モンゴルの最終処分場 ― 2011/05/11 15:48
5/9、毎日新聞の一面トップは、「核処分場:モンゴルに建設計画 日米、昨秋から交渉 原発ビジネス拡大狙い」という大スクープでした。
見出しにある「核処分場」とは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のこと。世界的に行き先がなくなってしまい、各国とも苦慮している原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場を日・米・モンゴル共同で作り、ロシアやフランスの原発ビジネスに対抗する計画だったようです。また、日本もアメリカも国内で高レベル放射性廃棄物を処理できず、溜めるだけ溜め込んでいる状況ですから、それをモンゴルに持って行こうという腹づもりもあったでしょう。世界中の目を避けるように極秘裏に、とんでもない計画が進んでいました。
さて、高レベル放射性廃棄物の最終処分場とはどういうものなのでしょうか?まず、高レベル放射性廃棄物=使用済み核燃料と考えて問題ありません。日本では一日あたり1.4トンも発生しています。
使用前の核燃料は核分裂を起こすウラン235が4.1%、ほとんど核分裂しないウラン238が95.9%というのが、福島第1原発のような沸騰水型原子炉では一般的です。
約3年間原子炉内で使用したあと、使用済み核燃料になります。この時点でもウラン235は最初の1/3ほど残っているのですが、核分裂の効率が悪くなっているので、捨てざるをえません。また、ウラン235の核分裂で発生した核分裂生成物質(セシウム137・ストロンチウム90など100種あまり)が4.5%、同じく核分裂で発生した中性子をウラン238が吸収してできるプルトニウム239が1.1%とという比率になります。
見出しにある「核処分場」とは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のこと。世界的に行き先がなくなってしまい、各国とも苦慮している原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場を日・米・モンゴル共同で作り、ロシアやフランスの原発ビジネスに対抗する計画だったようです。また、日本もアメリカも国内で高レベル放射性廃棄物を処理できず、溜めるだけ溜め込んでいる状況ですから、それをモンゴルに持って行こうという腹づもりもあったでしょう。世界中の目を避けるように極秘裏に、とんでもない計画が進んでいました。
さて、高レベル放射性廃棄物の最終処分場とはどういうものなのでしょうか?まず、高レベル放射性廃棄物=使用済み核燃料と考えて問題ありません。日本では一日あたり1.4トンも発生しています。
使用前の核燃料は核分裂を起こすウラン235が4.1%、ほとんど核分裂しないウラン238が95.9%というのが、福島第1原発のような沸騰水型原子炉では一般的です。
約3年間原子炉内で使用したあと、使用済み核燃料になります。この時点でもウラン235は最初の1/3ほど残っているのですが、核分裂の効率が悪くなっているので、捨てざるをえません。また、ウラン235の核分裂で発生した核分裂生成物質(セシウム137・ストロンチウム90など100種あまり)が4.5%、同じく核分裂で発生した中性子をウラン238が吸収してできるプルトニウム239が1.1%とという比率になります。
この放射性物質だらけの使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)を地層の奥深くに埋めてしまおうというのが、最終処分場です。
今、フランスと日本では、使用済み核燃料を再処理して、ウラン235とプルトニウム239だけを取り出し、再度発電に利用する核燃料サイクルを実現しようとしていますが、この場合も、再処理施設から大量の高レベル放射性廃棄物が出てくることに違いはありません(核燃料サイクルと再処理施設は他にいくつもの大きな問題を抱えているのですが、それは別の機会に触れます)。
日本では現在、高レベル放射性廃棄物をどうしているかというと、大半は原子力発電所の敷地内で保管している状態です。2009年9月末時点で1万2840トンに膨れあがっています(これまでにフランスとイギリスに再処理を委託した7100トンを除いてです)。
世界中で、現在までに最終処分場の建設が具体的に始まっているのはフィンランドだけ。2020年に操業を開始する予定ですが、「高レベル放射性廃棄物が安全になる十万年後まで責任を負いきれるか」という議論が巻き起こっています(映画『100,000年後の安全』)。
アメリカでは、2002年にブッシュ政権がネバダ州ユッカ山地に最終処分場の建設を決定しましたが、地元の反対にあってオバマ政権は2009年に計画中止を発表。高レベル放射性廃棄物の行き先は宙に浮いています。
日本だけでなく、世界の原子力発電は、まさに、トイレのない超高層マンション状態。どこも、放射性廃棄物であふれんばかりです。それをモンゴルに押しつけようという、とんでもないプランが動き始めていたのです。
人類は、もうこれ以上、放射性廃棄物を作り出してはいけません。そのうねりを日本から生み出していく。それは、唯一の被爆国であり、福島第1の事故を経験した日本人の責任とも言えるのではないでしょうか。
そして、今すぐにすべての原発を止めたとしても、日本だけですでに1万2千トン以上の高レベル放射性廃棄物を抱え込んでいます。どこかに最終処分場を作らざるえないという厳しい現実から目をそらすことはできません。
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_ yamachanblog - 2011/08/05 09:20
引き続き、原子力発電の放射性廃棄物について。前回の記事で書いた通り、高レベルの放射性廃棄物を最終的にどのように処分するのかが決まっていないために、たとえ事故が起こらなくても放射性廃棄物がどんどん積み重なっていくのが、原発の抱える根本的な問題点です。これは、脱原発しようがしまいが関係なく存在する問題。で、いったい日本はこの問題を解決するつもりがあるのかどうか。いまのまま、なんとなく原子力発電所の敷地内に保管し続けるつもりなんでしょうか。
真偽のほどはよくわかりませんが、モンゴルを最終処分地にするという案が極秘で計画中という報道があったようです(5月9日、毎日新聞)。世界的に行き先がなくなってしまい、各国とも苦慮している原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場を日・米・モンゴル共同で作り、ロシアやフランスの原発ビジネスに対抗する計画だったとのこと(参考)。日米両国が主導、というところにリアリティを感じてしまいます。実際にはアメリカに日本がくっついてるいつもの構図なんでしょうけど。すごいですね。自国内で処理できないものを、他国に押し付けるつもりなんだから。沖縄に基地を押し付けたのとまったく同じやり口です。
これに対し、モンゴル政府や市民団体が反対を表明。計画は暗礁に乗り上げたようです。当然でしょうね。
モンゴル、核廃棄物受け入れを拒否 「処分場」構想は頓挫か - J-CAST
核最終処分施設:モンゴル市民団体反発 日本などの計画に - 毎日新聞
水面下で行われたというこの計画をひどい話だと思う一方で、まあ、そうなるよね、という思いもあります。だって、そんな危険なものは自分と自分の関わりのある人たちからできるだけ離れたところに放置したいと思うのがふつうの人間の感覚でしょうから。自分の子どもに、核廃棄物の処理作業をしてほしいと思う親はいないでしょう(生物学的な本能として当たり前の心情だと思います)。ぼくは嫌です。自分の仲間がいる場所から離れたところに置きたい。自分たちとは関係のない人たちのところに置きたい。それがふつうの心情であって、倫理的観点から自分がすべての責任を背負うんだなんて考える人はたぶんいないでしょう(そういう人たちが多数ならばそもそもこんなことになっていないわけで)。で、そうであるとして、「仲間」の境界をどこに引くのか、たぶんそれはどんどん広がるしかないんじゃないかな、と思ってしまいます。本心なのかタテマエなのかは別として、情報が平坦化・共有されて世界中が注視する中では、あからさまに不平等な政策が実現できるわけもなく、そうせざるを得ない。だから放射性廃棄物の問題はこのままいくとどこも受け手が無くなって、最終的には宇宙空間に放り投げるというプランになっちゃうんじゃないかな(技術的なことはまったく知りませんので完全なる妄想ですが)。
河野太郎氏が、7月29日の外務委員会でモンゴルの最終処分地案について質疑したことをブログに掲載しています。
原子力政策が腐る瞬間 - 河野太郎ブログ
松下副大臣 我が国で発生した使用済み核燃料をモンゴルにおいてあるいは外国において貯蔵、処分するという意向は一切有しておりません。
河野太郎 今、使用済燃料とおっしゃいましたが、高レベル放射性廃棄物についても同様ですね。確認してください。
松下副大臣 同様です。
(中略)
河野太郎 高レベル放射性廃棄物の最終処分地を決めるのは、西暦何年までに決めるのか。...概要調査はいつまでに終えるのか、最後の調査をいつまでに終えて最終処分地を決定するのか、現在の政府の最新の方針をまず教えてください。
横尾政府参考人 2028年前後を目途に最終処分の建設地を選定するということになってございます。..この処分計画では、精密調査の選定を2013年前後を目途に精密調査の地区を選定するということとされていますので、それまでに文献調査と概要調査を終えて、その上で精密調査を選ぶというのが現在の計画スケジュールです。
河野太郎 文献調査、概要調査それぞれ何年かかりますか。
横尾政府参考人 文献調査についてはおおむね一年から二年、概要調査については三年から四年というふうに想定しています。
河野太郎 ..2011年の現時点で文献調査の候補地も決まっていないということは、2013年に精密調査を始めるというのはほぼ不可能ではないんでしょうか。
横尾政府参考人 現行の計画でのスケジュールというのが大変厳しくなっているのは事実でございます..
質疑はこの後、とにかくガンバル、最後まであきらめないでガンバル、といった中学生並みの精神論が延々と続きます。その言葉とは裏腹に、この問題を解決したいという思いはまったく伝わってきません。ここで目標として挙げられている目途も、そのための進め方も、この人たちは具体的な策をぜんぜんもっていないんであろうなあとしか思えない。それも当然といえば当然で、原子力が国策として推進されてきてから50年ものあいだ、曖昧なままに放置されてきた問題であるわけなので、そんな急に妙案が出てくるはずもありません。高速増殖炉もんじゅや六ヶ所村の再処理場によって使用済み核燃料は永久に再利用できる、だから原発は経済的で持続可能でクリーンなんだ、というのが前提になっていたのだから。
しかし現実に事故が起こり、安全神話が崩れ去ったいま、もういちどその前提について考え直さなければならないと思います。諸外国の多くも高速増殖炉からは撤退しています。高速増殖炉もんじゅや六ヶ所村の再処理場によって使用済み核燃料を再利用する、だからとりあえず最終処理については考えない、という前提をまずは消去して、その上で原発をどう運用していくか。原発ゴミの最終処理をどうするのかについて考えない限りは、原発が無ければ日本経済が破綻するだの電力が不足するだのという意見はすべて無責任なわがままにしか見えません。
だって、高レベルの放射性廃棄物はぼくたちの子ども世代はもちろん孫世代、ひ孫世代まで引き継がれるものですから。ぼくは今回の原発事故で、使用済み核燃料が建屋内の貯蔵プールに浸されているだけだということをはじめて知りました。実際に稼働している原子炉だけではなく、使用済み核燃料も事故処理の過程でずいぶんと脅威に感じましたよね。放射性廃棄物を保管するということは、そのようにいつ漏れるかわからない時限爆弾を抱えるようなものです。いま原発をやめたとしても、後の世代に時限爆弾を抱えさせるということです。
もし仮に、横尾政府参考人が言ったスケジュール通りに事が進んだとしても、最終処分の建設地を選定するのが2028年。ぼくは51歳、息子は19歳になっています。そのときに、ようやく場所が決まるのだそうです。そこから施設を建設して、実際に稼働しはじめるのはもっとずっと後になるでしょう。ぼくはもう生きていないかもしれない。ぼくは、自分の子どもに核廃棄物の処理をさせたくはありません。であるならば、どこかの知らない国に置いてくるか、あるいは宇宙に放り出すかするしかないのか。いや、やっぱり自分の国で出したゴミは自分の国で落とし前をつけなきゃならないでしょう。しかしそれは、倫理性という観点だけでは前にすすまない気もします。自分の子どもを守りたいという本能に嘘はつけないし、つく必要もないと思うんです。そういった自分の感情を認めた上で、自分の子どもや身内を守りたいという気持ちと、いやだけどしょうがないからやるしかないという現実の折り合いをつける必要があります。とても難しいことですね。面倒なことを子の世代に押し付けることになるわけですから。申し訳ないけど、ごめんな、という気持ちでお願いするしかないんじゃないでしょうか。たぶん、その心の持ちようが、実際の議論や政策を進めていく上で舵取りの役目を果たしていくのではないかと思います。
諸外国における放射性廃棄物の取り組みの中では、現在のところ、「地層処分」が最善の解決策とされており、世界に先駆けてスウェーデンで高レベル放射性廃棄物を永久的に埋設する施設の建設が計画されていましたが、それに先立ってフィンランドが世界で初めて最終処分場の建設に着手したそうです。
管理、10万年先まで 透明手続きで実現、課題は危険性伝承 - 毎日新聞
同国の最終処分地選定は1980年代にさかのぼる。ポシバ社によると、当初は100カ所以上の候補地があったが、86年のチェルノブイリ原発事故で懸念が高まり、最終的には誘致に熱心だったオルキルオトが選ばれた。各国で最終処分場の建設が困難ななか、フィンランドで実現できた理由について、雇用経済省エネルギー局のフットネン次長は「初めから徹底的に情報公開し、国民的議論を深めた」と語り、手続きの透明性と民主的手法の重要性を説いた。
フットネン氏は「わが国は使用済み核燃料の輸出入を禁じている」と発言し、同施設では他国のゴミは引き受けないという意思を示しています。すごくまっとうな考え方だと思います。北欧の民主主義の成熟度が伺い知れますね。
ちなみに原発の数は、フィンランドが4基、スウェーデンは10基だそうです。
日本は、えーと…。
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河野太郎 文献調査、概要調査それぞれ何年かかりますか。
横尾政府参考人 文献調査についてはおおむね一年から二年、概要調査については三年から四年というふうに想定しています。
河野太郎 ..2011年の現時点で文献調査の候補地も決まっていないということは、2013年に精密調査を始めるというのはほぼ不可能ではないんでしょうか。
横尾政府参考人 現行の計画でのスケジュールというのが大変厳しくなっているのは事実でございます..
質疑はこの後、とにかくガンバル、最後まであきらめないでガンバル、といった中学生並みの精神論が延々と続きます。その言葉とは裏腹に、この問題を解決したいという思いはまったく伝わってきません。ここで目標として挙げられている目途も、そのための進め方も、この人たちは具体的な策をぜんぜんもっていないんであろうなあとしか思えない。それも当然といえば当然で、原子力が国策として推進されてきてから50年ものあいだ、曖昧なままに放置されてきた問題であるわけなので、そんな急に妙案が出てくるはずもありません。高速増殖炉もんじゅや六ヶ所村の再処理場によって使用済み核燃料は永久に再利用できる、だから原発は経済的で持続可能でクリーンなんだ、というのが前提になっていたのだから。
しかし現実に事故が起こり、安全神話が崩れ去ったいま、もういちどその前提について考え直さなければならないと思います。諸外国の多くも高速増殖炉からは撤退しています。高速増殖炉もんじゅや六ヶ所村の再処理場によって使用済み核燃料を再利用する、だからとりあえず最終処理については考えない、という前提をまずは消去して、その上で原発をどう運用していくか。原発ゴミの最終処理をどうするのかについて考えない限りは、原発が無ければ日本経済が破綻するだの電力が不足するだのという意見はすべて無責任なわがままにしか見えません。
だって、高レベルの放射性廃棄物はぼくたちの子ども世代はもちろん孫世代、ひ孫世代まで引き継がれるものですから。ぼくは今回の原発事故で、使用済み核燃料が建屋内の貯蔵プールに浸されているだけだということをはじめて知りました。実際に稼働している原子炉だけではなく、使用済み核燃料も事故処理の過程でずいぶんと脅威に感じましたよね。放射性廃棄物を保管するということは、そのようにいつ漏れるかわからない時限爆弾を抱えるようなものです。いま原発をやめたとしても、後の世代に時限爆弾を抱えさせるということです。
もし仮に、横尾政府参考人が言ったスケジュール通りに事が進んだとしても、最終処分の建設地を選定するのが2028年。ぼくは51歳、息子は19歳になっています。そのときに、ようやく場所が決まるのだそうです。そこから施設を建設して、実際に稼働しはじめるのはもっとずっと後になるでしょう。ぼくはもう生きていないかもしれない。ぼくは、自分の子どもに核廃棄物の処理をさせたくはありません。であるならば、どこかの知らない国に置いてくるか、あるいは宇宙に放り出すかするしかないのか。いや、やっぱり自分の国で出したゴミは自分の国で落とし前をつけなきゃならないでしょう。しかしそれは、倫理性という観点だけでは前にすすまない気もします。自分の子どもを守りたいという本能に嘘はつけないし、つく必要もないと思うんです。そういった自分の感情を認めた上で、自分の子どもや身内を守りたいという気持ちと、いやだけどしょうがないからやるしかないという現実の折り合いをつける必要があります。とても難しいことですね。面倒なことを子の世代に押し付けることになるわけですから。申し訳ないけど、ごめんな、という気持ちでお願いするしかないんじゃないでしょうか。たぶん、その心の持ちようが、実際の議論や政策を進めていく上で舵取りの役目を果たしていくのではないかと思います。
諸外国における放射性廃棄物の取り組みの中では、現在のところ、「地層処分」が最善の解決策とされており、世界に先駆けてスウェーデンで高レベル放射性廃棄物を永久的に埋設する施設の建設が計画されていましたが、それに先立ってフィンランドが世界で初めて最終処分場の建設に着手したそうです。
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フットネン氏は「わが国は使用済み核燃料の輸出入を禁じている」と発言し、同施設では他国のゴミは引き受けないという意思を示しています。すごくまっとうな考え方だと思います。北欧の民主主義の成熟度が伺い知れますね。
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