年間20ミリシーベルト!?2011/04/24 15:02

原発事故は地域社会と地方文化を根底から破壊してしまう。人類は、チェルノブイリでたくさんの命とひきかえに得た重大な教訓を生かすことができませんでした。

文部科学省は、昨4月20日付けで教育現場向けに「放射能を正しく理解するために」なる通達を示しました。
もっとも重要な点は、従来、一般人(大人)において年間1ミリシーベルト以下とされてきた被ばく量の基準を、子供まで含めて年間20ミリシーベルトにまで一気に引き上げたことです。
一般に子供は大人に比べて10倍放射線に敏感だとされます。単純計算すると子供に対する基準を200倍引き上げたことになります。

さて、年間20ミリシーベルトという数字ですが、一日8時間屋外で活動するとして、一時間あたりに換算すると毎時3.8マイクロシーベルトになるようです(細かい計算の根拠は不明)。
ところが、この毎時3.8マイクロシーベルトという数字は、原子力施設はもちろん、病院のレントゲン室の近くなどでも見られる「許可なくして立ち入りを禁ず」と表示されている「放射線管理区域」(毎時0.6マイクロシーベルト以上)の6倍以上の放射線量に当たります。
放射線管理区域
こんな基準の適用を絶対に許してはなりません。以下に、緊急声明と署名依頼が出されていますので、紹介しておきます。
【緊急声明と要請:子どもに「年20ミリシーベルト」を強要する日本政府の非人道的な決定に抗議し、撤回を要求

福島県内で放射線モニタリングを実施した小中学校の75%以上が、「放射線管理区域」を越える放射線量下にあるそうです。
それでも、一部の関係者からは、トンデモ発言が続いています。佐々木康人・日本アイソトープ協会常務理事は、「年20ミリ・シーベルトの放射線量を浴びても、吐き気や火傷などの身体的影響は出ない。発がんのリスクが上がるとされるが、避難しないですむなどのメリットがある場合、限度を引き上げる選択肢がある」(出典記事)と語ったそうです。「避難しないですむメリット」とは誰にとってのメリットですか?そのメリットは、東電と日本政府にとってだけのものです。住民は、「発がんのリスクが上がる」というリスクを背負い込むのみなのです。

唯一、住民の健康を守れる方法は、避難地域の指定を広げた上での集団移住です。短期的な目途しか立たない学童疎開では対応しきれません。この記事の最初に書いた「地域社会と地方文化の喪失」は、ある程度やむを得ないでしょう。命が先決です。
東電と国は、住民の命を守る重大な責任を負っているという当たり前の自覚すらできていないように思えてなりません。

追記:
東京電力は、この期の及んでも、自社の保養施設や研修施設を被災者に提供することは一切していないようです。どういう神経をしているのでしょうか。

コメント

_ tossini ― 2011/04/24 16:42

本日の朝日新聞朝刊「ニュースがわからん!ワイド」の論調は、
~20ミリシーベルは、かなり余裕を持った数値。日本人の3人に1人はガンで死んでいる。その死因の3割はたばこだ。100ミリシーベルトの放射線を浴びるよりもたばこの方が危険といえる~
朝日ですら、これです。
今や日本のマスコミは、愚民化政策のプロパガンダ装置に堕落した!!

_ 塩爺 ― 2011/04/24 17:37

孫(3歳&4歳)と3時間ほど近くの公園を散歩した後、本ブログを見て卒倒しそうです。
年間20ミリシーベルトは、立派な詐欺行為です!!
‘じいじい バイバイ‘と先ほど別れた孫の笑顔を思い出し怒り爆発です。抗議と撤回の署名を即しました。

_ sukoyaka_farm ― 2011/04/27 19:13

毎時3.8マイクロシーベルトの根拠ですが、武田邦彦氏のページ
http://takedanet.com/2011/04/60_d799.html
によると、
屋外8時間以外の屋内16時間は、屋外の放射線量の40%と見積もっての計算のようです。

ただし、厳密に計算すると
20mSv/((8+16×0.4)×365)=0.003901
≒3.9μSv/h になるんですけど。
(ああ、1年366日の時もあるから3.8なのか…)

いずれにしても非常に高い問題のある数値であることには間違いないです。

_ maronhappy ― 2011/05/11 16:18

初めまして,こんにちは♪
「子ども年間20ミリシーベルト 抗議署名」で検索したら、ヒットしたのでこちらに伺いました。
そもそも、『私設原子力情報室』なんてあったので、
あらら?!
原子力情報室のパクリですか^^;(失礼!)
なんて思いながら拝見したら、良い事が沢山書いてあって、思わずコメントしたくなりました。
特にわたくしは文末にある,
>東京電力は、この期の及んでも、自社の保養施設や研修施設を被災者に提供することは一切していないようです。どういう神経をしているのでしょうか。


わたくしもこれについて日々大いに疑問を持っています。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/05/11 17:28

>maronhappyさん
コメントありがとうございます。
浜岡が止まった以外、よいニュースは入ってきませんが、これからも原発を地道に追いかけていくつもりです。
なお、当ブログは、「原子力資料情報室(CNIC)」とは、まったく無関係です(笑)。もちろん、原子力資料情報室の活動は、全面的に支持しています。

_ 通りすがり ― 2011/06/05 02:19

> 年間1ミリシーベルト以下とされてきた被ばく量の基準
これが、どこで規定されている数字なのか、判らないのですが、お詳しいのでしたらお教え願えますでしょうか。

こうした基準に対して、自然放射線が年間1ミリシーベルトを超える地域に、何も対策をしなくても良いのでしょうか。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/05 09:11

>通りすがりさん
コメントありがとうございます。

「公衆の年間被曝限度1ミリシーベルト」は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づくものです。
ただ、ICRP自体は、核兵器開発や原子力発電との利害関係から独立した団体ではありません。原子力産業が経済的に成立するために必要なギリギリの基準を考えているというのが事実に近いでしょう(もちろん、そう宣言しているわけではありませんが)。

あくまで「安全な放射線はない」という考え方が正しいです。すなわち、「必要以上の放射線を受けてはいけないし、それを耐えさせられる必要もない」のです。

一方で、「公衆の年間被曝限度1ミリシーベルト」と、今回の「学校で1ミリシーベルト以下」は別な基準です。詳しくは、
http://nucleus.asablo.jp/blog/2011/05/27/5884436
をご一読ください。
この件を巡って、福島では混乱が広がっています。今朝の毎日新聞一面は、「学校以外での被ばくはどう考えるのか?」「今までに被ばくした分は?」といった声が上がっていると伝えています(この記事は、まだウェブには上がっていないようです)。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/05 14:48

「学校1ミリシーベルト」に関する教育現場の混乱を伝える毎日新聞の記事が、ウェブにアップされました。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110605ddm001040061000c.html?toptopic=tab4_text

_ 通りすがり ― 2011/06/06 10:38

ですから混乱を引き起こした以前に、遵法とか違法とかいう話が実しやか言われていますが、それの法的根拠はどの辺りにあるのか?。

まあICRP2007勧告の検討結果が一年以上前にレポートとして公開されていながら、店晒しにきてきた政府が混乱に拍車を掛けたのには違いないでしょうが。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/06 19:57

>通りすがりさん
コメントありがとうございます。
言い切ってしまうようで申し訳ありませんが、被ばくの問題に関しては、国際法上の規定はないはずです。例えば、「○○ベクレル以上を○○時間の間に大気中に放出したら、国連平和維持軍を導入する」といったような… 核兵器の保持に関して、IAEAが、ある種、原子力の番人のような立場にいるようですが、国際法上の裏付けがあるのかどうか、難しいところです。

原水爆や原発をどうするのか?まずは法的な問題ではないでしょう。人間として、人類としてどうするのかと… その具体的な適用面で、法律がついてこなくてはいけないのでしょう。

一方で、科学的根拠も今だ決定的ではありません。ひとつ言えることは、誰も楽観的ではないということです。「100ミリシーベルトまでなら無害」と一部で言われてきましたが、ICRPですら「直線しきい値無し仮説」を取っています。

_ タマ ― 2011/06/14 17:03

外部被爆、大人も子供もという1つの基準で20mlというのがそもそも問題です(国際基準は5mlです)。これがセシウム以外のストロンチウムとかキュリリウムとかプルトニウムなどの内部被爆量って話になると、格段に危険性が上がります。医療被曝や高度被ばくとは訳が違います。

また発ガン性の問題ばかりが言われてますが、原爆被害者で認定されていない人も含めると、貧血を始めとする血液疾患や内分泌障害、数値には出にくい栄養障害のような症状とか自律神経様症状などなど、といった症状を入れると、莫大な数が健康被害を被る可能性があります。

唯一の被爆国として、そういった可能性のデータは相当蓄積があるはずなのに、単に因果関係が証明されないという理由で、データから排除され、大凡信頼性に乏しい健康リスクの数値が一人歩きしています。

なぜあんな無茶苦茶な基準を敷いてしまうのか、将来大変な国賠訴訟に発展する可能性があり、それはそれはB型肝炎や薬害エイズの問題以上の禍根を残しかねないのではないかと感じてしまいます。やっぱ先送りなんですかね。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/06/14 23:27

>タマさん
コメントありがとうございます。
今度こそ、先送りさせないように頑張りましょう!お互いに。
その第一歩は、微力であっても、真実を真実として伝え続けることだと思っています。

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