被爆者援護法とフクシマ2013/09/08 16:28

日本で年間1ミリシーベルト以上の放射線被ばくを受けた人は、無償で医療や健康診断を受ける権利があります。

「今、福島で年間20ミリシーベルトという高い線量下での暮らしを強制されている人たちがいるのに何言ってんだ!」とお叱りを受けそうですが、事実なのです。

1995年に制定された『被爆者援護法』(正式名称は『原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律』)。分かりやすく言えば、原爆症認定や「被爆者健康手帳」公布の裏付けとなる法律です。
以前からあった「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(1957年制定)」「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(1968年制定)」をまとめたものと解釈されがちですが、それだけではありません。ICRP(国際放射線防護委員会)がその当時行った被ばく基準値の変更が背景にあります。
1985年、ICRPは「パリ声明」で一般人の被ばく基準をそれまでの年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに引き下げたのです。
この年間1ミリシーベルトが、チェルノブイリでは被災住民に無条件の移住権を保証する基準値となり、日本では『被爆者援護法』に反映されたのです(年間1ミリシーベルトが妥当なのかどうかはとりあえず横に置きます)。

『被爆者援護法』には以下の内容の記述があります。
<「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」を原爆症認定の第1の判断基準とする。>

参照:厚労省『原爆症認定』

『被爆者援護法』や厚労省のホームページには、年間1ミリシーベルトを具体的に謳った記述はありませんが、実は「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」とは「年間1ミリシーベルト以上を被ばくした者」と同義であることは、以下の図で明らかにされています。


ヒロシマでは爆心地から3.25km以内、ナガサキでは3.55km以内が年間1ミリシーベルトを被ばくしたエリアです。それを踏まえて、「被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者」を「積極的に原爆症に認定する」となったのです(被爆者手帳の交付は、それ以前の当然として)。

詳しくは:厚労省『原爆放射線について』

フクシマにおいて政府が住民に強要している基準値は年間20ミリシーベルトです。もちろん、被爆者健康手帳は1冊も公布されていません。これは二重基準(ダブルスタンダード)以外の何ものでもありません。
晩発性障害は間違いなく起きます。吉田所長の食道ガン死は原発事故と無関係と考える方がむしろ奇妙。何人かの作業員が不自然な死に方をしているのも事実です。
子供たちの間では、甲状腺ガン確定患者が8月の段階で18人。2か月間で6人も増えました。

すくなくとも『被爆者援護法』と同じ基準で、フクシマの被災者を支えること。そして、年間1ミリシーベルトを越えるエリアでは無条件の移住権を認める必要があります。

最後に、政府が2012年4月に発表した『20年後までの年間空間線量率の予測図』にリンクを貼っておきます。

政府発表:20年後の線量

今、そして20年後の年間1ミリシーベルトのエリアをしっかり確認してください。背筋が凍る思いです。






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