汚染水問題に出口はあるのか?(上) ― 2013/09/01 16:05
汚染水問題。出口が見えません。
今朝も新たな汚染水漏れが明らかになりました。
毎日新聞【福島汚染水漏れ:高放射線量を検出 敷地内の同型2基から】
タンク鋼板の接合部(例のボルトで接合した部分を指しているのか)から汚染水がしみ出しているだけで、毎時1800ミリシーベルト。
ご存じの通り一般公衆の線量基準は年間1ミリシーベルトです。なんと1,576万8千倍!この放射線を浴びたら、たった2秒で1ミリシーベルトに達します。
放射線業務従事者の年間20ミリシーベルト(5年間で100ミリシーベルト)という基準には40秒で。すべての人が死に至るという7000ミリシーベルトにも4時間足らずで達してしまいます。
まず、この毎時1800ミリシーベルトが、とんでもなく危険な放射線量であることを確認しましょう。
東京電力曰く「タンクの監視は目視で行っていたが、先月末から放射線の測定器を携帯した結果、高い放射線量が観測された」と。放射線を発する高濃度の汚染水タンクの監視に線量計すら持って行かなかった… マスメディアは、その「ずさんさ」を指摘していますが、おそらく東電は、「線量計を持って行けば、どこかで高線量が出てしまうから」と、汚染水漏れを織り込んだ上で、あえてずさんなパトロールで済ませていたのでしょう。
もうひとつ、8月20日に発覚した300トンの汚染水漏れ。
福島民報【タンク汚染水漏れ過去最大300トン 第一原発 高濃度8000万ベクレル検出】
見出しになっている「8000万ベクレル」は「1リットル当たり」の濃度です。漏れたのは300トンですから合計24兆ベクレル。
これはもう非常事態です。「原発事故収束宣言」はただちに撤回すべきです。
ここでひとつ明らかになったことがあります。この300トンには、放射性セシウム(セシウム137とセシウム134)が高濃度で含まれていたのです。
以下は、原子力規制庁が明らかにした数字です。
セシウム134 : 4万6千ベクレル/リットル
セシウム137 : 10万ベクレル/リットル
全ベータ線核種:8000万ベクレル/リットル
参照:キノリュウイチのblog
この数字をどう見るかですが、まず、セシウム除去装置を通したあとの汚染水なのに、放射性セシウムがかなり残っていることが分かります。
ちなみに国が示した<海への放出が認められる放射性
セシウムの濃度限界>は、セシウム134が60ベクレル/リットル、セシウム137は90ベクレル/リットルです。セシウム除去装置の効果は知れたものです。
そして、問題はセシウムだけではありません。見方を変えると、さらに恐ろしい事態が浮き彫りになります。濃度限界をはるかに超える高濃度の放射性セシウムは、汚染水に含まれる全ベータ線を出すすべての放射性元素(全ベータ線核種)の0.18%の過ぎないのです。とんでもなく高濃度の汚染水なのだということが、お分かりいただけるでしょう。
セシウム以外の99.82%には、多くのストロンチウム90が含まれています。その危険性については、以下の当ブログの記事を参照してください。
【ストロンチウム90に警戒を】
【再度、ストロンチウム90に警戒を】
【海からストロンチウム】
【恐怖のストロンチウム90】
長くなってしまったので、ここで記事を分けることにします。
今朝も新たな汚染水漏れが明らかになりました。
毎日新聞【福島汚染水漏れ:高放射線量を検出 敷地内の同型2基から】
タンク鋼板の接合部(例のボルトで接合した部分を指しているのか)から汚染水がしみ出しているだけで、毎時1800ミリシーベルト。
ご存じの通り一般公衆の線量基準は年間1ミリシーベルトです。なんと1,576万8千倍!この放射線を浴びたら、たった2秒で1ミリシーベルトに達します。
放射線業務従事者の年間20ミリシーベルト(5年間で100ミリシーベルト)という基準には40秒で。すべての人が死に至るという7000ミリシーベルトにも4時間足らずで達してしまいます。
まず、この毎時1800ミリシーベルトが、とんでもなく危険な放射線量であることを確認しましょう。
東京電力曰く「タンクの監視は目視で行っていたが、先月末から放射線の測定器を携帯した結果、高い放射線量が観測された」と。放射線を発する高濃度の汚染水タンクの監視に線量計すら持って行かなかった… マスメディアは、その「ずさんさ」を指摘していますが、おそらく東電は、「線量計を持って行けば、どこかで高線量が出てしまうから」と、汚染水漏れを織り込んだ上で、あえてずさんなパトロールで済ませていたのでしょう。
もうひとつ、8月20日に発覚した300トンの汚染水漏れ。
福島民報【タンク汚染水漏れ過去最大300トン 第一原発 高濃度8000万ベクレル検出】
見出しになっている「8000万ベクレル」は「1リットル当たり」の濃度です。漏れたのは300トンですから合計24兆ベクレル。
これはもう非常事態です。「原発事故収束宣言」はただちに撤回すべきです。
ここでひとつ明らかになったことがあります。この300トンには、放射性セシウム(セシウム137とセシウム134)が高濃度で含まれていたのです。
以下は、原子力規制庁が明らかにした数字です。
セシウム134 : 4万6千ベクレル/リットル
セシウム137 : 10万ベクレル/リットル
全ベータ線核種:8000万ベクレル/リットル
参照:キノリュウイチのblog
この数字をどう見るかですが、まず、セシウム除去装置を通したあとの汚染水なのに、放射性セシウムがかなり残っていることが分かります。
ちなみに国が示した<海への放出が認められる放射性
セシウムの濃度限界>は、セシウム134が60ベクレル/リットル、セシウム137は90ベクレル/リットルです。セシウム除去装置の効果は知れたものです。
そして、問題はセシウムだけではありません。見方を変えると、さらに恐ろしい事態が浮き彫りになります。濃度限界をはるかに超える高濃度の放射性セシウムは、汚染水に含まれる全ベータ線を出すすべての放射性元素(全ベータ線核種)の0.18%の過ぎないのです。とんでもなく高濃度の汚染水なのだということが、お分かりいただけるでしょう。
セシウム以外の99.82%には、多くのストロンチウム90が含まれています。その危険性については、以下の当ブログの記事を参照してください。
【ストロンチウム90に警戒を】
【再度、ストロンチウム90に警戒を】
【海からストロンチウム】
【恐怖のストロンチウム90】
長くなってしまったので、ここで記事を分けることにします。
汚染水問題に出口はあるのか?(下) ― 2013/09/01 16:23
ボルトで接合し、シリコンゴムのパッキンをはさんだだけの組み立て式鉄製タンク。中に入っているのは塩分を含んだ高濃度汚染水。鉄だから錆びます。シリコンゴムは放射線と太陽光線で腐食。
こんな誰にでも予想のつくことが、東電には分かっていなかったのでしょうか?漏れるのは織り込み済みで、当面、世の中の厳しい目を交わすために、もっとも安い方法を選んだのではないか… これはもう疑いの域ではありません。
東電経営陣の頭の中には、「福島第1を環境から切り離して汚染拡大を防ぐ」とか「放射性物質の海への流出を絶対に阻止する」といった考えはありません。漁民の生活も作業員の安全も頭の片隅にすらないのでしょう。「最終的に海に流してしまえば、太平洋が薄めてくれる」程度にしか考えていないのです。
汚染水問題は重大です。放射性物質で地下水を汚し、海を汚すことは、大きな生態系を取り返しのつかない状態にしてしまうことを指します。もちろん私たちの命や健康にも直接関わってくる問題です。
安倍政権は「国の責任で抜本的対策を取る」などと、得意の空手形を切っていますが、そう簡単にはいかないでしょう。
いくつかの設問をあげて考えていきましょう。
●今ある汚染水をどうするのか?
にわか作りのタンクにため込まれている汚染水は、今の段階で33万トンにも及びます。今後も汚染水漏れは次々と起きるでしょう。そういう造りのタンクですから。ここにある汚染水を恒久的な貯蔵施設に移さなくてはいけないのに、その方策は見えません。
政府や東電が汚染水対策の切り札としているのが、汚染水から約60種類の放射性物質を取り除くことができるという多核種除去設備(ALPS)。しかし、トラブル続きで、ALPSそのものからの汚染水漏れも明らかになったばかりです。
仮にALPSがまとも稼働したとして、汚染水から取り除いた放射性物質はどうするのか?これもまた具体案なしです。
放射性物質は中和も解毒もできません。どんな形で存在しても、放射線を発し続けるのです。
さらに問題なのは、ALPSでも取り除けないトリチウムという放射性物質です。分かりやすく言えば放射性の水素。東電の目論見は、ALPSで処理した水を海に放出するというものですが、高濃度のトリチウムを含んでいるので、絶対に許されません。
トリチウムについては以下をご参照ください。
【トリチウムの恐怖(前編)】
【トリチウムの恐怖(後編)】
●流入する地下水をどうするのか?
福島第1の1号機から4号機には、1日約1000トンの地下水流入があり、うち300トンが汚染水となって海に流出。400トンが建屋に流入して回収されタンクへ。残りの300トンは行方不明!
REUTERS【福島第1の汚染水、1日300トンが海に流出と試算=エネ庁】
地下水の流入を防ぐために、凍土壁という方法が俎上に乗っていますが、これは恒久的な対策と呼べるのでしょうか? 地下水の流入は、最低でも100年間は防がなくてはなりません。凍土壁は冷凍庫と同じ原理で、パイプの中を通る冷却液で、まわりの土を凍らせるもの。もちろん電気が必要です。こういった施設を100年間、止まることなく動かせると誰が約束できるのでしょうか?抜本的対策とは呼べません。またまた無駄な資金の投入になるだけでしょう。
福島第1を環境から切り離すという考え方は正しいでしょう。しかし造るべきは、絶対に100年、いや200年、300年耐える施設です。運用に資金や手間がかからないことも重要です。
●いつまで冷やさなくてはいけないのか?
この設問は、東電も、政府も、マスメディアも避けて通っています。しかし、水で冷やしている限り、汚染水問題を避けて通ることはできません。
冷やすのをやめると、一度メルトダウンして溶けた燃料棒が、その中にある核分裂生成物の崩壊熱で、ふたたび溶け出す恐れがあります。これを再溶融と言います。再溶融した核燃料が大きな塊になると再臨界が起き、新たな放射性物質が大量に撒き散らされます。大規模な再臨界が起きれば、東北はおろか東日本のほとんどが、人の住めない場所になるでしょう。なにしろ、制御不能に陥っている核燃料の量で見ると、福島第1はチェルノブイリの6.6倍もあるのです。
今は、制御不能だが、なんとかなだめすかしている状態。これがすべて暴走することがあったら恐ろしい事態になるのです。
参考記事【附記:どうにも腑に落ちない水素発生】
一方、事故から2年半という月日が経とうとしています。核燃料内の崩壊熱は、少しずつ下がってきています。しかし、溶けた核燃料がどういう形で固まっているのか、まったく分からないので、水で冷やすのを止めることができないでいます。核燃料の塊の形や大きさによって、再溶融や再臨界を起こす条件が違うからです。
いつ、どの段階で水による冷却を止めるのか?水を止めたあと、どうやって放射性物質の飛散を防ぐのか?
もちろん人類史上初めての難しい試みです。「日本の知を結集して」なんてレベルではなく、「人類の知を結集して」取り組むべき課題です。日本政府は、恥も外聞も棄てて、世界に向けてSOSを発するべき段階にまで来ているのです。
もちろん、東京電力に任せられる問題ではありません。脇見運転で大暴走事故を起こしたドライバーに、みずから事故処理を任せているようなものなのです。現状は。
こんなことは普通、あり得ないでしょう?
こんな誰にでも予想のつくことが、東電には分かっていなかったのでしょうか?漏れるのは織り込み済みで、当面、世の中の厳しい目を交わすために、もっとも安い方法を選んだのではないか… これはもう疑いの域ではありません。
東電経営陣の頭の中には、「福島第1を環境から切り離して汚染拡大を防ぐ」とか「放射性物質の海への流出を絶対に阻止する」といった考えはありません。漁民の生活も作業員の安全も頭の片隅にすらないのでしょう。「最終的に海に流してしまえば、太平洋が薄めてくれる」程度にしか考えていないのです。
汚染水問題は重大です。放射性物質で地下水を汚し、海を汚すことは、大きな生態系を取り返しのつかない状態にしてしまうことを指します。もちろん私たちの命や健康にも直接関わってくる問題です。
安倍政権は「国の責任で抜本的対策を取る」などと、得意の空手形を切っていますが、そう簡単にはいかないでしょう。
いくつかの設問をあげて考えていきましょう。
●今ある汚染水をどうするのか?
にわか作りのタンクにため込まれている汚染水は、今の段階で33万トンにも及びます。今後も汚染水漏れは次々と起きるでしょう。そういう造りのタンクですから。ここにある汚染水を恒久的な貯蔵施設に移さなくてはいけないのに、その方策は見えません。
政府や東電が汚染水対策の切り札としているのが、汚染水から約60種類の放射性物質を取り除くことができるという多核種除去設備(ALPS)。しかし、トラブル続きで、ALPSそのものからの汚染水漏れも明らかになったばかりです。
仮にALPSがまとも稼働したとして、汚染水から取り除いた放射性物質はどうするのか?これもまた具体案なしです。
放射性物質は中和も解毒もできません。どんな形で存在しても、放射線を発し続けるのです。
さらに問題なのは、ALPSでも取り除けないトリチウムという放射性物質です。分かりやすく言えば放射性の水素。東電の目論見は、ALPSで処理した水を海に放出するというものですが、高濃度のトリチウムを含んでいるので、絶対に許されません。
トリチウムについては以下をご参照ください。
【トリチウムの恐怖(前編)】
【トリチウムの恐怖(後編)】
●流入する地下水をどうするのか?
福島第1の1号機から4号機には、1日約1000トンの地下水流入があり、うち300トンが汚染水となって海に流出。400トンが建屋に流入して回収されタンクへ。残りの300トンは行方不明!
REUTERS【福島第1の汚染水、1日300トンが海に流出と試算=エネ庁】
地下水の流入を防ぐために、凍土壁という方法が俎上に乗っていますが、これは恒久的な対策と呼べるのでしょうか? 地下水の流入は、最低でも100年間は防がなくてはなりません。凍土壁は冷凍庫と同じ原理で、パイプの中を通る冷却液で、まわりの土を凍らせるもの。もちろん電気が必要です。こういった施設を100年間、止まることなく動かせると誰が約束できるのでしょうか?抜本的対策とは呼べません。またまた無駄な資金の投入になるだけでしょう。
福島第1を環境から切り離すという考え方は正しいでしょう。しかし造るべきは、絶対に100年、いや200年、300年耐える施設です。運用に資金や手間がかからないことも重要です。
●いつまで冷やさなくてはいけないのか?
この設問は、東電も、政府も、マスメディアも避けて通っています。しかし、水で冷やしている限り、汚染水問題を避けて通ることはできません。
冷やすのをやめると、一度メルトダウンして溶けた燃料棒が、その中にある核分裂生成物の崩壊熱で、ふたたび溶け出す恐れがあります。これを再溶融と言います。再溶融した核燃料が大きな塊になると再臨界が起き、新たな放射性物質が大量に撒き散らされます。大規模な再臨界が起きれば、東北はおろか東日本のほとんどが、人の住めない場所になるでしょう。なにしろ、制御不能に陥っている核燃料の量で見ると、福島第1はチェルノブイリの6.6倍もあるのです。
今は、制御不能だが、なんとかなだめすかしている状態。これがすべて暴走することがあったら恐ろしい事態になるのです。
参考記事【附記:どうにも腑に落ちない水素発生】
一方、事故から2年半という月日が経とうとしています。核燃料内の崩壊熱は、少しずつ下がってきています。しかし、溶けた核燃料がどういう形で固まっているのか、まったく分からないので、水で冷やすのを止めることができないでいます。核燃料の塊の形や大きさによって、再溶融や再臨界を起こす条件が違うからです。
いつ、どの段階で水による冷却を止めるのか?水を止めたあと、どうやって放射性物質の飛散を防ぐのか?
もちろん人類史上初めての難しい試みです。「日本の知を結集して」なんてレベルではなく、「人類の知を結集して」取り組むべき課題です。日本政府は、恥も外聞も棄てて、世界に向けてSOSを発するべき段階にまで来ているのです。
もちろん、東京電力に任せられる問題ではありません。脇見運転で大暴走事故を起こしたドライバーに、みずから事故処理を任せているようなものなのです。現状は。
こんなことは普通、あり得ないでしょう?
被爆者援護法とフクシマ ― 2013/09/08 16:28
日本で年間1ミリシーベルト以上の放射線被ばくを受けた人は、無償で医療や健康診断を受ける権利があります。
「今、福島で年間20ミリシーベルトという高い線量下での暮らしを強制されている人たちがいるのに何言ってんだ!」とお叱りを受けそうですが、事実なのです。
1995年に制定された『被爆者援護法』(正式名称は『原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律』)。分かりやすく言えば、原爆症認定や「被爆者健康手帳」公布の裏付けとなる法律です。
以前からあった「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(1957年制定)」「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(1968年制定)」をまとめたものと解釈されがちですが、それだけではありません。ICRP(国際放射線防護委員会)がその当時行った被ばく基準値の変更が背景にあります。
1985年、ICRPは「パリ声明」で一般人の被ばく基準をそれまでの年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに引き下げたのです。
この年間1ミリシーベルトが、チェルノブイリでは被災住民に無条件の移住権を保証する基準値となり、日本では『被爆者援護法』に反映されたのです(年間1ミリシーベルトが妥当なのかどうかはとりあえず横に置きます)。
『被爆者援護法』には以下の内容の記述があります。
<「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」を原爆症認定の第1の判断基準とする。>
参照:厚労省『原爆症認定』
『被爆者援護法』や厚労省のホームページには、年間1ミリシーベルトを具体的に謳った記述はありませんが、実は「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」とは「年間1ミリシーベルト以上を被ばくした者」と同義であることは、以下の図で明らかにされています。
「今、福島で年間20ミリシーベルトという高い線量下での暮らしを強制されている人たちがいるのに何言ってんだ!」とお叱りを受けそうですが、事実なのです。
1995年に制定された『被爆者援護法』(正式名称は『原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律』)。分かりやすく言えば、原爆症認定や「被爆者健康手帳」公布の裏付けとなる法律です。
以前からあった「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(1957年制定)」「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(1968年制定)」をまとめたものと解釈されがちですが、それだけではありません。ICRP(国際放射線防護委員会)がその当時行った被ばく基準値の変更が背景にあります。
1985年、ICRPは「パリ声明」で一般人の被ばく基準をそれまでの年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに引き下げたのです。
この年間1ミリシーベルトが、チェルノブイリでは被災住民に無条件の移住権を保証する基準値となり、日本では『被爆者援護法』に反映されたのです(年間1ミリシーベルトが妥当なのかどうかはとりあえず横に置きます)。
『被爆者援護法』には以下の内容の記述があります。
<「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」を原爆症認定の第1の判断基準とする。>
参照:厚労省『原爆症認定』
『被爆者援護法』や厚労省のホームページには、年間1ミリシーベルトを具体的に謳った記述はありませんが、実は「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」とは「年間1ミリシーベルト以上を被ばくした者」と同義であることは、以下の図で明らかにされています。
ヒロシマでは爆心地から3.25km以内、ナガサキでは3.55km以内が年間1ミリシーベルトを被ばくしたエリアです。それを踏まえて、「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」を「積極的に原爆症に認定する」となったのです(被爆者手帳の交付は、それ以前の当然として)。
詳しくは:厚労省『原爆放射線について』
フクシマにおいて政府が住民に強要している基準値は年間20ミリシーベルトです。もちろん、被爆者健康手帳は1冊も公布されていません。これは二重基準(ダブルスタンダード)以外の何ものでもありません。
晩発性障害は間違いなく起きます。吉田所長の食道ガン死は原発事故と無関係と考える方がむしろ奇妙。何人かの作業員が不自然な死に方をしているのも事実です。
子供たちの間では、甲状腺ガン確定患者が8月の段階で18人。2か月間で6人も増えました。
すくなくとも『被爆者援護法』と同じ基準で、フクシマの被災者を支えること。そして、年間1ミリシーベルトを越えるエリアでは無条件の移住権を認める必要があります。
最後に、政府が2012年4月に発表した『20年後までの年間空間線量率の予測図』にリンクを貼っておきます。
政府発表:20年後の線量
今、そして20年後の年間1ミリシーベルトのエリアをしっかり確認してください。背筋が凍る思いです。
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