使用済み核燃料はどこへ?2011/08/06 22:15

日本の原発から一年間に出る使用済み核燃料は1000トン~1300トン。この中には、核分裂せずに残ったウラン235の他に、超ウラン元素(プルトニウム239・アメリシウム241など)と核分裂生成物(セシウム137・ストロンチウム90など)がたくさん含まれています。いずれも危険極まりない放射性物質である事は言うまでもありません。

この使用済み核燃料が、どこへどう運ばれているのかを追ってみました。

まず第一の行き先は、国内の再処理工場です。
日本で営業運転中の再処理工場は東海再処理施設しかありません。これは実験的なプラントなので、年間200トンほどの処理能力しかありません。貯蔵能力も限界のようで、ここ数年は、東海村への使用済み核燃料輸送は、ほとんど行われていません。

もう一つは、試運転中の六カ所村再処理工場(反対運動が続いています)。処理能力は年回最大800トンです。ここの使用済み燃料プールには3000トンの貯蔵ができますが、運転開始前なのに、すでに満杯。今年に入ってからは、一切の使用済み核燃料を受け入れていません。

なお、日本で使用済み核燃料を輸送する場合、トラックによる陸上輸送と船舶による海上輸送を併用します。警備は警察と警備会社で、自衛隊は動員しません。
文科省のサイトに、高速道路での核燃料物質(使用済み核燃料と思われる)の陸上輸送の写真が掲載されています。物々しい警戒態勢と言うよりは、普通の風景の中をとてつもなく危険な物質が移動している姿に底知れぬ恐怖感を感じます。

次は、使用済み核燃料の海外への輸送です。行き先は、フランスのラ・アーグとイギリスのセラフィールドでした。過去形にしたのは、どちらも契約量のすべてを数年前までに運び終えており、現在は、再処理を終えたウラン235、プルトニウム239とそれを原料にして作ったMOX燃料(プルサーマル用燃料)、ガラスで固められた高レベル放射性物質(ガラス固化体)の日本への返却が続けられています。
前の記事で書いた「セラフィールド(イギリス)のMOX燃料工場の閉鎖」は、日本から来た使用済み核燃料の再処理がほぼ終わり、MOX燃料の製造も完了するということを意味しているのでしょう。少なくともMOX燃料工場の客は、日本だけだったわけですから(再処理工場の方は、スイスなども顧客のようですが、そのスイスも「脱原発」宣言。再処理工場も先行きは見えなくなりそう)。

日欧間の核物質輸送では主に英国籍の使用済核燃料輸送船が使われています。英国の警備会社が雇った武装した警備員が乗り込んでおり、船には機関砲や武装高速艇を搭載しているそうです。ルートはパナマ運河経由なので、カリブ海諸国から「安全性に問題がある」と非難されています。

さて、使用済み核燃料の行き先をもう一度見直してみましょう。海外での再処理は契約終了。国内の再処理工場は満杯。じゃあ、どこへ?
各原発が山のように溜め込んでるのが現状です。その総量は9000トン近くになるようです。
日本中の原子炉が通常運転を続けると、年間1000トンから1300トンの使用済み核燃料が出てきます。六ヶ所村再処理工場の処理能力は年間800トン。誰が計算しても計算が合いません。
どんどん溜まる危険な使用済み核燃料。トイレのないマンションと揶揄される所以です。
加えて、再処理工場は、原子炉1機に比べての1万倍の放射性物質を出すなど、大きな問題を抱えています。

長くなりそうなので、再処理工場の詳細については、別な記事で書くことにしますが、とりあえず、使用済み核燃料の行き先を追っただけでも、問題山積なのはお分かりいただけたかと思います。

コメント

_ 薫 ― 2011/08/07 10:40

おはようございます。

浜岡原発に使用済み燃料、新燃料合わせて6625本保管されています。

使用済み燃料はある一定期間(数年)冷やさないといけない。
しかし持っていく場所がないですよね?

浜岡原発を停止しても、福島原発のように電源喪失したら、、大惨事になります。

ほんと腹ただしくなります!

見切り発車した原子力、人間のてにおえるものではないですよね。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/08/07 12:25

>薫さん
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りで、原子力発電は、見切り発車した暴走列車なんですよね。なんとか、ここで止めないと… という思いです。

_ tossini ― 2011/08/07 13:48

管理者氏の言うように、まさに「トイレのないマンション」といわれる所以。
来訪者数を読み間違え、初詣や花見の仮設トイレが汚物で溢れ返っている光景ならば、まだ冗談ですまされるでしょう。
しかも、一度排出された汚物は、臭い&不衛生ではあるけれど、それ以上の悪さをする懸念はありません。有機物であるXXXは、やがて分解されるしーーーって、それまで我慢するのも辛いけれど……。
一方、映画のタイトルではないが、まさに”Eternal”に生物に悪影響を与える核物質が溢れ返った地球ーーーこれは、地獄絵図です。

_ 塩爺 ― 2011/08/07 22:13

使用済み核燃料の運搬ルートに、常磐自動車道、首都高6号三郷線が指定されています。http://www5a.biglobe.ne.jp/~genkoku/kohza-004.htm
我が家から2km弱の近距離です。
過去、使用済み核燃用が近くを通過したと思うとぞっとします。

英、米、仏から輸入されたウラン、プルトニウム等の核燃料も同じルートで搬入されてきたと推測されます。

運転者さん!安全運転をお願いします。
いや!一切の運搬絶対お断りです。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/08/07 22:36

>塩爺さん
コメントありがとうございます。
少なくとも、使用済み核燃料に関しては、海外・国内含めて、行き先がなくなっているのが現状です。
仮に原発が全廃されても、最終的には、今、各原発に山積されている使用済み核燃料をどこかに持って行って、地中深く埋めなければなりません。これは苦渋ですが、少なくとも、もうこれ以上、使用済み核燃料を増やすようなことはしてはいけませんよね。

_ うっちゃん ― 2011/08/08 06:28

陸上、海上、どこを輸送されても恐ろしいですね。警察、警備などのセキュリティーが付いているとはいえ、ある意味原発自体よりも事故やテロが発生しやすい環境にあるような…。

廃棄物も行き場がなく蓄積される一方となると、管理費も膨大なものになることでしょう。運送、処理、管理、警備…これらをすべて考えると、むしろ一番コストのかかりそうな発電方法ですね。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/08/08 23:38

>うっちゃんさん
同志社大学の大島堅一教授の試算によると、1970年~2007年の発電コストは、
原子力=10.68円/キロワット毎時
火力=9.9円/キロワット毎時
水力=7.26円/キロワット毎時
だそうです。
国が投じた補助金等や廃棄物処理のコストは算入されていますが、今回のような事故が起きた場合の対策や補償の費用は含まれていません。警備関係も、おそらく算入されていないと思います。

_ egechan ― 2011/08/22 19:32

このサイトに限らず、原発の議論を見ていて、どうしてもおかしいと思う点があるので述べます。
それは危険度の相対比較です。放射線の危険性はいろいろ述べられていますが、自動車による害との比較に言及されている例はほんのわずかしかありせん。2010年度、日本での交通事故による死傷者数は90万人(届出無しを加えるとこれ以上)で、福島原発運転開始からの40年間の積算交通事故死傷者数は3300万人!!しかも、数字は原発でいうと高レベル被曝での急性死傷者数だけに対応し(福島原発事故では0人)、現在問題となっている低レベル被曝被害は自動車による間接被害(肉体・精神両面の健康被害、環境汚染等)が加わります(原発の低レベル被曝に対応)。この間接被害を加えると自動車による被害というのは原発被害より数桁上になります。たばこも加えて、これだけ危険なものを無批判に受け入れて、それに少し付け加わる危険なものだけを喧伝するのは全く説得力がないと思います。どう思いますか?

誤解の無いように言及しますが、私は使用済み核燃料の扱いがきちんと出来ない限り原発は反対と言う立場です。でもそれより、自動車害のほうが10、100倍も怖いのです。塩爺さんは核燃料の運搬車がこわいと発言されていますが、自動車がビュンビュン走って毎年90万も殺傷している状態は怖くないのですか?ヒャッ、ドキッとした経験はないのですか?

_ 正義のひばり仮面 ― 2011/08/22 22:49

egechanさんへーーー
一時、御用学者達がこれと同じことを、繰り返し叫んでいましたが、
いまだに、こんな議論をするお方がおられるとは?
「皆さん戦争反対、戦争反対といいますが、
交通戦争という言葉にもあるように、
交通事故で死ぬ人も多いのです。
その意味では、ナパームも原爆も自動車も同じです」
というめちゃくちゃな論理そのものです。

こんなすり替えにもならない詭弁で、
自動車と原発を横並びにしようとするとは、
あなたの書き込みからは、
「悪意」以外の何ものも感じられません。

原発村陣営は、メディアやWebの工作要員を配置しているそうですが、
あなたは、もしかしたら以前にも意味不明の物言いをされていたあの方ですか?

_ 私設原子力情報室 ― 2011/08/23 02:17

●地球規模という広範囲で、たくさんの人々の遺伝子を、長い間、それも世代を超えて傷つけ続けるのは核兵器や原子力事故による核汚染だけです。
●核汚染ほど、生態系に深く、そして長い間入り込んで、自然環境や農業・漁業に被害をもたらし続けるものは他にありません。
●廃棄物処理に最低でも数十万年を要するプラントは原子力発電だけです。
●どんなに理想的な運転を行ったとしても、原発や再処理工場からの放射性物質の漏出を止めることはできません。
●一切、中和や無毒化ができない「毒物」は放射性物質だけです。
●軍事転用された時に一瞬で数万人を殺戮する兵器になるのは原子力だけです。
●核兵器と原発が登場するまで、地球誕生から46億年に渡って、地球にある放射性物質が増えたことは、一度もありませんでした。

…といったことです。
もちろん、交通事故も少ないに越したことはありませんが。

_ ひばり仮面・再び ― 2011/08/23 02:41

「人が死ぬ可能性を秘めている点では一緒」
として、原発とクルマを横並びにする欺瞞は、
管理人様のご指摘の通りですね。
お見事です!!

恐らく、あなたがとてもお好きなはずの
警察が実施している
「交通安全への努力」も意味がない、
と仰るのですね?

最近では、如何に推進派といえども、
自動車事故と原発を横並びにするほど、
露骨なお○○は少なくなりました。
だって、それは
こう言っているのと、同じだからです。
「子供達のもっている鉛筆だって、
その気になれば人を殺せるじゃないか。
その意味では、鉛筆も原発も、
三角定規もコンパスも、
原発と一緒じゃないかぁ~!
君たちは、鉛筆に怯えて、
原発の進歩を邪魔する悪の手先だぁ~~!」

_ egechan ― 2011/08/23 19:36

正義のひばり仮面さんへ
1)あなたは固定化された信念(信仰?)にとらわれていませんか?
まず、現状理解と論理の理解不足があります。
人間の生活に便利なものの導入は必然です。問題はそれに付随する弊害がどの程度あるのか、その弊害と便利さとの比較です。原発にしても自動車にしてもこの両面が特に強いので皆さん苦労するわけです。その点で殺す壊すが目的の兵器と生活直結技術とをごっちゃにするのは議論の根底がおかしいです。ナパーム弾や核兵器、更に逆の方向ですが、「鉛筆」を持ち出すなんて、感情に支配されていると思われますよ。

2)弊害に関しては既に現実となっているもの、可能性として考えられるものがあります。
・自動車に関しての問題点は、既に現実となっている弊害が極度に大きいのです。しかし、一時期交通戦争ということばがはやりましたが、死者数が減りだした頃からあまり騒がれなくなりました。それが問題ということです。私のまわりでも、まず自動車を持つことは当然の権利、免許を取ることが当然、駐車場を増やす事が必要という気運は全然治まりません。事故負傷者数はほんの僅かしか減っていないのも現実です。これらは日常化している現実です。日本の経済が右下がり気味にもかかわらず新規に幹線道路をどんどん造っています。あなたは「いまだに、こんな議論をするお方がおられるとは」と述べていますが、自動車事故弊害問題は解決したと思っているのですか?
・原発といった核分裂利用技術が現在の人間の制御可能範囲にあるのかといえば、使用済み核燃料の処理法が全然確立されていないという理由で、私はあるとは考えていません。ですから原発は廃止すべきと考えていることを述べたはずです。ひばりさんの“原発村・・・・・・”の発言は凝り固まった二項対決思想そのもので稚拙です。“反原発に少しでも疑問点、批判(否定ではないことに注意)を述べたら、即敵”という発想は、原発推進派が言う”思考停止の反原発原理主義者“というレッテルが正しいということを証明するもので、管理人さんが意図している方向にマイナスです。
議論というものはどうすべきものかを管理人さんに教えて貰ってください。



管理人さんへ   ご意見・情報提供ありがとうございます。
1)「世代を超えて傷つけ続けるのは核兵器や原子力事故による核汚染だけです」と言うのは正しくありません。多環芳香族化合物、一時期問題となった環境ホルモンも世代を超えて傷つけます。自動車排ガスにも含まれています。
2)「どんなに理想的な運転を行ったとしても、原発や再処理工場からの放射性物質の漏出を止めることはできません。」この点は、弊害ゼロという技術はあり得ないのであまり強調されない方がよいと思います。未来まで、原発制御技術は「絶対」出来ないといいきる自信はありますか?その根拠は?
3)「一切、中和や無毒化ができない「毒物」は放射性物質だけです。」これも誤解を招く表現です。中和、無毒化が放射性物質そのものを消失させるという意味であれば正しい表現ですが、現実には、遮蔽等で弱毒化は出来るわけです。
4)「核兵器と原発が登場するまで、地球誕生から46億年に渡って、地球にある放射性物質が増えたことは、一度もありませんでした。」これは正しいでしょうが、人間に被害を与える人工化合物(農薬、種々薬物)がありますので、強調しないほうがよいでしょう。これをいうなら、自動車なんてつい最近まで無かったわけですから。


結論)
「五十歩百歩」という言葉をご存じですよね。これは孟子に書かれている成句です。一般には五十歩逃げた人間と百歩逃げた人間は同罪だと言う意味で使われます。しかし、人間の生活を考えた場合、私はこの成句は五十歩と百歩は違うということを意味していると考えています。すなわち、すべての生物はある妥協点を持って生きているわけです。微細な点では白黒つける場合もありますが、総合的には中庸で生きています。ところが、議論となると究極のところまで二項対決となる例があまりにも多くあります。議論としては面白くても、この論理で生活すべてを支配することは出来ません。管理人さんはおわかりと思いますが、正義のひばりさんのような方もおられますから。
私の主張は、便利さの影で人間生活を脅かすものを総体的に見ないといけないと言うことです。再生可能エネルギー推進者には我々のエネルギー漬け価値観見直しと一体化して原発問題を考えるという立場の人が多くいます。その中で自動車問題は最大の課題となっています。このブログでも、その視点を持って欲しいのです。私は自動車を一掃せよなどといっているのではなりません。せっかく原発事故で危機管理、エネルギー感覚を見直す時期に来ているのなら、現実に多くの人を殺傷し環境汚染も甚だしい自動車についても考えるべきで、今回は不幸ではあっても、その絶好のときだと考えています。このブログが核問題そのものしか扱わないのであれば、私が意見を述べる場を間違っていたと言うことで、今後アクセスしませんが。

_ 私設原子力情報室 ― 2011/08/24 01:40

egechanさんは、結局、当方が提示した7点の原則的な指摘(ホントは他にもある)に対して、一部の揚げ足を取っているに過ぎません。また、細かく言うと、その逆指摘も間違っているところがたくさんあります(コメント合戦は不毛なので詳細は書きませんが)。
長文のコメント、せっかくですから公開させてもらいますが、読まれた方は、必ず、当方からの7点の原則的な指摘を読み直して頂けるよう、お願いします。

_ ひばり仮面 ― 2011/08/24 12:47

egechanさんに、手短にお答えします。

●「鉛筆」を持ち出すなんて、感情に支配されていると思われますよ。
■それが何か?
もしかしたら、ご家族に自動車で悲しい目に遭われた方がおいでなのかも知れませんが、カーヘイトが感情的かつ信仰的なので、それを数倍上回る感情論で意地悪したまでです。性格が悪いもので…

●あなたは「いまだに、こんな議論をするお方がおられるとは」と述べていますが、自動車事故弊害問題は解決したと思っているのですか?
■「こんな」とは、
コンテクストを見ていただければ明確ですが、「クルマと原発を意識的に同一視する」ということであり、「交通災害を語ること」それ自体ではありません。賢いあなたが、それを分からぬはずもなく、意図的に読み違えられましたか?

●ひばりさんの“原発村・・・・・・”の発言は凝り固まった二項対決思想そのもので稚拙です。“
■確かに、これは意地悪が過ぎました。お詫び申し上げます!

_ プチ勝間さんに伺います ― 2011/08/24 16:47

勝間某のようなこの方の問いかけは、
そのまま逆に疑問を投げかければ、
この方自身も答えられないでしょう?


1)「世代を超えて傷つけ続けるのは核兵器や原子力事故による核汚染だけです」と言うのは正しくありません。
「だけ」でなければ、目をつぶるのですか?


2)「将来、原発制御技術は『絶対』出来るといいきる自信はありますか?その根拠は?
よしんば、できる(私は「出来る」はひらきます)として、それまで(何十年後ですか?何百年後ですか?)垂れ流しや事故には目をつぶるのですか?


3)福島はもとより、千葉、埼玉を含めたホットスポット全体に、「”現実に”、遮蔽等が出来るわけ」ですか?

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