超ウラン元素 ― 2011/06/05 17:11
核分裂生成物とは別に、使用中の燃料棒の中で作られるのが「超ウラン元素」です。
実は、原子番号92のウランは自然界でもっとも重い元素で、原子番号93以降の原子は「存在しうるが、自然界には存在しない」というもの。これらを超ウラン元素と呼んでいます。
超ウラン元素は、総じて寿命が短く、短時間の間に崩壊して、別な元素(物質)に変わってしまいます。超ウラン元素の代表格とも言えるプルトニウム239の半減期は2万4千年。2万年以上と聞くと長く感じるかも知れませんが、46億年という地球の歴史から見れば一瞬に過ぎません。仮に地球誕生時に、ある程度の量のプルトニウム239があったとしても、それはもうどこにも残っていません。
しかし、私たち人間、いや、生物の一生から考えれば2万4千年は、とてつもなく長い時間です。「放射線(アルファ線)を出し続けるプルトニウム239は、2万4千年経っても、半分にしか減らない」。そう考えれば、絶対に作り出してはいけない物質だということがお分かりいただけると思います。
さて、超ウラン元素は、加速器や原子炉でしか作ることができません。多くの場合は、既存の原子に中性子を吸収させて作るものだからです。
世界には、理論的には存在可能でも、実際に存在が確認されていない元素を作ろうと、しのぎを削る実験物理学者たちがいます。最近も原子番号114のウンウンクアジウムの生成が話題になりました。
話を原発に戻しましょう。
燃料棒の中にできる超ウラン元素は、
ネプツニウム237(半減期=214万年)
プルトニウム238(半減期=88万年)
プルトニウム239(半減期=2万4千年)
アメリシウム-241(半減期=433年)
などです(他にキュリウムなど)。
プルトニウム239の場合は、連鎖的核分裂反応で余った中性子をウラン238が吸収して生成されます。他の超ウラン元素では、ウランやプルトニウムが元になって、アルファ崩壊やベータ崩壊を繰り返す複雑な過程で生成されます。詳しくは原子力資料情報室のサイトへどうぞ。
いずれの超ウラン元素もアルファ線やベータ線を出して崩壊し、別な物質へと変わっていきます(超ウラン元素が崩壊して、別の超ウラン元素になる場合もあります)。
アルファ線とは、ヘリウムの原子核(陽子2個+中性子2個)のことで、透過力は弱いですが、エネルギーは大きく、DNAを傷つける電離作用の強さは、ガンマ線の20倍。万一、超ウラン元素を体内に取り込んでしまうと、アルファ線によって、深刻な体内被曝を受ける可能性があります。理由は、電離作用の強いことがひとつ。もう一点は、遠くまで影響が及ばない分、至近距離にあるたくさんの細胞を確実に壊してしまうからです。
福島第1の事故では、これまでにニュースになっただけで、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムの漏出が確認されています。
政府は「直ちに健康に影響が出るレベルではない」を繰り返していますが、核分裂生成物と併せて、超ウラン元素の危険性を認識し、その監視を強める必要があります。
実は、原子番号92のウランは自然界でもっとも重い元素で、原子番号93以降の原子は「存在しうるが、自然界には存在しない」というもの。これらを超ウラン元素と呼んでいます。
超ウラン元素は、総じて寿命が短く、短時間の間に崩壊して、別な元素(物質)に変わってしまいます。超ウラン元素の代表格とも言えるプルトニウム239の半減期は2万4千年。2万年以上と聞くと長く感じるかも知れませんが、46億年という地球の歴史から見れば一瞬に過ぎません。仮に地球誕生時に、ある程度の量のプルトニウム239があったとしても、それはもうどこにも残っていません。
しかし、私たち人間、いや、生物の一生から考えれば2万4千年は、とてつもなく長い時間です。「放射線(アルファ線)を出し続けるプルトニウム239は、2万4千年経っても、半分にしか減らない」。そう考えれば、絶対に作り出してはいけない物質だということがお分かりいただけると思います。
さて、超ウラン元素は、加速器や原子炉でしか作ることができません。多くの場合は、既存の原子に中性子を吸収させて作るものだからです。
世界には、理論的には存在可能でも、実際に存在が確認されていない元素を作ろうと、しのぎを削る実験物理学者たちがいます。最近も原子番号114のウンウンクアジウムの生成が話題になりました。
話を原発に戻しましょう。
燃料棒の中にできる超ウラン元素は、
ネプツニウム237(半減期=214万年)
プルトニウム238(半減期=88万年)
プルトニウム239(半減期=2万4千年)
アメリシウム-241(半減期=433年)
などです(他にキュリウムなど)。
プルトニウム239の場合は、連鎖的核分裂反応で余った中性子をウラン238が吸収して生成されます。他の超ウラン元素では、ウランやプルトニウムが元になって、アルファ崩壊やベータ崩壊を繰り返す複雑な過程で生成されます。詳しくは原子力資料情報室のサイトへどうぞ。
いずれの超ウラン元素もアルファ線やベータ線を出して崩壊し、別な物質へと変わっていきます(超ウラン元素が崩壊して、別の超ウラン元素になる場合もあります)。
アルファ線とは、ヘリウムの原子核(陽子2個+中性子2個)のことで、透過力は弱いですが、エネルギーは大きく、DNAを傷つける電離作用の強さは、ガンマ線の20倍。万一、超ウラン元素を体内に取り込んでしまうと、アルファ線によって、深刻な体内被曝を受ける可能性があります。理由は、電離作用の強いことがひとつ。もう一点は、遠くまで影響が及ばない分、至近距離にあるたくさんの細胞を確実に壊してしまうからです。
福島第1の事故では、これまでにニュースになっただけで、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムの漏出が確認されています。
政府は「直ちに健康に影響が出るレベルではない」を繰り返していますが、核分裂生成物と併せて、超ウラン元素の危険性を認識し、その監視を強める必要があります。
コメント
_ (未記入) ― 2011/07/11 01:12
_ 私設原子力情報室 ― 2011/07/11 09:55
ご質問いただきありがとうございます。かいつまんで回答させていただきます。
①②まとめてですが、「原子力とは、原子核分裂の際に失われる質量に比例するエネルギーを主に熱エネルギーに変換するシステム」と言えるでしょう(核融合は除く)。原爆でも原発でも同じです。「主に」と書いたのは、他に一部、光エネルギーなどにも変換されるからです。
現状で、核分裂を起こす物質は、ウラン235とプルトニウム239だけです。この二つは、「原子核をまとめようとする引力」と「バラバラにしようとする斥力」が微妙に釣り合っています(ほんの少しだけ引力が勝っている)。だから中性子を1個ぶつけただけで、引力と斥力のバランスが失われて二つに割れてしまうのです。割れる際にわずかに質量が失われ、それがE=mc2に従ってエネルギーとして放出されます。
分裂する前のウラン235やプルトニウム239が持っている放射線を出す能力(放射能)と、それが分裂した後の2つの元素が持つ放射能は等価ではありません。それは、核分裂のエネルギーの一部が、割れたあとの元素の「不安定さ」に変換されているからです。この「不安定さ」こそが、放射線を出す源になります。
見方を変えれば、核分裂生成物(放射性物質)が出す放射線のエネルギーは、核分裂エネルギーのうちの一部が、割れた元素の「不安定さ」として原子核内に蓄えられたものとも言えます。
不安定な元素=放射性物質は、安定した元素よりもエネルギー状態が高くなっています。そのエネルギー状態が下がっていく過程が「崩壊」です。
ガンマ崩壊では、核分裂時に割れた元素の中に残されたエネルギーが、電磁波として放出されます。
ベータ崩壊やアルファ崩壊では、電子やヘリウム原子核といった質量を持った粒子が飛び出すことで、「不安定な元素」が安定した状態へと向かうのです。
原子力発電では、基本的に核分裂反応によって生じる熱エネルギーを使っています。運転を続けると燃料棒内に核分裂生成物が増え、それらが崩壊する際に出る放射線が、周りの物質に当たって発熱する崩壊熱も一部利用されるようになります。ただ、崩壊熱だけで原子炉を運転することはできませんので、ウラン235の濃度が下がるまでの約3年間が燃料棒の寿命となります。
また、ご理解いただけてると思いますが、原子力発電は、熱源に核燃料を使っているだけで、基本的な構造は火力発電とまったく同じです。石油や天然ガスの代わりにウランを燃やしているということです。危険性の話は別ですが。
①②まとめてですが、「原子力とは、原子核分裂の際に失われる質量に比例するエネルギーを主に熱エネルギーに変換するシステム」と言えるでしょう(核融合は除く)。原爆でも原発でも同じです。「主に」と書いたのは、他に一部、光エネルギーなどにも変換されるからです。
現状で、核分裂を起こす物質は、ウラン235とプルトニウム239だけです。この二つは、「原子核をまとめようとする引力」と「バラバラにしようとする斥力」が微妙に釣り合っています(ほんの少しだけ引力が勝っている)。だから中性子を1個ぶつけただけで、引力と斥力のバランスが失われて二つに割れてしまうのです。割れる際にわずかに質量が失われ、それがE=mc2に従ってエネルギーとして放出されます。
分裂する前のウラン235やプルトニウム239が持っている放射線を出す能力(放射能)と、それが分裂した後の2つの元素が持つ放射能は等価ではありません。それは、核分裂のエネルギーの一部が、割れたあとの元素の「不安定さ」に変換されているからです。この「不安定さ」こそが、放射線を出す源になります。
見方を変えれば、核分裂生成物(放射性物質)が出す放射線のエネルギーは、核分裂エネルギーのうちの一部が、割れた元素の「不安定さ」として原子核内に蓄えられたものとも言えます。
不安定な元素=放射性物質は、安定した元素よりもエネルギー状態が高くなっています。そのエネルギー状態が下がっていく過程が「崩壊」です。
ガンマ崩壊では、核分裂時に割れた元素の中に残されたエネルギーが、電磁波として放出されます。
ベータ崩壊やアルファ崩壊では、電子やヘリウム原子核といった質量を持った粒子が飛び出すことで、「不安定な元素」が安定した状態へと向かうのです。
原子力発電では、基本的に核分裂反応によって生じる熱エネルギーを使っています。運転を続けると燃料棒内に核分裂生成物が増え、それらが崩壊する際に出る放射線が、周りの物質に当たって発熱する崩壊熱も一部利用されるようになります。ただ、崩壊熱だけで原子炉を運転することはできませんので、ウラン235の濃度が下がるまでの約3年間が燃料棒の寿命となります。
また、ご理解いただけてると思いますが、原子力発電は、熱源に核燃料を使っているだけで、基本的な構造は火力発電とまったく同じです。石油や天然ガスの代わりにウランを燃やしているということです。危険性の話は別ですが。
_ (未記入) ― 2011/07/12 00:49
ありがとうございます。
不安定化するということは半減期の短い物質に変わるという事ですよね。
放射性廃棄物が問題視される理由は、放射性物質が全て崩壊するまでに出す放射線総量の事より、人類が影響を受ける時間のオーダーに半減期が短くなる(単位時間当たりの放射線量が増える)事にあると理解していいですか。
不安定化するということは半減期の短い物質に変わるという事ですよね。
放射性廃棄物が問題視される理由は、放射性物質が全て崩壊するまでに出す放射線総量の事より、人類が影響を受ける時間のオーダーに半減期が短くなる(単位時間当たりの放射線量が増える)事にあると理解していいですか。
_ 私設原子力情報室 ― 2011/07/12 09:39
<半減期の短い放射性物質は、より「不安定」である。>と考えてよいと思います。ただ、逆は真ではなく、元素は「不安定」になったとき、半減期の短い放射性物質になったり、半減期の長い放射性物質になったり様々です。内包する余分なエネルギーは、放出する総放射線量に比例しそうな気もしますが、アルファ崩壊・ベータ崩壊・ガンマ崩壊の違いがあるので、一概に論ずることはできません。
また、「半減期の短い放射性物質がより危険である」とはなりません。
同じ物質であれば、半減期が短くなると単位時間あたりの放射線量は増えます。しかし、ある放射性物質の半減期は決まっていますので、設問自体が無意味になってしまいます。
放射性物質の危険性を論じるには、半減期の他に、その物質が単位重量あたりで持っている放射能の強さや、どんな濃度で存在するかも考え合わせる必要があります。また、内部被ばくを考えるなら、体内のどの器官にどの程度集中的に蓄積するのかも考慮しなくてはなりません。
また、「半減期の短い放射性物質がより危険である」とはなりません。
同じ物質であれば、半減期が短くなると単位時間あたりの放射線量は増えます。しかし、ある放射性物質の半減期は決まっていますので、設問自体が無意味になってしまいます。
放射性物質の危険性を論じるには、半減期の他に、その物質が単位重量あたりで持っている放射能の強さや、どんな濃度で存在するかも考え合わせる必要があります。また、内部被ばくを考えるなら、体内のどの器官にどの程度集中的に蓄積するのかも考慮しなくてはなりません。
_ (未記入) ― 2011/07/14 01:23
ありがとうございます。
確かに崩壊等色んな条件が違いますし、一概には言えませんね。
元々質問に書いた疑問は、石油等は燃やすと熱エネルギーを出して、CO2やH2O等の安定な物質が残る。なぜ、原子力も熱エネルギーを得つつ、放射線を出さない安定な燃えカスを出せ無いのか?という疑問でした。
現存の原発は、そう上手くいかないようですね。
確かに崩壊等色んな条件が違いますし、一概には言えませんね。
元々質問に書いた疑問は、石油等は燃やすと熱エネルギーを出して、CO2やH2O等の安定な物質が残る。なぜ、原子力も熱エネルギーを得つつ、放射線を出さない安定な燃えカスを出せ無いのか?という疑問でした。
現存の原発は、そう上手くいかないようですね。
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①原子力は放射性物質から熱エネルギーと放射線(エネルギー)を出す装置。
②核反応は質量をE=mc2にしたがってエネルギーに変換する反応。
だと思うのですが。
質量エネルギー=熱エネルギー+放射線エネルギーなら、原子力発電を利用後、放射性物質が出す放射線総量は変わらない。
質量エネルギーが大きいと、利用後放射線総量が増える。
質量エネルギーが小さいと、利用後放射線総量が減る。
この理解で正しいでしょうか?
もし正しいとしたら、現実の原理力発電はどの式に当てはまるのでしょうか?