プルトニウムは大丈夫か?(1) ― 2011/03/25 08:45
今回の事故で、3号炉が燃料にプルトニウムを使ったプルサーマル方式だったので、ニュースの中にも、時折、プルトニウムという言葉が登場しています。3号炉で使われているのは、より正確に言えばMOX燃料(Mixed oxide fuel)というもので、ウランとプルトニウムの混合酸化物です。まぁ、天然ウランを濃縮した低濃縮ウランとプルトニウムを混ぜたものと考えれば良いでしょう。
ところで、プルトニウムはどこから得られるのでしょうか?プルトニウムは自然界には存在しない物質です(「ウラン鉱石の中にごく僅かに存在する」という説もあります)。実は、プルトニウムは、ウラン燃料を用いた原子炉の中でしか作ることのできない人工物質・人工原子なのです。燃料棒の中で核分裂連鎖反応を起こしているのはウラン235。その周りは比較的安定しているウラン238です。このウラン238が核分裂連鎖反応で余った中性子を吸収してプルトニウム239になるのです。
ということは、ウラン燃料を用いた原子炉の使用済み核燃料(使用済み燃料棒)の中にもプルトニウムが含まれているのです。
*「プルトニウムは大丈夫か」は、ちょっと長くなりそうなので、いくつかに分けてアップします。
ところで、プルトニウムはどこから得られるのでしょうか?プルトニウムは自然界には存在しない物質です(「ウラン鉱石の中にごく僅かに存在する」という説もあります)。実は、プルトニウムは、ウラン燃料を用いた原子炉の中でしか作ることのできない人工物質・人工原子なのです。燃料棒の中で核分裂連鎖反応を起こしているのはウラン235。その周りは比較的安定しているウラン238です。このウラン238が核分裂連鎖反応で余った中性子を吸収してプルトニウム239になるのです。
ということは、ウラン燃料を用いた原子炉の使用済み核燃料(使用済み燃料棒)の中にもプルトニウムが含まれているのです。
*「プルトニウムは大丈夫か」は、ちょっと長くなりそうなので、いくつかに分けてアップします。
プルトニウムは大丈夫か?(2) ― 2011/03/25 09:52
使用済み燃料棒の中に含まれるプルトニウムの比率は1%程です。実は、このデータがなかなかなくて探していたのですが、(財)日本原子力文化振興財団が運営する原発の宣伝サイトにありました。なんという皮肉… しかし、このサイト、一歩踏み込んで注意深く読んでいくと、原発がいかに危険なものなのかが、良く分かります。ご一読お薦めです。
さて、話を本筋に戻しましょう。1%と聞くと「大した量じゃない」と感じる方も多いと思います。しかし、そこがプルトニウムの恐ろしいところ。プルトニウムの大部分を占めるプルトニウム239は、放っておくと、アルファ線(ヘリウム原子核)を出しながらウラン235に変わります。アルファ線は人体に重大な損傷を及ぼす放射線です。半減期は24000年で、ウラン235の7億年に比べると、かなり短いもの。半減期が短いということは、ある時間内に出す放射線が強いということに他なりません。実際に、ある程度の純度のプルトニウム239は、アルファ線を出すことで強く発熱するそうです。
プルトニウム239は体内に取り込まれると深刻な体内被曝を引き起こします。特に呼吸によって肺に入った場合、肺がんを発症する危険性が高くなります。肺の細胞に対して、長期的にわたってアルファ線を浴びせ続けるからです。
「アルファ線は紙一枚でも防御できる」なんて言って危険性を過小評価する科学者もいますが、実は、肺に入ってしまったら、その一枚の紙すらプルトニウム239に被せることができないのです。
(続く)
さて、話を本筋に戻しましょう。1%と聞くと「大した量じゃない」と感じる方も多いと思います。しかし、そこがプルトニウムの恐ろしいところ。プルトニウムの大部分を占めるプルトニウム239は、放っておくと、アルファ線(ヘリウム原子核)を出しながらウラン235に変わります。アルファ線は人体に重大な損傷を及ぼす放射線です。半減期は24000年で、ウラン235の7億年に比べると、かなり短いもの。半減期が短いということは、ある時間内に出す放射線が強いということに他なりません。実際に、ある程度の純度のプルトニウム239は、アルファ線を出すことで強く発熱するそうです。
プルトニウム239は体内に取り込まれると深刻な体内被曝を引き起こします。特に呼吸によって肺に入った場合、肺がんを発症する危険性が高くなります。肺の細胞に対して、長期的にわたってアルファ線を浴びせ続けるからです。
「アルファ線は紙一枚でも防御できる」なんて言って危険性を過小評価する科学者もいますが、実は、肺に入ってしまったら、その一枚の紙すらプルトニウム239に被せることができないのです。
(続く)
プルトニウムは大丈夫か?(3) ― 2011/03/25 11:01
さて、福島第1原発です。
これまでの話で、3号炉の燃料棒にもともとプルトニウム239が含まれている他、他の原子炉でも、使用中や使用済みの燃料棒にプルトニウム239が含まれているのはお分かりいただけたでしょう。
福島第1原発では、一部の原子炉本体や使用済み核燃料貯蔵プールに水を浴びせ続けています。そうしないと、核燃料(燃料棒)が溶融するという重大な事態になるからです。現状ではやむを得ないのですが、一部破損している見られる燃料棒からプルトニウム239が流れ出している心配はないのでしょうか。放水車から浴びせた水は、一部は土に染み込み、多くは海に流れ出します。東電から原発附近の海水に含まれるヨウ素131とセシウム137のデータは発表されましたが、プルトニウム239に関しては、まったく言及されていません(プルトニウム239に加えてウラン235も流出している可能性有り)。
*ちなみに何度か起きた水素爆発によってプルトニウム239が大気中の広い範囲に撒き散らされた可能性は低いでしょう。それは、プルトニウム239が非常に重い金属だからです。比重で見ると、金よりも少し重いです。
チェルノブイリ事故の報告でも土壌中に残ったプルトニウム239の分析が行われています。ただ、このデータは原発から10㎞以遠のものなので、原発のすぐ近くでは、どの程度の汚染があったのかは分かりません。
今回、もし、プルトニウム239の海への大量流入が進んでいるとしたら、人類史上初めての事態です(チェルノブイリは近くに海がありませんでした)。すべてのプルトニウム239が、燃料棒の中に留まってくれているなら、それはそれで不幸中の幸いです。一方で、私のように危惧をしている人間もいます。東電と政府は、一刻も早く、福島第1原発のプルトニウムに関する情報を全面的に公開すべきです。
これまでの話で、3号炉の燃料棒にもともとプルトニウム239が含まれている他、他の原子炉でも、使用中や使用済みの燃料棒にプルトニウム239が含まれているのはお分かりいただけたでしょう。
福島第1原発では、一部の原子炉本体や使用済み核燃料貯蔵プールに水を浴びせ続けています。そうしないと、核燃料(燃料棒)が溶融するという重大な事態になるからです。現状ではやむを得ないのですが、一部破損している見られる燃料棒からプルトニウム239が流れ出している心配はないのでしょうか。放水車から浴びせた水は、一部は土に染み込み、多くは海に流れ出します。東電から原発附近の海水に含まれるヨウ素131とセシウム137のデータは発表されましたが、プルトニウム239に関しては、まったく言及されていません(プルトニウム239に加えてウラン235も流出している可能性有り)。
*ちなみに何度か起きた水素爆発によってプルトニウム239が大気中の広い範囲に撒き散らされた可能性は低いでしょう。それは、プルトニウム239が非常に重い金属だからです。比重で見ると、金よりも少し重いです。
チェルノブイリ事故の報告でも土壌中に残ったプルトニウム239の分析が行われています。ただ、このデータは原発から10㎞以遠のものなので、原発のすぐ近くでは、どの程度の汚染があったのかは分かりません。
今回、もし、プルトニウム239の海への大量流入が進んでいるとしたら、人類史上初めての事態です(チェルノブイリは近くに海がありませんでした)。すべてのプルトニウム239が、燃料棒の中に留まってくれているなら、それはそれで不幸中の幸いです。一方で、私のように危惧をしている人間もいます。東電と政府は、一刻も早く、福島第1原発のプルトニウムに関する情報を全面的に公開すべきです。
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