100,000年後の安全2011/04/08 14:54

「100,000年後の安全」というドキュメンタリー映画を観てきました。
原発から排出される高レベル放射性廃棄物(簡単に言えば使用済み燃料棒)の最終処理場を巡る話です。舞台はフィンランド。オルキルオトという場所に建設中の放射性廃棄物の最終処分場“オンカロ(隠された場所)”にカメラが初めて入り、処分場の当事者たちにインタビューを試みます。

現在ある高レベル放射性廃棄物が人に害を及ぼさなくなるまでには10万年かかるという前提で作られたオンカロ。しかし、映画(マイケル・マドセン監督)は、「10万年もの間、人類はオンカロが危険な場所であるということを伝えきれるのか」と問いかけます。例えば、今から10万年前といえば、ネアンデルタール人の時代で、私たちの直接の祖先である新人がアフリカの一部で暮らし始めた頃。この先10万年、人類は放射性廃棄物の危険性を語り継ぐことができるのでしょうか。
ツタンカーメンが棺に納められたのは、今からたった3,000年程前のこと。開けてはいけないと厳封されていたその棺桶は1922年に開封されました。オンカロは3,000年どころではありません。10万年の間、安全に保管するというのはとてつもない話なのです。
10万年は、私たち人類にとっては、とても長い時間です。しかし、放射性物質にとっては、それほど長い時間ではありません。例えば、プルトニウム239の半減期は2万4千年。アメリシウム 241は432年、ウラン235は7億年です。比較的半減期が短いとされるプルトニウム239でさえ、1/16にしか減らないのです。
放射性廃棄物を人類は扱いきれるのだろうか… 「100,000年後の安全」は、静かに本質的な問題を突きつけてきます。

コメント

_ 黄昏の国 ― 2011/04/08 19:46

10万年後どころか今そこにある危機ですら管理不能に陥ってる現実を見れば言わずもがなでしょうね。昨夜の地震で東通、女川原発で通常電源が落ちてしまった事にも、原発の耐震設計が如何に頼りないかが現れています。日本では頻繁に起こっている「たかだか」震度5~6程度の津波も被らない「想定内」の地震にさえも耐えきれず電源が落ちてしまうことに心底恐ろしさを感じますが、そんな私は臆病者なのでしょうか? 昨夜の地震どころではない巨大地震が予想されている東海地震の想定震源域にある浜岡原発が、この期に及んで尚運転中であることに震えが止まらない私は狂っているのでしょうか?私の杞憂で終わってくれたらいいのですが…

_ 私設原子力情報室 ― 2011/04/08 21:46

>黄昏の国さん
コメントありがとうございます。
昨晩の余震では、私が知るだけで、女川原発、東通り原発、六ヶ所村再処理施設で問題が発生しています。どうも一部では危機一髪の状況だったようです。原発との共存は、もうできないと考えましょう。

_ tossini ― 2011/04/09 13:13

当サイトの主催者氏が言うように、
地球の歴史の中で、10万年前といえば現代人(ホモ・サピエンス)がアフリカから世界各地に拡がり始めた時期である。映画の原題”INTO ETERNITY”が示すように、「永遠」ともいえるこの時間の中で、放射線を出し続ける廃棄燃料を、安全に保管し続けることは極めて難しい。我々はいま、新たなパンドラの箱を抱えてしまったのではないだろうか……。

この映画の警告は、1969年に流行った「ゼーガーとエヴァンス(Zager And Evans)」の
”In The Year 2525(西暦2525年)”の一節を思い出させる。
******************

西暦9595年。
人類は、まだ生きているだろうか・・・。
地球の恵みのすべてを奪いながら、
何一つ返礼していないのだ。

1万年の時が過ぎ、
人は幾億もの涙を流してきた。
思い及ばなかったことのために。
そして、我らの治める世は終わりを告げるのだ。

しかし、久遠の夜を抜け、
星の瞬きの
そのまた遙か遠くでは、
それも、ほんの昨日のできごとでしかない。
**************************

_ 私設原子力情報室 ― 2011/04/09 21:20

>tossiniさん
示唆に富んだコメントをありがとうございます。
Zager And Evans は、1969年当時、核兵器と原発を含む核時代のへの恐怖を感じとっていたのでしょう。
人類の物差しは、放射性物質の物差しに対して、あまりにも短すぎる。それは厳然とした事実であり、どんなに科学が発達しても、越えられるものではないのです。

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