福島で放射性降下物(Fallout)が急上昇2012/01/05 17:59

福島県が調査・公表している『定時降下物環境放射能測定値』に、1月2日から3日にかけて、非常に高い数値が記録されています。セシウム137が252MBq/km2(メガベクレル/平方キロメートル)、セシウム134が180MBq/km2。

文科省が発表している『定時降下物のモニタリング』に、各自治体が過去に計測した値が残っています。福島市の11月から12月を見ると、セシウム137・セシウム134ともに、不検出~20MBq/km2の間で推移しています。今回の値は、桁が一つ違います。

また、福島県双葉郡で昨年6月・7月に計測されたデータと比べてみると、今回の1月2日から3日のデータが、この頃の平均値に匹敵する数値である事が分かります。
【元データ】
福島県双葉郡で計測された3月から6月の放射性降下物のデータ(1ヶ月分合計)
福島県双葉郡で計測された7月の放射性降下物のデータ(1ヶ月分合計)

もし、福島第1からの放射性物質の漏出量が増えたことが原因なら、あっちこっちで空間線量が上がるはずなので、おそらく、水素爆発やベントで飛び散って、いまだに上空に漂っている放射性セシウムが、なんらかの原因で、一気に降下してきたものと思われます。ちなみに、1月2日から3日にかけて、福島では降雪はなく、晴れの天気でした。

まず、この放射性降下物の急増の原因を徹底的に究明する必要があります。研究者からの意見を聞きたいところです。
また、「大気中の放射性セシウムは、すでに、ほとんどが地面に落ちているので、マスクなどは必要ない」と言われていることにも、疑問を投げかける必要が出てきます。呼吸による放射性セシウムの摂取に対して、警戒を解くことができないということです。

一方で、文科省は、12月27日まで、毎日、行っていた放射性降下物データの公表を1ヶ月おきに切り替えたようです(福島県は県として連日発表を継続)。まだまだ、放射性降下物の監視を弱めていい状態ではありません。文科省は、ただちに連日公表に戻すべきだと思います。

しかし、突然の放射性降下物(Fallout)の急上昇。原発事故が引き越すものは、誰も予測できないし、誰も制御できないということの証です。

コメント

_ mmrnnf ― 2012/01/05 21:54

情報ありがとうございます!
おっしゃる通り、せめて数値の計測は毎日していただきたいものです。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/01/05 22:54

>mmrnnfさん
そうなんですよね。「でんき予報」よりよっぽど大切な情報です。
とにかく、すべてのデータを「生データ」で即座に公開せよ!これは、難しいことではないはずです。
日本の原子力平和利用三原則は『民主・自主・公開』。原子力基本法にも(にすら)、明記されています。

_ momo ― 2012/01/05 23:21

いつも情報ありがとうございます。
必要なのは情報公開と市民の自立でしょうか。
誰かがやってくれれば・・・の傘に隠れていては何も見えないし判断ができないと思います。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/01/05 23:29

>momoさん
コメントありがとうございます。
鶏が先か卵が先か… になってしまうのですが、徹底した情報公開のためには市民の自立が必要で、市民の自立のためには情報公開が必要なんですよね。あきらめずに、コツコツと一つずつやりましょう!

_ 多摩小町 ― 2012/01/06 08:46


昨日ツィッターで見て すぐ東京都のHPを見たのですが 相変わらず0.05台の表示になっていました。放射性物質はモニタリングポストを避けて流れるようです。

去年の暮れに知人から聞いた話です。
「冷蔵庫の整理をしたら野菜室の隅から福島きゅうりが1本出てきた。冷やし中華を作った時の残りだけど 冷やし中華は9月以降食べてない。だから多分3ヵ月か4ヵ月くらい前の物のはずだけど 腐っても萎びてもない、ほぼ買った時のままのきれいなきゅうりだった」

セシウムは防腐剤の役目を果たすのでしょうか?
「腐らない野菜」としては中国野菜が有名ですが あれも実は放射線を当てている ということなんでしょうか?
輸入品の規制値は370bq/Kgでしたが 3.11以前から300bq/Kgくらいの中国野菜が売られていたということでしょうか?
じゃがいもの発芽を防ぐために放射線を照射するという話は聞いたことがありますが もしかしたら私たちは知らないうちに以前からベクレってる物を食べていたのでしょうか?

他のブログの投稿欄を見ると 避難者ではない西日本の住民の中にも放射性物質の影響を思わせる体調不良の書き込みがあるのに ずっと東京に住んでいる私には全く何の症状もないのが不思議でなりません。
私だけでなく直接の知り合いの中にも死んだり病気になったりした人はいませんし それらしい症状を訴える人もいないのです。
福島に住んでいる人の中にも症状が出ている人と出ていない人がいます。

これをどう考えればいいのか わかりません。DNAのなせるワザなのでしょうか?
放射性物質と個人の耐性について管理人さんは どう お考えになりますか?

_ でじたるコミック ― 2012/01/06 09:13

一概に、フク1からの漏出が増えてはいないと、言い切れないのではないでしょうか? 
核燃料が何処にあるか判らない、第三者をサイト内に入れない現状では、ホントは何が起こっているのか判りません。

先日回答する記者団佐藤氏に依頼し、東京電力会見で、圧力容器底部の温度計について、核燃料が溶融した際に圧力容器底部の温度分布シミュレーションを提示して欲しいと依頼していただいた所、東京電力広報の松本氏は『その様なシミュレーションはしていない』と答えています。これは、大変奇妙!メルト・スルーを予測できません。2800℃で核燃料が溶融し、東電の主張どおり、圧力容器底部に留まっているなら、熱伝導度のいい炭素鋼圧力容器底部は確実に1千℃以上の高温になったはずで、その場合、300℃までしか測れない銅・コンスタンタン熱伝対温度計のその後の健全性など保証しようもありません。つまり、現在発表されている圧力容器底部の温度に、何等の根拠も存在しません。
核燃料が漏出するのは瓦礫と化した原子炉とは限らない、使用済み核燃料の貯蔵プールには、名前とは裏腹に使用前、4,5,6号機は定期検査中で使用中核燃料が、何の防護もフタさえ無く、水とラックの距離だけを担保に保管?されています。
さらに、ホットスポットの存在でも明らかなように、一帯の空間線量が均質に上がる訳でも無いと思います。冬場、晴天で強い風が吹いている場合などは、特定の地域だけが高線量になる事は在りうる事です。

おっしゃる様に、見えない放射能相手ですから、観測の手を緩めるなど、もっての外と思います。
レベル7事故は、今も継続中です。原因をきちんと特定して欲しいですが、何故、『冷温停止状態』を宣言した後までも、サイト内に専門家を入れないのかを考える時、東電・政府はまだ何か重要な事を隠蔽しているのでは…との疑惑がぬぐえません。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/01/06 17:36

>多摩小町さん
「放射性物質と個人の耐性について」は、基本的に肥田舜太郞さんの意見が正しいと考えています。
http://nikkan-spa.jp/116116

_ 私設原子力情報室 ― 2012/01/06 17:52

>でじたるコミックさん
使用済み核燃料の貯蔵プールには、「使用中核燃料が、水とラックの距離だけを担保に保管」というのは、きわめて分かりやすい指摘です。マスメディアは、プールにあるのは、あたかも使用済み核燃料だけのように扱っています。
仮にすべてが「使用済み」だとしても、水がなくなれば再溶融。何からの原因で距離が失われれば再臨界。「使用中」があれば、その危険性はさらに高まります。

核燃料以外のどんな燃料も、外から火か熱が加えられなければ燃え出すことはありません。ところが、核燃料はみずから発熱し、溶け出して、放射性物質をばらまく。原子力の基本中の基本なのですが、世の中的には、まだこの点が理解されきっていないようです。
どうも「核燃料貯蔵プールは、原子炉本体ほどは危険ではないのでは…」という勘違いがありますね。

_ 浅見真規 ― 2012/01/08 15:30

>いまだに上空に漂っている放射性セシウムが、
>なんらかの原因で、一気に降下してきたものと思われます。


年末年始の気温低下が原因と私は考えます。

それまでイオン化しやすいセシウム原子(セシウムの化合物におけるセシウム原子を含む)が上空の極性のある水分子に電気的引力で引き付けられ落下しにくかったのが、年末年始の気温低下によって上空の大気の飽和水蒸気量が低下し、上空の大気中に水分子が非常に少なくなり、落下しやすくなったと考えられるからです。

私のHPの記事にしましたので御覧いただければ幸いです。

[ 年末年始のセシウム降下検出は気温低下による飽和水蒸気量低下が原因 ]
http://masanori-asami-hp.web.infoseek.co.jp/Fukushima1NPP/newyearfall_caesium.htm

*****
追記:

NHK科学文化部が強風で放射性セシウムで汚染された土埃が舞い上がった可能性を指摘してますが、福島市で放射性セシウム降下量の多かった今月2日9時から3日9時の風は強くなかったので、強風説は誤りと思います。

(NHK科学文化部 のtwitter発言)
http://twitter.com/#!/nhk_kabun/status/155617658778296320

(気象庁HP「過去の気象データ検索」)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://nucleus.asablo.jp/blog/2012/01/05/6279531/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

_ ペガサス・ブログ版 - 2012/01/09 01:39

新年早々に福島市で異常な放射性セシウムの降下が見られるという情報がある.文科省のサイトに出ている公的なデータだ. http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1285/2012/01/1285_010618.pdf 12月27日以前はこちら. http://radioactivity.mext.go.jp/ja/monitoring_by_prefecture_fallout/2011/12/index.html グラフにすると2日の異常な上昇が明らかだ. (グラフで点がないところは「検出限界以下」) たしかに,武田教授が言うように,ニュースにならないのがおかしい. http://takedanet.com/2012/01/post_d320.html エクセルの表を上げておきます. http://ad9.org/blog/Csfallout.xls 応援のクリック歓迎






Google
WWW を検索 私設原子力情報室 を検索