原発と夢とお金、そして文明国とは… ― 2011/06/18 01:12
昨日(6/17)の毎日新聞にちょっと看過できない論説記事が載りました。
「原発と夢とお金」と題され、福本容子論説委員は、原発が止まった場合の電力料金の上乗せ分の話をメインに、「お金がかかるから、無闇に原発を止めるのはやめよう」的なことを言っています。最後には、「なし崩しの脱原発は文明国らしくない」とまで。
逆でしょう。「なし崩しの原発推進こそ、文明国が選ぶべき道ではなかった」と。
脱原発にかかるコストは、基本的に、電力会社の資産売却であがなうべきです(原子力で稼いだ分を全部吐き出してもらいます)。私たちにも、原発を容認してきた責任がありますから、若干の負担は覚悟はしますが。
そして、論説委員が触れた地元の就労問題。当面は、廃炉のための労働力が必要になります。それと並行して、「原発銀座」を「自然エネルギーの基地」にしていく取り組みを進めれば解決するはずです。原発ができたせいで、やむなく農業や漁業を棄てた人もいたでしょう。この人たちが、ちゃんと農業・漁業を営めるようにサポートすることも重要です。
あまりに浅薄な論説記事に、開いた口が塞がりませんでした。
「原発と夢とお金」と題され、福本容子論説委員は、原発が止まった場合の電力料金の上乗せ分の話をメインに、「お金がかかるから、無闇に原発を止めるのはやめよう」的なことを言っています。最後には、「なし崩しの脱原発は文明国らしくない」とまで。
逆でしょう。「なし崩しの原発推進こそ、文明国が選ぶべき道ではなかった」と。
脱原発にかかるコストは、基本的に、電力会社の資産売却であがなうべきです(原子力で稼いだ分を全部吐き出してもらいます)。私たちにも、原発を容認してきた責任がありますから、若干の負担は覚悟はしますが。
そして、論説委員が触れた地元の就労問題。当面は、廃炉のための労働力が必要になります。それと並行して、「原発銀座」を「自然エネルギーの基地」にしていく取り組みを進めれば解決するはずです。原発ができたせいで、やむなく農業や漁業を棄てた人もいたでしょう。この人たちが、ちゃんと農業・漁業を営めるようにサポートすることも重要です。
あまりに浅薄な論説記事に、開いた口が塞がりませんでした。
原発から脱却して、本来の文化と文明を取り戻しましょう!
コメント
_ tossini ― 2011/06/18 16:10
_ 山根 光三郎 ― 2011/06/18 16:32
署名されてはいても「論点を本筋から逸脱させ、自分に都合の悪い議論が進展しないようにする」この手のコラムは、経済欄などで時々見ますね。私は都内で本当に小さな工場を営んでいます。現場では有機溶剤も扱いますので、従業員には通常の健康診断にプラスして、労基署から提案された検査項目を加えています。使用済みの廃材や設備は分類した上で、指定業者に引き取ってもらいますが、その際には東京都が発行する有料のマニュアルを使って届け出をします。排気、騒音など近隣の環境に気を配るのも重要です。さて、労働者の被爆を避けることができず、廃棄物の処理方法も見出せないまま、長期的で広域におよぶ環境汚染を発生させる事業所が、産業や国民生活にとって必要だ、などと言ってのさばっている国の、どこをとって文明的国らしいなどという評価ができるのでしょう。
フェイスブックが注目を集めたエジプトの民衆革命のさなか、国営放送局が国民に向かい「これまでウソばかり放送してきてゴメンナサイ」と謝罪放送をしました。3.11以降の日本のマスメディア状況は、この謝罪以前のエジプト国営放送レベルに等しいか、さらに悪質で巧妙な情報操作が横行していると感じています。自分の頭で考え、仲間と共有し、行動する。(私も新宿に行っていました)その道しるべのひとつとして、こちらの情報室に期待するものは大きく。また楽しみにしています。
フェイスブックが注目を集めたエジプトの民衆革命のさなか、国営放送局が国民に向かい「これまでウソばかり放送してきてゴメンナサイ」と謝罪放送をしました。3.11以降の日本のマスメディア状況は、この謝罪以前のエジプト国営放送レベルに等しいか、さらに悪質で巧妙な情報操作が横行していると感じています。自分の頭で考え、仲間と共有し、行動する。(私も新宿に行っていました)その道しるべのひとつとして、こちらの情報室に期待するものは大きく。また楽しみにしています。
_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/18 20:28
>山根 光三郎さん
熱いコメントありがとうございます。
今日も、「一か月は持つと言われていた汚染水浄化システムが、たった5時間で高濃度汚染物質で満杯になってしまい止めた」という、とんでもないニュースが入ってきました。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110618dde001040027000c.html
情報も、対策も、すべて東電と保安院から引き剥がさないと、今後が見えてきませんよね。
加害者による加害者のための現場検証は、もうたくさんです。
熱いコメントありがとうございます。
今日も、「一か月は持つと言われていた汚染水浄化システムが、たった5時間で高濃度汚染物質で満杯になってしまい止めた」という、とんでもないニュースが入ってきました。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110618dde001040027000c.html
情報も、対策も、すべて東電と保安院から引き剥がさないと、今後が見えてきませんよね。
加害者による加害者のための現場検証は、もうたくさんです。
_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/18 20:36
>tossiniさん
田原さんにはひとこと言いたいです。「私たちは、過去に戻るのではなくて、未来への一歩を踏み出すのだ」と。
費用論については、もっともっと明確にされていくべきだと思います。
電源三法の交付金
ウラン採掘による環境負荷の費用換算
産学協同という名の下に湯水のように使われてきた原発関連の研究開発費
…なぞのお金が、山ほどあります。
そして、放射性廃棄物が、環境に明らかな影響を及ぼさなくなるまで、少なくとも10万年かかると言われます。10万年に渡る管理コストとリスクを誰がどう計算しているのでしょうか?
田原さんにはひとこと言いたいです。「私たちは、過去に戻るのではなくて、未来への一歩を踏み出すのだ」と。
費用論については、もっともっと明確にされていくべきだと思います。
電源三法の交付金
ウラン採掘による環境負荷の費用換算
産学協同という名の下に湯水のように使われてきた原発関連の研究開発費
…なぞのお金が、山ほどあります。
そして、放射性廃棄物が、環境に明らかな影響を及ぼさなくなるまで、少なくとも10万年かかると言われます。10万年に渡る管理コストとリスクを誰がどう計算しているのでしょうか?
_ (未記入) ― 2011/06/18 21:46
私もあの記事を読んであまりのレベルの低さに驚き、生まれてはじめて抗議の電話してしまいました。毎日新聞も解約しようと思っております。この福本容子論説委員というお方、とても村上春樹氏のスピーチをまともに読んだとは思えません。なぜならこの福本さんのような典型的な意見こそ村上氏が、かのスピーチで問題にしていたのですから。それを読み解く力が無いほど低レベルの論説委員を毎日新聞は抱えてるのかと思っていたら、どうやら意図的な誤読、歪曲、矮小化のテクニックだったのですね。悪質です。マスコミにも御用学者のような方がたくさんいらっしゃるのですね。
_ DHMO ― 2011/06/19 01:09
未だに金勘定でことが済むと考えているのは、オイルショックを知らない世代の幻想だな。
_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/19 09:01
>(未記入)さん
コメントありがとうございます。
このブログでは、政府や東電の権力者以外に対しては、個人名を挙げての批判は避けてきたのですが、あの記事だけは許せませんでした。
紙面で、福本容子論説委員が新たな立場を表明することに期待しています。
甘いか…
コメントありがとうございます。
このブログでは、政府や東電の権力者以外に対しては、個人名を挙げての批判は避けてきたのですが、あの記事だけは許せませんでした。
紙面で、福本容子論説委員が新たな立場を表明することに期待しています。
甘いか…
_ jiro ― 2011/06/20 09:48
毎日新聞論説室福本容子さんは言論人としてあるまじき卑劣極まりないやり方で村上春樹さんの主張を貶めていますね。この姿勢は、原子力村界隈のえせ学者たちが学問的な誠実さを放棄してしまっているのと通底するものがあるようです。
破格の報酬によって良心を麻痺させてしまった人々。マスコミ、政官学に及ぶ買収と癒着の構造。しかもそれらのお金は世界的にも割高とされる我々の支払う電気料金によってまかなわれているんですよね。
これだけの不祥事を起こしながら、呆れるほど小額な賠償金しか提示せず、退職金や年金は温存し、存続できる一私企業があって良いのでしょうか?
身内からも「明らかに人災である」という発言が飛び出し、安全対策を怠った数々の証拠があるにもかかわらず、誰一人捕まらず、責任も問われず、まったく同じ人たちが今後、安全に他の原発を稼動していけると本当に信じているの海江田さん。
「神の仕業としか言いようが無い」などという明らかに責任放棄の無反省な発言をする大臣を罷免せず許してしまっても良いのでしょうか?
ところで村上さんは決して「非現実的な夢想家になろう」などと能天気なことをいっている訳ではありません。国策としての原子力推進と電力会社の膨大な宣伝費によるメディア買収との結果として、原発に疑問を呈する人々に対して「非現実的な夢想家」という不名誉なレッテルが貼られてゆくと言っているのです。この前提を飛ばしてしまうと論旨は全く別の意図に曲解されてしまいます。福本さんは卑怯にもそれをやった。電力会社の用意した数字だけを羅列して、いかにも「無責任な夢想主義者」対「現実主義者」の対立という虚構の構図を印象づけようとした。(以下、“-”部は村上さんのスピーチ原文より引用します)
“原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなかった。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。”
“それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。そうしないことには、またどこかで同じ失敗が繰り返されるでしょう。”
倫理や規範が損なわれた社会では、「効率」や「便宜」が「現実」の名を騙る社会では「非現実的な夢想家」と揶揄されることを恐れてはならない、だから敢て「非現実的な夢想家として」と村上さんはタイトルしたのだと思います。
“日本で、このカタルーニャで、あなた方や私たちが等しく「非現実的な夢想家」になることができたら、そのような国境や文化を超えて開かれた「精神のコミュニティー」を形作ることができたら、どんなに素敵だろうと思います。それこそがこの近年、様々な深刻な災害や、悲惨きわまりないテロルを通過してきた我々の、再生への出発点になるのではないかと、僕は考えます。我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです。人はいつか死んで、消えていきます。しかしhumanityは残ります。それはいつまでも受け継がれていくものです。我々はまず、その力を信じるものでなくてはなりません。”
破格の報酬によって良心を麻痺させてしまった人々。マスコミ、政官学に及ぶ買収と癒着の構造。しかもそれらのお金は世界的にも割高とされる我々の支払う電気料金によってまかなわれているんですよね。
これだけの不祥事を起こしながら、呆れるほど小額な賠償金しか提示せず、退職金や年金は温存し、存続できる一私企業があって良いのでしょうか?
身内からも「明らかに人災である」という発言が飛び出し、安全対策を怠った数々の証拠があるにもかかわらず、誰一人捕まらず、責任も問われず、まったく同じ人たちが今後、安全に他の原発を稼動していけると本当に信じているの海江田さん。
「神の仕業としか言いようが無い」などという明らかに責任放棄の無反省な発言をする大臣を罷免せず許してしまっても良いのでしょうか?
ところで村上さんは決して「非現実的な夢想家になろう」などと能天気なことをいっている訳ではありません。国策としての原子力推進と電力会社の膨大な宣伝費によるメディア買収との結果として、原発に疑問を呈する人々に対して「非現実的な夢想家」という不名誉なレッテルが貼られてゆくと言っているのです。この前提を飛ばしてしまうと論旨は全く別の意図に曲解されてしまいます。福本さんは卑怯にもそれをやった。電力会社の用意した数字だけを羅列して、いかにも「無責任な夢想主義者」対「現実主義者」の対立という虚構の構図を印象づけようとした。(以下、“-”部は村上さんのスピーチ原文より引用します)
“原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなかった。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。”
“それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。そうしないことには、またどこかで同じ失敗が繰り返されるでしょう。”
倫理や規範が損なわれた社会では、「効率」や「便宜」が「現実」の名を騙る社会では「非現実的な夢想家」と揶揄されることを恐れてはならない、だから敢て「非現実的な夢想家として」と村上さんはタイトルしたのだと思います。
“日本で、このカタルーニャで、あなた方や私たちが等しく「非現実的な夢想家」になることができたら、そのような国境や文化を超えて開かれた「精神のコミュニティー」を形作ることができたら、どんなに素敵だろうと思います。それこそがこの近年、様々な深刻な災害や、悲惨きわまりないテロルを通過してきた我々の、再生への出発点になるのではないかと、僕は考えます。我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです。人はいつか死んで、消えていきます。しかしhumanityは残ります。それはいつまでも受け継がれていくものです。我々はまず、その力を信じるものでなくてはなりません。”
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「費用対効果と、地域独占&『発・送・配』独占体制の解体=競争原理の導入という純粋な資本の論理だけでも、原発という選択肢は存在基盤が危うくなる」という考えも大分定着してきました。
一方、原発に関わる費用対効果(price per kWh)は、お役所お下げ渡しの比較表しかありません。そこでは、原発が最も投資効率の高い発電ということになっており、田原総一郎までが「原発を全部無くして、我々は昔に戻れというのか?!」と連呼する有様です。
*******************
しかし、このデータは本当に正しいのでしょうか?
真のコストに関わる資料公開を拒む電力会社に対して、立命館大学国際関係学部の大島堅一教授が、公開されている有価証券報告書などを統合して試算した「原発のコスト計算」は、非常に興味深いものがあります。
原子力単体でみても、原発は安価な電源とは言い難く、さらに一旦稼働したら可変的運転が難しいので、需要の少ない夜中にも生み出し続けられる大きな電力を無駄にしないために、それを利用して一旦水をくみ上げておき、昼間に再度それを流して発電する揚水発電を併設した「原子力+揚水」になると、他の比にならないくらい高コストの電源になってしまうことが分かります。
ここには、今回の福島第一のような万一の際の賠償はもちろん、使用済み燃料の再処理と保管コストは計上されていませんが、それでも、水力よりも遙かに高コストになるのです。
※原子力政策大綱見直しの必要性について
~費用論からの問題提起~
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo48/siryo1-1.pdf#page=15