教師のルイス・フロイスは『日本史』の中で、「ちょうど船が両側に揺れるように震動し、四日四晩休みなく継続した。その後40日間一日とて震動を伴わぬ日とてはなく、身の毛もよだつような恐ろしい轟音が地底から発していた。若狭の国には、海に沿ってやはり長浜と称する別の大きい町があった。揺れ動いた後、海が荒れ立ち、高い山にも似た大波が遠くから恐るべきうなりを発しながら猛烈な勢いで押し寄せてその町に襲いかかり、ほとんど痕跡を留めないまでに破壊してしまった」と記しています(フロイスが「長浜と称する別の大きな町」としているのは、琵琶湖東岸の秀吉お膝元の町・長浜と区別するため)。

また、詳細は明らかになっていませんが、江戸時代には、現在の美浜町の一部で一つの村が津波によって跡形もなく消えたという記録もあります。
<美浜の村誌「大津波で村全滅」 原発立地の若狭湾内>(福井新聞)

1662年(寛文2年)に発生した寛文地震では、津波の記録こそありませんが、三方五湖(現在の美浜町から若狭町にかけて位置する5つの湖)附近で、大規模な隆起や沈降が起き、多くな被害がもたらされたことが記録されています。
<寛文地震に関する資料>
三方五湖と大飯原発は、20㎞ほどしか離れていません。

さて、大飯原発に近づいて行くとこにしましょう。
大島半島の先端に向かうには、たった1本の道、県道241号線しかありません。

もし、原発が事故を起こした時に、地震による崖崩れや津波被害で、この道が寸断されたら… 原発至近の大島集落から避難するルートは、海路以外なくなってしまいます。また、事故を最悪の状態にしないための電源車や放水車を原発に運び入れることも、まったく不可能になってしまいます。

もう少し進むと、県道241号線から原発へ入るためには、2本のトンネルしかないことが分かります。トンネルの入り口が地震によって崩れやすいのは言うまでもありません。

福島第1の事故によって、原発の外部電源喪失が容易に起きることは誰の目にも明らかになりました。
福島と違って、仮に非常用ディーゼル発電機が作動したとしても、その燃料が持つのは数日。しかも、大地震、大津波に見舞われれば、そこら中にトラブルが起きます。ディーゼル発電機だけで過酷事故が回避されると考える方に無理があります。陸路の補給なしに、どうやって収拾するのでしょうか。

陸路でのアクセスが自由に行える福島第1でさえ、今の状況なのです。大飯で何かがあったら、手も足も出ません。チェルノブイリを超える人類史上最悪の事故への道をひた走るのみなのです。

大飯原発を襲う津波には2つのルートが考えられます。北東からの津波Aと北西からの津波Bです。

津波Aは温排水の排出口を逆流するように、原子炉へ向けて駆け上がります。津波Bの側は、海岸から原子炉へつながる細い谷があり、押し寄せた津波が一気に高くなって、原発に押し寄せる可能性があります。

GoogleEarthの画像で見ると、大飯原発が津波に対して、ほぼまる裸の状態である事が手に取るように分かります。




津波を中心に話を進めてきましたが、この間の調査で、大飯原発の直下、あるいは至近に活断層がある事が明らかになったことも見逃せません。地震によって、活断層が大きく動くようなことがあれば、原子炉はひとたまりもありません。傾くだけならよい方で、最悪、倒れる可能性もあります。

原子力発電自体が持つ危険性に目をつぶった上に、地震・津波への対応が極めて難しい大飯原発の再稼働強行。これはもはや、歴史に残る大愚行です。
みずからの責任で大飯原発を再稼働させると言った野田総理。しかし、何かあったらどうやって責任を取るのでしょうか?原発事故の責任を取るとは、総理を辞任するとか、政界から去るとか、そういうレベルの話ではないのは誰にでも分かる話です。

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これまで、当ブログでは、地震・津波と原発事故の関連をあまり強く訴えてきませんでした。それは、「地震・津波の危険がなければ原発はOK」となってしまうことを危惧してきたからです。
スリーマイルアイランドもチェルノブイリも、自然災害とはまったく無関係に起きたことを忘れてはいけません。

しかし、少しばかり視点を変えて考えることにしました。
地震列島・火山列島の日本で、原子力発電を推進することは、愚の上塗りに他ならないのです。ただでさえ、危険極なりないものを、利権に溺れた連中が、嘘に嘘を上塗りしながら進めてきたのが日本の原子力。そのことに、多くの人たちが気がついた今、またもや大愚行を強行したのが野田政権なのです。地震も津波も火山も知らんぷり。人々の暮らしや命を守ろうという意識は、微塵も見られません。

霞ヶ関・永田町を数万人が埋め尽くしたのは、1960年の安保闘争以来。私たちは、みずからの力を過小評価する必要はありません。
浜岡原発が止まったように、動いている原発を止めることはできるのです。
大飯原発の再停止を実現し、すべての原発を廃炉に向かわせましょう。

決戦は金曜日2012/07/07 15:45

毎週金曜日に行われている首相官邸前の反原発集会。大飯原発の再稼働問題がキッカケとなって、大きな盛り上がりを見せています。永田町・霞ヶ関付近を万を超えるデモ隊が埋め尽くしたのは、1960年の安保闘争以来です。

6月22日 4万5千人(警視庁調べで1万1千人)
6月29日 15万~18万人(警視庁調べで1万7千人)
7月6日 15万人(警視庁調べで2万1千人)

大飯原発再稼働が強行され、あいにくの雨模様。昨7月6日は、どのくらいの人が集まるのかと、やや心配をしていましたが、杞憂に過ぎませんでした。警視庁発表では、これまでで最大の人数に。
みんな怒っています!そして、みんな元気です!

同行記風にこの日の抗議行動をリポートします。
友人とともに丸ノ内線の国会議事堂前駅に到着したのが18時半頃。改札を出たところで、いきなり機動隊による規制。地上に出ることさえ許されない!駅構内は原発反対の人々であふれかえっていました。ここで10分から15分ほど足止めされ、4番出口(①)からようやく外に出ると、今度は、官邸とはまったく逆方向へ押しやられてしまいます。

さらに、衆院第二別館の横から六本木通りへと坂を下ろされ、内閣府下の交差点(②)へ。ここで抗議行動かと思いきや、機動隊と抗議行動の主催者が、今度は、財務省上交差点(③)方面へ向かえと… 野田内閣に、日本政府に抗議しに来たのに、首相官邸から遠ざけられるばかり。一緒に歩いていた数千人の中に、ある種の焦燥感が漂ったのは事実です。

ようやく抗議の人波の最後尾と思われる財務省上交差点に到着したのが、19時10分頃。ところが、そこには多数の機動隊がいて、最後尾への合流を阻止。道路の横断を阻んだ上に、「後ろへ戻れ」と。
どこに戻れというのか!私たちは首相官邸に向かうのだ!
まったく理不尽な規制に対して、怒りの声が大きく湧き上がりました。そして、10分ほどのにらみ合い。機動隊の指揮系統に「渡らせるか、渡らせないか」で混乱が発生。そこをついて、大人数が雪崩を打って六本木通りを横断。「再稼働反対!」「原発いらない!」コールが雨の夜空にこだまします。
次の瞬間、ついに野田政権、日本政府への怒りが爆発しました。数千人が一気に機動隊の規制を打ち破り、車道へとなだれ込んだのです。数秒のうちに衆院第二別館側の片側3車線が人々で埋まり、次の10数秒で国会議事堂側の車線まで埋め尽くしました。機動隊は手も足も出せません。
ちょっと古い言葉ですが、『解放区』状態。この時の写真は、各メディアが伝えている通りです。

昨夜、機動隊の指揮官は上層部から大目玉を喰ったことでしょう。なにしろ、衆院南門から総理官邸前まで、200メートル以上の6車線を完全に「不法占拠」されてしまったのですから。おそらく来週は、新手の規制を敷いてくるでしょう。しかし、数万の人々が集まった時、機動隊が何かを出来るわけではありません。私たちは、金曜日の夜、官邸前に集まり、抗議の声を上げ続けます。大飯原発が再停止し、すべての原発の廃炉が決定するまで。

そう言えば、DREAMS COME TRUEのヒット曲に「決戦は金曜日」という歌があったなぁ… 突然思い出して、歌詞を検索してみたら、あまりにも、この間の官邸前抗議行動を暗喩しているので、ビックリ。これは天才的だ!詞をまるごとコピペすると著作権法違反になるので、リンクだけ貼っておきます。

『決戦は金曜日』

「強大な力」「ふくれた地下鉄」「戦闘の準備」「退がらない」等々。吉田美和の詞には、今の私たちのためのキーワードが散りばめられています。

そう、決戦は金曜日!怒りを持続し、さらに高め、野田政権・日本政府への抗議の声を上げ続けましょう。

広範なエリアで染色体分析調査を!2012/07/11 15:16

放医研(放射線医学総合研究所)が、今ごろになって言い訳じみた変なことを言い始めています。そして、その言い訳に誤魔化しの上塗りをしようとしているのが日本政府。福島の子どもたちの命に関わる問題で。

政府は昨年3月下旬、いわき市や川俣町、飯舘村など10市町村以上で15歳以下の1080人に対して、ヨウ素131の体内への取り込み(内部被ばく)状況を調査しました。
結果が発表されたのは、5か月も経ったあとの8月。1080人の内、55%の保護者に「ゼロ」と通知しましたが、当然、これには「検出限界以下」が含まれています。
そして、この時のデータを放医研が独自に計算しなおしたところ、「ゼロ」と通知した例でも、実際は一定の被曝をしていた可能性の高いことが分かったというのです。この結果について、政府は「誤差が大きく、不安を招く」として、今後も保護者に通知しない方針だと強弁しています。

一体何のための検査だったのでしょうか?不安を招くから発表しない!?そもそも、巨大な不安を作り出したのは日本政府と東電なのです。すべてを公開しなければ、福島第1は教訓にすらならないし、ギリギリの救済策すら実行しようがないのです。そして、発表しないことがどれだけ不安を増幅しているのか、いまだに分かっていないのでしょうか。腹の底から怒りが沸いてきます。

福島「線量ゼロ」の子でも一定の被爆 放医研が独自計算【朝日新聞】

福島第1から漏出した放射性ヨウ素の大部分を占めるヨウ素131の半減期は、ご存じの通り8日と短いものです。短い期間に甲状腺の細胞にあるDNAに深い傷を負わせた後、消えてしまいます。従って、事故後、数週間から長くても数か月の間に検査をしないと、甲状腺に入ったヨウ素131を直接確認することはできません。
しかしDNAに傷は残されています。だからこそ甲状腺ガンを発症するのですから…

放射線によるDNAの破壊には、次の図に示す2つのパターンがあります。ひとつは、放射線によるDNAの直接破壊。もう一つは、体内にある水分子が放射線を受けることで活性酸素が発生し、これがDNAを破壊するパターンです。

このDNAに残された傷跡を調べて、ヨウ素131による被ばくや、甲状腺ガン発症の危険性を知ることはできなのでしょうか?残念ながら現状では、DNAそのものを調べるのは、かなりたいへんです。

一方、細胞の中心部にある核には染色体があり、遺伝情報をつかさどっています。
…と言ってしまうと、遺伝情報は染色体にあるのか?DNAにあるのか?と混乱しがちですが、それぞれの染色体の中には非常に長い1本のDNAが折りたたまれて収まっているのです。DNAは遺伝情報そのもので、染色体はそのかたまりと考えれば分かりやすいでしょう。

人間の細胞には、46本の染色体があります。男女とも右下にある2本が性染色体で、これによって性別が決まります。染色体は皆、X型をしていて、くびれの部分を動原体(どうげんたい)と呼びます。

DNAが放射線によって傷つけれた時、必ずしも染色体に異常が現れるわけではありません(大きな損傷でなければ、染色体の外見上は変化無し)。しかし、逆に染色体に放射線による損傷が認められた時には、100%、DNAは大きな損傷を受けています。
染色体異常には様々な形がありますが、主に放射線によってのみ引き起こされる2つのパターンが確認されています。<二動原体染色体>と<環状染色体>です。

見るからに異常な状態。放射線によって切断された染色体が、間違った修復を行った結果です。もちろん、これでは正しい遺伝情報は伝わりません。こういった染色体異常はガンなどを引き起こします。

DNAの損傷と違って、染色体の損傷は、顕微鏡による分析で確認することができます。
…ということは、甲状腺細胞の染色体を顕微鏡で調べれば、ヨウ素131による被爆があったかどうかは、明確に分かるし、甲状腺ガンの危険性も予測できます。
しかし、国や調査機関は染色体を調べようとしません。なぜ?ひと言で言えば、面倒だから。染色液と顕微鏡があればできる簡単な検査なのですが、一人あたり数百の細胞を調べて、染色体異常の数や種類を目視でカウントする必要があるのです。人手と時間がかかります。
しかし、その言い訳は通じません。国はこの原発事故に大きな責任を負っているのです。そして、内部被ばくの恐怖にさらされながら生きている福島の人たちには、何の落ち度もないのですから。

染色体分析は、手間は掛かりますが、ホールボディカウンターのような高価な機器は必要としません。尿検査のような大きな誤差もありません。広いエリアで、たくさんの人の染色体異常の状況をつぶさに掌握できれば、ヨウ素131による内部被ばくの広がりを正確に知ることができます。

結果、残念ながら多くの染色体異常が発見された人に関しては、健康状態を注意深く観察し適切な対策を講じることで、できるだけ発症しないようにできるはずです。仮に発症しても、重症化する前に抑え込める可能性が高まります。悲劇を少しでも減らすことは不可能ではありません。

これまで、放射線被ばくによる染色体異常に関する研究がなかったのかというと、実はそんなことはありません。
チェルノブイリ事故による子どもの甲状腺ガンの増加に関して、DNAや染色体の損傷との関連を研究した論文があります(かなり専門的な内容ですが)。

医師の一分『低線量被曝による小児の甲状腺癌患者の染色体7q11異常』

Gain of chromosome band 7q11 in papillary thyroid carcinomas of young patients is associated with exposure to low-dose irradiation(英文)

チェルノブイリの苦い教訓。その研究成果があるのに、少しも生かそうとしない日本政府。大きな憤りと怒りを感じざるを得ません。

ただちに、福島を中心とする広範なエリアで、甲状腺細胞の染色体分析調査を実施すべきだと考えます。
いや、本当の事を言えば、甲状腺だけでなく、赤血球や筋細胞、造血細胞の染色体分析を実施すれば、いま、闇の中に隠されようとしている被ばくの実態が明らかになるはずなのです。
それは、多くの人たちをギリギリの所で救う助けになるでしょうし、これから先、私たち日本人が、いや、人類が原子力とどう向き合うべきなのかを教えてくれる貴重なデータになるはずなのです。

東電に値上げを言う権利はあるのか?2012/07/21 09:56

結局、東電の値上げ申請が認められることになりそうです。
経営の悪化の原因は言うまでもなく福島第1の事故。消費者庁が少しだけ頑張った形跡はありますが、いずれにしても過酷事故のツケを電力使用者に押しつけてくることには、誰も納得がいかないでしょう。

『東電値上げ8.47% 消費者目線、置き去り』【毎日新聞】

「東電の資金がショートしてしまって、労働者に給料が払えないとか、下請けに支払いができないといった事態に陥ると、大停電が起きてたいへんなことになる」というのが威し文句なのですが、電気料金の値上げと公的資金(要するに税金)の注入の前に、やるべきことがたくさん残されています。
「経理全面公開」「未使用ウラン燃料売却」「全資産売却」「全関連企業の整理・売却」「経営陣・管理職徹底合理化」「発送電分離」です。
羅列しただけでは、空スローガンと批判されそうなので、簡単にその中身を解説します。

●経理全面公開
過去にさかのぼって、東電の全帳簿を誰もが閲覧・監査できるようにします。
経理上、本当に無駄がないかが調べられるし、グレーのカーテンの向う側にある原発を巡る金の流れが明らかになるでしょう。
現行法では、企業に経理全面公開を求めることはできないと思いますが、実質国営化されている現状なら、政府が判断を下せば良い問題です。
私たちは、良心的な公認会計士を雇って、東電の会計のすべてを詳しく監査することができます。また、メディアも自由に調べることができます。

そもそも、競争相手のいない企業ですから、経理全面公開による経営上の不利益はないはずです。

●未使用ウラン燃料売却
東電は、未使用のウラン燃料を大量に抱え込んでいます(残念ながら数値データ無し)。これらについては、カナダに本拠地を置く世界有数の核燃料供給企業『カメコ』が、買い取りの姿勢を示しています。使うアテのないウラン燃料を直ちに返品すべきです。数千億円分はあると見られています。

参照記事:世界の原子力利権と日本①『ウラン採掘総元締めの予想外』

●全資産売却
東電病院の売却問題がクローズアップされていますが、他にも売れる資産は山ほどあります。すべて売り、賠償に充てるべきです。

まず不動産ですが、時価100億円超とされる日比谷の本店。他にも、社宅や寮、保養所といった福利厚生施設などが数百あります(すでに一部は整理に入っている模様)。発電に利用していない土地は約1000万坪。これを10万円/坪で計算すると10兆円になります。
動産では有価証券。上場企業の分だけで約3000億円。非上場が700億円。
東電は、桁外れの資産を隠し持ったままなのです。

送電網も全資産に含まれるのですが、これに関しては、最後の「発送電分離」で取り上げます。

●全関連企業の整理・売却
東電は169社の子会社と89社の関連会社を抱えています。その多くが、旧通産省・経産省・文科省・東京都・東電OBの天下り先です。
これらを整理し、売れる会社は売ってしまえば、損害賠償の足しになります。

●経営陣・管理職徹底合理化
言わずもがななので、ここで多くは語りません。

●発送電分離
送電設備=2兆923億円、変電設備=8288億円、配電設備=2兆1540億円。東電が持つ送電関連の固定資産です。合計で5兆円にもなります。これらを複数の民間事業者に売却すべきです。
残る東電が発電部門と賠償補償を担うか、発電部門も売却して東電は賠償補償機関としてだけ残すという二つの方法があります。

いずれにしても、東電の資産は、ほぼすべてが私たちが支払った電気料金を元手にしているものです。その資産を売ることによって、電気料金の値上げと税金の投入を抑えんがら、被害者への補償の原資が得られるなら、実行しない手はないのです。東電の資産は、もともと私たちのお金。このことを忘れないようにしましょう。

そして、発送電まるごと地域で独占という、およそ自由競争とかけ離れた経営の上にあぐらをかいてきたのが日本の電力会社です。これを機に、すべての電力会社について発送電の分離を実行すべきです。

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ちょっと例えは悪いかも知れませんが、大型バスが多数の歩行者を巻き込んだ重大事故を起こしたとします。当然、被害者に対して賠償をしなくてはならないのですが、バス会社は資産を隠して「お金がない」と言い張ります。そして、賠償責任は乗客に転化すると。理屈は、「お客さんたち、バスに乗ってたんでしょ」。
こんな馬鹿げた話はないのです。バス会社はすべての資産を売り払ってでも賠償すべきでしょう。
東電に、値上げを言う権利はありません!

今すぐ、『黒い物質』を取り除け2012/07/25 18:47

先にアップした『南相馬の黒い物質』の続編です。
高い放射線量を示す黒い物質の正体は、生物学的にはらん藻や地衣類。一般には苔や藻の一種と受け取られている原始的な植物でした。

なぜ、苔や藻に放射性セシウムが濃縮されるのか… それは、みずからが生き延びるために栄養素としてカリウムが不可欠で、化学的な性質が似ているセシウムをカリウムと間違えて取り込んでしまうからです。
苔や藻は、雨水や河川の水から巧みにカリウムを吸い取って生きています。そのメカニズムに放射性セシウムが入り込んでいるのです。

自然界での水の循環という視点で見ると、苔や藻は、雨水から放射性セシウムを漉し取っています。山林から川や田んぼへと流れ込む水からもです。いわば天然のフィルターとして働いているのです。
掃除機のフィルターには、家中の埃が集まります。そんなイメージで苔や藻に放射性セシウムが集まっているのです。

苔や藻というフィルターに放射性セシウムが集まっている… 放っておけば、その汚れたフィルターに触る子どもが出てきます。赤ちゃんだったら、触った指先をそのまま口に入れるでしょう。

一方、苔や藻に集まっている分、若干ですが環境中の放射性セシウムは減ります。しかし、そのまま放っておけば、いつかは枯れて、ふたたび環境の中に戻ってしまいます。苔や藻に集まっている間こそが、放射性セシウムを回収する絶好のチャンスとも言えるのです。

さて、南相馬の大山こういちさんと京都大学原子炉実験所の小出裕章先生のやり取りの中で、「黒い物質」に含まれる放射性セシウム(134と137の合計)に関して、
南相馬で200万~600万ベクレル/キログラム
葛飾区の水元公園で20万~30万ベクレル/キログラム
都下東村山市で2万ベクレル/キログラム
という分析結果が出ています。
大山さんたちの独自の調査では、南相馬では1000万ベクレル/キログラムというデータもあるようです。
●参照:『南相馬市 大山こういちのブログ

視点を変えて、現行の法律で、放射性物質の取扱について、どのように規定されているのか見ていきましょう(リンク先は、例によって分かり難い役所用語の羅列ですが、詳しく知りたい方はご参照ください)。

放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令』に、別に定める下限数量と下限濃度を越える放射性同位元素を厳重に管理すべく規定されています。
その下限数量と下限濃度を定めたのが、以下の文科省(旧科技庁)の告示です。
放射線を放出する同位元素の数量等を定める件』の別表第1「放射線を放出する同位元素の数量及び濃度」(19ページ)には、放射性物質として扱わなくてはいけないセシウム134とセシウム137の下限数量が=1万ベクレル、濃度が10ベクレル/グラム以上と定めれています。
10ベクレル/グラム=1万ベクレル/キログラムです。
要は、「1万ベクレル/キログラム以上の濃度の放射性セシウムが1万ベクレル以上あったら、それは厳重に管理しなくてはならない」と定められているのです。

今ここに、スプーンでこそげ取った苔か藻が10グラムあったとします。放射性セシウムの濃度を計測したら100万ベクレル/キログラム。総量は「管理すべき下限数量」の1万ベクレルに達します。濃度が1000万ベクレル/キログラムなら1グラムで下限数量越えです。

東村山の2万ベクレル/キログラムで言えば、500グラムで下限数量越え。500グラムの苔や藻は、ちょっと一生懸命やれば、一人でも10分もあれば集められます。
そんな危険な放射性物質が、私たちの身の回りのいたるとこに存在しているのです。しかし、政府も自治体も、こういった苔や藻の撤去や管理に乗り出していません。法律的に見てもその義務は明白なのに…
また、前述の通り、苔や藻に集まっている間こそが、放射性セシウムを回収するチャンスでもあるのです。

「苔や藻には絶対触ってはいけないよ」。何十年にもわたって、子供たちに教えていくのでしょうか?川で遊ぶことも、森で遊ぶことも一切禁じるのでしょうか?

苔や藻があったら、とにかく安全に撤去する。もちろん、素人がやると危険ですので、今すぐ、行政が正面から取り組むべき課題です。

追記:
高線量を発する藻や苔は、黒いものばかりではありません。当方の調査では、湿気の多い地面に繁殖するモウセンゴケの仲間や、河川の岩にへばりつく緑色の苔も、同様に高線量を発しています。
藻や苔は種類にかかわらず放射性セシウムを高濃度に蓄積すると判断して間違いないでしょう。






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