汚染水問題に出口はあるのか?(上)2013/09/01 16:05

汚染水問題。出口が見えません。
今朝も新たな汚染水漏れが明らかになりました。
毎日新聞【福島汚染水漏れ:高放射線量を検出 敷地内の同型2基から】

タンク鋼板の接合部(例のボルトで接合した部分を指しているのか)から汚染水がしみ出しているだけで、毎時1800ミリシーベルト。
ご存じの通り一般公衆の線量基準は年間1ミリシーベルトです。なんと1,576万8千倍!この放射線を浴びたら、たった2秒で1ミリシーベルトに達します。
放射線業務従事者の年間20ミリシーベルト(5年間で100ミリシーベルト)という基準には40秒で。すべての人が死に至るという7000ミリシーベルトにも4時間足らずで達してしまいます。
まず、この毎時1800ミリシーベルトが、とんでもなく危険な放射線量であることを確認しましょう。

東京電力曰く「タンクの監視は目視で行っていたが、先月末から放射線の測定器を携帯した結果、高い放射線量が観測された」と。放射線を発する高濃度の汚染水タンクの監視に線量計すら持って行かなかった… マスメディアは、その「ずさんさ」を指摘していますが、おそらく東電は、「線量計を持って行けば、どこかで高線量が出てしまうから」と、汚染水漏れを織り込んだ上で、あえてずさんなパトロールで済ませていたのでしょう。

もうひとつ、8月20日に発覚した300トンの汚染水漏れ。
福島民報【タンク汚染水漏れ過去最大300トン 第一原発 高濃度8000万ベクレル検出】

見出しになっている「8000万ベクレル」は「1リットル当たり」の濃度です。漏れたのは300トンですから合計24兆ベクレル。
これはもう非常事態です。「原発事故収束宣言」はただちに撤回すべきです。

ここでひとつ明らかになったことがあります。この300トンには、放射性セシウム(セシウム137とセシウム134)が高濃度で含まれていたのです。
以下は、原子力規制庁が明らかにした数字です。
セシウム134 : 4万6千ベクレル/リットル
セシウム137 : 10万ベクレル/リットル
全ベータ線核種:8000万ベクレル/リットル
参照:キノリュウイチのblog

この数字をどう見るかですが、まず、セシウム除去装置を通したあとの汚染水なのに、放射性セシウムがかなり残っていることが分かります。
ちなみに国が示した<海への放出が認められる放射性
セシウムの濃度限界>は、セシウム134が60ベクレル/リットル、セシウム137は90ベクレル/リットルです。セシウム除去装置の効果は知れたものです。
そして、問題はセシウムだけではありません。見方を変えると、さらに恐ろしい事態が浮き彫りになります。濃度限界をはるかに超える高濃度の放射性セシウムは、汚染水に含まれる全ベータ線を出すすべての放射性元素(全ベータ線核種)の0.18%の過ぎないのです。とんでもなく高濃度の汚染水なのだということが、お分かりいただけるでしょう。
セシウム以外の99.82%には、多くのストロンチウム90が含まれています。その危険性については、以下の当ブログの記事を参照してください。

【ストロンチウム90に警戒を】
【再度、ストロンチウム90に警戒を】
【海からストロンチウム】
【恐怖のストロンチウム90】

長くなってしまったので、ここで記事を分けることにします。

サンオノフレ原発、廃炉決定!2013/06/08 19:58

アメリカ、カリフォルニア州。サンオノフレ(サンオンフレ)原発の廃炉が決まりました。ロサンゼルスとサンディエゴのちょうど真ん中あたりにある原発です。

蒸気発生器の配管からの放射能汚染水漏れに端を発し、住民運動と、それに押されたアメリカ原子力委員会からの稼働不認可などがあり、運営会社が判断したようです。「無理に修理して再稼働しても、元が取れない」と。

サンオノフレ(サンオンフレ)原発
風光明媚な風景の中に、あまりに不似合いな原発。廃炉の道筋は長いですが、その決定は評価に値します。

さて、サンオノフレ原発は、福島第1の沸騰水型とは異なり、加圧水型というタイプの原子炉です。
二つのタイプの決定的な違いは、沸騰水型では、放射性物質をタップリ含んだ冷却水を気化させた水蒸気が直接発電タービンを回すこと。加圧水型では、原子炉で高温高圧に加熱された一次冷却水(汚染水)が、蒸気発生器を通ることで、放射性物質を含まない水(二次冷却水)を水蒸気にして、発電タービンを回すということです。
簡単に言えば、タービンを回すための水蒸気を作るメカニズムが、加圧水型では二段構えになっています。

●加圧水型と沸騰水型

原発推進派の中では、巨大な力が加わるタービンに汚染水が直接触れないため、加圧水型は沸騰水型に比べて、安全性が高いという主張が主です。

一方、加圧水型では、一次冷却水で二次冷却水を加熱・冷却する蒸気発生器の配管が複雑で、重大な問題が起きる可能性が高いということは、1970年代から指摘されてきました。
今回のサンオノフレの蒸気発生器に見つかった、1万5千か所という摩擦による不具合は、上記の危惧が正しかったことを意味しています。

実は、今、世界で原子炉を作っているメーカーの系列は、たった4つしかありません。

日立系=沸騰水型
東芝系(ウェスティングハウス)=加圧水型
三菱重工 + アレヴァNP=加圧水型
アトムエネルゴブロム
です。

サンオノフレは加圧水型で、蒸気発生器は三菱重工製。三菱重工は巨額の損害賠償請求を受けるようです。

三菱重工は、トルコへの原発輸出計画を直ちに中止すべきです。

そして、カリフォルニアは、太平洋をはさんで日本列島の対岸ですが、これは対岸の火事では済みません。
日本では、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力各社が加圧水型の原子炉を採用しています(三菱重工系と東芝系あり)。ただちに、蒸気発生器を含む原子炉のすべての構造に対して、徹底的な調査を行うべきでしょう。
幸いにも、大飯を除くすべての原発が止まっているのですから。すべての核燃料を炉心から取り除き、調べ尽くすべきです。

大停電と原発2013/05/12 20:09

「安倍晋三はブラックセールスマン」「安倍晋三は死の商人」。あちこちからこんな声が聞こえてきます。

レベル7の大事故を起こしてから2年あまり。フクシマはまったく収束していません。事故の詳しいメカニズムだってまったく分かっていません。
そんな日本の首相が、トップセールスと称して海外に出向いて原発を売り歩く。そこで事故が起きた時に、誰がどう被害を受け、誰が責任を負うのかなんて、まったくお構いなしです。
今回のトルコについて特に言うなら、日本に匹敵する地震国であることは誰もが知っているのに。

さて、視点を変えてみましょう。
今、多くの人が見落としているのが、原子力発電所は電気を作るための施設なのに、外部電源がないと暴走し、メルトダウンし、大事故を引き起こすということ。ここに、原発が持つ根本的な脆弱性の一つがあります。外からの電気がないと暴走する発電所!?まともな神経で考えれば、それ自体が変なのに。
そして、停電の起きない国は世界中どこにもありません。日本でも、トルコでも、アメリカでも停電は起きます。

福島第1の過酷事故。政府も東電も、「想定を越える規模の津波」のせいにして誤魔化そうとしていますが、実は、津波だろうと、台風だろうと、洪水だろうと関係ありません。メルトダウンの引き金を引くのは、最後は「外部電源の喪失=停電」なのです。
こう言うと、「仮に外からの電源が切れても、非常用ディーゼル発電機があるから大丈夫」という反論が来ます。しかし、福島第1で東北電力からの送電線が倒れ、同時に非常用ディーゼル発電機が津波で水をかぶったという状況は、極めて特殊な例とは言えないのです。
それを裏付けるのが、これまでに日本国内や世界中で起きた数々の大停電の記録です。

●新潟大停電
2005年12月22日~23日。
原因は、強風とそれによって煽られた雪と氷結した海水のしぶきとされています。
この時は、停電エリアに柏崎原発がたまたま含まれていませんでした。
しかしもし、柏崎原発がこの停電に巻き込まれ、荒天があと数日続いていたらどうなっていたでしょうか?
停電が始まった直後は、非常用ディーゼル発電機が稼働していたとしても、数日の内に燃料切れ。原子炉は間違いなく暴走していたでしょう。

●ブラジル大停電
2009年11月10日。
原因は暴風雨。新潟の場合と同じ想定は成り立ちます。
ブラジルは、福島第1の事故を受けて国内でのあらたな原発計画を見送る決定をしました。

●北アメリカ大停電
2003年8月14日。
荒天による送電線と樹木の接触が原因でした。
これも、停電エリア内に原発があって、荒天があと数日続いていたら、大事故の可能性がありました。

そしてアメリカ西海岸…
最近も、福島第1を思い浮かべざるを得ない事態が起きて、実際に原発が止まっていました!

1年半ほど前の2011年9月8日、米国カリフォルニア州南部で大停電が起き、サンディエゴ近郊にあるサンオンフレ原発の原子炉2基が緊急停止していたのです。

●2011年9月8日カリフォルニア州南部で大停電のニュース(1)

●2011年9月8日カリフォルニア州南部で大停電のニュース(2)

●カリフォルニアの原発地図
サンディエゴ近郊と言われていますが、実はロサンゼルスにもほぼ等距離なのが一目瞭然。
「ロサンゼルスはサンオンフレの100キロ圏内」という事実をアメリカの人たちは知るべき!


さて、大停電の日…
あまり細かい情報が残されていないのですが、非常用ディーゼル発電機で危機をしのいだと見られます。
もし、非常用ディーゼルが起動しなかったら…
もし、数日間、ディーゼル燃料が届かない状況に見舞われたら…
太平洋をはさんだ反対側で、福島第1同様の原発過酷事故が起きていたに違いありません。それは、福島第1の事故から、たった半年しか経っていない時でした。

まさに綱渡り… こんなことを繰り返していたら、人類は、必ずまた原発過酷事故を引き起こします。

そして、この日本列島に暮らす私たちの果たすべき責任と役割は…
ヒロシマ・ナガサキの悲劇を経験した私たちは、核兵器廃絶に向けて、世界の最先頭に立たなくてはいけません。
フクシマの悲劇を経験した私たちは、地球上からすべての原発をなくすために、世界の最先頭に立たなくてはいけません。
そんなときに、首相が原発の「ブラックセールスマン」や「死の商人」では、お話になりません。

思いだしてみると、安倍晋三の出身校は成蹊大学。完璧な三菱財閥系です。今回、トルコでの原発セールスは三菱重工。いまだにそんなところで、世の中が決まっているのか… 落胆とともに、強い怒りをおぼえます。

トリチウムの恐怖(後編)2013/05/04 15:32

前編で、トリチウムによる内部被ばくを警戒する必要があると書きましたが、トリチウムが命や健康に及ぼす悪影響は、それだけではありません。
下の図をご覧ください。


左側は、よく見かけるDNAの模式図です。生命活動や遺伝情報の設計図とも言えるDNAの二重らせんは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類の塩基の組み合わせで出来ています。塩基とは「アルカリ性を示す物質」と理解しておいてください(完全に正確な説明ではありませんが)。
4種類といっても、アデニンはチミンと、シトシンはグアニンとしか結合しません。従って、片方のらせんから見ると、塩基の組み合わせ(=対)は、
アデニン-チミン
チミン-アデニン
シトシン-グアニン
グアニン-シトシン
の4種類しかありません。
この塩基の組み合わせを「塩基対(えんきつい)」と呼びます。

「ヒトゲノムの全塩基配列を解読!」なんてニュースがありました。全塩基配列とはDNAの塩基対が並んでいる順番のことです。スーパーコンピューターなどを使って、この配列をすべて読み取ったという話です。
塩基対こそが、DNA情報の根幹。だから大きなニュースになったのです。

さて、一つの細胞内にあるDNAの塩基対の数は31億。そのDNAが折りたたまれて、ある長さごとに分かれて23対の染色体に入っています。

さて、もう一度、図をご覧ください。


右図の赤楕円内は塩基対の構造を化学式で示したものです。水素原子を青丸で囲みました。
グアニンとシトシンをつないでいるのは、3つの水素原子。アデニンとチミンは2つの水素原子でつながっています。つまり、DNAの二重らせんは水素を仲立ちに成立しているものなのです。そして、一塩基対あたり平均2.5個の水素原子が必要ですから、一細胞内のDNAで見ると、77億5千万個もの水素原子が関わっています。
ここで、前編で使用した図をもう一度見てみましょう。
下半分に注目です。


トリチウムは、12.32年という半減期を経て、β線を出しながらヘリウム3に変わります。このトリチウムが、DNAの塩基対に組み込まれている水素だったらどうなるでしょうか?
突然、水素がヘリウムに変わってしまうわけですから、塩基対は壊れてしまいます。トリチウムによるDNAの塩基対の直接破壊です。もちろん、その部分の遺伝情報は破壊されてしまいます。

DNAを構成する原子は水素に限らず、複製を重ねるごとに、飲食や呼吸によって人体外部から取り込まれた原子に置き換わります。トリチウムが多い環境で暮らせば、DNAの塩基対にトリチウムが入り込む確率も高くなるということです。

もちろん、宇宙線の影響で自然下に存在するトリチウムでも、このDNA破壊は起きます。しかし、人類は、核時代に入って、地球上のトリチウムの濃度を飛躍的に高めてしまいました。少なく見積もっても3倍。15倍になっているという説もあります。

たとえば、水素の0.001%がトリチウムである環境を考えましょう。水素原子のうちの10万個に1個がトリチウムである状態です。
1つの細胞内では7万5千個のトリチウムが塩基対に関わっています。うち半数の3万7500個が12年ほどのうちにヘリウム3に変わって、あっちこっちでDNAを破壊するという恐ろしい事態になるのです。これは、たった1個の細胞内での出来事です。人体は60兆個もの細胞で出来ているのだということを忘れてはなりません。

福島第1原発ではどうでしょうか?
メルトダウンした炉心の冷却に使用した汚染水に大量のトリチウムが含まれていることは、東京電力も認めています。「漏れ出した汚染水は、地下水にも、海にも流れ込んでいない」と言いますが、じゃあ、どこに行ってしまったのでしょうか?大量のトリチウムを含んだまま。
さらに、今、福島第一で使っている水は、密閉されているわけではありません。大気に露出した状態です。ということは、蒸発して水蒸気になっている分も見逃すことは出来ません。
福島第1周辺の地下水、海水、大気に関して、徹底した調査を行い、トリチウムの濃度を監視する必要があります。

トリチウムを生まない技術はないし、トリチウムを取り除く技術もありません。
「内部被ばく」と「DNAの塩基対の直接破壊」。
人類が核兵器や原子力発電と決別しない限り、トリチウムの恐怖は、大きくなり続けます。

トリチウムの恐怖(前編)2013/05/04 15:20

福島第1原発の汚染水漏れに関連して、トリチウムという放射性物質に注目が集まっています。
「どんなフィルターを使ってもトリチウムは取り除けない」といったニュースを記憶している方も多いと思います。

汚染水漏れそのものについては、あまりにずさん、あまりに行き当たりばったりの話で、目を覆うばかりです。ただ、他所でもたくさん扱われていますので、ここでは、特にトリチウムに注目して考えていきたいと思います。というのは、トリチウムは、「人類と核」「人類と原子力」いや「地球と原子力」を考える上で、たいへん本質的な問題を突きつけているからです。

分かりやすく言えば、トリチウムとは放射性水素のことです。
たとえば、セシウムならば、セシウム133は安定核種なので放射線を出しません。セシウム134やセシウム137は、たいへんに危険な放射性核種です。崩壊する時にβ線やγ線を出します。
原子名の後ろの数字は質量数といって、原子核の中にある陽子と中性子の数の合計。「原子の種類は陽子の数によって決まる」ので、放射性であるかどうかは中性子の数によるということです。

さて、セシウムと同じように同じように、水素にも放射性のものとそうでないものがあります。
まずは下の図をご覧ください。


一番左の「軽水素」というのが普通の水素。自然界に存在する水素の99.985%が、この軽水素です。原子核には陽子が一つで中性子はありません。原子核のまわりを電子が回っています。

さて、水素ってどこにあるの?
もっとも身近な存在は「水」です。水が2個の水素原子と1個の酸素原子で出来ていることは、多くの方がご存じの通りです。
水道水や雨水、河川や海だけではありません。動物の体の中に含まれる水分、地中にある水分、植物の水分…
また、ほとんどの有機物(アミノ酸、タンパク質、脂質など)にも水素が含まれています。水素は、ありとあらゆるところにあるということです。
そして、その大半は軽水素。原子名の後ろに質量数を付けると水素1。これが軽水素です。

図の真ん中は重水素。これも自然に存在する放射線を出さない安定した水素です。存在比率は0.015%と少ないものです。原子核には陽子の他に、中性子が1個あります。従って、質量数を書き込むと水素2となります。

問題は一番右の三重水素。トリチウム(=水素3)のことです。原子核の中に陽子1個と中性子2個があり、不安定な放射性核種です。半減期=12.32年でβ崩壊し、ヘリウム3という安定した核種になります。
自然界では、宇宙線が大気中の窒素や酸素に衝突した際に、微量のトリチウムが生成されています。雨の中に含まれるトリチウムの濃度は、人類が核兵器や原発を開発する以前、0.2~1ベクレル/リットルでした。現在は1~3ベクレル/リットルで、最大で15倍、少なく見積もっても3倍になっています。
トリチウムは核爆発や原子炉内の核分裂反応によって、大量に生じるのです。

では、トリチウムによる被ばくの危険に話を進めましょう。
トリチウムが出すβ線は、非常にエネルギーが弱いものです。空気中では5mmくらいしか飛びません。仮に、人間の皮膚に当たったとしても、通過することができません。従って、外部被ばくは心配する必要はないというのが定説です。

一方、トリチウムは水や有機物に溶け込んでしまいますから、飲食を通して、体内に入ってきます。人体は、普通の水素とトリチウムを見分けることができません。内部被ばくへの警戒は怠れないのです。
トリチウムのβ線は、水中や体内では最大でも6ミクロン程度しか飛べません。これは、遠くまで届かないということですが、言い換えれば、トリチウムが出すβ線のエネルギーは、すべて近隣の細胞に影響を与えるということを意味しています。

下に、放射線による2種類のDNA破壊プロセスを示します。


①は、放射線によるDNAの直接破壊。放射線が電子をはじき飛ばしてDNAを破壊するので、『電離作用』と呼ばれます。
②は、放射線が水分子に当たって活性酸素を生じ、その活性酸素の化学反応によってDNAが破壊されるというものです。

トリチウムのβ線も例外ではなく、この二つの形で、DNAを破壊します。

しかし、ここまでは『トリチウムの恐怖』の「序」に過ぎません。他の放射性物質、放射性核種とは違う大きな恐怖がトリチウムにはあります。
次の記事で書くことにします。

福島の子どもたちに甲状腺ガン2013/02/14 22:34

予測されていた通りの最悪の展開。
毎日新聞『福島子ども調査:甲状腺がん、新たに2人 他7人に疑い
3万8114人中10人。子どもの甲状腺がんの発生率は「100万人に1人」が通説です。単純計算で300倍の発がん率!
この事態に、原発事故との因果関係を認めない山下俊一と鈴木真一。この人たちは、医者でもなければ科学者でもありません。
時間がなくて、詳しくかけないのがつらいです。

年間20ミリの避難基準を非難~国連特別報告者2013/01/31 22:49

少し遅れてしまいましたが、これは必見です。国連関係からも、こういった発言が出ていることを日本政府は真摯に受け止めるべきです。
●動画再生は、下の緑色の部分をクリックしてください。
国連人権員会「健康に対する権利に関する特別報告者」アナンド・グローバー氏記者会見(2012年11月26日)

除染考(3):そもそも除染は必要なのか?2013/01/31 20:57

当ブログをはじめ、多くの人たちが多くの場所で指摘している通り、高濃度汚染地域では、除染は核物質を拡散するだけで、効果は乏しいものです。

チェルノブイリでは、立ち入り禁止区域になっている半径30キロの「ゾーン」の中では、除染は行わず、放射性物質の野生生物や環境への影響を研究することに専念しています。除染したところで、とうてい人が住める環境にはならないからです。
「ゾーン」の外では、今も一部で除染作業が続いているようですが、決定的な効果を上げるような新技術はありません。農地では、当初、土の入れ替えによる除染を試みました。しかし、あまりに広大な面積が対象となることから、除染をあきらめ、カリウムを撒くことで、植物が吸収する放射性セシウムの量を減らすという対策に変更しました。

福島、いや日本ではどうすべきなのでしょうか…
環境省のホームページを見ると、「計画的避難区域」と「警戒区域」を合わせて『除染特別地域』として、当面の除染を進めようとしています。このエリア=20ミリシーベルト/年を超える地域です。
さらに、福島県だけでなく、宮城県、岩手県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県でも広い範囲が『汚染状況重点調査地域』に指定されています。数字的に言えば、1ミリシーベルト/年から20ミリシーベルト/年のエリアです。自治体が除染を計画すれば国から経済的支援を受けられる。これが『汚染状況重点調査地域』です。実に104市町村に及びます。

除染特別地域・汚染状況重点調査地域一覧(環境省)

今、巨額の税金を投入して、『除染特別地域』の除染を進めようとしていますが、これが、「効果は上がらない」「手抜き横行」「労働者の賃金ピンハネ」というひどい事になっています。
『除染特別地域』は、今現在、人が住めない地域です。ここでの除染が、「帰還」と深く結びついていることは言うまでもありません。しかし、線量を下げられなければ、帰還どころではありません。また、仮に住宅の周りだけある程度、除染できたとしても、野山や山林はどうするのか… そこから流れ出る放射性物質を含む水にどう対応するのか… だいたい「放射線量が高いから山に入ってはいけない」と子どもたちに何十年も言い続けのでしょうか。そこは決して安全な場所ではありません。

フクシマの地元で、この「除染+帰還」という危険な流れを汚染地域で推し進めているのが地方議員たちです。
敢えて言います。地方議員を信用してはいけません!ごく一部の議員を除けば、票田が失われるのを恐れているだけなのです。住民の命や健康よりも、自分の地位の確保だけを考えていると言って間違いありません。

今、除染を重点的に進めるべきなのは、1ミリシーベルト/年から5ミリシーベルト/年の地域。ここでは、避難や疎開の権利も認められるべきです。
5ミリシーベルト/年以上は無条件に避難すべき。
20ミリシーベルト/年以上は、当面放置して、数十年単位で様子を見るしかありません。冷酷なようですが、これが原子力事故なのです。

埼玉県加須市の旧騎西高校に集団で避難していた双葉町。井戸川町長が、結局、辞任に追い込まれました。
その背景には「除染+帰還」の問題が横たわっています。

井戸川町長の主張は、「放射能不安が全くない地域に“仮の町”を」「7千人の全住民が住め、仕事も担保された町を」という、きわめて真っ当なものでした。しかし、町議会の主流派は、「まず、町役場を旧騎西高校から福島県内に戻すべきだ」と。

結局、この3月には、町役場をいわき市に移すことが決まり、新町役場を中心に学校などを再建し、“仮の町”を建設しようという流れになっています。
しかし、いわき市の空間線量を見ると、1ミリシーベルト/年に相当する0.23マイクロシーベルト/時を越える場所が、まだまだたくさんあります。
まともに線量を測っていない山林も心配です。福島第1から250㎞離れた加須市から、60㎞のいわき市に戻るわけですから、食べ物や水なども、心配するなという方が無理なのです。

「放射能不安が全くない地域に“仮の町”を」という井戸川町長の当然とも思える主張は、潰されてしまいました。

井戸川町長の辞任のメッセージ「双葉町は永遠に」が双葉町のサイトにあがっています。涙なくしては読めません。

除染考(2):除染にゼネコンは必要なのか?2013/01/31 15:32

まずは下の表をご覧ください。
国や地方自治体から、除染事業のために巨額の資金が大手ゼネコンに流れ込んでいるのが分かります。

ゼネコン。正しくは General Contractor ですから、直訳すれば総合建設業といったところでしょう。

もちろん、元請けはゼネコンでも、実際に現場で働いている人たちは、地元や日本各地で集められた労働者。その多くは日雇い契約か短期間の契約です。そして、ゼネコンとの間には、何社もの下請け業者が入っていて、労働者に本来渡らなくてはいけない賃金が、途中で抜かれるという事態も起きています。
電話1本で仕事を右から左へ流しているだけの仲介業者も多く、暴力団のフロント企業が入り込んでいるとも言われています。なにしろ、元請けのゼネコンですら、複雑な下請け構造の全体を掌握できていない状態なのです。
J-CASTニュース:手抜き除染の「実態」 元請けゼネコンも把握できない?

素直に考えれば、福島地元の建設会社や土建会社に、国や自治体が直接発注すれば、下請け構造による問題はかなり解決されるような気がします。

では、なぜこの総合建設業、ゼネコンが除染に必要なのか?
国や自治体の説明は、
1. ゼネコンは最新の除染技術を持っている。
2. 巨大な除染事業を多くの事業者に振り分ける能力が自治体にはない。
といったところです。

まず、1.です。最新技術で飛躍的に除染が進んだ、なんていう話はどこからも聞いたことがありません。それどころか、放射性物質を含む水をそのまま河川に垂れ流したり、汚染された枯れ枝を放置したりと、とても信じられないような事態が起きているのです。
「手抜き除染」と言いますが、これは立派な違法行為。放射性物質を環境中に廃棄したり、許可なく移動させることは法で禁じられているのです。
もし、最新技術を売りにして、ゼネコンが入札に勝ったのなら、その証を見せてもらいたいものです。それ以前に、入札の内容を全面的に公開すべきでしょう。企画内容から見積に至るまで、万人の監視が必要です。

国とゼネコン、地方自治体とゼネコンという利権構造にくさびを打ち込まなければ、除染は、原発で儲けた連中が、また儲けるだけのものになってしまいます。おまけに、実際の効果はほとんどないと。こんなことは許されません!

環境省のホームページに、田村市の除染作業をリポートした写真がありました。

この作業のどこにゼネコンが必要で、最新技術はどこに生かされているのか?誰でも疑問に思うでしょう。

除染考(1):「除染」とは…2013/01/31 11:30

政府は「除染、除染」と騒ぎ立てますが、一向にその成果は上がっていません。
それどころか、「フクシマの手抜き除染」が世界的なニュースとなり、この国は多額の税金をいったい何のために、どこに投入しているのか、日本中が疑問を持っています。
そこで、一度原点に立ち帰って、除染の問題を何回かに分けて考えていくことにします。

まず除染の目的。地域を汚染している放射性物質を取り除いて、住民が安心して暮らせる状態にすることです。20ミリシーベルト/年以上で居住制限のかかっている地域では、安心して帰還できるようにすることです。
しかし、考えてみると、「安心して」というのは曖昧な言葉です。これは具体的には、「何の制限もなく生活できる状態に戻すこと」を指すと考えないといけません。「山林に入ってはいけない」「山のキノコは採ってはいけない」「川のヤマメは食べてはいけない」という状態では、「故郷に帰った」とか「故郷を取り戻した」ことにはなりません。
本来は、3.11以前の状態に完全に戻してこそ、除染の完了です。

さて、20ミリシーベルト/年以上のエリアでは、国が除染を行うことになっています。1ミリシーベルト/年から20ミリシーベルト/年のエリアでは、地方自治体が除染を行い、財政的には国が支援することになっています。
ここで予備知識として再整理しておきたいのは、1ミリシーベルト/年と20ミリシーベルト/年という数字です。
実は、どちらも安全だという根拠のある数字ではありません。ICRP(国際放射線防護委員会)によれば、「一般の人が浴びても差し支えないとされる1年間の被ばくの基準は1ミリシーベルト」「原子力事故からの復旧期においては年間の被ばく量を多くても1ミリシーベルトから20ミリシーベルトまでにとどめるべき」ということです。
日本政府が採用しているのは復旧期の上限値。事故直後から1ミリシーベルトなのか20ミリシーベルトなのかという議論がありましたが、なし崩し的に20ミリシーベルトという高い放射線量を押し付けられているのが現状なのです。おまけに、復旧期がいつまで続くのか、明確どころか、おおむねの目安さえ示されていません。

ここでは詳しく述べませんが、1ミリシーベルト/年以下でも、ガンなどの発生率が上昇しているデータは、チェルノブイリだけではなく、世界中で報告されています。
●参考サイト:NHK「低線量被ばく 揺れる国際基準」に関連するブログ

では、チェルノブイリの基準はどうなっているのでしょうか?何度か掲載した図ですが、もう一度確認しておきましょう。

ウクライナもベラルーシもロシアも同じ基準で、5ミリシーベルト/年以上のエリアは危険なので居住が禁止されています。
さらに、1ミリシーベルト/年から5ミリシーベルト/年で住民には移住の権利があります。国の支援を受けながらそこに住み続けるか、他の地域に移住するか、自由に選択することができるのです。フクシマとはレベルの違う対応が行われています。

そして、フクシマよりも厳しい基準を適用しているチェルノブイリですら、今、白血病や心臓疾患など、慢性被ばくが原因とされる病気が多発しているのです。
事故発生から27年を経ようとしているチェルノブイリですが、立ち入り禁止区域の外が「何の制限もなく生活できる状態」になっているわけではないのです。

フクシマに話を戻しましょう。
残念ながら、すべてを3.11以前に戻すのは不可能です。納得のいかない数字ではありますが、当面は、1ミリシーベルト/年を目安にしましょう。「1ミリシーベルト/年から5ミリシーベルト/年で移住の権利」「5ミリシーベルト/年以上で立ち入り禁止」というチェルノブイリなみの基準は最低限必要です。

国が本当に除染できるというなら、5ミリシーベルト/年以上のエリアをすべて買い上げて、きれいに除染してから売り出せば良いだけの話なのです。

安易に、「除染」とか「帰還」という言葉に踊らされるのは、とても危険なこと。ここで言う、「危険」とは、具体的に、「命や健康に関わる危険」を指していることは、言うまでもありません。






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