再度、ストロンチウム90に警戒を2011/04/11 12:15

相変わらず、ストロンチウム90のデータが、東電からも国からも、まったく出てきません。もっとも危険な核分裂生成物の一つと言われているのに…

ストロンチウム90の半減期は約30年。ベータ線を出して、イットリウム90になります。ベータ線とは放射線の一種で、飛び交う電子(電子線)と考えればよいでしょう。電磁波(光)の一種であるガンマ線にような透過力はなく、アルミ板1枚でも止まります。従って、外部被曝としては、放射性物質が肌に直接乗るようなことにならなれば心配はないでしょう。
一方、内部被曝を考えると深刻です。ストロンチウム90は、カルシウムと似た化学的性質を持つため、人間を含む生体は、飲食を通して体内に取り込んだストロンチウム90をカルシウムと勘違いして骨に集めてしまいます。骨の中にある骨髄には造血幹細胞が。これが分裂・分化して、赤血球や白血球、血小板になります。骨に集積したストロンチウム90と造血幹細胞の間には、アルミ板どころか紙1枚すらありません。ストロンチウム90が発するベータ線が造血幹細胞をピンポイントで痛めつけます。ストロンチウム90が白血病を生むメカニズムです。
また、一旦体内に入ってしまうと、基本的に検出不可能になってしまうという怖さもあります。例えば、ヨウ素131やセシウム137であれば、体内で崩壊する時に、ベータ線だけでなく、ガンマ線を発します。これは透過力が強いので身体の外にも飛び出してきます。一方、
ストロンチウム90が出すのはベータ線。透過力が弱いため、身体の外では放射線を検出できません従って、ストロンチウム90による内部被曝が起きているかどうかを知るには、尿や便を調べるしかありません。ただその検査も誤差が大きく、言ってみれば、ストロンチウム90による内部被曝の実態は、死んでからしか分からないのです

ストロンチウム90は、使用中の燃料棒や使用済み燃料棒に、セシウム137とほぼ同量が含まれています。しかし、チェルノブイリの時のデータを見ると、大気中や土壌から検出されたストロンチウム90の量はセシウム137よりも、大分少なくなっています。これは、ストロンチウムが比較的大気中に飛散しにくいからです。
ただ、骨に集積する分、ストロンチウム90はセシウム137の15倍危険だというデータもあります(岩波新書『原子力発電』P89参照)。

もう一つ見落としてはいけないのは、海への流出です。今のところ、私たちは、
ストロンチウム90が海に流れ出しやすい物質なのかすら分かっていません。
放射性物質による大規模な海洋汚染の例としては、イギリス・セラフィールド再処理工場における垂れ流し事故がありますが、Web上でいろいろと探してみましたが、少なくとも日本語では、放射性物質の種類別の放出量・検出量など詳しい資料が見つかりません。セラフィールドは再処理工場の汚水、福島第1は燃料棒そのものからの流出ですが、参考になるデータは残されているはずです。加えて、とにかく福島第1附近の海の現状をつぶさに把握して、データを広く公開する必要があるでしょう。

残念ながら、福島第1の事故は、人類史上最悪の放射性物質による海洋汚染になるでしょう。私たちは、目の前の明日を生きるために、そして未来のために、その実態を知る必要があります。その時、ストロンチウム90のデータは不可欠です。

忌野清志郎 サマータイムブルース&LOVE ME TENDER2011/04/12 15:04

反原発デモに1万5千人 黙殺するマスメディア」に頂いた塩爺さんからのコメントにあった忌野清志郎(RCサクセション)のライブ映像
コメント返信では申し訳ないので、あらためてご紹介します。これは必見ものです!塩爺さん、ありがとう!

「偉大な忌野清志郎の遺言」か「忌野清志郎の偉大な遺言」か… 闘い続けた清志郎の姿に少し目が潤みます。原発全廃へ向けた思いを新たにしました。

ごく微量のストロンチウム90?2011/04/13 08:11

当ブログで再三警告を発してきた、極めて危険な核分裂生成物の一つ、ストロンチウム90が正式に検出されました(変な表現ですが)。

例によって、国やマスメディアは「危険な量ではない」を連呼していますが、少しだけ正確に記事を読んでみましょう。検出された場所は、福島第1原発から30㎞以上も離れた場所です。原発に近づけば近づくほど、ストロンチウム90の濃度が上がるのは当たり前で、20㎞圏、10㎞圏、あるいは原発至近で、どの位の値が出ているのか、すぐさま公表すべきでしょう。海への流出状況も明らかにすべきです。
ストロンチウム90の数値は、立ち入り禁止区域の設定や避難指示、農作物や水産物の安全確保など今後の被爆対策に大きく影響するからです。

また、朝日新聞がサラッと書いていますが、ストロンチウムは水溶性です。海洋汚染や地下水の汚染のことを考えると、これはたいへん重要。注視していく必要があります。

それにしても、関係機関が言っている「ストロンチウム90の検出には1週間から4週間かかる」は本当なのでしょうか?確かに、ヨウ素131やセシウム137の崩壊がガンマ線とベータ線を発するのに対して、ストロンチウム90はベータ線しか発しないという違いがあります。しかし、ベータ線(電子線)をどうやっても検出できないなんて聞いたことありません。また、ベータ線の解析によって、放射性物質の種類は特定できるのではないのでしょうか?この辺の問題について、国側ではない専門家からの意見が欲しいものです。

なお、ストロンチウム90に関する基礎知識は、まずは本ブログ「ストロンチウム90に警戒を」「再度、ストロンチウム90に警戒を」「人類史上最悪の海洋汚染(2) 」をご参照ください。

崩壊した五重の壁(1)2011/04/14 09:29

「原子炉は五重の壁で防御されている」。この原子力安全神話の根底が崩れ去りました。

まず、最初に「五重の壁」とは何だったのか、今一度、まとめてみます。
●第1の壁=燃料ペレット。低濃縮ウラン(ウラン235の濃度が2%から5%)を酸化させた二酸化ウラン製。二酸化ウランの粉末を磁器のように焼き固めて作る。酸化させているのは、金属ウランの融点が1,132 ℃と低く、原子炉では使えないため。二酸化ウランの融点は約2,800 ℃。一つ一つのペレットは、直径1㎝、高さ1㎝ほどの円柱形をしている。通常は、核分裂反応で発生する核分裂生成物(放射性物質)をペレット内部に保持する。
●第2の壁=燃料棒被覆管。ジルコニウムという金属に、少量のスズやクロム、鉄を混ぜた合金=ジルカロイでできている。融点は約1,850℃。本来は、核燃料や核分裂生成物を燃料ペレット内に閉じ込める役割を果たす。
●第3の壁=原子炉圧力容器。冷却水に溶け込んだ核分裂生成物が外部に漏出することを防ぐ。鋼鉄製で、融点は約1,600℃。福島第1原発2号炉では厚さが約15㎝。
●第4の壁=原子炉格納容器。鋼鉄製やコンクリート製、あるいは鋼鉄とコンクリートの二重構造で作られている。福島第1では、厚さ約3㎝の鋼鉄製。
●第5の壁=原子炉建屋。鉄骨コンクリート製。コンクリートの厚さは1メートルから2メートルある。原子炉を守る最後の壁。

東電や国は難しい説明をしていますが、始まりは地震と大津波によって外部電源と自家発電のシステムがダウンしたことです。原子力発電所の停電。こんな馬鹿げた出来事が、「五重の壁」を崩し、人類史に残る大事故につながっていきます。

電気がないと冷却水を循環させることができません。直前まで臨界運転をしていた原子炉では、残留熱や核分裂生成物の崩壊熱で燃料棒の温度がグングン上がっていきます。炉心を満たしていた冷却水はどんどん蒸発して水蒸気に変わり水位が低下し、燃料棒が水から露出。水が無いから、なおさら温度が上がり、1,850℃をオーバー。最初に溶け出したのは第2の壁=燃料棒被覆管です。
これに先立って、被覆管の附近では水素が発生しています。900℃くらいで被覆管の主原料であるジルコニウムが冷却水から酸素を奪って酸化ジルコニウムに変化し始めたのです。水から酸素が奪われれば、残るのは水素です。
燃料棒の周りで発生したこの水素が、圧力容器と格納容器をすり抜け、原子炉建屋の上部に溜まりました。水素は4%以上の濃度で酸素と同居すると、簡単に発火・爆発します。
何らかの火が引火して水素爆発。水素と一緒に、気化した核分裂生成物=ヨウ素131やクリプトン85、キセノン133なども漏れていますから、爆発で広く大気中に飛び散ったのです。特に3号炉の水素爆発は凄まじく、厚さ1メートル以上もあるコンクリート片が、空高く舞い上がっています。
(続く)

崩壊した五重の壁(2)2011/04/14 11:17

では、その頃、炉内はどうなっていたのでしょうか?
燃料棒被覆管が溶けても、まだ、ペレットの二酸化ウランの融点には至りません。バラバラとペレットは圧力容器の底部に落ち、溜まっていったはずです。ペレットは、核分裂生成物の崩壊熱により、やがて融点を超えて溶け始めます。核燃料が溶岩のようになる核燃料溶融(メルトダウン)です。ただ、完全な空焚きにはなっていないようなので、おそらく水中での出来事でしょう。集まったペレットの中心部でメルトダウンが起き、水と接している部分は固体のままという状態が想像できます。いずれにしても、溶けた核燃料は鋼鉄の融点=1,600℃よりも高い温度なので、第3の壁=圧力容器のところどころを破壊しているでしょう。これが、圧力容器に注入した水が、どんどん漏れていく原因。「穴の開いたヤカンに水を注いでいるようなもの」と揶揄される由縁です。

2号炉では、第4の壁=格納容器の一部である圧力抑制室(サプレッションプール)が破損しているようですが、これも溶融した核燃料によるものではないかと考えられます。

今回の事故では、「五重の壁」がすべて崩れました。それも短い時間の間に。どの「壁」も、しばし持ちこたえることさえできなかったのです。見直してみると、停電によって炉内の冷却水の循環が止まっただけで、簡単にすべての壁が崩れ去っています。地震が… 津波が… 東電は歯切れの悪い言い訳を続けていますが、実は「停電」だったのです。原子力発電が、綱渡りのような馬鹿げた危険とともにあることがよく分かります。

最後に、電力会社などが宣伝している、虚しいばかりの「五重の壁の安全性」をご紹介しておきます。

東京電力「一つが有効でなくなっても、他の壁でバックアップできるという仕組み」
関西電力「放射性物質が外部に放出されるリスクはほとんどありません」
九州電力「原子力発電所は、「多重防護」の考え方を基本としています」
資源エネルギー庁「安全のための五重の壁」
原子力安全技術センター「五重の壁と呼ばれる閉じ込め対策」
日本原子力文化振興財団「がっちりガードを固めています」

どれを見ても、呆れかえるばかりです。

放送禁止歌2011/04/16 10:06

今日4月16日の「毎日新聞」朝刊11面に興味深い記事が載りました。ブロード・キャスターのピーター・バラカンが語る「風評被害を広げているのは誰か」(View Point欄)です。

本ブログでも紹介した、忌野清志郎(RCサクセション)の「ラブ・ミー・テンダー」と「サマー・タイム・ブルース」を巡る話。反原発のメッセージを明確に織り込んだこの二曲は、RCサクセションが所属した東芝EMIの親会社が原発メーカーの東芝だった関係で、発表当時の1988年にいわゆる放送禁止歌になった経緯があります。ただ、日本には特定の歌を禁止する法律はなく、メディアによる自主規制です。

3月11日以降、ピーターのFM番組に、「ラブ・ミー・テンダー」と「サマー・タイム・ブルース」のリクエストが集中しました。しかし、ここで番組責任者は「ラブ・ミー・テンダー」の放送に後ろ向き。「放射能はいらねえ、牛乳を飲みてえ」という一節が風評被害を広げかねないという理由だったそうです。発表から23年を経て、ふたたびメディアによって実行された自主規制=「放送禁止歌」措置。番組では、「サマー・タイム・ブルース」は放送され、「ラブ・ミー・テンダー」は抑え込まれたようです。

ピーターは言います。「ジャーナリズムの役割は権力を牽制することだ」「日本人が風評という言葉の前で思考停止に陥る危険性もある」。
振り返ってみましょう。私たち日本人が被った最大の風評被害とはなんだったのか?間違いなく太平洋戦争時の大本営発表でしょう。国の発表そのものがでっち上げ、巨大な風評だったという恐ろしい歴史です。
今回の福島第1原発の事故に関しても、「ただちに健康被害を及ぼす量ではない」とか、どうも国家が発する風評が目立ちます。70年近く前とは言え、官製の風評に大きな被害を被った日本人は、もっと懐疑的であってよいし、もっと心配性であってよいと思います。

もう一つ、ピーターの発言で印象に残ったのは、「農家や漁業者らは怒りの矛先を消費者ではなく、原子力政策を推進してきた国や電力会社、強いていえば、有権者自身にも向けるべきだと思う」。
この言葉の裏を返せば、国や電力会社が進める原子力政策をなすがままに許してきた日本の有権者は反省すべきだと言っているのでしょう。ピーターの母国・イギリスも原子力発電を積極的に進めています。この発言は、ピーター自身に向けた叱咤激励の言葉でもあるとするのは、私の考えすぎでしょうか?

東電と国が引き起こした大事故に対して、私たちが自主規制する必要などまったくありません。メディアも、権力を監視するという本来の役割を取り戻すべきです。
そして、私たちは怒りを向ける矛先を、もう一度、明確にすべき時期に来ているのではないかと感じています。清志郎の「ラブ・ミー・テンダー」を口ずさみながら…

ロードマップの読み方2011/04/18 16:22

昨4月17日、東京電力から福島第1原発1~4号炉の収集行程表(ロードマップ)が発表されました。しかし、ザッと考えただけでも、本来、対策を考えていく上で必要な情報の多くが欠損しています。
1号炉では、本当に再臨界は起きていないのか?
2号炉のサプレッションプールの破損場所とその規模は?
1号炉と3号炉で水漏れが起きている原因は?
4号炉の使用済み燃料プールの破損状況は?
形の上では様々な対策が考えられているのですが、すべて「着手には線量レベルの大幅削減が前提」。これは何かが間違っています。対策の多くは線量レベルの大幅削減を目指すもののはず。根底から矛盾しています。しかし、それこそが原子力事故の怖さ。ひとたび暴走を始めてしまうと人間の手には負えなくなってしまうのです。
さらに、まだまだ情報の隠蔽が計れているような気がします。今回の事故は、原発反対派まで含めて、日本中の、いや世界中の知力を集めて対処すべきものです。すべての情報を即座に公開すべきでしょう。

オキアミを見れば海がわかる2011/04/18 17:07

オキアミと言えば、釣りのまき餌か佃煮の素材。いや、ヒゲ鯨の主食なんてことをご存じ方もいるかも…

まぁ、小さなエビのような形をしたプランクトンです。ただ、海の生態系の中で果たしている役割は大きく、自分よりも小さい植物プランクトンや動物プランクトンを食べて、みずからは多くの魚の餌になります。

オキアミにはエビと同じような殻があります。殻はカルシウムたっぷり、身にはタンパク質。鯨だけでなく、多くの魚もオキアミを主要な栄養源としています。

さて、福島沖、茨城沖は、オキアミが多い好漁場と言われてきました。暖流と寒流がぶつかり合う海域だからです。秋、秋刀魚が三陸沖から銚子沖へと下るのは、オキアミを追ってのことです。

もし、オキアミが大量に生息する水域で、核分裂生成物のストロンチウム90による汚染が進んだらどうなるでしょうか?このブログで何度か書いてきましたが、ストロンチウム90はカルシウムと似た性質を持っています。生体は、ストロンチウム90とカルシウムの見わけができないので、骨のないオキアミではストロンチウム90が殻に集中的に蓄積することになります。オキアミはせっせと殻にストロンチウム90をため込み、その濃度を上げていきます(生体濃縮)。さらにオキアミを餌とする魚の体内に入り、ここでも濃縮されていきます。
最後は食物連鎖の頂点にいる私たち人間です。この頃には、ストロンチウム90の濃度はオキアミがそれを体内に取り込んだ海とは比べものにならないものになってます。ストロンチム90は、私たちの骨に溜まり、骨髄にある造血細胞に至近距離から放射線(ベータ線)を照射。白血病を引き起こします。

一説ですが、地球上に生きる人類の全体重とオキアミの全体重を比べると、オキアミの方が重いという研究もあります。オキアミは「海洋生態系のエンジンを動かす燃料」とも言われています。ちょっと気取った比喩で分かり難いかも知れませんが、オキアミがいなかったら地球の海の生態系は成立しないということ。それくらい海にとって、そして地球にとって重要な生物なのです。

ストロンチウム90などの核分裂生成物によってオキアミの汚染が進めば、深刻な事態になることは自明です。一方、オキアミは、ほぼ自走能力を持たず、潮の流れの中で漂っている生物です。…ということは、オキアミの汚染度を詳細な海域別に掌握できれば、しばらくの間、魚を獲っても良い海域と、絶対に魚を獲ってはいけない海域が特定できる可能性もあります。

福島・茨城の漁業者のために、そして私たちの健康のために、オキアミの核分裂生成物濃度(特にストロンチウム90)を綿密に、そして継続的に調査する必要があるでしょう。

追記:
この記事を書いている4/18時点で、Googleで「オキアミ 放射線」「オキアミ ストロンチウム」で検索をかけても、有用と思える情報を掲載しているサイトは見つかりません。

地方の力を、住民の力を2011/04/19 16:22

福島第1原発の1号炉や2号炉などと同じGEMark1というタイプの原子炉が稼働するバーモント・ヤンキー原子力発電所を巡り、バーモント州のシャムリン知事が運転期間の延長を認めないと決定。同原発を運営する電力会社「エンタジー」社は、これを不服として、連邦裁判所に訴えました。地元の反発がさらに強まっています。
韓国・釜山発「原発が故障で運転停止 住民が稼動中止申請」
設計寿命の30年を超えて運転を続ける古里(コリ)原発1号機について、4月12日、釜山周辺住民97人が稼働中止を求める仮処分を申請しました。釜山では、福島第1原発の事故をきっかけに「反原発」の動きが強まっています。なお、仮処分申請のその日、同機は電源系の故障により、運転を停止しています。

福島第1原発の事故を受けて、ヨーロッパ各国で脱原発へと大きく舵が切られたのは、皆さんご存じ通りです。
ここへ来て、アメリカと韓国から、それも地域レベルでの反原発・脱原発の動きが伝えられました。原発とともに暮らす住民たちは、世界中、どこでも大きな不安を抱えているのです。

すでに原発がある地域では、「最初に原発を認めてしまったから…」「原発がなくなるとたくさんの住民が失業してしまうから…」といった事情から、原発に反発できない空気があるようです。
しかし、考えてみましょう。そもそもの話として、国や電力会社が「原発は絶対安全だから」という条件を提示して始まった話です。今回の福島第1原発の事故によって、その前提は崩れ去りました。約束は電力会社と国によって反故にされたのです。住民側が過去に交わされた約束や契約に拘束されることはありません。さらに、就労問題についても、原発の稼働が中止された場合には、そこで働いていた住民の就労先を確保する責任は電力会社にあるはずです。
今、日本は統一地方選の真っ只中。地元から反原発・脱原発のうねりが生まれれば、少し変わっていけるのかも知れません。
いや、地元だけでは不十分です。原発の周辺に暮らしていなくても、私たちは望むと望まざるにかかわらず、原発で作られた電気の消費者になっています。一票を投じるための重要な判断基準として、候補者の原発に対する姿勢を確認していく必要があります。

水道水の放射性物質基準値はデタラメ2011/04/19 20:40

本ブログでは、できるだけ感情的な言葉による表現を避けてきました。それで物事が本質的に解決することは有り得ないと考えているからです。

しかしこれだけは、「デタラメ!」と断じざるを得ません。
ニュースでさんざん報じられてきた飲料水(水道水)におけるヨウ素131の安全基準は、「大人は300Bq/L、乳児は100Bq/L」です。「食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値」と「原子力安全委員会が定めた飲食物摂取制限に関する指標値」に従ったもの。一部のメディアは「IAEAが定める世界基準より10倍厳しい値!」とまで報じました。

しかし、世界保健機関(WHO)のホームページ(表部分の翻訳を下に表示)を見たら、卒倒しそうになりました。IAEAが定める3000Bq/Lというのは深刻な原子力緊急時のものであって、こんな水道水が出たら即刻避難というレベルです。
WHOが定める基準は、大人では日本の基準の1/30にあたる10Bq/Lだったのです。WHOが作った一覧表の翻訳を載せておきます。
原子力安全委員会が定めた飲食物摂取制限に関する指標値」は3月17日に、「食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値」は3月24日に慌てて定められたものです。それまで、日本では、WHOが定める10Bq/Lが基準値あるいは指標値として合意されていたのに…(WHOの基準にしても、外部被曝と内部被曝をゴッチャにして扱っているという問題はあるのですが)

さて、例えば東京都健康安全研究センターが調べている
都内の水道水中の放射能調査結果」を見てみましょう。3/22~3/27にかけて、WHOの基準値を大きく越えているではありませんか!
東京でさえ、この有り様です。より福島第1原発に近い地域ではどうなっていたのか?すでに私たちの身体は人体実験の一検体としてしか数えられなくなってしまったのでしょうか…

今、デタラメが横行しています。






Google
WWW を検索 私設原子力情報室 を検索