自然放射線を理解する ― 2011/10/14 17:41
当ブログに寄せられるコメントを見ていると、自然放射線に対する質問や意見が結構あるので、チャート式で、分かりやすく整理しておきたいと思います。
イラストを見て頂ければ、私たちが地上で受けている自然放射線は、大きく4種類に分類されることが分かるかと思います。一つ一つ見ていきましょう。
●二次宇宙線による外部被ばく
宇宙から地球に飛び込んでくる宇宙線を一次宇宙線と呼びます。これは、ほとんどが陽子で、地上までは届きません。一次宇宙線が空気中の原子や分子と衝突して生まれるのが二次宇宙線。その内、地表にまで届くのは、ほとんどが素粒子の一種のミュー粒子です。
よく、飛行機に乗ると余計に外部被ばくをすると言われますが、これは事実です。高空では、二次宇宙線の内のガンマ線が存在しますので、これが航空機内にまで届きます。また、海抜数千メートルという高地には、二次宇宙線のガンマ線が、ある程度、届いていると思われます。
●大地と建物からの外部被ばく
岩盤の中には、ウラン238をはじめとするウラン系列と、トリウム232をはじめとするトリウム系列の核種、さらにカリウム40やルビジウム87が含まれています。これらが発するガンマ線が「大地と建物からの外部被ばく量」の元です。特に、花こう岩にはウラン238が多く含まれています。
建物も含む理由は、建材の石やコンクリートなどに、自然に存在する放射性物質が入っているからです。
日本国内で、「大地と建物からの外部被ばく量」の値を見ると、おおむね、西高東低の傾向を示します。これは、西日本に花こう岩質の岩盤が多いのと、関東では、関東ローム層によって岩盤自体が厚く覆われていて、地表から出てくるガンマ線が少ないからです。
注意したいのは、人工放射線(今で言えば、福島第1から飛散した放射性物質による放射線)と違って、「大地と建物からの外部被ばく」では、線源となる原子が岩の中や石の中なので、これらを吸い込む可能性は少ないということです。
自然放射線による外部被ばくと人工放射線による外部被ばくを同列に語る人たちがいますが、この点を見落としているか、意図的に誤魔化しています。
●呼吸で摂取
呼吸で摂取した放射性物質による内部被ばくは、主にラドン222によって引き起こされています。ラドン222は、花こう岩などの中にあるウラン238が崩壊する過程で生じますから、世界中どこにでも微量は存在します。
自然放射線の枠外ですが、ラドン222による内部被ばくは、ウラン鉱山の近くでは深刻な問題を引き起こします。日本で唯一のウラン鉱山があった鳥取県の人形峠や、アメリカ・アリゾナ州のレッドロック鉱山付近では、たくさんの人が肺ガンで亡くなりました。
●飲食で摂取
飲食による内部被ばくに関連している自然の放射性物質は、カリウム40とウラン系列・トリウム系列の核種です。
よく、「カリウム40は天然のカリウムの中に0.0117%含まれている」と言いますが、世の中に天然でない原子は存在しませんから、岩石の中でも、野菜の中でも、水の中でも、人体内でも、そして、ドラッグストアで売ってるカリウムのサプリメントの中にも、0.0117%のカリウム40が含まれています。これから逃れようとすると、カリウム不足になってしまいますから、受け入れるしかありません。ただ、後述しますが、「カリウム40が止むを得ないから、セシウム137も止む得ない」という話にはなりません。
さて、自然放射線を考える上で、見落としてはいけない点があります。
それは放射線の種類。実は、自然放射線のうち、ガイガーカウンターなどの一般の空間線量計で検知できるのは、「大地と建物からのガンマ線」だけなのです。
●二次宇宙線による外部被ばく
宇宙から地球に飛び込んでくる宇宙線を一次宇宙線と呼びます。これは、ほとんどが陽子で、地上までは届きません。一次宇宙線が空気中の原子や分子と衝突して生まれるのが二次宇宙線。その内、地表にまで届くのは、ほとんどが素粒子の一種のミュー粒子です。
よく、飛行機に乗ると余計に外部被ばくをすると言われますが、これは事実です。高空では、二次宇宙線の内のガンマ線が存在しますので、これが航空機内にまで届きます。また、海抜数千メートルという高地には、二次宇宙線のガンマ線が、ある程度、届いていると思われます。
●大地と建物からの外部被ばく
岩盤の中には、ウラン238をはじめとするウラン系列と、トリウム232をはじめとするトリウム系列の核種、さらにカリウム40やルビジウム87が含まれています。これらが発するガンマ線が「大地と建物からの外部被ばく量」の元です。特に、花こう岩にはウラン238が多く含まれています。
建物も含む理由は、建材の石やコンクリートなどに、自然に存在する放射性物質が入っているからです。
日本国内で、「大地と建物からの外部被ばく量」の値を見ると、おおむね、西高東低の傾向を示します。これは、西日本に花こう岩質の岩盤が多いのと、関東では、関東ローム層によって岩盤自体が厚く覆われていて、地表から出てくるガンマ線が少ないからです。
注意したいのは、人工放射線(今で言えば、福島第1から飛散した放射性物質による放射線)と違って、「大地と建物からの外部被ばく」では、線源となる原子が岩の中や石の中なので、これらを吸い込む可能性は少ないということです。
自然放射線による外部被ばくと人工放射線による外部被ばくを同列に語る人たちがいますが、この点を見落としているか、意図的に誤魔化しています。
●呼吸で摂取
呼吸で摂取した放射性物質による内部被ばくは、主にラドン222によって引き起こされています。ラドン222は、花こう岩などの中にあるウラン238が崩壊する過程で生じますから、世界中どこにでも微量は存在します。
自然放射線の枠外ですが、ラドン222による内部被ばくは、ウラン鉱山の近くでは深刻な問題を引き起こします。日本で唯一のウラン鉱山があった鳥取県の人形峠や、アメリカ・アリゾナ州のレッドロック鉱山付近では、たくさんの人が肺ガンで亡くなりました。
●飲食で摂取
飲食による内部被ばくに関連している自然の放射性物質は、カリウム40とウラン系列・トリウム系列の核種です。
よく、「カリウム40は天然のカリウムの中に0.0117%含まれている」と言いますが、世の中に天然でない原子は存在しませんから、岩石の中でも、野菜の中でも、水の中でも、人体内でも、そして、ドラッグストアで売ってるカリウムのサプリメントの中にも、0.0117%のカリウム40が含まれています。これから逃れようとすると、カリウム不足になってしまいますから、受け入れるしかありません。ただ、後述しますが、「カリウム40が止むを得ないから、セシウム137も止む得ない」という話にはなりません。
さて、自然放射線を考える上で、見落としてはいけない点があります。
それは放射線の種類。実は、自然放射線のうち、ガイガーカウンターなどの一般の空間線量計で検知できるのは、「大地と建物からのガンマ線」だけなのです。
内部被ばく関係はアルファ線とベータ線、二次宇宙線はミュー粒子という素粒子がほとんどだからです。「私たちは、自然放射線を年間2.42ミリシーベルト(日本では1.5ミリシーベルト)も浴びている」などと言って、実測された空間線量を過小評価しようとする人たちがいますが、これはまったくの誤魔化しです。実測値から引き算できるのは、0.05μSv/h(=0.3mSv/y)の「大地と建物からの外部被ばく量」だけです。
以下、自然放射線に関する気になる話を二つ紹介しておきます。
●高自然放射線地域
世界には、自然由来の「大地と建物からのガンマ線」が高い地域があります。
インドのケララとブラジルのガラパリでは、トリウム232(基本はアルファ崩壊ですがガンマ線も出す)を含むモナザイトという鉱石が原因となっています。
イランのラムサールでは、温泉の噴出によって溜まったラジウム。中国の陽江は粘土層に含まれるウラン238が崩壊してできるウラン系列核種が発するガンマ線が原因です。
これらの地域は、他の地域と比べても、がん発生率に差がないとされています。その理由は、今も研究が続いています。ただ、これらの地域の高くなっている放射線は、主に「大地と建物からのガンマ線」によるものだけだということは、理解しておきましょう。
さらに、線源となる原子のほとんどが、岩や石ころの中に存在しているので、放射性物質そのものを吸い込んで、内部被ばく量が多くなることは、ほぼ考えにくい環境です。
●カリウム40とセシウム137
最後は、飲食で体内に入ってくるカリウム40と、カリウムに化学的な性質が似ているセシウム137についてです。
「カリウム40は、体重60kgの成人男子の体内に約4000ベクレルもある」と言われます。これは間違った数字ではありませんが、4000ベクレルという、いかにも高そうな数値を引き合いに出して、人体がカリウムと勘違いして取り込んでしまう放射性セシウムの影響を過小評価しようとする悪意に満ちた宣伝です。
カリウム40は、体重1kgで計算すると66.7ベクレル/kgしかありません。米や肉や野菜の500ベクレル/kgという基準値が、いかに高いものか、お分かりいただけると思います。
そして、カリウム40の半減期は12.8億年。セシウム137の半減期は30年です。仮に同じ原子数が存在すると、セシウム137はカリウム40に比べて、時間あたり、なんと4267万倍の放射線を出します。
ほんの少しのカリウムが、セシウム137と入れ代わっただけで、恐ろしいことが起きるのです。
以上、「自然放射線で騙されないための知識」として、ご理解頂ければ幸いです。
イランのラムサールでは、温泉の噴出によって溜まったラジウム。中国の陽江は粘土層に含まれるウラン238が崩壊してできるウラン系列核種が発するガンマ線が原因です。
これらの地域は、他の地域と比べても、がん発生率に差がないとされています。その理由は、今も研究が続いています。ただ、これらの地域の高くなっている放射線は、主に「大地と建物からのガンマ線」によるものだけだということは、理解しておきましょう。
さらに、線源となる原子のほとんどが、岩や石ころの中に存在しているので、放射性物質そのものを吸い込んで、内部被ばく量が多くなることは、ほぼ考えにくい環境です。
●カリウム40とセシウム137
最後は、飲食で体内に入ってくるカリウム40と、カリウムに化学的な性質が似ているセシウム137についてです。
「カリウム40は、体重60kgの成人男子の体内に約4000ベクレルもある」と言われます。これは間違った数字ではありませんが、4000ベクレルという、いかにも高そうな数値を引き合いに出して、人体がカリウムと勘違いして取り込んでしまう放射性セシウムの影響を過小評価しようとする悪意に満ちた宣伝です。
カリウム40は、体重1kgで計算すると66.7ベクレル/kgしかありません。米や肉や野菜の500ベクレル/kgという基準値が、いかに高いものか、お分かりいただけると思います。
そして、カリウム40の半減期は12.8億年。セシウム137の半減期は30年です。仮に同じ原子数が存在すると、セシウム137はカリウム40に比べて、時間あたり、なんと4267万倍の放射線を出します。
ほんの少しのカリウムが、セシウム137と入れ代わっただけで、恐ろしいことが起きるのです。
以上、「自然放射線で騙されないための知識」として、ご理解頂ければ幸いです。
自然放射線を正しく知る(3) ― 2011/08/07 15:44
次にウラン系列(ウラン・ラジウム系列とも言う)です。
ウラン238は、放射線を出しながら、様々な放射性物質に変わり、最終的には鉛206に安定します。この過程をウラン238の崩壊系列、経由する放射性物質を孫核種と呼びます(詳しくはこちらへ)。
ほとんどが、半減期が短い元素ですが、ウラン234(半減期:24万6千年)、トリウム230(7万5千年)、ラジウム226(1600年)、ラドン222(3.82日)は半減期が比較的長いことから、自然界で存在が確認できます。
ラドン222以外は常温では固体である上、放出されるのは遠くまで飛べないアルファ線かベータ線が中心ですから、岩石中の中にある限りは心配はありません(若干のガンマ線が空間線量に影響を及ぼす)。
しかし、体内に取り込むと深刻な問題になります。
自然放射線の範疇ではありませんが、どの孫核種も、ウラン鉱山などで粉じんとして体内に入った場合は、肺、膵臓、肝臓に発ガンの危険性が高まります。
ラドン222は常温で気体なので、大気中に広く存在します。世界で見ると10~100ベクレル/立方メートルの濃度で、日本では平均13ベクレル/立方メートルとされます。アルファ崩壊なので、内部被ばくを考慮する必用があります。呼吸で肺に吸い込んだラドン222などから受ける被ばく線量は世界平均で1.3ミリシーベルト/年とされ、自然放射線による年間被ばく量=2.4ミリシーベルト/年の半分以上を占めます。
これも自然放射線の範疇ではありませんが、ウラン鉱山近傍ではラドン222の濃度が高まります。
日本では唯一のウラン鉱山があった岡山・鳥取県境の人形峠で、悲惨な事態になりました。多くの鉱山労働者を出した24世帯150人ほどの集落(鳥取県側の方面(かたも)地区)で、20年間で8人、28年間では11人がガンで死亡したのです。男性の肺ガン死亡率は全国平均の26倍になったそうです【参考サイト】。
アメリカでも同様の事態が起きており、アリゾナ州のレッドロックのウラン鉱山では、約400人の鉱山労働者(ほとんどが先住民)のうち約70人が肺ガンで死亡しています【参考サイト】。
自然放射線中で、もっとも問題視されているのはラドン222を吸い込んだ場合の内部被ばくです。ラドン222は絶対に増やしてはいけないし、ウランの採掘さえしなければ増えません。
そう!人類にとって、そして地球上の生物にとって、ウランは掘ってはいけないものなのです。地中にそっと置いておけば、深刻な被ばくを引き起こすようなことはありません。それをひとたび、人の手に収めようとした時、とんでもない悲劇が起きるのです。
トリウム系列に話を進めましょう。
天然放射性物質の一つで、岩石の中に含まれるトリウム232は、様々な孫核種(放射性物質)を経由して、最終的には鉛208に安定します(詳しくはこちら)。
孫核種の内、ラドン220以外は常温では固体で、ほとんどがアルファ線かベータ線しか出しません。ウラン系列同様、岩石の中にある限り心配はありません(若干のガンマ線が空間線量に影響を及ぼす)。しかし、鉱山の粉じんなどで体内に入った場合は、内部被ばくが心配です。
唯一、常温で気体となるラドン220(トロンとも呼ばれる)は、半減期が55.6秒と短いので大きな問題はないと思われます(一部のサイトで、「ラドン220は大きな被ばく要因」とされているが、これは間違いでは…)。
余談ですが、ラドン温泉、トロン温泉、ラジウム温泉なるものが存在します。少なくとも放射性物質が身体に良いことはありませんので、個人的にはお薦めしません。放射性物質以外に含まれている微量元素が、なんらかの効果を及ぼす可能性は否定しませんが…
たいへんに長くなってしまいましたが、重要なことは、太古からあるバランスを崩すとたいへんなことになるということです。
ウラン238は、放射線を出しながら、様々な放射性物質に変わり、最終的には鉛206に安定します。この過程をウラン238の崩壊系列、経由する放射性物質を孫核種と呼びます(詳しくはこちらへ)。
ほとんどが、半減期が短い元素ですが、ウラン234(半減期:24万6千年)、トリウム230(7万5千年)、ラジウム226(1600年)、ラドン222(3.82日)は半減期が比較的長いことから、自然界で存在が確認できます。
ラドン222以外は常温では固体である上、放出されるのは遠くまで飛べないアルファ線かベータ線が中心ですから、岩石中の中にある限りは心配はありません(若干のガンマ線が空間線量に影響を及ぼす)。
しかし、体内に取り込むと深刻な問題になります。
自然放射線の範疇ではありませんが、どの孫核種も、ウラン鉱山などで粉じんとして体内に入った場合は、肺、膵臓、肝臓に発ガンの危険性が高まります。
ラドン222は常温で気体なので、大気中に広く存在します。世界で見ると10~100ベクレル/立方メートルの濃度で、日本では平均13ベクレル/立方メートルとされます。アルファ崩壊なので、内部被ばくを考慮する必用があります。呼吸で肺に吸い込んだラドン222などから受ける被ばく線量は世界平均で1.3ミリシーベルト/年とされ、自然放射線による年間被ばく量=2.4ミリシーベルト/年の半分以上を占めます。
これも自然放射線の範疇ではありませんが、ウラン鉱山近傍ではラドン222の濃度が高まります。
日本では唯一のウラン鉱山があった岡山・鳥取県境の人形峠で、悲惨な事態になりました。多くの鉱山労働者を出した24世帯150人ほどの集落(鳥取県側の方面(かたも)地区)で、20年間で8人、28年間では11人がガンで死亡したのです。男性の肺ガン死亡率は全国平均の26倍になったそうです【参考サイト】。
アメリカでも同様の事態が起きており、アリゾナ州のレッドロックのウラン鉱山では、約400人の鉱山労働者(ほとんどが先住民)のうち約70人が肺ガンで死亡しています【参考サイト】。
自然放射線中で、もっとも問題視されているのはラドン222を吸い込んだ場合の内部被ばくです。ラドン222は絶対に増やしてはいけないし、ウランの採掘さえしなければ増えません。
そう!人類にとって、そして地球上の生物にとって、ウランは掘ってはいけないものなのです。地中にそっと置いておけば、深刻な被ばくを引き起こすようなことはありません。それをひとたび、人の手に収めようとした時、とんでもない悲劇が起きるのです。
トリウム系列に話を進めましょう。
天然放射性物質の一つで、岩石の中に含まれるトリウム232は、様々な孫核種(放射性物質)を経由して、最終的には鉛208に安定します(詳しくはこちら)。
孫核種の内、ラドン220以外は常温では固体で、ほとんどがアルファ線かベータ線しか出しません。ウラン系列同様、岩石の中にある限り心配はありません(若干のガンマ線が空間線量に影響を及ぼす)。しかし、鉱山の粉じんなどで体内に入った場合は、内部被ばくが心配です。
唯一、常温で気体となるラドン220(トロンとも呼ばれる)は、半減期が55.6秒と短いので大きな問題はないと思われます(一部のサイトで、「ラドン220は大きな被ばく要因」とされているが、これは間違いでは…)。
余談ですが、ラドン温泉、トロン温泉、ラジウム温泉なるものが存在します。少なくとも放射性物質が身体に良いことはありませんので、個人的にはお薦めしません。放射性物質以外に含まれている微量元素が、なんらかの効果を及ぼす可能性は否定しませんが…
たいへんに長くなってしまいましたが、重要なことは、太古からあるバランスを崩すとたいへんなことになるということです。
カリウム40の半減期は12.5億年です。ということは、体内での濃度=67ベクレル/kgは、人類が地球に登場して以来、ほとんど変化していないはずです。セシウム134とか137が体内に入れば、100万年以上変化していなかったカリウム40の濃度を上げるのと同じことになるのです。
ウラン系列やトリウム系列は、自然界にある限り問題はありません。掘るから悲劇が起きるのです。
自然放射線や天然放射性物質は、そっとしておいてあげる。それが唯一の道。
原発や核兵器が生む人工放射線は、人類を含むすべての生物が、長い時間をかけて築き上げてきた自然放射線との間の微妙なバランスを根底から崩してしまうのです。
自然放射線を正しく知る(2) ― 2011/08/07 15:32
大地には、地球創生期にできた天然放射性物質が、わずかに含まれています。
主なものは、
カリウム40(半減期:12.5億年)
ウラン238(半減期:44億6千万年)とその崩壊過程で生成される核種【ウラン系列】
トリウム232(半減期:140億年)をその崩壊過程で生成される核種【トリウム系列】
です。
これらは、大地の中(多くは岩石の中)から放射線を発する場合もありますし、建材などにも含まれているので、私たちは建物からも若干の外部被ばくを受けています。大地+建物からの合計が世界平均で0.4ミリシーベルト/年ほど。
日本国内には、大地+建物からの被ばく線量に対応するデータありません。使えそうなデータは、「宇宙、大地からの放射線と食物摂取によって受ける放射線量」です。
一番低い神奈川県で0.91ミリシーベルト/年、一番高い岐阜県で1.19ミリシーベルト/年という値に。線量の違いは、主に大地からの放射線量の違いによります。
天然放射性物質は花こう岩に多く含まれているため、花こう岩地帯では線量が上がります。日本では、西日本に花こう岩が多いので、大地からの放射線量は、概ね、西高東低の傾向を見せます。さらに、関東地方では岩盤の上を関東ローム層という赤土の層が厚く覆っているため自然放射線のレベルが低くなっています。
三つの天然放射性物質(群)は、いずれも内部被ばくにも関与します。
まず、カリウム40から見ていきましょう。
カリウム40は、地球上にあるカリウムの中に0.0117%含まれる放射性物質です。海の中にあるカリウムも、岩石に含まれるカリウムも、生体内にあるカリウムも、皆、その0.0117%はカリウム40です。サプリメントのカリウム剤であっても、0.0117%はカリウム40です。
一割ほどがガンマ線を出して、空間線量に影響を及ぼし、外部被ばくに関わります。残りの9割はベータ線を出して、カルシウム40に変わります。ベータ線は、遠くまで飛ばないので、この分は、外部被ばくよりも内部被ばくを考える必要があります。
カリウムは、体内に入ると血中や筋組織などを中心に、ほぼ平均的に全身に広がります。人体にとっての必須ミネラルの一つなので、健康体であれば、世界中の誰もがほぼ同じ濃度で体内に持っています(生活習慣や食文化の違いで若干の過不足がある)。しかし、どこまで行っても、カリウムの0.0117%はカリウム40で、体重60kgの日本人では、4000ベクレルのカリウム40が体内にあります。もちろん、これは少ない方が良いのですが、減らそうとするとカリウム欠乏症になってしまいますので、できません。
今回の福島第1の事故で、大量に放出されたセシウム137は、カリウムと似た性質を持っているため、体内に吸収されやすい放射性物質です。私たちの体は、セシウム137をカリウムとほとんど同じように扱いますので、仮に、2000ベクレルのセシウム137を体内に溜め込んでしまうと、カリウム40の濃度が、ほぼ1.5倍になったのと同じだけのベータ線による内部被ばくを受けるのです。
厚生労働省が、事故後に慌てて決めた暫定基準値によると、放射性セシウム(134と137の合計)は500ベクレル/kg(野菜や肉、それに卵や魚などそのほかの食品)です。
体内にあるカリウム40の4000ベクレルに比べたら随分低いから安心!ではありません。ここに誤魔化しが隠されているのです。4000ベクレルは体重60kgに対してです。カリウム40の濃度を1kg当たりで見たら、67ベクレル/kg。仮にセシウム137が100ベクレル/kg含まれる食品を持続的に食べ続けたらどうなるでしょう。<カリウム40+セシウム137>による内部被ばく量は、アッと言う間に跳ね上がります。
主なものは、
カリウム40(半減期:12.5億年)
ウラン238(半減期:44億6千万年)とその崩壊過程で生成される核種【ウラン系列】
トリウム232(半減期:140億年)をその崩壊過程で生成される核種【トリウム系列】
です。
これらは、大地の中(多くは岩石の中)から放射線を発する場合もありますし、建材などにも含まれているので、私たちは建物からも若干の外部被ばくを受けています。大地+建物からの合計が世界平均で0.4ミリシーベルト/年ほど。
日本国内には、大地+建物からの被ばく線量に対応するデータありません。使えそうなデータは、「宇宙、大地からの放射線と食物摂取によって受ける放射線量」です。
一番低い神奈川県で0.91ミリシーベルト/年、一番高い岐阜県で1.19ミリシーベルト/年という値に。線量の違いは、主に大地からの放射線量の違いによります。
天然放射性物質は花こう岩に多く含まれているため、花こう岩地帯では線量が上がります。日本では、西日本に花こう岩が多いので、大地からの放射線量は、概ね、西高東低の傾向を見せます。さらに、関東地方では岩盤の上を関東ローム層という赤土の層が厚く覆っているため自然放射線のレベルが低くなっています。
三つの天然放射性物質(群)は、いずれも内部被ばくにも関与します。
まず、カリウム40から見ていきましょう。
カリウム40は、地球上にあるカリウムの中に0.0117%含まれる放射性物質です。海の中にあるカリウムも、岩石に含まれるカリウムも、生体内にあるカリウムも、皆、その0.0117%はカリウム40です。サプリメントのカリウム剤であっても、0.0117%はカリウム40です。
一割ほどがガンマ線を出して、空間線量に影響を及ぼし、外部被ばくに関わります。残りの9割はベータ線を出して、カルシウム40に変わります。ベータ線は、遠くまで飛ばないので、この分は、外部被ばくよりも内部被ばくを考える必要があります。
カリウムは、体内に入ると血中や筋組織などを中心に、ほぼ平均的に全身に広がります。人体にとっての必須ミネラルの一つなので、健康体であれば、世界中の誰もがほぼ同じ濃度で体内に持っています(生活習慣や食文化の違いで若干の過不足がある)。しかし、どこまで行っても、カリウムの0.0117%はカリウム40で、体重60kgの日本人では、4000ベクレルのカリウム40が体内にあります。もちろん、これは少ない方が良いのですが、減らそうとするとカリウム欠乏症になってしまいますので、できません。
今回の福島第1の事故で、大量に放出されたセシウム137は、カリウムと似た性質を持っているため、体内に吸収されやすい放射性物質です。私たちの体は、セシウム137をカリウムとほとんど同じように扱いますので、仮に、2000ベクレルのセシウム137を体内に溜め込んでしまうと、カリウム40の濃度が、ほぼ1.5倍になったのと同じだけのベータ線による内部被ばくを受けるのです。
厚生労働省が、事故後に慌てて決めた暫定基準値によると、放射性セシウム(134と137の合計)は500ベクレル/kg(野菜や肉、それに卵や魚などそのほかの食品)です。
体内にあるカリウム40の4000ベクレルに比べたら随分低いから安心!ではありません。ここに誤魔化しが隠されているのです。4000ベクレルは体重60kgに対してです。カリウム40の濃度を1kg当たりで見たら、67ベクレル/kg。仮にセシウム137が100ベクレル/kg含まれる食品を持続的に食べ続けたらどうなるでしょう。<カリウム40+セシウム137>による内部被ばく量は、アッと言う間に跳ね上がります。
(続く)
自然放射線を正しく知る(1) ― 2011/08/07 15:22
私たちは自然界からも放射線を受けています。自然放射線と言います。人工放射線(核実験や原発の影響などで浴びている放射線)同様、体外から直接放射線を浴びる外部被ばくと、体内に入り込んだ放射性物質による内部被ばくがあります。
自然放射線による被ばく量の合計(外部被ばく量+内部被ばく量)は、世界平均では2.4ミリシーベルト/年(1988年国連科学委員会報告)。日本では平均1.4ミリシーベルト/年(若干異なるデータもあり)と推定されています。
例えばインドのケララ州の一部では、大地からの放射線だけで35ミリシーベルト/年という数字もありますが、今のところ、それが原因でガンが多発しているといったデータはありません。
こういった自然放射線の数字を楯に、「自然放射線以外の被ばく量を年間1ミリシーベルトとするのは厳しすぎる」などと主張する人たちがいますが、これはまったくの間違いです。そのあたりを分かりやすく解説したいと思います。
まず、どこから来る自然放射線なのかという視点から考えてみましょう。
自然放射線は、「宇宙から飛んでくる宇宙線に由来する放射線」と「地球創生期から大地の中に存在する天然放射性物質に由来する放射線」の二つに分けられます。
宇宙線とは、宇宙空間を飛び交う放射線のことで、常に地球にも降り注いでいます。大部分が高エネルギーの陽子で、一部がアルファ線(ヘリウム原子核)です。他に様々な素粒子もありますが、微量です。これらは一次宇宙線と呼ばれ、大気圏に入ると空気中の原子や分子と衝突して、二次宇宙線と言われる中性子やガンマ線を生み、一次宇宙線自体は、ほとんど地表まで到達しません。
二次宇宙線もまた、大気中で様々な原子や分子と衝突し、地表面(海抜0メートル)まで到達するのは、平均0.03マイクロシーベルト/時。年単位で見ると世界平均では0.35ミリシーベルト/年です(この年平均は海抜0メートルのデータではありません)。
宇宙線の量は、地磁気の関係で、緯度が高くなるほど多くなります(赤道で一番少なく、北極、南極で多い)。また、海抜が上がれば、通過する空気の層が薄くなるので、増えることになります。よく飛行機で海外へ行く場合の被ばく線量が取り上げられますが、これは宇宙線の影響によるものです。高度1万メートルにもなると、宇宙線の線量は、かなり増えてきます。
一次宇宙線やそれから派生する放射線と空気中の原子や分子との衝突によって、ナトリウム22や炭素14などの放射性元素も生成されます。ベータ線を発する炭素14は、主に飲食で体の中に入ってきます。これによる内部被ばく量は、臓器やによってことなりますが、数10マイクロシーベルト/年程度です。
(続く)
自然放射線による被ばく量の合計(外部被ばく量+内部被ばく量)は、世界平均では2.4ミリシーベルト/年(1988年国連科学委員会報告)。日本では平均1.4ミリシーベルト/年(若干異なるデータもあり)と推定されています。
例えばインドのケララ州の一部では、大地からの放射線だけで35ミリシーベルト/年という数字もありますが、今のところ、それが原因でガンが多発しているといったデータはありません。
こういった自然放射線の数字を楯に、「自然放射線以外の被ばく量を年間1ミリシーベルトとするのは厳しすぎる」などと主張する人たちがいますが、これはまったくの間違いです。そのあたりを分かりやすく解説したいと思います。
まず、どこから来る自然放射線なのかという視点から考えてみましょう。
自然放射線は、「宇宙から飛んでくる宇宙線に由来する放射線」と「地球創生期から大地の中に存在する天然放射性物質に由来する放射線」の二つに分けられます。
宇宙線とは、宇宙空間を飛び交う放射線のことで、常に地球にも降り注いでいます。大部分が高エネルギーの陽子で、一部がアルファ線(ヘリウム原子核)です。他に様々な素粒子もありますが、微量です。これらは一次宇宙線と呼ばれ、大気圏に入ると空気中の原子や分子と衝突して、二次宇宙線と言われる中性子やガンマ線を生み、一次宇宙線自体は、ほとんど地表まで到達しません。
二次宇宙線もまた、大気中で様々な原子や分子と衝突し、地表面(海抜0メートル)まで到達するのは、平均0.03マイクロシーベルト/時。年単位で見ると世界平均では0.35ミリシーベルト/年です(この年平均は海抜0メートルのデータではありません)。
宇宙線の量は、地磁気の関係で、緯度が高くなるほど多くなります(赤道で一番少なく、北極、南極で多い)。また、海抜が上がれば、通過する空気の層が薄くなるので、増えることになります。よく飛行機で海外へ行く場合の被ばく線量が取り上げられますが、これは宇宙線の影響によるものです。高度1万メートルにもなると、宇宙線の線量は、かなり増えてきます。
一次宇宙線やそれから派生する放射線と空気中の原子や分子との衝突によって、ナトリウム22や炭素14などの放射性元素も生成されます。ベータ線を発する炭素14は、主に飲食で体の中に入ってきます。これによる内部被ばく量は、臓器やによってことなりますが、数10マイクロシーベルト/年程度です。
(続く)
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