玄海原発の再稼働阻止が当面の正念場2011/06/17 23:09

日本には54基の原子炉があります。その内、今現在稼働しているのは、定期点検後の調整運転をしている2基(関西電力大飯1号炉・北海道電力泊3号炉)を含めても、たったの19基。せいぜい1/3の強です。
その今、私たちは、電気がなくてたいへんな苦労を強いられているでしょうか?通勤電車は普通に走り、夜の町は少し暗くなった程度。「電気が足りない足りない」と騒ぎ立てる人たちがいますが、私たちは十分に足りていることを体で知っています。
もちろん、湯水のようにエネルギーを使ってきた、これまでの生活を反省する必用はあります。しかし、今、直ちに、原発の電気がなくなっても、日本は沈没しません。
この夏までに、あと5基の原子炉が定期点検に入ります。法律では、原子炉は13か月に一度は止めて定期点検をしなくてはいけないことになっています。3.11以降、営業運転を再開した原子炉はありませんから、あと、10か月弱で、日本中の原子炉を止めることができるのです。

すべての原子炉を廃炉に追い込むためには、止まっている原子炉の再稼働を絶対に許してはなりません。一つ再稼働を許せば、なし崩しでやられます。

当面の正念場と見られるのは、九州電力玄海原発の2号機・3号機です。佐賀県知事や県議会に猛烈な圧力をかけているのは、原子力安全・保安院。福島を見れば、かれらに原子力の安全を語る資格は、微塵もないことが明らかです。
原子炉の再稼働は、地震や津波に対する安全性だけの問題ではありません。日本人が、そして、人類が生きていくために、こんなに危険なものが本当に必要なのか… ドイツやイタリアの人たちがたどり着いた結論から学びましょう。

日本では、あまり大きく報道されていませんが、つい先日(6/7)、アメリカで重大な原子力事故が発生しています。間一髪で放射能漏れには至らなかったようですが、世界中の原発が、「絶対に事故は起こすな」というプレッシャーの下、最新の注意を払って運転しているはずの今、この有り様。もう世界中どこでも、「安全神話」は通じなくなっています。

玄海の再稼働が止められれば、残り17基。
日本のすべての原発を止めて、廃炉に追い込む道筋は見え始めています。

原発と夢とお金、そして文明国とは…2011/06/18 01:12

昨日(6/17)の毎日新聞にちょっと看過できない論説記事が載りました。
原発と夢とお金」と題され、福本容子論説委員は、原発が止まった場合の電力料金の上乗せ分の話をメインに、「お金がかかるから、無闇に原発を止めるのはやめよう」的なことを言っています。最後には、「なし崩しの脱原発は文明国らしくない」とまで。
逆でしょう。「なし崩しの原発推進こそ、文明国が選ぶべき道ではなかった」と。

脱原発にかかるコストは、基本的に、電力会社の資産売却であがなうべきです(原子力で稼いだ分を全部吐き出してもらいます)。私たちにも、原発を容認してきた責任がありますから、若干の負担は覚悟はしますが。

そして、論説委員が触れた地元の就労問題。当面は、廃炉のための労働力が必要になります。それと並行して、「原発銀座」を「自然エネルギーの基地」にしていく取り組みを進めれば解決するはずです。原発ができたせいで、やむなく農業や漁業を棄てた人もいたでしょう。この人たちが、ちゃんと農業・漁業を営めるようにサポートすることも重要です。
あまりに浅薄な論説記事に、開いた口が塞がりませんでした。

原発から脱却して、本来の文化と文明を取り戻しましょう!

進行する内部被ばく2011/06/27 22:13

福島・飯舘村と川俣町の住民の尿から、放射性ヨウ素(ヨウ素131と思われる)と放射性セシウム(セシウム134とセシウム137と思われる)が検出されました

冷たい言い方かも知れませんが、内部被ばくの進行は、当然と言えば当然。空気中を核分裂生成物が舞い、水道水にも、農作物にも紛れ込んでいます。人間は、通常、呼吸と飲食によってしか、外界の物質を体内に取り込みません。今の福島で、核分裂生成物が体内に入り込まない方が不思議なくらいなのです。そして、もっと不思議なのは、こういった検査結果が、事故から3か月以上、いや4か月近く経って初めて出てくるという現実。国や自治体は、本気で住民の健康を、いや、命を考えているのでしょうか。

ともあれ、今回発表されたデータで、もっとも気になるのは、「5月上旬」の段階ですら、微量の放射性ヨウ素が検出されている点です。ご存じの通り、放射性ヨウ素の中心であるヨウ素131の半減期は8日です。事故後2か月を経た段階で「微量」であっても検出されることは、たいへんな問題です。「3月中旬」や「3月下旬」ではどんな値だったのか?
「検査直前に、微量のヨウ素131を摂取した」とは考えにくく、「大分前に、高濃度のヨウ素131を摂取し、それが体外に排出される前に減った」と考えるのが自然でしょう。そして、体内にある間、ヨウ素131は主に甲状腺に蓄積し、近い将来、甲状腺ガンを引き起こすようなDNAの破壊を行っています。

今回、内部被ばくの事実が証明された人たちの中には、4歳の子供まで含まれています。慎重に、そして、徹底して、甲状腺を含む健康状態を監視していく必要があります。もちろん、そうしたからって、甲状腺ガンなどを100%防げるわけではありませんが、少しはマシなはずです(こんな悲観的な記述をしていると、涙が出てきます。しかし、事実なのです)。

もう一つ言うならば、ヨウ素131は、すでに減ってしまっているので、今後、新たに深刻な内部被ばくを引き起こす可能性はありません。しかし、セシウム137やストロンチウム90は、半減期が30年。とにかく、体に入れないことを考えなくてはいけません。この観点からすると、現在の避難地域は、まったく狭すぎるものです。国はより広いエリアの住民に、無条件で「移住権」を認め、東電と国が、その裏付けをするべきだと思います。お金の問題ではありません。田畑を棄てて逃げる人には田畑を保証し、牧場を棄てる人には牧場を、ということです。もちろん、新たな地で農業や畜産を始めるのはたいへんな苦労が伴います。しかし、少なくとも数十年に渡って核分裂生成物による汚染が残る場所で、汚染された作物を作り続けるという選択肢はないと思います。幸か不幸か、休耕田・休耕地は全国にたくさんあります。不可能な話ではないのです。

内部被ばくの話を少し真面目に考えるなら、これが事故現場に近い福島の人たちだけに襲いかかっている問題ではないということも分かります。
ホットスポットと呼ばれる地域では空間線量が跳ね上がり、水道水中の核分裂生成物もゼロには戻っていません。何が基準なのか分からない基準値以下の野菜は平気で出回っています。おそらく、東京でも、尿中の核分裂生成物をちゃっんと測定したら、内部被ばくが裏付けられる人が多数出るでしょう。いや、ほとんどの人が、すでに福島由来の核分裂生成物を体内の取り込み、骨髄や内臓のどこかでDNAの破壊が進んでいるのです。

日本政府はいったい何を考えているのでしょうか。私には、「万一、ガンになった人には被ばく手帳を与えて、医療を保証すればよい」という程度にしか考えていないように思えます。健康は、いくらお金を積まれても購えないものです。広島・長崎の被爆者に「被ばく手帳が欲しかったですか?」と問うたら、「そんなものより、原爆が要らなかった」と言われるでしょう。

そして、今、原発事故によって蝕まれつつある福島の人たち、そして、私たちの健康の危機は、数十年経っても回復しないものです。それどころか、世代を超えて、その恐怖が引き継がれる可能性が高いのです。

玄海原発に注目しよう2011/06/28 20:52

現在、定期点検中の九州電力玄海原子力発電所2号炉・3号炉の再稼働問題が、まさに「ホット」な争点になっています。

地震が無ければ、津波がなければ、原発は安全なのでしょうか?今回の福島第1・第2、そして、危機一髪だった女川と東通、2007年の中越沖地震で火災を発生した東電柏崎原発の事故を除けば、地球上に原発が登場して以来の事故は、どれも地震や津波とは無関係なものでした。
これは何を意味しているのでしょうか?原発は地震や津波以外の原因でも、深刻な事故を起こすという当たり前の事実です。最も有名なチェルノブイリの事故にしても、スリーマイルアイランドの事故にしても、引き金は単純な人為的ミスでした。問題は「
人間の単純なミスが取り返しのつかない事態を引き起こしてしまうことにあります。決して、「地震や津波に対して安全だから」という論点で、電力会社や政府と議論してはいけません。「原発は、そもそも人類にとって、そして、地球にとって、危険すぎるもの」なのです。

菅総理大臣は、どうやら「
再生可能エネルギー法案」と心中する決意のようです。この法案自体は否定しません。むしろ賛成です。しかし、最後の最後で菅政権が、再生可能エネルギー法案」と、停止中の原発の再稼働をバーターするのではないか… そんな危惧があります。これは危険です。
本来、
再生可能エネルギー法案」と「国内全原発の即時運転停止」がパッケージになっているべきです。こんなことは、誰にだって分かるはずです。

今日、東京は、この夏数回目の真夏日を乗りきりました。電車が止まったり、高層ビルのエアコンやエレベーターが止まることもありませんでした。
少し我慢すれば、大丈夫!一つ一つ原発を止めながら、みんなの力で、この夏を乗りきりましょう!

絶対に譲ってはいけない第一歩、それは、
玄海原発2号炉・3号炉の再稼働問題です。

奇妙な一致2011/06/29 20:03

ここに1枚の地図があります。
「アメリカの原子力施設と乳癌患者の相関関係」(Dr. Jay Gould "The Enemy Within:The High Cost of Living Near  Nuclear Reactors"1996より)と題された地図。
一つ一つの枡目は、アメリカにあるすべての郡を示しています。黒く塗りつぶされている部分(郡)は、二つの特別な意味を持つ場所です。

1. 黒く塗りつぶされた約3000郡は、なんらかの原子力施設(原発・核兵器工場・核廃棄物貯蔵所)から160km以内にある。
2. 1985年~89年までの間に、アメリカで死亡した乳癌患者の2/3は、黒く塗りつぶされた約3000郡から出ている(=黒塗りは、乳癌による死亡の多発地域)。

この奇妙な一致は、何を意味しているのでしょうか?もちろん、アメリカが定めた安全基準を超える放射線量が、これらの場所で観測されたことは、何度か起きた放射能漏れ事故直後以外はありません。おおむね1mSv/年以下だったと思われます。ほとんどの場所で、放射線量は一度も基準値を上回ったことはないはずです。
原子力施設から出ていた核分裂生成物(放射性物質)は、今言われている常識からすれば、「ごく僅か」であり「微量」でした。しかし、この地図は、統計的に見ると、その「ごく僅か」な放射性物質が、乳癌死亡率を引き上げていることを如実に語っています。

参考のために、もう一点、地図をアップしておきます。これは、現在アメリカにある原子力発電所の一覧です。核兵器工場・核廃棄物貯蔵所は含んでいませんが、先の地図と、「奇妙に一致」することはお分かりいただけると思います。

京都大学の小出裕章さんが、何度も繰り返している通り、「低線量でも“安全な被曝”は存在しない」のです。

低線量被ばくに関する、アメリカ科学アカデミーの見解も紹介しておきましょう。「低線量放射線でもDNA等に損傷を与え、最終的にはがんを引き起こす原因になりうる」(2005年6月29日/アメリカ科学アカデミー「電離放射線による生物学的影響」調査委員会)。いわゆる、「しきい値なしの直線モデル」です。

これは、それまで一部で言われてきた「しきい値モデル=ある被ばく線量を超えるまで、放射線は人体に害を及ぼさない」という考え方を完全に否定するものでした。調査委員会は、<広島・長崎の被爆者生涯追跡調査では以前から「ある線量以下であれば安全というしきい値は見つからず、発がんのリスクは線量に比例して直線的に増加する>という事実に基づき、他のデータを積み重ねた上で、「しきい値なしの直線モデル」にたどり着いています。

さらに、アーネスト・スターングラス博士(ピッツバーグ医科大学名誉教授)によれば、長期間にわたる低線量の内部被ばくは、実際には、「直線モデル」以上の放射線障害(分かりやすく言えば、発ガン)を起こしていると言います。

海江田経産相は「原発の安全は国が保証する」と胸を張り、玄海町岸本町長は「安全は確認された」と笑顔で応えます。
しかし、まず、発電システムとしての原発の安全性が確認されていないのは言うまでもないことです。福島の事故を横目に見ながら、「安全は国が保証する」と言う海江田経産相の神経は考えられません。
自然災害の話だけでも、この人たちは、九州にある「姶良カルデラ」や「喜界カルデラ」が、すでにいつ大爆発を起こしてもおかしくない時期に入っていることを知っているのでしょうか?千年単位の話ではありますが、原発を考える時、その長い時間を見据えることが必要だと、福島の事故が教えてくれたのではないでしょうか。

そして、原発周辺地域での低線量被ばくの問題。一切、解決していませんし、その糸口すらありません。
「週刊現代」(7/9号)を見ると、
佐賀県:玄海町立値賀中学校正門前=0.22μSv/h
島根県:松江市松江市役所=0.23μSv/h
茨城県:東海町東海第二原発近くの民家の庭=0.30μSv/h
福井県:美浜町美浜原子力PRセンター=0.26μSv/h
…と、原発の近くでは、ことごとく高い空間線量が観測されています。
「自然から受ける放射線量を考えれば大した数値ではない」という反論もありそうですが、実は、自然由来の放射線と、原発由来の放射線には、決定的な違いがあります。
自然放射線は大半が宇宙から飛んできたり、岩石の中にあるウランなどから発しています。私たちは、自然界から多少の放射線は受けていますが、一部、空気中にあるラドン222、食物に含まれるカリウム40、炭素14などを除けば、放射線の発生源である放射性物質に遭遇することはほとんどありません。
しかし、原発由来の放射線は、大半が大気中に浮遊する塵に乗ったり、地表面に落ちた放射性物質(セシウム137など)から発しています。これらの放射性物質は、呼吸や飲食を通して、私たちの体の中に容易に入ってきます。
そして引き起こされる低線量内部被ばく。それが、冒頭の「奇妙な一致」を見せる地図に現れているのです。

5月20日衆議院科学特別委員会における崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士、現高木学校)の発言をもう一度思い出しましょう。
「放射能には安全値はありません。年間1ミリシーベルトの許容も、そうしないと原子力産業が成り立たないからであって、生物学的学問から決められたものではない」

多くの人たちが、20mSv/年という、とんでもない基準をめぐって闘いを繰り広げています。当面の目標は、1mSv/年を国に認めさせることです。それは間違ってはいません。しかし、その1mSv/年にすら、安全の裏付けはないということを私たちは忘れてはいけません。

勇気を持って撤退しようではありませんか!原発から。






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