再度、プルトニウムに警戒を2011/09/30 21:18

これまでも、アメリカ西海岸を含むたくさんの場所で、福島第1由来とされるプルトニウムが検出されてきました。今回は、やっと、文科省が福島第1の敷地外へのプルトニウムの飛散を認めた形です。

『飯舘村など プルトニウム検出』(NHK9月30日
『アメリカ西海岸へのプルトニウム飛散/ガンダーセン博士』(CNN6月7日

さて、このNHKの報道は、注意深く読み解く必要があります。
まず、プルトニウムが崩壊する際に発するアルファ線による被ばくは、○○シーベルトの基準となるガンマ線による外部被ばくと同列に語れるものではありません。
ガンマ線が大気中では数百メートルから数キロメートル以上飛ぶのに対して、アルファ線は、1センチ以下しか飛ぶことが出来ません。人体に対しては、ガンマ線の一部は透過しますが、アルファ線は数ミクロンしか進むことができません。
簡単に言うと、プルトニウムの塊が、今、目の前にあったとしても、外部被ばくを受けることはないのです。しかし、内部被ばくは深刻です。呼吸によって肺に入った場合、肺の細胞に長く留まり続け(数十年以上)、周りの細胞をガン化させます。
プルトニウムの半減期は2万4千年と長いので、滅多にアルファ線を発しないから大丈夫!などと言う人がいますが、これは大嘘!!肺に入った微粒子一個には、数億から数百億個というプルトニウム原子が含まれています。この莫大な数の原子が、一つずつ崩壊をしていくことで、2万4千年目に半分に減るのです。アルファ線の放出は、肺に入ったその瞬間、すでに始まっています。
そして怖いのは、水に溶けにくいプルトニウムは、血流に乗ることもなく、同じ場所に留まり続けるということです。先に、アルファ線は体内では数ミクロンしか進めないと書きましたが、逆に言えば、プルトニウムの微粒子から半径数ミクロン以内にある細胞は、徹底してアルファ線を浴び続けます。これだけでも、至近距離にある細胞がガン化しない方が不思議なくらいでしょう。さらに、放射線がDNAを破壊する力を電離作用と言いますが、アルファ線は、ガンマ線やベータ線の20倍の電離作用力を持っています。これらが、プルトニウムを含む微粉末数個を吸い込んだだけで、肺ガンを発症する危険性があるとされる理由です。

上の画像は、長崎大学の七條和子先生のブループが、2009年にとらえたもの。人間の体内でプルトニウムが発したアルファ線の軌跡です。実は、長崎原爆の被ばく者で、亡くなった方の保存されていた細胞を使って撮影したものです。被ばくから60数年経っても、体内にプルトニウムが残っていて、それがアルファ線を発し続けているという、これ以上の証拠は有りません。

では、比重の大きいプルトニウムが、なぜ、遠くまで飛ぶのか?冒頭にリンクを張ったNHKの記事で、東大の長崎晋也教授が、「粒子が非常に小さければ気象条件によって遠くに運ばれることはありえないことではない」と言う通りです。
分かり難いので、より詳しく解説すると、要するに、物質は小さくなればなるほど、重さに対する表面積の比が大きくなり、空気の抵抗を受けて飛びやすくなるという理屈。巨岩はどんな強風が吹いても微動だにしませんが、それが小さく砕けた砂粒は、ちょっとした風で舞い上がるのと同じです。
さらに、炉心溶融ののちに固まった核燃料が、一種類の元素で集まっているはずはありません。比重の軽い元素と一緒になっていると考える方が自然でしょう(大きな塊から微粉末まであります)。さらに、固まる時に、気泡を含んでいるでしょう。遠くまで飛んだのは、イメージとしては核燃料の火山灰のようなものです。火山灰の中に、プルトニウムが潜んでいると(冒頭にリンクを張ったCNNのリポートの中で、ガンダーセン博士が言っている「ホット・パーティクル」は、おそらく、この火山灰状の微粒子を指していると思われます)。

あいかわらず、文科省は、外部被ばくと内部被ばくを、そして、ガンマ線とアルファ線を一緒くたにして、「今回検出されたプルトニウムの濃度はいずれも低く、これらのプルトニウムによる被ばく量は非常に小さい」などと言っていますが、これはまったく根拠の無い主張です。
微粉末一個二個でも恐ろしいのがプルトニウムです。
プルトニウム飛散の状況を徹底して調査して、誰一人としてプルトニウムを肺に吸い込まないような対策を考え、実行すべきでしょう。
調査の方法としては、ガンダーセン博士が拠り所とした、クルマのエアフィルターを調べる方法の他に、下水処理場に集まってくる汚泥や、ゴミ焼却施設の灰などを調べる方法があります。
地面を一掘りして、その土の中にないからといって、安心できないのが、プルトニウムなのです。

プルトニウム再考2011/07/31 12:09

「アメリカ・カリフォルニア州で過去最高値の約43倍のプルトニウム検出」という情報がインターネット上で話題になったのは3月下旬から4月下旬にかけてでした。「プルトニウム カリフォルニア」で検索をかけると今も多くの記事がヒットします。
私自身は、「重たいプルトニウムであってもアメリカ西海岸まで飛ぶこともあるんだ」程度にしか考えず、一方で、この情報の真偽を疑う声もあったため、大きく気に留めることはしませんでした。しかし、考えを改める必要が出てきました。

この間、大きな話題となっているのが、西海岸のシアトルにまでプルトニウムが飛来しているとするアメリカの原子力専門家・アーニー・ガンダーセン氏の発言です。
6月7日、CNNでホット・パーティクル(プルトニウムを含む高放射性粒子)の恐ろしさを訴えています。この動画ではさらに分かりやすくホット・パーティクルの恐ろしさを語っています。ガンダーセン氏はスリーマイル事故調査団メンバーの一人でした。

ところで、ホット・パーティクルとは何なのでしょうか?「プルトニウムを含む高放射性粒子」とは定義されますが、今一つ理解し難いです。
それは、私たちがこれまで、原子炉から漏出した核分裂生成物は、キセノン133やクリプトン88のように気体となって拡散するか、ヨウ素131(一部は気体で拡散)やセシウム137、ストロンチウム90のように一種類の原子あるいは分子が大気中の塵などに乗って広がると考えていたからです。
原子や分子が塵に乗るメカニズムは、物質が液体から気体になる温度=沸点と関係しています。セシウムの沸点は671℃、ストロンチウムの沸点は1382℃。燃料棒の主体である二酸化ウランの融点は約2800 ℃ですから、炉心溶融が起きた時点で、一部のセシウムやストロンチウムは、一旦気化していたに違いありません。それが大気中の塵に触れた瞬間に冷やされて固体になり、同時に塵にくっつきます。冷凍庫で冷やしたグラスを外に出すと、空気中の水蒸気が霜になってグラスの表面に付きますね。そんなイメージです。

一方、プルトニウムの融点は640℃、沸点は3235℃です。酸化プルトニウムの状態だったとすると融点が2400℃なので、沸点はもっとずっと高いでしょう。ということは、炉心溶融に至ってもプルトニウムは気化せず、そのほとんどが溶岩が冷えて固まったような状態の核燃料の中に残っていることになります。
逆に言えば、溶けて固まった核燃料の溶岩の中には、プルトニウム239、ウラン235・238、コバルト60などと、気化せずに残った分のセシウム134・137、ストロンチウム90などが含まれます。荒い合金のような状態で、大きな塊から小さな粉末まで様々な形や大きさをしているはずです。そして、この核燃料溶岩の微粉末こそがホットパーティクルなのです(少々無理して喩えるなら、火山爆発の火山灰に当たるのがホットパーティクルと言えるかも知れません)。それは壊れた原子炉内の空気や水蒸気の対流によって、大気中に巻き上げられていきます。水素爆発によって遠くまで飛散したことも事実でしょう。
「プルトニウムは比重が鉛の2倍もあるから遠くまで飛ばない」という説がありますが、確かに単体では飛びにくいでしょう。しかし、他の元素と一緒になってホット・パーティクルになったとき、全体としては軽くなります。また、粒子は小さくなればなるほど、体積に対する表面積の比率が大きくなり、空気の抵抗を受けて、舞い上がりやすくなります(石ころは風ではそう簡単に飛びませんが、石の微粒子である砂はちょっとした風で空に舞い上がります)。さらに、ホット・パーティクルが、小さな気泡を含んでいれば、より軽くなって飛びやすくなります。

ガンダーセン氏の警鐘に戻りましょう。
4月。東京ではクルマのエアフィルターからホット・パーティクルが検出されていました。その量は、一人が毎日10個のホット・パーティクルを呼吸によって肺に取り込む量でした。福島では、その30倍から40倍と推測され、アメリカ西海岸のシアトルでさえ、4月中は、一人一日5個を吸い込む量でした。それらは、やがて肺ガンを引き起こす可能性があります。京都大学の小出裕章さんは論文の中で、たった2個のホット・パーティクルで、細胞がガン化する危険性が1/1000としています。

ガンダーセン氏の警鐘と東電や国が発表してきた「微量のプルトニウム検出」と間には随分温度差があります。これはなぜなのでしょうか?
一つは、検出の方法にあります。プルトニウムが放出する放射線はアルファ線。これは陽子2個、中性子2個からなる粒子線で、DNAを傷つける力はベータ線やガンマ線の20倍と強力ですが、透過力は弱く、空気中では数センチしか進めず、紙1枚でも遮ることができます。従って、特殊な計測器でなければ、プルトニウムが出すアルファ線を捕まえることはできません。

アルファ線は、生体内では数十マイクロメートルしか進むことができません。ですから、プルトニウムによる外部被ばくを考えるとき、塊に直接触れたりするようなことがなければ、その危険性はありません。アルファ線は、仮に体表まで到達したとしても、表皮より内側には影響を及ぼせないからです。
しかし、体内に入った場合の内部被ばくは深刻です。例えば、肺に入り込んである場所に止まったとすると、半径数十マイクロメートルの範囲にアルファ線を浴びせ続けるのです。ガン化しない方が不思議なくらいです。

プルトニウムの怖さは、基本的にガンマ線による外部被ばくの量しか示さない、○○シーベルトでは計り知ることができません。また、一旦、肺の中に入ってしまったプルトニウムおよびそれが発するアルファ線を体外から検出することは不可能です。対策は、プルトニウムを体内に入れないこと。それしかないのです。
私たちがプルトニウムを体内に取り込まないようにするためには、できるだけ多くの場所で、大気や土壌のサンプリングを行って核種を分析、直ちにその情報を公開し、必要ならば除染を進める必要があります。ガンダーセン氏がよりどころにしたクルマのエアフィルターを分析する方法も、たいへん有効だと思います。

繰り返しになりますが、空間線量の計測だけでなく、多くの場所で核種分析を徹底して行うこと。これを進めなければ、プルトニウム汚染の実態を知ることはできません。

超ウラン元素2011/06/05 17:11

核分裂生成物とは別に、使用中の燃料棒の中で作られるのが「超ウラン元素」です。

実は、原子番号92のウランは自然界でもっとも重い元素で、原子番号93以降の原子は「存在しうるが、自然界には存在しない」というもの。これらを超ウラン元素と呼んでいます。
超ウラン元素は、総じて寿命が短く、短時間の間に崩壊して、別な元素(物質)に変わってしまいます。超ウラン元素の代表格とも言えるプルトニウム239の半減期は2万4千年。2万年以上と聞くと長く感じるかも知れませんが、46億年という地球の歴史から見れば一瞬に過ぎません。仮に地球誕生時に、ある程度の量のプルトニウム239があったとしても、それはもうどこにも残っていません。
しかし、私たち人間、いや、生物の一生から考えれば2万4千年は、とてつもなく長い時間です。「放射線(アルファ線)を出し続けるプルトニウム239は、2万4千年経っても、半分にしか減らない」。そう考えれば、絶対に作り出してはいけない物質だということがお分かりいただけると思います。

さて、超ウラン元素は、加速器や原子炉でしか作ることができません。多くの場合は、既存の原子に中性子を吸収させて作るものだからです。
世界には、理論的には存在可能でも、実際に存在が確認されていない元素を作ろうと、しのぎを削る実験物理学者たちがいます。最近も原子番号114のウンウンクアジウムの生成が話題になりました。

話を原発に戻しましょう。
燃料棒の中にできる超ウラン元素は、
ネプツニウム237(半減期=214万年)
プルトニウム238(半減期=88万年)
プルトニウム239(半減期=2万4千年)
アメリシウム-241(半減期=433年)
などです(他にキュリウムなど)。

プルトニウム239の場合は、連鎖的核分裂反応で余った中性子をウラン238が吸収して生成されます。他の超ウラン元素では、ウランやプルトニウムが元になって、アルファ崩壊やベータ崩壊を繰り返す複雑な過程で生成されます。詳しくは原子力資料情報室のサイトへどうぞ。
いずれの超ウラン元素もアルファ線やベータ線を出して崩壊し、別な物質へと変わっていきます(超ウラン元素が崩壊して、別の超ウラン元素になる場合もあります)。
アルファ線とは、ヘリウムの原子核(陽子2個+中性子2個)のことで、透過力は弱いですが、エネルギーは大きく、DNAを傷つける電離作用の強さは、ガンマ線の20倍。万一、超ウラン元素を体内に取り込んでしまうと、アルファ線によって、深刻な体内被曝を受ける可能性があります。理由は、電離作用の強いことがひとつ。もう一点は、遠くまで影響が及ばない分、至近距離にあるたくさんの細胞を確実に壊してしまうからです。

福島第1の事故では、これまでにニュースになっただけで、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムの漏出が確認されています。
政府は「直ちに健康に影響が出るレベルではない」を繰り返していますが、核分裂生成物と併せて、超ウラン元素の危険性を認識し、その監視を強める必要があります。

毒物と放射性物質2011/04/27 14:47

直前の記事で、「放射性物質は、いわゆる毒物と違うので、中和させて無毒化するといったことができません」と記しましたが、なぜそうなのか、少しだけ話を深めておきます。

例えば、気体の塩素は強い毒性を持ちます。大量に吸い込むと死に至ります。また、塩素がナトリウムと酸素と結合すると次亜塩素酸ナトリウムに。強い殺菌力があるので、プールの消毒や家庭用の漂白剤に使われます。殺菌力があるということは、ちょっと量を間違えれば、人間にとっては毒物になります。一方で、塩素がナトリウムとだけ結合すると塩化ナトリウムです。いわゆる塩(しお)のことで、ほとんどの生物にとって不可欠なミネラル源になります。

放射性物質はどうでしょうか?液体であっても、固体であっても、気体であっても、その原子から発する放射線は変わりません。それどころか、どんな原子と、どんな形で結合しても放射線を出す力(放射能)は変化しないのです。

なぜなのでしょうか?
いわゆる毒物の毒は分子レベルの化学反応によるものなので、化合(結合)の形や相手を変えることによって、無毒化することができます。悪名高いダイオキシンにだって、一応、無毒化する方法はあります(だからといって安心というわけではありませんが)。

放射線はどうでしょうか。例えばガンマ線は、原子の中で原子核の周りを回る電子が軌道を変えるという量子力学的な現象によって生じるものです。アルファ線はヘリウムの原子核、ベータ線は電子線ですが、いずれも量子力学的な効果によって生じていることに違いはありません。放射線の発生は、原子の中という、私たちが覗くことのできない世界で起きているのです。

じゃあ、放射性物質を人為的に他の物質に変えることは出来ないのか… それは、超大型の加速器など特殊な装置の中でしかできません。それもごく僅かな量だけです。さらに、加速器を使っても、放射性原子は他の放射性原子に変わるだけで、安定した原子にはなりにくいものです。

人類は放射性物質から放射性を取り除くことはできません。それは、どんなに科学技術が発展しても不可能です。
だから、自然に減っていくのを待つしか方法はありません。ヨウ素131が半分に減る半減期は8日間。セシウム137やストロンチウム90は30年。プルトニウム239は2万4千年です。

もうこれ以上、余計な放射性物質を作り出してはいけないのです。

プルトニウムは大丈夫か?(3)2011/03/25 11:01

さて、福島第1原発です。
これまでの話で、3号炉の燃料棒にもともとプルトニウム239が含まれている他、他の原子炉でも、使用中や使用済みの燃料棒にプルトニウム239が含まれているのはお分かりいただけたでしょう。
福島第1原発では、一部の原子炉本体や使用済み核燃料貯蔵プールに水を浴びせ続けています。そうしないと、核燃料(燃料棒)が溶融するという重大な事態になるからです。現状ではやむを得ないのですが、一部破損している見られる燃料棒からプルトニウム239が流れ出している心配はないのでしょうか。放水車から浴びせた水は、一部は土に染み込み、多くは海に流れ出します。東電から原発附近の海水に含まれるヨウ素131とセシウム137のデータは発表されましたが、プルトニウム239に関しては、まったく言及されていません(プルトニウム239に加えてウラン235も流出している可能性有り)。

*ちなみに何度か起きた水素爆発によってプルトニウム239が大気中の広い範囲に撒き散らされた可能性は低いでしょう。それは、プルトニウム239が非常に重い金属だからです。比重で見ると、金よりも少し重いです。

チェルノブイリ事故の報告でも土壌中に残ったプルトニウム239の分析が行われています。ただ、このデータは原発から10㎞以遠のものなので、原発のすぐ近くでは、どの程度の汚染があったのかは分かりません。

今回、もし、プルトニウム239の海への大量流入が進んでいるとしたら、人類史上初めての事態です(チェルノブイリは近くに海がありませんでした)。すべてのプルトニウム239が、燃料棒の中に留まってくれているなら、それはそれで不幸中の幸いです。一方で、私のように危惧をしている人間もいます。東電と政府は、一刻も早く、福島第1原発のプルトニウムに関する情報を全面的に公開すべきです。


プルトニウムは大丈夫か?(2)2011/03/25 09:52

使用済み燃料棒の中に含まれるプルトニウムの比率は1%程です。実は、このデータがなかなかなくて探していたのですが、(財)日本原子力文化振興財団が運営する原発の宣伝サイトにありました。なんという皮肉… しかし、このサイト、一歩踏み込んで注意深く読んでいくと、原発がいかに危険なものなのかが、良く分かります。ご一読お薦めです。

さて、話を本筋に戻しましょう。1%と聞くと「大した量じゃない」と感じる方も多いと思います。しかし、そこがプルトニウムの恐ろしいところ。プルトニウムの大部分を占めるプルトニウム239は、放っておくと、アルファ線(ヘリウム原子核)を出しながらウラン235に変わります。アルファ線は人体に重大な損傷を及ぼす放射線です。半減期は24000年で、ウラン235の7億年に比べると、かなり短いもの。半減期が短いということは、ある時間内に出す放射線が強いということに他なりません。実際に、ある程度の純度のプルトニウム239は、アルファ線を出すことで強く発熱するそうです。

プルトニウム239は体内に取り込まれると深刻な体内被曝を引き起こします。特に呼吸によって肺に入った場合、肺がんを発症する危険性が高くなります。肺の細胞に対して、長期的にわたってアルファ線を浴びせ続けるからです。
「アルファ線は紙一枚でも防御できる」なんて言って危険性を過小評価する科学者もいますが、実は、肺に入ってしまったら、その一枚の紙すらプルトニウム239に被せることができないのです。

(続く)

プルトニウムは大丈夫か?(1)2011/03/25 08:45

今回の事故で、3号炉が燃料にプルトニウムを使ったプルサーマル方式だったので、ニュースの中にも、時折、プルトニウムという言葉が登場しています。3号炉で使われているのは、より正確に言えばMOX燃料(Mixed oxide fuel)というもので、ウランとプルトニウムの混合酸化物です。まぁ、天然ウランを濃縮した低濃縮ウランとプルトニウムを混ぜたものと考えれば良いでしょう。
ところで、プルトニウムはどこから得られるのでしょうか?プルトニウムは自然界には存在しない物質です(「ウラン鉱石の中にごく僅かに存在する」という説もあります)。実は、プルトニウムは、ウラン燃料を用いた原子炉の中でしか作ることのできない人工物質・人工原子なのです。燃料棒の中で核分裂連鎖反応を起こしているのはウラン235。その周りは比較的安定しているウラン238です。このウラン238が核分裂連鎖反応で余った中性子を吸収してプルトニウム239になるのです。

ということは、ウラン燃料を用いた原子炉の使用済み核燃料(使用済み燃料棒)の中にもプルトニウムが含まれているのです。

*「プルトニウムは大丈夫か」は、ちょっと長くなりそうなので、いくつかに分けてアップします。








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