海の生態系の汚染が本格化してしまった2011/10/16 12:10

やっと福島沖のプランクトンの調査結果が発表されました。
『プランクトンから高濃度セシウム【NHK】

沿岸3kmの海域で669ベクレル/kg。高い数値です。
報道では、「スズキなどの大型魚」への影響を懸念していますが、プランクトンは多くの魚の栄養源。例えば、動物プランクトンの代表格=オキアミは、「海洋生態系のエンジンを動かす燃料」とまで言われています。心配なのは、スズキだけではありません。今まさに、南下の旅真っ盛りのサンマは、オキアミを追っているのです。

外殻を持つプランクトンは動物性、植物性を問わず、セシウム以上にストロンチウム90を溜め込みます。プランクトンの殻は、その大部分が炭酸カルシウム。殻を維持するためには、たくさんのカルシウムが必要なのです。ストロンチウム90はカルシウムと化学的な性質が似ているため、カルシウムと勘違いして取り込み、そして溜め込んでしまいます。

下の図は、河川の例。ストロンチウム90などの放射性物質は、食物連鎖の上位に行くほど濃縮されます。これは、生体が栄養素を濃縮する生体濃縮という機能を持っているからです。放射性物質は、命を維持するための機能を逆手に取ってくるのです。


今回のプランクトンの件は、放射性物質による海洋生態系の汚染が、少なくとも3ヶ月ほど前には本格的に始まっていたことを意味しています。それは食物連鎖によって、すでに私たちの食生活を脅かしています。ストロンチウム90をカルシウムと勘違いして溜め込むのは、プランクトンだけでなく、すべての生体に共通。人間もまた例外ではありません。

一方で、プランクトンの調査を徹底して行えば、海域ごとの汚染度が分かり、魚を獲ってよい場所と獲ってはいけない場所を、ある程度明確にすることができます。先回りして対策を立てることが可能になるのです。

とにかく、食の安全と漁業者の暮らしを守るために、プランクトンの調査を早急に、大規模に行う必要があります。もちろん、ストロンチウム90を調べなければ意味はありません。また、今回のように7月の調査結果が、今頃になって出てくるようでは、話になりません。速やかにすべてのデータを公開することも大切になります。

●参考:過去にこの問題を扱った当ブログの記事
『オキアミを見れば海がわかる』(4/18)
『海からストロンチウム』(5/10)
『恐怖のストロンチウム90』(6/12)


オキアミを見れば海がわかる2011/04/18 17:07

オキアミと言えば、釣りのまき餌か佃煮の素材。いや、ヒゲ鯨の主食なんてことをご存じ方もいるかも…

まぁ、小さなエビのような形をしたプランクトンです。ただ、海の生態系の中で果たしている役割は大きく、自分よりも小さい植物プランクトンや動物プランクトンを食べて、みずからは多くの魚の餌になります。

オキアミにはエビと同じような殻があります。殻はカルシウムたっぷり、身にはタンパク質。鯨だけでなく、多くの魚もオキアミを主要な栄養源としています。

さて、福島沖、茨城沖は、オキアミが多い好漁場と言われてきました。暖流と寒流がぶつかり合う海域だからです。秋、秋刀魚が三陸沖から銚子沖へと下るのは、オキアミを追ってのことです。

もし、オキアミが大量に生息する水域で、核分裂生成物のストロンチウム90による汚染が進んだらどうなるでしょうか?このブログで何度か書いてきましたが、ストロンチウム90はカルシウムと似た性質を持っています。生体は、ストロンチウム90とカルシウムの見わけができないので、骨のないオキアミではストロンチウム90が殻に集中的に蓄積することになります。オキアミはせっせと殻にストロンチウム90をため込み、その濃度を上げていきます(生体濃縮)。さらにオキアミを餌とする魚の体内に入り、ここでも濃縮されていきます。
最後は食物連鎖の頂点にいる私たち人間です。この頃には、ストロンチウム90の濃度はオキアミがそれを体内に取り込んだ海とは比べものにならないものになってます。ストロンチム90は、私たちの骨に溜まり、骨髄にある造血細胞に至近距離から放射線(ベータ線)を照射。白血病を引き起こします。

一説ですが、地球上に生きる人類の全体重とオキアミの全体重を比べると、オキアミの方が重いという研究もあります。オキアミは「海洋生態系のエンジンを動かす燃料」とも言われています。ちょっと気取った比喩で分かり難いかも知れませんが、オキアミがいなかったら地球の海の生態系は成立しないということ。それくらい海にとって、そして地球にとって重要な生物なのです。

ストロンチウム90などの核分裂生成物によってオキアミの汚染が進めば、深刻な事態になることは自明です。一方、オキアミは、ほぼ自走能力を持たず、潮の流れの中で漂っている生物です。…ということは、オキアミの汚染度を詳細な海域別に掌握できれば、しばらくの間、魚を獲っても良い海域と、絶対に魚を獲ってはいけない海域が特定できる可能性もあります。

福島・茨城の漁業者のために、そして私たちの健康のために、オキアミの核分裂生成物濃度(特にストロンチウム90)を綿密に、そして継続的に調査する必要があるでしょう。

追記:
この記事を書いている4/18時点で、Googleで「オキアミ 放射線」「オキアミ ストロンチウム」で検索をかけても、有用と思える情報を掲載しているサイトは見つかりません。

人類史上最悪の海洋汚染:補完版2011/04/03 17:37

「人類史上最悪の海洋汚染1・2」に、やや不十分な部分があったので補完します。

昨日の朝日新聞のサイトに興味深い記事が上がりました。
「英の放射能海洋汚染半世紀」
イングランド北西部にあるセラフィールドにある核燃料再処理工場が、1960年代から70年代にかけて、過去最悪の放射性物質による海洋汚染を起こしていたという話です。

セラフィールドは、もともとはウィンズケール原子力研究所としてスタートし、1957年10月10日には、世界初の原子炉重大事故と言われるウィンズケール火災事故を起こしています。数十人が白血病で死亡し、今も、白血病の発生率は全国平均の3倍だそうです(当ブログで再三指摘してきたストロンチウム90が関わった可能性が大)。

セラフィールドには、原子炉と核燃料再処理工場が併設されていたのです。そして、過去最悪の放射性物質による海洋汚染が起きました。事実関係や数字は朝日の記事をご一読ください。 一方、今、福島第1原発で起きている海洋汚染は、セラフィールド以上になる可能性が十分にあります。当事国のイギリスは情報を出したがらないでしょうから、対岸のアイルランドで得られたデータなどを解析して、少しでも対策の参考にすべきでしょう。まずは流出を止めることが先決ですが。

もう一点だけ、この件は、試験運転をしている六ヶ所村の再処理工場の今後にも、大きく関わる問題です。

人類史上最悪の海洋汚染(2)2011/04/01 14:22

では、核分裂生成物(放射性物質)の種類別に、この海洋汚染で危惧される内容を見ていきましょう。

●ヨウ素131
多くの方が、もう暗記してしまったと思いますが、ヨウ素131の半減期は8日と比較的短いものです。今現在、かなりの濃度のヨウ素131が漏出していますが、海水で拡散されるとともに、ヨウ素131は、ベータ線を出しながら、どんどんキセノン131に変わっていきます(さらに、そのキセノン131がガンマ線を出します)。「プランクトン→小魚→大きな魚」といった食物連鎖の環に入り込む前に、ヨウ素131は、ほとんどゼロになってしまうでしょう。
しかし、「半減期=8日」で安心してはいけません。ヨウ素131は、人間の体内に入ると甲状腺に集まり、甲状腺癌を引き起こします。同じように、海藻や魚介類に悪影響を与える可能性があります。特に、ヨウ素を大量に吸収し生体濃縮する海草類は心配です。

●セシウム137
セシウム137の半減期は約30年。1年や2年では、ほとんど減りません。生物は、セシウム137をカリウムと間違えて体内に取り込み、生体濃縮します。
農業はもちろん、園芸をやっている方なら、植物の三大栄養素=「窒素・リン酸・カリ」というのをご存じでしょう。カリとはカリウムのこと。植物だけでなく、動物にとっても必須です。

例えば、カリウムを欲しがる海藻や植物プランクトンがセシウム137を取り込み生体濃縮。それを食べた小魚の体内でさらに濃縮。さらに大きな魚を経て人間へ。生体濃縮と食物連鎖が掛け算のように相互作用しあって、私たちの身体の中に、ある程度の濃度でセシウム137が入ってくる恐れがあります。
カリウムの代わり取り込まれたセシウム137は、放射線(ベータ線)を出しながら血液に乗って身体の中を巡ります。特に肝臓や腸に影響を与える可能性があるとされています。

●ストロンチウム90
核分裂生成物の代表格でありながら、今回、まったくデータが発表されていないのがストロンチウム90(半減期=約30年)。情報が隠されている理由は不明ですが、ここではそのことには触れず、先に進みます。

生体は、ストロンチウム90をカルシウムと間違えて体内に取り込み、生体濃縮します。
日本では、「カルシウムを摂るなら牛乳か小魚」と言われてきました。海の中では、小魚がカルシウムと勘違いしてストロンチウム90を生体濃縮。私たちは、その小魚を食べることもあるし、食物連鎖のもっと上位にいる大きめの魚から、より濃縮されたストロンチウム90を摂取する可能性もあります。

人間の体もまた、ストロンチウム90をカルシウムと同じように扱いますから、ストロンチウム90は骨に集まります。骨の中にある骨髄には造血幹細胞が。造血幹細胞は、盛んに分裂し、赤血球や白血球、血小板などに分化しています。ストロンチウム90は、骨髄の中にある造血幹細胞にピンポイントで狙いを定め、放射線(ベータ線)を照射し続けると考えればよいでしょう。これが、ストロンチウム90が白血病を引き起こすメカニズムです。
------------------------------
海の中での放射性物質の生体濃縮と食物連鎖の影響。過去のデータはほとんどありません。それは、福島第1原発の事故が前代未聞、人類史に残る大事故だからです。とにかく今は、放射性物質の漏出を止めること。そして、海洋汚染の進行をつぶさに観測しながら、可能な対策を実行する。残念ながら、これしかありません。そして、「不幸中の幸い」を少しずつ積み重ねていくことでしょう。

人類史上最悪の海洋汚染(1)2011/04/01 13:51

3月30日に1~4号機の放水口で採取した水から基準値の4385倍のヨウ素131を検出。福島第1原発による海洋汚染が進んでいます。

思い出してみましょう。かつて、これほど大量の放射性物質が海に流れ出したことがあったでしょうか?今回の事態は、間違いなく「人類史上最悪の海洋汚染」です。
海洋汚染と言えば、昨年の4月20日に起きたメキシコ湾の石油掘削施設が爆発し、約78万キロリットル(490万バレル)の原油が流れ出した大事故を思い出します。メキシコ湾の自然環境を大きく傷つけました。しかし、語弊を恐れずに言うなら、原油流出事故は、油を取り除いてある程度の時間が経てば、おおむね元に戻ります。
一方、放射性物質はどうでしょう?なんともやっかいなのは、取り除く術がないということです。福島では完全に崩れ去ってしまいましたが、原発事故対応の基本は「止める。冷やす。閉じ込める」です。なぜ、「閉じ込める」なのかというと、大気中や海に漏れ出してしまった放射性物質は、自然に減っていくのを待つしかないからです。一般の毒物のように、中和させたり、無毒化したりすることは不可能なのです。
海に流れ込めば薄まっていくのは確かです。しかし、忘れてはいけないのは、生物は特定の物質(原子)を濃縮する生体濃縮という能力を持っています。それは、見方を変えれば栄養を体内に貯めていく行為。生物が生物であり続けるための機能です。悲しいかな、放射性物質はこの生物としての基本的な機能の逆手を取ってきます。

今回の事故は、人類が直面する初めてのタイプの事故(放射性物質による大規模な海洋汚染)なので、放射性物質の海での拡散の仕方や、魚介類の生体濃縮に関するデータは、ほとんどありません(多少参考になるとしたら、イギリスのセラフィールド再処理工場の一件か)。
東電も保安院も、無責任に「海に流れこめば薄まるから大丈夫」と言っていますが、その裏付けはありません。
(続く)

気がかりな農業・畜産業・漁業/福島浜通2011/03/29 06:12

福島第1原発の20㎞圏内に、「避難したら乳牛が死んでしまうから」と残り続けている畜産農家があるそうです。涙が出てきます。「オレたちは、何も悪いことをしていないのに」。あまりにも当然の言葉です。
畑に収穫寸前のキャベツを残してきた農家や、津波でやられた漁港に破損した漁船を残してきた漁師。彼らの無念はどれほどなのか、計り知ることすらできません。
今朝は、24日にキャベツ農家の男性が自殺をしていたという悲しいニュースが入ってきました。「東電と政府から補償金をもらえるのに、なぜ?」と思われる方がいるかも知れませんが、わが子同然に育ててきた作物や牛を失うことは、お金であがなえるものではないのです。しかし、死ぬのだけはやめてください。何も生みませんから。

今後、福島第1原発の周辺には立ち入り禁止区域が設けられ、一部の農家・酪農家・漁師は立ち退きになるのでしょう。補償も俎上に上がってきます。その時に、東電と国に求めたいのは、絶対に金銭だけの補償にしないということです。代替農地、代替牧場、代替漁港という物理的な補償を考えるべきです。勝手な言い分かも知れませんが、住民の皆さんも、絶対に農業や漁業を棄てないでください。仮に新しい農地を得たとしても、耕し慣れた畑と違って苦労の連続になることは分かっているつもりです。それでも、頑張って欲しい。そうしなければ、福島浜通の農業・漁業は消えてしまいます。

今もまだ、原発からの核分裂生成物(放射性物質)の漏出が止まりません。つい先ほどは、本サイトで再三危惧していたプルトニウムが原発附近の土壌から検出されたというテレビのニュースもありました(数日前には検出されていたようです)。よい方向に向かっているというニュースは、まだ一本も入ってきません。









Google
WWW を検索 私設原子力情報室 を検索