再処理工場の闇2012/06/05 20:58

この間の毎日新聞のスクープで、闇に包まれていた核燃料サイクルをめぐる原子力村の利権構造の一部が明らかになりました。

核燃サイクル原案:秘密会議で評価書き換え 再処理を有利
核燃サイクル「秘密会議」:まるでムラの寄り合い

まだ一端が表面化したに過ぎませんが価値のある報道でした。

しかしながら、再処理って何?という疑問も世の中には、まだまだあります。今回は、これまであまり注目されていない側面から、核燃料サイクルの中核をなす再処理工場の問題を検証し直したいと思います。

●新ウラン燃料・使用済みウラン燃料・MOX燃料

まず最初に、新ウラン燃料と使用済みウラン燃料、そしてMOX燃料では、なにがどう違うのかを確認しておきましょう。
新ウラン燃料は、天然ウランを原料にして作ります。天然ウランは、ウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%ですから、そのままでは核分裂を起こしません。濃縮してウラン235の濃度を4%程度にまで高めることで、原子炉で核分裂を起こす新ウラン燃料にします。

新ウラン燃料は、原子炉内で約3年間、臨界状態に置かれ、連鎖的核分裂反応を起こします。この時に発する熱を発電に利用するのが原子力発電です。
使用済み核燃料の中には新たな放射性物質が生まれます。セシウム137やヨウ素131といった核分裂生成物とプルトニウム239。さらにプルトニウム239以外の超ウラン元素です。超ウラン元素とはウランよりも重い元素のことで、ネプツニウムやアメリシウム、キュリウムなどがあります。いずれも、放射線を発する危険な元素です。

MOX燃料は、ウラン燃料の核分裂反応で生じたプルトニウム239を再度、発電に利用しようというものです。
ウラン原爆の原料がウラン235で、プルトニウム原爆の原料がプルトニウム239であることからも分かるように、プルトニウム239は連鎖的核分裂反応を起こす物質なのです。

実際のMOX燃料は、使用済み核燃料の中からウラン238・ウラン235・プルトニウム239を抽出して、原子炉で使うのに都合の良い割合で混ぜ合わせています。

しかし、MOX燃料は、最初から強い放射性を帯びていて、発熱もするなど、ウラン燃料にはない危険性を持っています。製造の過程で純粋に近いプルトニウムを生成するので、安全保障上も大きな問題となります。アメリカが使用済み核燃料の再処理を行っていないのは、そのせいだと言われています。

さて、本来ならばこの地球上に存在しなかった危険な放射性物質である核分裂生成物や超ウラン元素を含む使用済み核燃料。
残念ながら、原発反対派と言えども、もはやここから目をそらすことはできません。「負の遺産」として、明確に認識して、考え得るもっとも安全な方法で、使用済み核燃料を処分する必要があります。
そこで焦点になっているのが、使用済み核燃料をそのまま最終処分場に埋める「直接処分」か、一部を再利用する「再処理」かなのです。

●再処理では海洋投棄が不可欠
再処理の話に戻りましょう。
下の図は、<新ウラン燃料→使用済みウラン燃料→MOX燃料>という、原発推進派が大好きな核燃料サイクルの一部をクローズアップしたものです。

使用済みウラン燃料から左右に「直接処分」と「再処理」へ枝分かれしていますが、「直接処分」がシンプルなのに比べて、「再処理」には複雑な工程が絡みます。さらに、「直接処分」にはない「劣化ウラン」や「海洋投棄」という大きな問題が出てきます。

まずは、海洋投棄に注目しましょう。
「廃棄物を海に棄ててはいけない」という国際的合意は、1972年採択(1975年発効)の「廃棄物その他の投棄に係わる海洋汚染防止に関する条約【通称、ロンドン条約】」によってなされました。
ロンドン条約の主なターゲットは放射性廃棄物。それまで各国は、核兵器製造や原子力発電で生じる放射性廃棄物を無原則に海に捨て続けてきました。日本もその一つです。
しかし、条約や法律の常、ロンドン条約にも抜け道があります。規制しているのが、高レベル放射性廃棄物なので、液状の廃棄物を水で薄めて海に流してしまえば、条約違反にはならないのです。船からの投棄を考えれば、薄めると量が増えてしまって、効率が悪くなるのですが、陸から直接棄てる場合は話が別。「薄めればOK」という、この抜け道を狡猾に利用したのが再処理工場なのです。

次の図は、「核燃料再処理の流れ」を示しています。

使用済み核燃料は、硝酸で溶解して、核燃料生成物とプルトニウム以外の超ウラン元素を取り除いてから、ウランとプルトニウムの再処理に入ります。「核燃料生成物と超ウラン元素はガラス固化体に固めるから大丈夫」というのが推進派の主張ですが、ガラス固化体にする前に、水分(液体)を絞らなくてはなりません。その液体まで、すべて保管していたら、いくら場所があっても足りませんから。そして、搾り取った後の液体には、必ず核燃料生成物と超ウラン元素が残ってしまいます。
しょうがないから水で薄めて海に流すと… 世界的に有名な再処理工場としてフランスのラ・アーグとイギリスのセラフィールドがありますが、どちらも海の中に数kmという廃液パイプを伸ばして、水で希釈した放射性物質を堂々と流しています。六ヶ所村でも同じ計画のはずです。

六ヶ所村沖は、世界三大漁場の一つとして知られる三陸沖の北端。ここに、放射性物質の海洋投棄を行う。絶対に許されないでしょう。

●劣化ウランはどこへ?
使用済み核燃料の再処理の(建前上の)目的は、MOX燃料と再生ウラン燃料の製造です。
ただ、この過程で、連鎖的核分裂反応をしないウラン238の濃度を下げなければなりません。ウラン238が多いと連鎖的核分裂反応が起きないからです。
従って再処理の過程では、どうしてもウラン238(緑)が余ってしまいます。しかし、ウラン238だけの純粋な抽出は難しいのでウラン235(黄)や、特に放射性が強く危険なウラン236(紫)も残ってしまいます。これを「劣化ウラン」と呼びます。

劣化ウランは、そのままでは原爆の原料にもなりませんし、発電にも使えません。しかし、環境や生物に悪影響を及ぼすには十分の放射線を発する危険物質です(イラク戦争での劣化ウラン弾問題をご存じ方も多いと思います)。

今、日本で論じられている再処理や核燃料サイクルの議論からは、完全に劣化ウランの問題が落ちています。どこにどう劣化ウランを保管するつもりなのか、推進派からの説明を聞いてみたいものです。

●使用済みMOX燃料は再処理できない!?
再処理と核燃料サイクルの問題を調べていく中で、とんでもない嘘に突き当たりました。「核燃料サイクル」そのものが虚構=大嘘なのです。

推進派の説明によれば、「使用済みウラン燃料→再処理→MOX燃料→再処理→MOX燃料…」という、文字通りのサイクルで核燃料が回るはずでした。しかし、MOX燃料の再処理は少なくとも六ヶ所村タイプの再処理工場ではできないのです。なぜなら、MOXの使用済み燃料は硝酸に溶けにくいから… なんと馬鹿馬鹿しい!
MOXの使用済み燃料を再処理するためには新たなタイプの再処理工場が必要だそうです。今、世界中、どこを見渡しても、それは存在しないし、技術的な見通しもまったく立っていない状態です。
「核燃料サイクル」に騙されてきた人たちは大いに反省すべきです。核燃料はサイクルできません!

なんともはや、とてつもない嘘まで並べて推進されてきた核燃料サイクル。
誰がそれを望んでいるのでしょうか?
経済の原点に帰ってみましょう。電力会社が電力消費者に、より安い電気を供給しようと自ら努力するでしょうか?彼らの本意は、できるだけ高く売ることです。おまけに、日本の電力業界は無競争なので、ブレーキが掛かることはありません。
一方で、核燃料サイクルのような大事業を進めれば、企業としては大きな金が動くので、その過程で儲けることができます。利権も生じますから、そこで私腹を肥やそうという人間もたくさん群がってきます。結果は、電力料金に跳ね返り、いざ事故が起きれば税金投入。故郷に何十年、いや、永遠に帰れない人たちも出ます。私たちにとって、こんな理不尽なことはありません。

誰がどう考えても、経済的なメリットがなく、安全性の面からも危険視される核燃料サイクルが、推し進められてきた事実。その闇を徹底して暴き出すことで、この最悪の構造を打ち壊す第一歩にしなくてはなりません。

使用済み核燃料の処理に関しては、全量直接処分しかありません。
そして、この問題を考えるための前提として、今後一切、使用済み核燃料を増やさないこと。原発の再稼働を許さず、「直ちに廃炉へ」という決定を行う必要があります。

順番としては、「核燃料サイクルの放棄→すべての原発の廃炉決定→最終処分場の決定と具体化」となるのでしょう。そうしないと、「最終処分場があるのだから、原発を稼働してもよい」などと、馬鹿げたことを言い出す輩が出ますから。

原発稼働ゼロの日を迎えて2012/05/05 17:19

きょう、2012年5月5日深夜、42年ぶりに日本列島で稼働する原発がゼロになります。
原発の安全性がまったく約束されず、使用済み核燃料の行き場も決まらない中、他の選択肢はありません。また、福島第1の事故に関して、詳細な解析・検討も進まないどころか、いつ始められるのかさえ分からない状況です。

一方で、「電気が足りない!電気が足りない!」と騒ぎ立てる関西電力が、いまだにオール電化の営業を積極的に続けていることが明らかになりました。厚顔無恥とはこのことでしょう。
より多くの電力を消費するオール電化は、真っ先に放棄すべきです。その上で、どうしても足りないなら、今からでも、応急処置としてガスタービン発電機を外国から調達する手だてだってあるはずです。そもそも、東京電力以外の電力会社が、節電のプログラムに真面目に取り組んだ形跡すら認めることができません(東電を誉めているわけではありませんが)。

原発ゼロの日、5月5日はゴールではありません。私たちは、『完全脱原発』に向けてのスタートラインに立ったに過ぎません。
ここでは、あらためて問題意識を明確にし、気を引き締める意味で、「止まっている原発は安全なのか?」という設問について考えていきます。

●止まっている原発は安全なのか?
結論から言いましょう。制御棒が完全に差し込まれ臨界状態にない(=連鎖的核分裂反応が起きていない)原子炉は、運転中よりは少しだけ安全です。操作ミスが最終的な引き金となったスリーマイルアイランドやチェルノブイリのような事故は起きません。

一方、外部電源喪失によって、冷却水の循環が止まり、メルトダウンに至った福島第1型の事故はどうでしょうか?
同じように起きます。炉心に核燃料が有る限り。

使用中あるいは使用済みの核燃料の中には、連鎖的核分裂反応で生まれた放射性物質(核分裂生成物と超ウラン元素)があります。核分裂生成物の代表格はセシウム137やヨウ素131、超ウラン元素とはプルトニウム239などのことです。
これらの放射性物質は、放射線を出して崩壊する際に熱(崩壊熱)を出します。この発熱は、臨界状態にあろうとなかろうと関係ありません。

「私たちの身の回りにも飛んできている福島第1由来の放射性物質は発熱していないのか?」という質問がありそうなので、先に答えておきますが、実は放射線を出す際にわずかながら発熱しています。ただ、空気や人体を加熱するほどではありません。逆に、崩壊熱を肌で感じるほど放射線を浴びてしまったら、即死です。

話を本論に戻しましょう。
臨界を脱したばかりの核燃料で、冷却水の循環が止まったら、崩壊熱で数時間から数日の間に、圧力容器に溜まっている水はすべて蒸発。ほどなく、核燃料は溶岩のようにドロドロに溶け出してしまいます。
溶けた核燃料の温度は2800℃。圧力容器を形成する鋼鉄の融点は1600℃。簡単に底を突き破り、格納容器へと落ちていきます(メルトスルー)。格納容器でも底部の鋼鉄とコンクリートを溶かして、やっと止まっているのが、福島第1の1号機~3号機の現状なのはご存じの通りです。

そうなのです。原子炉が停止状態にあっても、炉心に核燃料が有る限り、福島第1型の事故が起きる可能性は、少しも減らないのです。

●どうすればよいのか?

まず、炉心にある核燃料を核燃料貯蔵プールに移動させることです。これは、普段の定期点検の際にも行われている作業です。安全とは言いませんが、特別なオペレーションではありません。こうして、炉心(圧力容器)を空にしておけば、シビアアクシデントが起きる可能性を一つ排除したことにはなります。
しかし、福島第1では、炉心が空だった4号機でも水素爆発が起き、建屋が傾いています。世界中の研究者が「4号機の核燃料貯蔵プールが崩壊したら、東京にも人が住めなくなる可能性がある」と警鐘を打ち鳴らしています。核燃料貯蔵プールもまた危うい施設なのです。
特に、福島第1のような沸騰水型原子炉(BWR)では、構造上、貯蔵プールを高い位置に作らざるを得ないので、危険性がより大きくなっています。高い分、様々な理由で水が抜ける可能性があるからです。
また、使用済み核燃料は、臨界を脱してから3年間は循環する水で冷却しないと、メルトダウンしてしまいますので、核燃料貯蔵プールでもまた、冷却水の循環が必要となります。

各原子炉に付属している核燃料貯蔵プールは、当然、容量が決まっています。せいぜい、数年分の使用済み核燃料しか貯蔵することができません。では、その先はどこへ行くのでしょうか?
各原発には共用プールという施設があって、ここに使用済み核燃料を集めます。地上高に作られているので、核燃料貯蔵プールよりは少しは安全といったところでしょうか。国内各原発の共用プールは、ほぼ満杯という情報もありますが、増設してでも、今、炉心と核燃料貯蔵プールにある分は、納めてもらわなければ困ります。

原子炉が止まっただけでは安全ではない。
このことは肝に銘じる必要があります。速やかに、すべての核燃料を核燃料貯蔵プールに。そして共用プールに移す必要があります。

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附記:
共用プールの先はどうするのか?悲しいかな、まったく見通しが立っていません。原発推進派は「再処理施設へ!」と声高に言いますが、六ヶ所村の施設は、本格稼働が見えない現在ですら、使用済み核燃料で満杯状態です。

*再処理施設に関しては、以下の記事をご参照ください。
再処理施設って何?
破綻した核燃料サイクル

今、現に存在している大量の使用済み核燃料をどうするのか… 再処理施設は危険極まりないものだし、結局、放射性廃棄物の量が減るわけではありません。最終処分場の問題は、脱原発派と言えども、避けて通ることはできません。

破綻した核燃料サイクル2011/11/27 21:18

どうやら、高速増殖炉『もんじゅ』が廃炉になりそうです。

『もんじゅ:廃炉含め検討…細野原発事故相「来年判断」』【毎日新聞】

細野豪志原発事故担当相は、「一つの曲がり角に来ている。何らかの判断を来年はしなければならない」と述べています。
グズグズしている必要はありません。直ちに廃炉プロセスに入るべきです。すぐに始めたって、10年以上はかかるのですから。

高速増殖炉は、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出して再利用するというもの。再処理工場と並ぶ、いわば「夢の核燃料サイクル」の中核とも言うべきものです。事実上のもんじゅの廃炉決定。やっと、国が核燃料サイクルの破綻を認めた形です。

あまり大ニュースにはなりませんでしたが、もう一つ、核燃料サイクルがらみのニュースがありました。

『核燃:ロシアの再処理提案文書を隠蔽 「六ケ所」の妨げと』【毎日新聞

2002年に、ロシアから日本に対して行われた使用済み核燃料の受け入れ&再処理の申し出が、資源エネルギー庁の一部幹部によって握りつぶされていたのです。
当時、六ヶ所村再処理工場はトラブル続発。高コストも問題視されていました。記事の中にあるエネ庁幹部の「極秘だが使用済み核燃料をロシアに持って行く手がある。しかしそれでは六ケ所が動かなくなる」という発言が、すべてを物語っています。
9年前、核燃料サイクルそのものが成立しなくなる可能性を当事者たちは感じとっていたのです。ですから、汚い手を使ってまでも、情報を隠蔽しました。
なぜ?
核燃料サイクルがなくなると、自分の出世がなくなるからです。天秤の片方の皿に乗っているのは、私たちの健康と安全。反対側の天秤皿には官僚たちの出世。秤を操作しているのは官僚たち。このことに気が付かなかった私たちにも、少し責任があります。

では、幾つかのテーマに絞って、核燃料サイクルの話を進めましょう。

●核燃料サイクルの嘘
まず、核燃料サイクルの考え方を示す図をご覧ください。

あっちこっちの原発推進派の広報サイトにある核燃料サイクルの図と似ていますが、決定的に違うところがあります。原発と再処理工場から出る放射性排気と放射性廃液です。原発推進派は、ものの見事に、この点に目をつぶっています。
詳しく言えば、原発から出る放射性排気も問題なのですが、実は、再処理工場からは、同じ時間内に原発の1万倍もの放射性物質が出ます(主に廃液)。

原子炉も無いのになぜ?と思われる方も多いかと思いますので解説しましょう。
再処理の過程では、使用済み核燃料を硝酸に溶かす必要があります。この溶液からプルトニウムとウランを抽出したあと、残りを高レベル放射性廃棄物としてガラス固化体に固めるのですが、すべてをガラス化することは技術的にも、コスト的にも、不可能なのです。
残った放射性廃液はどこへ?
海に流します。現在、再処理をビジネスとして行っているのは、フランスのラ・アーグとイギリスのセラフィールドにある再処理工場。どちらも、放射性廃液を海に流して、海洋汚染が大きな問題になっています。六ヶ所村も同じことをしようとしています。いや、せざるを得ないのです。再処理をする限りは。

放射性廃棄物を海に棄てておいて、何が核燃料サイクルなのでしょうか!?本来、○○サイクルと言ったら、閉鎖系でなくはいけません。「ゼロ・エミッション=排出物無し」です。
再処理工場から放射性廃液が大量に出る。核燃料サイクルには、根本的な嘘が隠されています。

●高速増殖炉の危険性
1980年代までは、世界各国が高速増殖炉の実用化に向けて、積極的な姿勢を示していました。「夢の原子炉」と言われていました。
しかし、政治的には、プルトニウムが世界的に拡散することを後押しする可能性があること。技術的には、冷却剤に液体ナトリウムを使用するという、大事故と背中合せのようなシステム。この二つを解決することができず、アメリカを含む各国が、開発中止を表明しています。
日本が、事実上の撤退表明をしましたので、今、本格的に開発を進めているのはフランスだけになりました(ロシア、中国、インドも開発の姿勢だけは示していますが)。

液体ナトリウムの恐ろしさ… それは、水に触れただけで大爆発を起こすことです。
次の映像は、第二次世界大戦中にアメリカが溜め込んでいた液体ナトリウムを、湖に廃棄する場面です。少しばかり古い映像ですが、液体ナトリウムの恐ろしさを伝えるには十分です。

Disposal of sodium

高速増殖炉では、炉心を冷やす(炉心から熱を取り出す)ために、水の代わりに液体ナトリウムを使います。熱を受け渡す効率が良いからです。
しかし、発電機のタービンを回すためには、最終的には水蒸気が必要ですから、炉心で高熱に熱せられた液体ナトリウムの熱で、水を沸騰させ水蒸気にします。
液体ナトリウムと水の間にあるのは、金属製のパイプの厚みだけです。そして、熱をより効率よく伝えるためには、パイプは、できるだけ薄い方がよいのです。
この話を読んだだけで、高速増殖炉が、まさに砂上楼閣、怪物の綱渡りのようなものなのだということが、お分かりいただけたかと思います。薄いパイプに、何らかの理由で傷が付き、そこから穴が空いたら… いや、大地震で、そのパイプ自体が折れたら… とんでもない大惨事が待っています。

●再処理工場はプルトニウム抽出工場
世界初の再処理工場が稼働したのは1944年です。
原子力発電も行われていなかった時代に、なぜ、再処理工場が?
アメリカのハンフォード核施設。長崎に投下する原爆を作るために再処理工場が作られました。再処理工場などと言われると聞こえが良いですが、その実態は、プルトニウム抽出工場に他なりません。
最初に示した核燃料サイクルの図から、余計な部分を消すと、簡単にプルトニウム爆弾を作るためのフローチャートになります。

原子力発電自体が、軍事技術の民生転用ではあるのですが、再処理工場は、その最たるものです。逆も真なりで、民生用の再処理工場は、簡単に軍事転用可能。再処理工場さえあれば、数ヶ月でプロトニウム原爆は作れます。
今、再処理工場(再処理施設)を稼働させている国は、英・仏・ロシア・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮・アルゼンチン・日本だとされています。

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核燃料サイクルについて、高速増殖炉と再処理工場という二つの側面から見てきました。本当に初歩的な話だけを書いたつもりですが、これだけでも、核燃料サイクルの恐ろしさと馬鹿馬鹿しさは、ご理解いただけたかと思います。

「もんじゅ」の事実上の廃炉決定。まずこれを確実に、出来るだけ早く実行させなくてはいけません。
次は「核燃料サイクルからの全面撤退=六ヶ所村再処理工場の廃止」です。
そして、全原発を廃炉へ。気を緩めている暇はありません。


たった1%の綱渡り2011/10/05 15:22

3.11以来、原子力発電の危険性に多くの人が気がつきました。しかし、いまだに推進派からは「より安全な原発を…」とか「原発が無くなったら日本経済は沈没する」といった発言が続いています。もう一度シビアアクシデントが起きたら、それこそ日本が沈没するのに…
今回は、「安全な原発はあり得ない」というお話です。

臨界とか臨界反応とか言いますが、これは連鎖的核分裂反応のことです。一つの原子に中性子が飛び込むことで、その原子が核分裂。その時に飛び出す中性子が、次の原子に飛び込んで… という反応が続きます。連鎖的核分裂反応を起こす物質は、ウラン235とプルトニウム239だけです。

上の図が、連鎖的核分裂反応の仕組みです。基本原理は原爆も原発も同じで、原爆の場合は、連鎖的核分裂反応が1億分の1秒という短い時間に起き、原発の場合は、反応速度を調節して、ギリギリ連鎖的核分裂反応が起きる状態(臨界状態)で、ゆっくりと反応を進めます。
図のように核分裂物質(ウラン235またはプルトニウム239)が二つに割れる時に出る中性子を即発中性子【prompt neutron】と呼びます。

臨界以下の状態では、生まれる中性子の数が足りず、連鎖的な反応は起きません。ところが、核分裂物質の「濃度」「大きさ」「形状」が、ある条件を満たすと臨界に達します。そうなると、今度は一気に反応が進むのです。マッチで花火に火を点けようとしても、なかなか点かないことがありますね。しかし、ある瞬間、一気に火が噴き出します。そんなイメージです。
「形状」で言うと、球がもっとも臨界に達しやすい形です。理由は、表面から逃げる中性子の数が少ないから。原爆では、通常爆薬の爆発力でウラン235やプルトニウム239を球形の一塊にし臨界点を超えさせ、急激な連鎖的核分裂反応(=核爆発)を起こします。

さて、原子炉を考える時、即発中性子だけで臨界に達してしまうと、問題があります。即発中性子は速度が速い上に、臨界を越えると一気にその数が増えます。即発中性子の数や、この時に起きる連鎖的核分裂反応を人間が制御することは不可能なのです。
逆に言うと、即発中性子だけで臨界点を超えてしまうと、原子炉は暴走し、そう簡単に止めることはできません。ガスレンジの火だけならガス栓を閉めれば止まりますが、その火が天ぷら鍋に入ってしまうと、そう簡単には消せません。それと同じです。

通常運転中の原子炉の中で飛び交っている中性子の99%は即発中性子です。では残りの1%は?
遅発中性子【delayed neutron】と呼ばれるものです。
核分裂によって生まれる核分裂生成物の中には、崩壊する時に中性子を放出する元素があります(バリウム87など現在までに45種類が知られています)。この中性子の放出は、核分裂から0.2秒~1分くらい遅れて起きるので、遅発中性子と呼ばれます。

核燃料(燃料棒の束)の中には、出し入れの出来る制御棒があります。材料は、中性子を吸収しやすいカドミウムなど。遅発中性子は速度が遅いので、その数を制御棒によってコントロールできるのです。

もし、制御棒を引き抜き過ぎてしまうと、即発中性子だけで臨界点を超えてしまいます。これを即発臨界と呼んでいますが、要するに原子炉暴走。チェルノブイリは、まさにこの状態になりました。

いや、チェルノブイリだけではありません。人類はこれまでに少なくとも37回の臨界事故を引き起こしています。
過去の臨界事故例1
過去の臨界事故例2
そのほとんどが、即発臨界だったと考えられます。なぜなら、意図せずに起きる臨界状態で、「即発中性子の数が、臨界量に対して99%以上、100%未満」という狭い範囲に納まるのは、余程の偶然が重ならない限りあり得ないからです。

もちろん原爆も即発臨界なのですが、核燃料では、ウラン235の濃度が低いため、原爆のような核爆発までは起きません。しかし、大量の中性子線と放射性物質が短時間の間に生成されます。

分かりやすいように具体的に見ていきましょう。

まず、1999年に東海村で二人の命を奪い、多くの住民を被ばくさせたJCO事故。高速増殖炉の研究に使う核燃料の製造工程で、ウラン溶液が臨界を越えてしまいました。国もJCOも正式には認めていませんが、最初の段階で即発臨界を起こしたのは間違いありません。この図で、「最初のバースト」と書かれているのが、即発臨界です。

即発臨界は、長い時間は続きません。次々と核分裂が起き、ウラン235の数が、あっと言う間に減って、濃度が下がっていくからです。
そして、臨界量に対して、即発中性子が99%、遅発中性子が1%程度になったところで、原子炉内と同じような遅発臨界状態に。JCO事故では、ウラン溶液の周りに冷却水があり、これが遅発中性子をはね返し、外に逃げる中性子が少なかったため、20時間という長い時間に渡って臨界状態が続きました。即発臨界のピーク時に比べて、遅発臨界の状態では、核分裂反応の回数は千分の一になっています。それでも、事故現場の中性子線量がとても高く、臨界を抑えるための作業は命がけでした。小さな原子炉が裸の状態で運転を続けているのと一緒ですから。

福島第1の事故では、3号炉で「即発臨界爆発」が起きたのではないか?と騒ぎ立てる向きもありますが、これは正確ではありません。
まず、即発臨界爆発とは核爆発のこと。核燃料のウラン濃度やプルトニウム濃度では核爆発は起きません。
一方、1号炉から3号炉まで、いずれも地震直後に制御棒が全挿入され、一旦は、核分裂連鎖反応が止まっています。その後、冷却水が止まったために、炉心溶融が起きるのですが、溶け出した核燃料が、一部で「濃度」「大きさ」「形状」の条件を満たして、再臨界を起こした可能性は否定できません。もし起こしていれば、ほぼ間違いなく最初は即発臨界に達したはずです。大きな熱エネルギーが出ますから、さらに炉心溶融は加速。水素の発生も促進されたでしょう。ですから、再臨界(即発臨界)が、より大きな水素爆発を引き起こした可能性はあります。
さらに、プルトニウム239はウラン235よりも即発臨界に達しやすいとされていますので、MOX燃料を使っていた3号炉で、1号炉より大きな水素爆発が起きた理由とも考えられます(現在までに、福島第1で再臨界が起きたとは確認されていません)。

話を戻しましょう。
通常の運転か、原子炉暴走かの境目は、たった1%です。ちょっとしたトラブルや操作ミスで、即発中性子が臨界量を越えた途端に原子炉は暴走します。この暴走は簡単には止められません。かと言って、99%を切ると連鎖的核分裂反応が維持できません。

よくこんな危険な技術に、「人類のエネルギーの夢を託す」なんて言ってきたものです。人類が原子炉を初めて作ったのは1942年の事。原爆を作るためでした。それから69年。もう、『たった1%の綱渡り』から、私たちは足を洗う必要があります。

格納容器はボルト&ナットとシリコンゴムで密閉!2011/09/29 21:27

福島第1の事故で、大量を放射性物質を広範囲に撒き散らした水素爆発。そのメカニズムが、少しずつ明らかになってきました。

3.11、地震直後、少なくとも1号炉では、圧力容器周りの配管破損により、燃料被覆菅と水との化学反応でできた水素と、絶対に外に出してはいけない一次冷却水が熱湯や水蒸気として、圧力容器の外側にある格納容器に漏れ出していました。これは、格納容器内の急激な温度上昇と圧力上昇によって裏付けられています。
一次冷却水は、直接、燃料棒に触れて、それを冷やすものですから、多くの放射性物質が含まれています。しかし、圧力容器の外側には、強固な格納容器があり、その外には何も漏れ出さないはずでした。

水素爆発で吹き飛んだのは原子炉建屋でした。では、どのようにして、格納容器の密閉性は破られ、水素や放射性物質が、建屋にまで漏れていたのでしょうか?

NHKの『サイエンスZERO』という番組を見て、愕然としました。格納容器の密閉性は、どこにでもあるような、ボルト&ナットとシリコンゴムで保たれていたのです。

格納容器の上部は帽子のような形(上蓋)で取り外しが可能になっています。燃料棒を入れ替える時に、上部を開ける必要があるからです。胴体部分との接合は、原始的とも言えるボルト&ナットによる締め付けです。いくらなんでも、それだけではと言うので、間にシリコンゴムのパッキンを噛ませています。これは、ガスや水道の漏出防止とまったく同じ技術です。
シリコンゴムって何?もっとも身近に見られるのは、料理用のゴムヘラです。どこの家の台所にあるゴムヘラと同じ素材で、原子炉の密閉性を保っていたというのです。ちなみに、シリコンゴムの耐熱性は約260℃。

では、福島第1で何が起こったのか?ここでは1号炉のデータを追っていきます。
事故発生後、上がり続けてきた格納容器内の圧力は、地震発生からほぼ12時間後の3月12日の午前2時30分に8.4気圧という最大値を記録します。設計上の最大圧力が4.3気圧ですから、ほぼ倍。ここから少しだけ圧力が下がって、7.5気圧前後で安定します。内部の圧力で、上蓋を止めていたボルトが延びて、格納容器の胴体部分との間に隙間が出来、気体が外に漏れ出したのです。
さらに、炉心溶融を起こしている圧力容器から漏れてきた気体の温度は260℃をはるかに越えるものだったはずです。溶けた核燃料は2800℃以上に達していたのですから。
シリコンゴムは高温になると劣化・収縮します。もはや、ボルト&ナットとシリコンゴムで保たれていた格納容器の密閉性は保ちようがありません。水素や放射性物質を大量に含む気体が漏れ続けました。

これまで、「水素は分子の大きさが小さいから、ちょっとした隙間から漏れた」というような言い方をされていましたが、それでは、放射性物質の漏出の説明が付きません。
実は、「ちょっとした隙間」どころの話ではなかったのです。

それにしても、最先端の技術であるはずの原子炉の安全性をボルト&ナットとシリコンゴムで保とうとしていた愚かさ。いや、これは福島第1だけではありません。日本中、世界中の原子炉が、ボルト&ナットとシリコンゴム、もしくはそれに類する、どこにでもあるような技術で、「安全性を保っている」と言い張っているのです。

原子力安全委員会の斑目委員長は、「あの時点で水素爆発を起こすなんて誰も想像できなかったと思う」と語りました。しかし、彼は、格納容器の密閉性がシリコンゴムのパッキンで保たれていることを知っていたはずです。知っていて誤魔化したのか?それとも、それを水素爆発に結びつける科学者としての想像力が決定的に欠如していたのか?
斑目委員長だけではありません。多くの原子力関係者が、「ボルト&ナットとシリコンゴム」の事実を知っていたはずです。これを放置してきたこと、さらに、放置し続けていること。誰がどうやって責任を取るのでしょうか。

再処理施設って何?2011/09/07 22:07

使用済み核燃料の再処理施設を巡る興味深い報道があったので、取り上げておきます。
「福島の核燃料、仏が引き取り打診」 菅前首相に聞く

フランスのフィヨン首相から菅前首相に、「福島第1にある使用済み燃料(プールで保管中の3108体)を引き取ってもよい」という打診があったというのです。大胆なトップセールスが行われたのは5月。フランス・ドービルで開催されたサミットでのことでした。
この話、直接的には、福島第1の収束に関わると見えますが、実は日本政府に対して原子力政策の根幹に関わる問題を突きつけ、私たちには「原子力」に立ち向かう基本姿勢を問いただしています。

本ブログで既報通り、福島第1だけでなく、日本の原発は、どこも使用済み核燃料で満杯です。フランス、イギリスでの再処理は契約が切れ、国内での再処理も目途が立っていません。【使用済み核燃料はどこへ?
そこへ原発大国フランスから強烈な売り込み。欲しいのは使用済み核燃料に含まれるプルトニウムと、原子力技術の世界へのアピールでしょう。一方、日本の経産省内では、核燃料サイクル計画が根底から崩れるとして、反対論が強いそうです(プルトニウムがなければ核燃料サイクルは想定すらできません)。まずは、この期に及んで、核燃料サイクルなんていう馬鹿げたプランに固執し続けている経産省に呆れます。ただ、この一件、正しく理解するためには、少し勉強が必要です。反対派の一部には、「原発のゴミ=使用済み核燃料をフランスが受け入れてくれるって言ってるんだから、あげちゃえばいいじゃん」という意見もありそうですが、事はそう簡単ではありません。

「再処理」なんて言われると、何となく聞こえがよいですが、その実態は「プルトニウム抽出工場」です。
世界初の再処理施設が稼働したのは1944年。アメリカのハンフォード核施設でした。人類が核の恐怖と同居を始めたその時代、すでに再処理施設は登場していたのです。
目的は長崎に投下する原爆の製造。広島原爆の核分裂物質がウラン235で、長崎原爆がプルトニウム239だったことは多くの方がご存じの通りです。

で、何からプルトニウムを抽出するのか… それが今で言う使用済み核燃料です。1944年当時、発電用原子炉はありませんから、使われたのは、とにかくプルトニウムを作るための原子炉=プルトニウム生産炉でした。とは言え、基本原理は今の発電用原子炉となんら変わりません。原料は、ウラン238が主体で数%のウラン235を含む低濃縮ウラン。中性子をぶつけ、ウラン235の連鎖的核分裂反応を起こします。その時に、余った中性子がウラン238に吸収され、プルトニウム239になるのです。ただ、それだけでは原爆に使える純度の高いプルトニウム239を得ることはできません。
そこで、「低濃縮のプルトニウム(=使用済み核燃料)」を再処理施設に持ち込み、プルトニウムだけを抽出したのです。再処理工場は核兵器と切っても切れない関係、いや、核兵器のための技術なのです。

さて、話を先に進めましょう。再処理工場では、どうやってプルトニウムを抽出するのでしょうか…
使用済み核燃料には、燃え残りのウラン235、ウラン238、核分裂生成物(セシウム137やストロンチウム90など)、プルトニウム以外の超ウラン元素(アメリシウムやキュリウム)、そして、プルトニウム(大半がプルトニウム239)が含まれています。
これを濃硝酸に溶かすなどして、プルトニウムとウランを取り出すのです。残りはガラスで固めてガラス固化体というものにします(崩壊を続ける核分裂生成物や超ウラン元素を濃縮したようなものですから、強烈な放射線を発し、とても人間が近づける代物ではありません)。

しかし、使用済み核燃料は、すべてプルトニウムとウランとガラス固化体に分けられるのではありません。どうしても、かなりの量の高レベル放射性廃液が出てしまうのです。これが、「再処理工場は原発1基分の一万倍の放射性物質を出す」といわれる所以です。フランスのラ・アーグ再処理施設でもイギリスのセラフィールド再処理施設でも、この高レベル放射性廃液を海に流しています。当然、六ヶ所村でも、そういう計画になっています。

では、私たちの立場は…
使用済み核燃料をフランスに持って行ってもらうのは一つの選択肢ですが、それは間違いなく大西洋の海洋汚染を進めます。
一方、日本で再処理?意味がありません。プルトニウム抽出は、核兵器を作るか、危険性ばかりで実現の可能性すらない高速増殖炉への悪夢を増大させるだけです(ちなみに、現在、外国の使用済み核燃料まで含めて再処理を行っている国はフランスとイギリスしかありません。イギリスでは、核燃料サイクルが国策になっていませんから、純粋に外貨稼ぎのビジネスとして再処理をしています。アメリカですら、プルトニウムの拡散を防ぐという理由から、使用済み核燃料の再処理を行っていません)。

さて、今、ここ日本に大量の使用済み核燃料が存在するということ自体が問題なのですが、これは、いかに原発反対派と言っても逃げて通れない現実問題。最悪の中の最善の選択は、今すぐ、日本中の原発を止め、廃炉行程に入り、使用済み核燃料を再処理せずに最終処分する道を探るしかありません。国内のどこかに最終処分場を作り、地下深く、そして、10万年以上経っても掘り出されないようにするしかありません(フィンランドと同じ選択)。気の遠くなるような話ですが、今からたった50年ほど前に動き出した原発によって、10万年以上に渡る恐怖の責任を負っているのが、今の私たちなのです。

さて、1日待ったら、
鉢呂経産相:国内原発「ゼロになる」上関は着工「困難」【毎日新聞】
という報道が入ってきました。何はともあれ、日本政府も、一応、原発ゼロを想定した動きになってきました。これを逆戻りさせてはいけません。

「今止まっている原発を一基も再稼働させてはいけない」。この言葉は、もう夢や理想でもなんでもありません。現実的な目標なのです。

再溶融や再臨界は起きるのか2011/08/21 21:23

福島第1そのものは、今、どうなっているのでしょうか?どうも政局に目を奪われて、マスメディアも、私たちも、視点が一番重要な部分から離れているような気がします。
一度、冷静に見直してみましょう。

まず使用済み核燃料プールです。1号炉から4号炉まで、すべてで循環冷却システムが稼働し、水温は32℃~42℃(8/20現在)と安定してきています。
ただ、大きな余震や機械・設備の不具合から、冷却システムが止まったり、プールからの水漏れが起きれば、使用済み核燃料が、みずから発する崩壊熱で溶け出す可能性は残されています。
崩壊熱というのは、連鎖的核分裂反応によってできた核分裂生成物(ヨウ素131・セシウム137・ストロンチウム90など)や超ウラン元素(プルトニウム239やアメリシウム241など)が、放射線を出して崩壊する際に、その放射線が他の物質に衝突して発生する熱のこと。核燃料は、崩壊熱が少なくなるまで、使用後3年間は原子炉に付属するプール内で、循環する水を使って冷却し続けないと、どこにも動かせません。

最悪の場合、使用済み核燃料プールで核燃料が溶融する可能性があると記しましたが、再臨界はどうでしょうか?溶融した核燃料がプールの底に有る限り、平らに集まるので、再臨界の可能性は低いと思われます。
しかし、大量の核燃料が一気に溶融すれば、<水が無い→崩壊熱で温度が上がる→さらに水が蒸発して無くなる→崩壊熱でさらに温度が上がる>という悪循環が起きます。溶融した使用済み核燃料は、プールの底のコンクリートを溶かして、下に落ちていくでしょう。この時、何が起こるのか… 下に何があるのかによって決まります。大量の水があれば、水蒸気爆発です。

この使用済み核燃料に対する危惧は、福島第1でなくても、すべての原子力発電所に当てはまります。ただ、福島第1の場合は、地震・津波・水素爆発で建屋や施設が大きく損傷。循環冷却システムは仮設と言ってよい急造り。不具合が発生する可能性が高いので、危険性は、より高いのです。


1号炉から3号炉までの原子炉本体はどうでしょうか。
いまだに圧力容器内の、本来、燃料棒の頭頂部がある位置よりも2メートル前後下の位置までしか水で満たされていません。燃料棒は4メートル程の長さですから、元の形を残していれば、半分しか水に浸かっていない状態です。ただ、炉心溶融した際に、上の方から溶け出した可能性が高いので、現在、水面の上に出ている燃料棒があるかどうかは不明です。

圧力容器は、穴の開いたヤカンのようになっているので、溶けて固まって圧力容器の底にある核燃料は、一応、水の中です。圧力容器を溶かして、格納容器にまで達している分は、流れる水に洗われている状態でしょう。大量の放射性物質を溶かし出しながら。

原子炉本体に関しては、当初、圧力容器を水で満たす水棺を目指しました。しかし、容器の底に穴が空いているために不可能と判明。循環冷却システムの構築を目指していますが、漏水が多く、あっちこっちに溜まった汚染水を浄化して、なんとか炉心に水を注ぎ続けているというのが現状です。
これは綱渡りと言ってもよい状態です。何らか理由で注水が止まれば、冷えて固まっている核燃料が、崩壊熱でふたたび溶け出します。

チェルノブイリ事故では、2度の水蒸気爆発が起き、放射性物質がヨーロッパ全域とも言える広範囲に撒き散らされました。しかし、それでも想定された最悪の水蒸気爆発は避けられました。
チェルノブイリには4基の原子炉がありましたが、事故を起こした4号炉を含めて、すべて福島第1とは異なる黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉というタイプでした。従って、まったく同じようには語れないのですが、原子炉の底の部分に溶融した燃料が集まり、コンクリートの底を溶かし始めたのは、ほぼ福島第1と同じです(福島第1の圧力容器の底は鋼鉄製)。
そのコンクリートの下には、大量の水を蓄えた水槽がありました。ここに一気に溶融した核燃料が落ちたら、巨大な水蒸気爆発が起きます。水を入れたバケツに、真っ赤に燃える石炭をスコップ一杯でも投げ込んだらどうなるでしょうか。その大規模版が原発の水蒸気爆発なのです。
もし、この大規模な水蒸気爆発が起きていれば、残りの3つの原子炉にも被害が及び、放射性物質による汚染は数倍になっただろうと言われています。爆発を防いだのは、3人の男たちでした(ソ連軍の軍人と思われる)。彼らは潜水具を付けて、高濃度に汚染された水が溜まる水槽に潜り、水栓を抜いてきたのです(風呂の栓ではありませんから、実際にはバルブを開けたとか、そんな作業でしょう)。その後、予想通り原子炉の底のコンクリートが溶けて抜け、高温で溶けたままの核燃料が空になった水槽へと落ちました。最悪を越える最悪だけは避けられたのです。

ここでチェルノブイリの話を出したは、福島第1で、これに近い事態が起きる可能性が残されているからです。もし、何らかの理由で注水が止まれば、水の無い圧力容器内で、核燃料はほどなく溶融します。それが一気に圧力容器の底を溶かしたら、下で待っているのは格納容器の底に溜まった大量の水なのです。

考えてみれば、事故発生当初に起きていたメルトダウン(メルトスルー)の段階で、水蒸気爆発に至らなかったのは幸運でした。三つの原子炉はどれも一度は、圧力容器が完全に空焚きの状態になっていました。炉心溶融が、もっと激しく進んでいたら、ヤカンの底が丸ごと一気に抜ける可能性もあったはずです。下は格納容器に溜まった水。水蒸気爆発が起きます。今、圧力容器に空いている穴が、比較的小規模なもので済んでいるのは不幸中の幸いなのです。少なくとも、事故発生当初の段階で、「メルトダウン(メルトスルー)から水蒸気爆発」という最悪のシナリオは回避されました。しかし、今後もそれが起きないとは断言できないのです。恐ろしいのは、冷却水が止まることです。

さて、炉心での再臨界の可能性に話を進めましょう。
一つ前の記事で、再臨界が起きるかどうかは、固まった核燃料の「(ウラン235の)濃度」「大きさ」「形状」で決まると述べました。今、3つの原子炉の中で、核燃料は冷えて固まった溶岩のようになっています。巨大な塊もあれば、一抱えほどの大きさのもの、あるいは石ころのような状態になっているものもあるでしょう。
怖いのは、何かのキッカケで、それらが大きな集まりになることです。一つの塊なら臨界に達しなかったものが、二つ、すぐ近くに寄っただけで臨界反応が始まる可能性があります。例えば、冷却水の流れや、余震などによって、岩のような塊が転がって集まっただけで…
また、デーモン・コアの時のように、核燃料の上に、偶然、中性子を反射する物質が落ちてくるのも怖いです。
ちょっとしたキッカケで、核燃料は、簡単に臨界状態になるのです。

核燃料が再溶融して、ドロドロの一塊になった場合も極めて危険です。全体が臨界状態に達すと言うよりは、瘤状に盛り上がった部分(球に近い形状)や、例えば、広めの空間に流れ込んで、少しでも球に近い形でまとまった時、臨界が起きる可能性が高いのです。
何度か書いている通り、臨界状態になれば、大量の中性子線が出て、近くにいる人は間違いなく死にます。温度も飛躍的に上がるので、周りで様々な化学反応が起き、水素爆発の可能性が高まります。さらに、大量の核分裂生成物が生まれ、それがばらまかれます。

今、いくつかの悪い想定を積み重ねて、核燃料の再溶融や再臨界を論じていますが、福島第1の建屋や施設がボロボロになっていることを考えれば、心配しすぎとは言えません。
とにかく、冷却が止まらないように最大限の努力を続けること。そして、急造りの冷却システムの危うさをどう補うのかを考えないといけません。チェルノブイリで採用された石棺方式も、一つの選択肢かも知れません。

デーモン・コア 再臨界を理解するために2011/08/21 15:59

福島第1。使用済み核燃料プールについては、一応、循環冷却システムが稼働し、当面のさし迫った危機からは脱したと言えます(大きな余震や機械・設備の不具合から、冷却システムが止まったり、プールからの水漏れが起きれば、使用済み核燃料が、みずから発する崩壊熱で溶け出す可能性があることを忘れてはなりませんが)。

一方、炉心でも注水による冷却を進めていますが、1号炉から3号炉まで、いずれも圧力容器に穴が空いているため漏水が多く、綱渡りの冷却が続いてます。
そんな中で、核燃料がふたたび溶融するのではないか… 再臨界が起きるのではないか… と危惧する声も出ています。ここでは、再臨界を正しく理解するために、そもそも核物質の臨界とは何なのか、そこまで立ち帰って説明していきます。怖がるにしても、正しく怖がる必要があるからです。

人類が核の恐怖に晒され始めたばかりの頃、すでに、実に簡単に起きてしまう臨界の怖さを教える重大な事件がありました。
舞台は、広島と長崎に投下された原爆を開発したアメリカ・ニューメキシコ州にあるロスアラモス国立研究所。原爆投下から間もない1945年8月21日、66年前の今日のことです。アメリカは、さらに破壊力の大きな核兵器の開発に躍起になっていました。
ロスアラモス国立研究所に所属する若手の物理学者ハリー・ダリアン(1921~1945)が実験に使っていたのは重さ6.2kgの球状のプルトニウム(大半がプルトニウム239で、一部、プルトニウム240を含む)の塊です。

核兵器や原子炉で使う連鎖的核分裂反応(臨界反応)を起こす物質として現在知られているのは、ウラン235とプルトニウム239だけです。この二つは、ある濃度で、ある分量が、ある形に集まった時、臨界に達します。
連鎖的核分裂反応(臨界反応)とは、原子が二つに割れる時に飛び出した中性子が、近くにある原子に吸収され、そこで次の核分裂を起こすという反応を連鎖的に繰り返すことです。それは、原爆が爆発する瞬間であり、原子炉の中では緩やかな臨界状態を保って、その時に生じる熱で発電をしているのです。

さて、ハリー・ダリアンの手元にあった、のちにデーモン・コア(悪魔のコア)と呼ばれるプルトニウムの塊。6.2kgの球状だったのは理由があります。それは、もう少し大きかったら臨界に達する大きさだったのです。球状になっていたのは、より少ない量で臨界に達するからです。球は、他のどの形よりも、同じ体積に対する表面積が小さくなるので、表面から逃げる中性子がもっとも少ない形。…と言うことは、もっとも臨界に達しやすい形なのです。

球状のプルトニウムの塊。もう少し大きくすれば臨界が起きるのですが、それでは、実験をしている自分が確実に死んでしまいます。ダリアンは、別な方法でプルトニウムを臨界に近い状態にしようとしていました。
塊の周囲に中性子を反射する炭化タングステンのブロックを積み上げたのです。ブロックを増やせば、逃げる中性子が減るので、同じ量でも臨界に達しやすくなるのです。

データを計測しながら、慎重に作業を進めるダリアン。その時、手が滑って、1個のブロックをプルトニウムの塊の上に落としてしまったのです。たちまちプルトニウムは臨界に達し、臨界反応が始まりました。ダリアンは、慌てて落としたブロックをプルトニウムの塊の上からどけましたが、すでに5.1シーベルトという大量の放射線を浴びており、25日後に急性放射線障害のため死亡しました。
もし、ブロックをどけることができなかったら、臨界反応が続き、もっと大量の放射線が放出され、死者はダリアン一人では済まなかったでしょう。プルトニウムの塊は、みずから発する熱で溶け出し、形が球状でなくなるまで、臨界反応が続いたはずです。

ダリアンの命の奪ったロスアラモス国立研究所のデーモン・コアは、翌1946年、カナダ出身の物理学者ルイス・スローティン(1910~1946)の命をも奪います。実験の形こそ違いますが、やはり臨界によって発生した大量の放射線による急性放射線障害でした。

さて、ここで一つの疑問が生まれます。連鎖的核分裂反応(臨界反応)を起こすためには、プルトニウム239なり、ウラン235なりに中性子が飛び込む必要があります。じゃあ、最初の核分裂を起こすための中性子はどこから来るのかというものです。
実は、プルトニウムやウランは、自然に核分裂を起こして中性子を発しているのです。これを自発的核分裂(または自発核分裂)と呼びます。
以下に、1kgのプルトニウムとウランが1秒間に自発的核分裂を起こす確率を記します。
●プルトニウム239: 7.01回/秒・kg
●プルトニウム240: 489,000回/秒・kg
●ウラン235: 0.0056回/秒・kg
●ウラン238: 6.93回/秒・kg
プルトニウムの塊には、プルトニウム239だけでなく、必ずプルトニウム240が含まれています。プルトニウム240は比較的高い頻度で自発的核分裂を起こすので、最初の1個の中性子は簡単に生まれます。
ウランの方は、ウラン235は自発的核分裂の確率は低いのですが、必ず一緒に存在するウラン238は、十分に高い確率で自発的核分裂を起こします。1999年9月30日に起きた東海村JCO臨界事故は、ウランによるものでした。臨界状態への引き金を引いたのはウラン238の自発的核分裂だったと考えられます。

なお、原爆や原子炉では、連鎖的核分裂反応をより確実に、均等に起こさせるため、別に中性子源を用意しています。

デーモン・コアの事件は、いとも簡単に臨界が起きることを教えています。
問題は、「濃度」と「大きさ」と「形状」です。
よく、炉心溶融(核燃料の溶融)と臨界(再臨界)が混同されますが、これはまったくの別物です。核燃料が溶けていなくても再臨界は起きるのです。そして、臨界状態になれば、大量の中性子線が飛び出し、近くにいる人は確実に死にます。また、ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90といったやっかいな核分裂生成物が、これまた大量にばらまかれます。

この記事はここまでとして、次の記事で、今後、福島第1では核燃料の溶融や再臨界が起きる可能性があるのかを考えていきます。

反原発は反科学?2011/08/08 10:55

「科学技術」という言葉があります。英語では‘Science and Technology’。ところが、日本語の「科学技術」は「科学的技術」のニュアンスが強く、科学と技術が一緒くたになっています。
本当は科学と技術は別物で、別物だからこそ英語では‘and’でつないでいるのです。
一般的には、科学的な方法で見つけ出されたり、経験的に裏付けられた客観的な法則性を人間が使いやすいように応用するのが技術。
科学は、自然界の真理を探究する行為です。社会や人類の進歩に役に立とうが立つまいが関係ありません。例えば、小林・益川理論で「対称性の破れ」が証明されても、日常生活には何の影響もありません。しかし、科学者には真理を追究を続けて欲しいし、みんながそれを応援します。
一方、歴史的に見れば、原子や原子核の中で起きていることを解明する量子力学の研究の一部が、原爆開発へと技術的に利用されたことは事実です。これこそが「悪しき技術」。ヒロシマ・ナガサキの後、多くの科学者がその事に気づき、マンハッタン計画の中心人物であったオッペンハイマーやフェルミも反核兵器の立場に転じました。

話を戻すと、科学に善悪はありませんが、技術には善い技術と悪い技術があるということです。

「反原発は反科学・反技術の考え方だ」と批判する人がいますが、これは違っています。量子力学は、純粋に科学です。それを悪しき技術で大量殺戮兵器に転用したのが原爆で、金儲けのために危険極まりない発電用熱源に利用したの原発。悪しき技術の背景には、札束と名誉、権力がうごめいます。私たちは、悪しき技術に反対するのみです。

前の記事で、「人類はウランを掘るべきではない」と書きましたが、これは、私たちが科学を棄てることを意味するわけではありません。毒キノコだと分かれば、それを採らないのも科学的立場なのです。

放射性物質と核分裂生成物2011/06/05 14:29

当ブログでは、「放射性物質」と「核分裂生成物」という単語を使い分けてきました。これは、自然界にも存在する「放射性物質」と、原子力発電や核爆発でしか生じない「核分裂生成物」を区別するためです。

「核分裂生成物」の多くは「放射性物質」に含まれます(一部、放射線を発しない安定元素も有り)。しかし、大事なことは、そこには自然界には決して存在しない物質があるということです。この点を曖昧にしたくなかったので、あえて「核分裂生成物」という言葉を中心に使ってきました。

核分裂生成物の多くは、なぜ自然界には存在しないのか?
半減期が短いからです。もはや有名になってしまったヨウ素131の半減期は8日、セシウム137とストロンチウム90は30年、テルル132は3日、コバルト60は5.3年、クリプトン85は10.8年。宇宙の歴史や地球の歴史から考えたら、多くの核分裂生成物の寿命は一瞬。仮に超新星爆発や地球誕生の時に存在していたとしても、はるか昔に他の安定的な物質(元素)に変わっています。

原発や原爆は、自然界に存在しない危険な物質=核分裂生成物を新たに作り出します。そして、核分裂生成物の危険性を取り除くには、物質みずからが崩壊するのを待つしかなく、人為的に解毒や分解といったことができません。基本的なことですが、この点をもう一度、確認しておきましょう。

さて、ウラン235に中性子が当たると、二つの物質に分裂し、同時に中性子を1~4個放出。この中性子が別のウラン235に衝突。この繰り返しが連鎖的核分裂反応です。分裂してできる物質は100種類以上(一説によると1000種類以上)に及びます。そのうちの代表的なものが、ヨウ素131やセシウム137です。

では、その片割れはどうなっているのでしょうか?セシウム137を例に考えてみましょう。
原子名の後ろについている数字は質量数といって、陽子の数と中性子の数を足したものです。ということは、ウラン235(陽子92個・中性子143個)の核分裂では、原子の質量数に中性子1個を加えた、質量数236が二つに分裂し、同時に中性子が1~4個生成されます。
核分裂の前後で、陽子数の合計は変わりません。ウランの陽子数が92、セシウムの陽子数が55ですから、引き算をすれば、片割れの陽子数は37になることが分かります。陽子数とは原子番号そのもの。片割れの原子は原子番号37のルビジウムです。
ただ、核分裂の際に飛び出す中性子の数によって、そのルビジウムの質量数は変わりますので、ルビジウム95からルビジウム98まで、4種類の核種=同位体(同じ元素で陽子数は同じだが、中性子数が違う)がありえます。
文章だけでは分かりにくいと思いますので、表にしてみました。
しかし、これらのルビジウムが核分裂生成物として話題に上ることはありません。半減期がきわめて短く、アッと言う間に別な物質に変わってしまうからです。
さらに、ルビジウム95の場合は、ストロンチウム95→イットリウム95→ジルコニウム95→ニオブ95という複雑な変化(崩壊)を遂げて、最後はモリブデン95という安定した原子になります。
この過程は、日本科学未来館のホームページで分かりやすく解説してあります。原発推進の広報ページなので注意は必要ですが、この件に関しては正しい情報です。
一方、このページで触れていないのは、原子が変化(崩壊)する過程で、必ずガンマ線やベータ線といった放射線を放出する点です。ルビジウム95は、何度も放射線を発しながら、やっと最後にモリブデン95として安定するのだということを忘れてはなりません。






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