原発再稼働と総括原価方式の闇2012/08/26 11:21

この夏、関西電力管内も含めて、原発なしで電力は十分に足りていました。
関西以外のエリアでは、すべての原発が止まっています。しかし、計画停電も、強制的な節電もなく夏が乗り切れています。一般家庭や企業における、ちょっとした節電意識の高まりだけで原発は要らなくなったのです。いや、そもそも、要らなかったと言うべきでしょう。

最大の問題は、原発依存率がもっとも高い関西でした。関電と国は「大飯を再稼働しないと過酷な計画停電を実行するしかない」「産業への影響が多大」といった脅しをかけて、大飯原発3号機・4号機の再稼働を強行しました。高まる再稼働反対の声に耳を貸さずに。

迎えたこの夏は、全国的な猛暑。関西もその例外ではありません。しかし、「原発再稼働しとったから、エアコン止まらんで助かったわ~」とはならず。関西の夏もまた、原発なしで十分に乗り切れたことが明らかになったのです。

電力不足予測過大だった【京都民報】

振り返ってみると、京都大学の小出先生をはじめとする良心的な研究者たちは、3.11の直後から「原発がなくても電力は足りる」と主張してきました。

小出先生の意見(PDF)

しかし、原発推進派は「小出さんは反対派だから都合の良いデータだけで計算している。もし、大停電が起きたらどうするのか!」などと叫んで、正しい意見を押しつぶしてきました。

それにしても、なぜ、電力会社は原発にこだわり続けるのか… ひと言でいえば、儲かるからなのです。
電気事業法によって定められた総括原価方式によって、日本の電力会社は、絶対に損をしない仕組みになっています。
簡単に言えば、資産に対して一定の比率で電力会社の報酬が決められ、「原価+電力会社の報酬=電力料金収入」となっているのです。この電力料金収入から、電気料金を算出するのです。これでは、企業努力や自由競争による料金の値下げなど絶対にあり得ません。

上の図を見て頂ければ、高額な資産を持てば持つほど電力会社の報酬が増えるのがお分かりだと思います。だから、「高額な資産=原子力発電所」を持ちたがるのです。
信じられないことに、危険極まりない使用済み核燃料まで資産として計上されています。資産額が電力料金に跳ね返るのは、言うまでも有りません。

「原発ゼロ=全原発の廃炉」が決定されれば、原発も使用済み核燃料も資産価値がゼロになります。その分、電力会社の報酬は減ります。一方で、廃炉費用を原価に組み込むことが出来なければ、電気料金を下げざるを得なくなるのです。総括原価方式がある限り、電力会社が原発ゼロに首を縦に振るワケがないのです。

では、どうすればよいのか…
「ただちに全原発の廃炉」を求めると同時に、「総括原価方式の廃止」「地域独占の廃止」「発送電の分離」の3つを実現することです。
そんなことをすれば、電力会社が潰れてしまう?大丈夫です。私たちが支払ってきた電気料金で作り上げた送電網という巨大な資産があるのですから。

コメント

_ 福島県民です ― 2012/08/28 12:06

ホールボディカウンターの値からどのようにしてミリシーベルトという単位に変換しているか、福島県の見解が出たそうです。
しかしそれは一般公開という形ではなく、一人の福島県民への回答として。
http://nimosaku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-23
これはこれで貴重な情報だと思います。
私設原子力情報室さんも一度見てください。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/08/28 14:41

コメントありがとうございます。

それにしても、この間の福島県立医大の動きと山下俊一のトンデモ発言。腸が煮えくりかえりそうです。彼らは、福島を巨大な人体実験場にしようとしているとしか思えません。

●子供の甲状腺検査説明不足不安招く
http://mainichi.jp/opinion/news/20120826ddm003040163000c.html

●福島・子供の甲状腺検査 山下俊一の話
http://mainichi.jp/opinion/news/20120826ddm003040168000c.html

●少しだけ前向きなニュース
甲状腺検査:福島県外の子供と比較 内閣府方針
http://mainichi.jp/select/news/20120826k0000e040108000c.html

_ sukoyaka_farm ― 2012/09/01 12:00

いつも拝見しております。

9/1だというのに子どもの自由研究が済んでいない。
しかし、今年は土日の影響で2日猶予があるという状況で子どもはジタバタしています(まだ読書感想文も残ってます。オイオイ息子よ、本当に大丈夫か?)。

もう実験などしている間はないので、
「今年本当に原発再稼働は必要だったか」をまとめたらどうかとアドバイスしてなんとか乗り切らせるつもりです。

そこで、こちらも拝見して参考にさせていただきます。
(単なるコピペにならないように注意します)

今回、参照にある「小出先生の意見(PDF)」ですが、
6ページ目は不要なのではないでしょうか?

出典元がこちらでなく編集権がないようでしたら仕方ないのですが、一応お知らせしておきます。

_ sukoyaka_farm ― 2012/09/01 12:43

引き続き引用データについて

「電力不足予測過大だった【京都民報】」に
「実際の最大需要(4日)は2681万キロワット」とありますが、

関西電力の電気予報のページ
http://www.kepco.co.jp/setsuden/graph/index.html
からデータをダウンロードしてみると
ピークはその前日の8/3のようです。

csvデータのタイトル、とデータ内に「更新日時」、「当日実績」「前日実績」というのがあって、その解釈違いが混乱の要因かと思います。

ちなみに(この記事のいう「8/6」以降の)8/31までも含めても、この8/3が最大需要だったようです。

バラバラとした情報追加で恐縮ですが、取り急ぎお知らせまで。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/09/01 19:16

>sukoyaka_farmさん

諸々ご指摘頂きありがとうございます。
「小出先生の意見(PDF)」に関しては、引用というか、純粋にリンクの紹介なので、当方では手を加えないように心がけました。
関電のデータについては、検証してみます。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/09/05 17:31

関西電力管内のこの夏の最大電力需要は、ukoyaka_farm さんがご指摘のように、8月3日14時台の2681万kWですね(瞬間最大は16時18分の2689万kW)。『京都民報』が8月4日としたのは、「前日実績」を拾ったせいです。この件では、日付は本質的な問題ではありませんが、メディアとてしては、しっかりしてほしいところです。

さて、この8月4日のピーク時供給力。関電は2999万kWとしています。その内、大飯3号・4号が236万kW。残りの2763万kWが原発無しで供給できる分ですから、大飯の再稼働はまったく必要なかったのです。
また、供給力は、危険な原発を無理矢理再稼働させる一方で、特に大きな危険のない火力を止めた上での数字です。火力はフル稼働していません。要するに、大飯3号・4号の再稼働で電力が供給過剰になってしまい、その分、火力を止めるという、本末転倒が起きていたのです。

推進派は、「原発が動いていなかったら揚水発電の分も無かった」というようなことを言いますが、これは誤魔化しです。火力で作ろうが、原子力で作ろうが、電気に色はありません。そして、深夜には必ず電気は余ります。ですから、原発が再稼働していなくても、揚水発電の分は算入できるのです。

誤魔化しだらけの再稼働ですよね、ホント。

_ yamaoya ― 2012/09/19 21:18

ご無沙汰でした。

危険極まりない使用済み燃料まで資産に計上しているとは驚きですね。

ところで、原発がゼロになるということは、
原子力関連施設の特定固定資産評価が暴落して、
その分電気代は安くなるのでしょうか。

どこかでそのシュミレーションは、公開されていないでしょうか。

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