原発作業員:被ばくでがん 労災10人2011/07/26 09:03

毎日新聞が7月26日の朝刊で「原発作業員:被ばくでがん 労災10人」と報じました。
原発作業員の放射線被ばくによるがん発症や労災認定は、その事実を知る人すら少なかったのではないでしょうか。原発を推進する電力会社や国が隠したがるのは当然ですが。

この記事の中で目を引くのは、がんを発症した10人の内、9人までが累積被ばく線量が100ミリシーベルト以下だったという点です。ウェブ上では詳細データが紹介されなかったので、紙面のコピーを貼り付けておきます。
表を一見しただけで、現在、福島第1で適用されている「250ミリシーベルト以下」が、どれほど危険な数字なのかが分かります。
一方、がん以外の場合には労災認定自体に高いハードルがあり、実際には原発での被ばくによって健康を害している(場合によっては、死に至る)例は、ずっと多いと考えられます。
なんからの対策を講じないと、必死になって収集作業に取り組んでいる福島第1の作業員の中から、たくさんの悲劇が生まれることは間違いありません。

さて、この記事は、原発の作業員の健康問題を主眼に据えて書かれていますが、実に多くのことを示唆しています。

まず、「年間100ミリシーベルト以下の被ばく量なら安心」
と言ってきた放射線専門家たちは、この事実を前にどういう態度を取るのでしょうか?専門家ですから、累積被ばく線量が50ミリシーベルト程度かそれ以下であっても、労災認定されていることを間違いなく知っているのです。犯罪的と言ってもよいでしょう。

労災認定された10人それぞれの被ばくの期間は明確にはなっていませんが、91年に白血病で亡くなった嶋橋伸之さんの場合、8年10か月の累積被ばく線量が50.63ミリシーベルト。年平均にすると5.73ミリシーベルト/年です。「子供の被ばく線量を20
ミリシーベルト/年に」などとというのが、いかに許しがたい数字なのかは明白です。

また、被ばくによる労災認定に明確な基準があるのはがんでは白血病のみです。白血病を引き起こしているのは、主にストロンチウム90だと考えられます。ストロンチウム90は、体内に入ると骨に集積し、骨髄に集中的にベータ線を浴びせ、白血病を引き起こすからです。ところが、福島第1の敷地内はもとより、周辺地域や海水から、どれほどのストロンチウム90が検出されているのか、ほとんど明らかにされていません。

いまだに続く、東電と国による情報の隠蔽。この流れをどこかで変えないといけない。つくづく思います。

コメント

_ 塩爺 ― 2011/07/30 02:29

貴ブログ、3月25日付けでプルトニウムに関する記述(3シリーズ)は大変勉強になりました。

http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-610.html (原子力専門家・アーニー・ガンダーセン氏)によると、以下のコメントがあります。
現在、セシウムばかりが騒ぎになっていますが、私在住はホットスポットで問題になってる埼玉県東部(三郷市 福島原発から200km)です。
ブルトニウムの飛散は心配しないでもよいのでしょうか?(比重が重いから大丈夫?)
ストロンチウムの遠方への飛散も含め情報を頂ければ幸いです。

‘特に問題なのは、プルトニウム粒子(=ホットパーティクル hot particle)です。

放射性核種の中でも質量が大きいプルトニウムは、遠くに飛ばないといわれていますが、実は、プルトニウムは「ホットパーティクル」と呼ばれる大腸菌と同じくらいの大きさの微粉末となって空中を拡散する性質を持っているそうです。

「ホットパーティクル」の毒性 はとりわけ強く、微粉末1、2個が肺の中に入るだけで肺ガンを起こす
(京大原子炉実験所助教 小出裕章  http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/Pu-risk.pdfの4ページ目)

以上

_ 私設原子力情報室 ― 2011/07/31 06:58

>塩爺さん
いつもお立ち寄り頂きありがとうございます。
ご指摘のプルトニウム・ホットパーティクル問題については、この間、新しい情報もあります。また、前々から気になっていた情報もありますので、調べ直してみたいと思います。

_ 原発不安 ― 2011/08/05 04:01

これは見られました?
原発・核燃料施設労働者の労災申請・認定状況
http://www.geocities.jp/koshc2000/accident/hibakuninnteihyo.html
半分以上の方が亡くなってますね。
それと、白血病や、リンパ腫になっても、被爆線量が分からない人は、不支給になってますね。
それにしても、労災認定が36年間で10人ですか?
国が、こんな人使いをしているのですか?
それなのに、菅直人総理も、海江田万里経産相も、細川厚労相も、知らん顔なんですね。人でなしとはこういうことを言うのではないですか?

_ 私設原子力情報室 ― 2011/08/05 09:43

>原発不安さん
コメントありがとうございます。
「原発・核燃料施設労働者の労災申請・認定状況 」を見ました。おそらく、他にも労災認定されていない例がたくさんあるのでしょう。被ばく障害は、ガンだけはありませんから。

電力会社や政府の責任を追及するとともに、私たちは、この人たちの命や健康と引き替えに原子力の電気を得てきたのだということを再認識するする必要がありますね。

_ 朝倉  ― 2012/01/26 21:00

関西電力の下請け作業員で、若狭方面の原発に何度も出張した人が、昨年7月60才で「心臓原発非ホジキンリンパ腫」発病、神戸大学で手術ご化学療法でこの1月末退院自宅療養中、昨年8月13日60歳定年で解雇されました。「被ばく管理手帳」も持っていますが、医師も原発との関連を今のところ否定し、労災はうやむやにされているようです。
神戸市内での相談先を紹介していただけませんか。

_ 私設原子力情報室 ― 2012/01/26 22:22

>朝倉さん
非常に大きな問題のあるお話だと思います。
ただ、残念ながら、当方、関西方面に強固なネットワークがありません。

このブログの来訪者の皆さん!
どこか、朝倉さんの相談先をご紹介ください。

_ 塩爺 ― 2012/01/27 07:11

阪南中央病院の村田三郎医師が「内部被ばく」に詳しいです。
http://www.hannan-chuo-hsp.or.jp/
村田三郎医師
・阪南中央病院 副院長
・広島・長崎の原爆被爆者の健康診断や診療、実態調査をおこなってきた。
・原発の労働者被ばく問題に長年関わり,
 被ばく労働に関する労災認定に尽力してこられた。
・低線量の被ばくによる放射線障害、内部被ばくの危険性に警鐘を鳴らし続けている。
・原発震災後に発行された
「原発震災・ニューズリール(森の映画社.藤本幸久監督)」では
 No.3「被曝とは㈰ −体内被曝と体外被曝−」,
 No.4「被曝とは㈪ −子どもの被曝・労働者の被曝−」に出演されています。

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