「電力会社の財布」と「私たちの財布」 ― 2011/09/14 15:55
民間のビジネスの世界だったら、「こんな見積り、通るわけねぇだろ!顔洗って出直してこい!」と、思わず言葉も荒っぽくなってしまいそう。日本エネルギー経済研究所と地球環境産業技術研究機構という民間のシンクタンクが提出した発電コストの試算の話です。
毎日新聞は『原発コスト:火力より割安試算 除染費や補償費など除けば』と伝えています。
試算の基になっていると思われる資料を見つけました。日本エネルギー経済研究所のホームページからダウンロードできる『有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価』。
原発を保有する電力会社9社の有価証券報告書(財務諸表)に基づいた、言ってみれば「電力会社の財布」から見た試算で、建設コストや廃炉、放射性廃棄物処理に伴う費用も盛り込んだと言います。「電力会社の財布」以外では、電源三法による交付金なども算入しています。
しかし、主に税金が支える日本原子力研究開発機構による高速増殖炉『もんじゅ』や、日本原燃の『六ヶ所村再処理工場』に関連する研究開発費や建設費はどこへ行ってしまったのでしょうか?『もんじゅ』も『六ヶ所村再処理工場』も、まだ一銭も稼いでいませんし、安全に稼働する見通しは、まったく立っていません。
原発事故に伴う経費は、試算に、一切含まれていません。一旦、シビアアクシデントが起きれば、原発が他の発電方式に比べて、比べものにならない被害を与えることは、もう誰の目にも明らかなのに… 福島第1の事故を経ながら、こんな試算を出せる、その神経を疑わざるを得ません。
シンクタンク側の言い訳が振るっています。日本エネルギー経済研究所研究所の松尾雄司主任研究員は「原発は安価だが、最終的な費用は不明」。地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾副主席研究員は「事故処理費の算定は難しい」と。
大事なところが不明だったり、難しいことが計算できないんだったら、シンクタンクなんかいらないでしょう!
さすがに、内閣府原子力委員会の委員も「国民の見方と乖離がある」と述べたそうですが、書類をその場で破り捨てるべきでした。
そもそも、この間、盛り上がっている発電コストの話。どうも、考え方の基本が間違っているものが多いような気がします。私たちが原発に払ってきたお金は、電力料金だけではありません。「私たちの財布」からは、税金としても、たっぷりと原発のためにお金を抜き取られているのです。
まず、電力三法による交付金の原資。
前述の高速増殖炉や再処理施設に関連する費用。
産学共同の名のものに国立大学に注ぎ込まれてきた研究開発費は、出るお金は「私たちの財布」から、成果は「電力会社の財布」にという仕組み。
10万年は保管しなくてはならないという使用済み核燃料の最終処分には、多額の税金を投入せざるを得ないでしょう。どう考えても、電力会社が共同で最終処分場をどこかに造るなんて考えられないからです。
さて、当方は、少々発電コストが上がっても自然エネルギーに一気にシフトすべきだと考えています。それでも、コスト問題が重要だと考えるのは、正しく解析できれば、電力会社や経産省が、これまで、どれほどの嘘をついてきたのかを白日の下にさらせるからです。
「電力会社の財布」から見れば、原子力がお得だったに違いありません。「私たちの財布」から、いつの間にか抜き取られたお金は、政・官・電の黒い癒着の中で、互いの利益供与のために使われていきました。昔ながらの露骨な贈収賄は影を潜め、高級官僚の子供の就職を電力会社が引き受けるといった形で、深く浸透しています。巧妙です。
ともあれ、それぞれの電力会社の会計レベルで、原発のコストは、絶対に計算できません。国全体の原子力政策すべてに関わるコスト、そして、未来に積み残すリスクも正確に算入する。まさに、「私たちの財布」から見た試算が求められています。
【追記1】
関連する新たなニュースが入ってきました。
『東電、原発立地自治体に寄付400億円 予算化20年余』
この寄付金が、東電の財務諸表に載っていて、原発関連の支出として計上されているのかどうかは知りませんが、元は「私たちの財布」から出た電力料金だということは、言うまでもありません。電力料金の値上げなど、とんでも無い話です。
【追記2】
これも、どう考えても原発のコスト
『東電に苦情・寄付要求の連鎖 「Jヴィレッジ」契機』
自治体と東電の関係は、醜いを通り越しています。
運営会社=株式会社日本フットボールヴィレッジの役員一覧を見ると、うんざりします。
毎日新聞は『原発コスト:火力より割安試算 除染費や補償費など除けば』と伝えています。
試算の基になっていると思われる資料を見つけました。日本エネルギー経済研究所のホームページからダウンロードできる『有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価』。
原発を保有する電力会社9社の有価証券報告書(財務諸表)に基づいた、言ってみれば「電力会社の財布」から見た試算で、建設コストや廃炉、放射性廃棄物処理に伴う費用も盛り込んだと言います。「電力会社の財布」以外では、電源三法による交付金なども算入しています。
しかし、主に税金が支える日本原子力研究開発機構による高速増殖炉『もんじゅ』や、日本原燃の『六ヶ所村再処理工場』に関連する研究開発費や建設費はどこへ行ってしまったのでしょうか?『もんじゅ』も『六ヶ所村再処理工場』も、まだ一銭も稼いでいませんし、安全に稼働する見通しは、まったく立っていません。
原発事故に伴う経費は、試算に、一切含まれていません。一旦、シビアアクシデントが起きれば、原発が他の発電方式に比べて、比べものにならない被害を与えることは、もう誰の目にも明らかなのに… 福島第1の事故を経ながら、こんな試算を出せる、その神経を疑わざるを得ません。
シンクタンク側の言い訳が振るっています。日本エネルギー経済研究所研究所の松尾雄司主任研究員は「原発は安価だが、最終的な費用は不明」。地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾副主席研究員は「事故処理費の算定は難しい」と。
大事なところが不明だったり、難しいことが計算できないんだったら、シンクタンクなんかいらないでしょう!
さすがに、内閣府原子力委員会の委員も「国民の見方と乖離がある」と述べたそうですが、書類をその場で破り捨てるべきでした。
そもそも、この間、盛り上がっている発電コストの話。どうも、考え方の基本が間違っているものが多いような気がします。私たちが原発に払ってきたお金は、電力料金だけではありません。「私たちの財布」からは、税金としても、たっぷりと原発のためにお金を抜き取られているのです。
まず、電力三法による交付金の原資。
前述の高速増殖炉や再処理施設に関連する費用。
産学共同の名のものに国立大学に注ぎ込まれてきた研究開発費は、出るお金は「私たちの財布」から、成果は「電力会社の財布」にという仕組み。
10万年は保管しなくてはならないという使用済み核燃料の最終処分には、多額の税金を投入せざるを得ないでしょう。どう考えても、電力会社が共同で最終処分場をどこかに造るなんて考えられないからです。
さて、当方は、少々発電コストが上がっても自然エネルギーに一気にシフトすべきだと考えています。それでも、コスト問題が重要だと考えるのは、正しく解析できれば、電力会社や経産省が、これまで、どれほどの嘘をついてきたのかを白日の下にさらせるからです。
「電力会社の財布」から見れば、原子力がお得だったに違いありません。「私たちの財布」から、いつの間にか抜き取られたお金は、政・官・電の黒い癒着の中で、互いの利益供与のために使われていきました。昔ながらの露骨な贈収賄は影を潜め、高級官僚の子供の就職を電力会社が引き受けるといった形で、深く浸透しています。巧妙です。
ともあれ、それぞれの電力会社の会計レベルで、原発のコストは、絶対に計算できません。国全体の原子力政策すべてに関わるコスト、そして、未来に積み残すリスクも正確に算入する。まさに、「私たちの財布」から見た試算が求められています。
【追記1】
関連する新たなニュースが入ってきました。
『東電、原発立地自治体に寄付400億円 予算化20年余』
この寄付金が、東電の財務諸表に載っていて、原発関連の支出として計上されているのかどうかは知りませんが、元は「私たちの財布」から出た電力料金だということは、言うまでもありません。電力料金の値上げなど、とんでも無い話です。
【追記2】
これも、どう考えても原発のコスト
『東電に苦情・寄付要求の連鎖 「Jヴィレッジ」契機』
自治体と東電の関係は、醜いを通り越しています。
運営会社=株式会社日本フットボールヴィレッジの役員一覧を見ると、うんざりします。
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_ 脳挫傷による見えない障害と闘いながら・・・ - 2011/11/25 19:51
産業別一次エネルギーでは、原子力による電力の使用数値も低く、産業には影響力が少なく原子力エナルギーの必要の無さを感じた。。建設業界にも原子力発電のエネルギーは多く関わっていない事をデータで教えてくれた。
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