集団ヒステリーとマインドコントロール2011/09/23 13:10

9月19日。原発に反対する6万人という大勢の人たちが、東京・明治公園を埋め尽くしました。私もその一人として参加しましたが、明治公園にあんなに人が集まったのを見たのは初めてです。

集会&パレードの詳細は、他のサイトでたくさん紹介されていますので、ここでは、集会での大江健三郎さんの発言を出発点にして、原発に関する「集団ヒステリーとマインドコントロール」の問題を考えていきます。

まず、当日の大江さんの発言。
「イタリアの原発に関する国民投票で反対が九割を占めたことに対し、(石原伸晃自民党幹事長が)集団ヒステリー状態になるのは心情として分かると言った。イタリアでは、人間の命が原発により脅かされることはない。しかし日本人は、これからさらに原発の事故を恐れなければならない。私らはそれに抵抗する意志を持っているということを、想像力を持たない政党幹部や、経団連の実力者たちに思い知らせる必要がある。そのために何ができるか。私らには民主主義の集会や市民のデモしかない。しっかりやりましょう」

大江さんは、今や世界的に有名になってしまった石原伸晃自民党幹事長の「イタリアの脱原発=集団ヒステリー」発言をやり玉に挙げました。集会での発言だけでは、ちょっと分かり難いので、9月19日の毎日新聞朝刊に大江さんが寄せた「フクシマを見つめて」を紹介します。

【イタリアの原子力計画を再開しないことを九割が求めた国民投票に女性の力が大きいのをほのめかす用語法で、「集団ヒステリー状態」だと日本の自民党幹事長が侮辱した時、―むしろ生産性、経済力尊重のマス・ヒステリアに、この国の男たちは動かされているだろう、と言い返したイタリア女性の映画関係者がいます。この国の男たち、というのは、どの国においてであれ、女たちは生命というものの上位にどんな価値もおかないからだ。もし日本が経済大国どころか貧困におちいっても、ついには見事に乗り超える女性たちを、私らは日本映画で知っている!】(注: ヒステリアはhysteriaのイタリア語発音=ヒステリー)

日本人の男たちこそ「生産性、経済力尊重のマス・ヒステリア」に陥っていると反論した、このイタリア人女性映画関係者の発言は痛烈です。
その通りなのです。原発をずっと容認してきた私たちは、言ってみれば、緩やかな集団ヒステリー状態状態に。いつの間にか、「原発無しでは日本は立ちゆかない」という根拠の無い幻想に取り憑かれていたのです。背景には、国・電力会社・マスメディアが一体となって展開してきたマインドコントロールがあります。

原発が立地する地方を丸め込んできた「原発は安全」キャンペーンが、嘘八百だったことは、火を見るよりも明らかです。嘘と札束。それが、マインドコントロールの要でした。

もっとも典型的なのは「電力の30%は原子力」というキャンペーン。「30%」は、原発の稼働率を上げるために、火力や水力を休ませた結果で出てきた数字です。発電所の設備量(発電能力)で見ると、原発は22%しかありません(18%という説も有り)。また、日本全体で原発以外の発電能力を合計すると17560万キロワットになるそうですが(http://www.dcc-jpl.com/diary/2011/03/19/japan-powerplant-capacity/)、今2011年9月23日現在、稼働している原発は11基。その発電能力の合計は986万キロワット。たった5.3%にしかなりません!
それも、動いている原発は、基本的にフル稼働という宿命を負っていますので、その分、火力や水力を休ませているのです。もう、どこにも原発を続ける理由はありません。
こういった事実を正確に伝えずに、マスメディアが展開している「アンケート」も罪深いです。多くの場合、「ただちに全廃」「時間をかけて全廃」「現状維持」「原発を増やす」という選択肢になっていますが、報道では政府の発表を無批判に伝えているので、「ただちに全廃」すると、あたかも日本経済が沈没するかのようなマインドコントロールが効いています。アンケート自体は否定しませんが、並行して、客観的な事実を正確に伝えるべきです。

いつの間にか、私たちを支配していた原発に関する集団ヒステリーとマインドコントロール… そろそろ、抜け出さないといけません。いや、それどころか、フクシマを経験した私たちは、脱原発で世界の最先頭に立つ必要があるのです。

9月19日の6万人は大きな出来事でした。しかし、まだまだ出発点に過ぎません。身も心も引き締めてかからないと、まだ騙されてしまいます。

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