放送禁止歌2011/04/16 10:06

今日4月16日の「毎日新聞」朝刊11面に興味深い記事が載りました。ブロード・キャスターのピーター・バラカンが語る「風評被害を広げているのは誰か」(View Point欄)です。

本ブログでも紹介した、忌野清志郎(RCサクセション)の「ラブ・ミー・テンダー」と「サマー・タイム・ブルース」を巡る話。反原発のメッセージを明確に織り込んだこの二曲は、RCサクセションが所属した東芝EMIの親会社が原発メーカーの東芝だった関係で、発表当時の1988年にいわゆる放送禁止歌になった経緯があります。ただ、日本には特定の歌を禁止する法律はなく、メディアによる自主規制です。

3月11日以降、ピーターのFM番組に、「ラブ・ミー・テンダー」と「サマー・タイム・ブルース」のリクエストが集中しました。しかし、ここで番組責任者は「ラブ・ミー・テンダー」の放送に後ろ向き。「放射能はいらねえ、牛乳を飲みてえ」という一節が風評被害を広げかねないという理由だったそうです。発表から23年を経て、ふたたびメディアによって実行された自主規制=「放送禁止歌」措置。番組では、「サマー・タイム・ブルース」は放送され、「ラブ・ミー・テンダー」は抑え込まれたようです。

ピーターは言います。「ジャーナリズムの役割は権力を牽制することだ」「日本人が風評という言葉の前で思考停止に陥る危険性もある」。
振り返ってみましょう。私たち日本人が被った最大の風評被害とはなんだったのか?間違いなく太平洋戦争時の大本営発表でしょう。国の発表そのものがでっち上げ、巨大な風評だったという恐ろしい歴史です。
今回の福島第1原発の事故に関しても、「ただちに健康被害を及ぼす量ではない」とか、どうも国家が発する風評が目立ちます。70年近く前とは言え、官製の風評に大きな被害を被った日本人は、もっと懐疑的であってよいし、もっと心配性であってよいと思います。

もう一つ、ピーターの発言で印象に残ったのは、「農家や漁業者らは怒りの矛先を消費者ではなく、原子力政策を推進してきた国や電力会社、強いていえば、有権者自身にも向けるべきだと思う」。
この言葉の裏を返せば、国や電力会社が進める原子力政策をなすがままに許してきた日本の有権者は反省すべきだと言っているのでしょう。ピーターの母国・イギリスも原子力発電を積極的に進めています。この発言は、ピーター自身に向けた叱咤激励の言葉でもあるとするのは、私の考えすぎでしょうか?

東電と国が引き起こした大事故に対して、私たちが自主規制する必要などまったくありません。メディアも、権力を監視するという本来の役割を取り戻すべきです。
そして、私たちは怒りを向ける矛先を、もう一度、明確にすべき時期に来ているのではないかと感じています。清志郎の「ラブ・ミー・テンダー」を口ずさみながら…

コメント

_ photo ― 2011/04/16 11:49

FMラジオにかって放送禁止歌とされた忌野清志郎の「ラブ・ミー・テンダー」リクエストが殺到したという話は知りませんでした。マスコミの自主規制は怖いです。政・官・財にマスコミまで仲間だったら国民は目も耳もふさがれた状態です。放送禁止歌のタイトルを見てフォークグループ赤い鳥の「竹田の子守唄」を思い出しました。

_ パンドラ ― 2011/04/16 20:01

毎日新聞の記事、私も読みました。4月14日夕刊の内田樹さんのコメント「危機最小化の発想を」も胸に響きましたので引用します。
「・・・・・戦争中の『皇軍不敗』と同じです。『何があっても原発事故は起こらない』という主観的願望が、いつの間にか客観的な情勢判断に取ってかわった。・・・・・」
 自分自身、主観的願望で間違った判断をしないよう。ブレない「私」を確立する努力をしよう。子どもたちにメディアリテラシーを。CMいっぱい流している会社に用心を。

_ 塩爺 ― 2011/04/16 21:03

ttp://news.nifty.com/cs/entame/showbizddetail/jcast-93008/1.htm
民衆の力はマスコミ自主規制より強し!
(今はネットもあるし。でもそのネットも規制?本ブログで爺はコメント済み)
団塊世代&前後のウッドスットク、新宿西口広場、つま恋等々のムーブメントと異なるパワーを4.10高円寺デモで感じています。
昔:戦争→貧困・野蛮→反戦→豊さ / 今:豊さ→貧困・野蛮→反原発→??
高円寺デモのラッパー、チンドン屋さん、Jazz屋さん、ハードロッカー等々の感性を爺は支持します。
この若者のパワーを潰す、化け物ヘゲモニー(党派主義)の登場だけが怖いです。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/04/16 22:27

>パンドラさん
別な記事に塩爺さんから頂いたコメントの中に、原発推進派学者たちの懺悔の言葉がありました。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jcast-93099/1.htm
今や、「御用学者め!」と罵られている彼らでさえ、現時点で、政府や東電よりも深刻な危機意識を持っています。格納容器の破壊にまで言及しているのには、ちょっと驚きました。仰る通り願望では事実は推移しません。もっともっと厳しく現実を見つめていかなくてはと思い直しています。

_ パンドラ ― 2011/04/16 22:31

塩爺さま
高円寺のデモの話、地元中学生の間で話題になっています。学生紛争以降、「堅い話は抜きにして」という雰囲気が主流になっていましたが、本質的な話をできる変化に期待しています。若者パワーを潰させないぞ!

_ 塩爺 ― 2011/04/16 23:16

http://www.asahi.com/national/update/0415/TKY201104150187.html
パンドラ様&本ブログ主催者殿
少しずつでも変化が始まれば本望です。 
高円寺デモが地元中学生の間で話題になったとの情報をお聞きし心が少し和らぎました。
P.S
先にコメント投稿した‘民衆の力はマスコミ自主規制より強し!‘の添付URLが間違っていたので再掲載します。
http://news.nifty.com/cs/entame/showbizddetail/jcast-93008/1.htm

_ パンドラ ― 2011/04/17 23:31

 専門家も白旗をあげはじめた今、何をなすべきか。昨夜4月16日(土)21:00~10:15 NHK総合で放送の番組「マイケル・サンデル『究極の選択』」を見ながら、日米中の若者たちの討論が家族で話題になりました。http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20110416-21-34193

 今まで「思考停止モード」で原子力発電問題に「生理的に嫌だけど、とりあえず蓋」をし続けてきた自分。震災のテレビ報道に疲れ、休んでいた自分に、天国の忌野さんから「喝」が飛んできたと感じます。
 本サイトの主筆の方、塩爺さん、みなさん、時間とともに世間が「思考停止モード」に戻らないように、「喝」とばしてください。最新情報を提供し続けてください。「変化」を感じられることは救いですから。このサイトで展開されている授業は自分の目を覚ます貴重な情報源です。ありがとうございます。

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